2019/06/16 のログ
■フラニエータ > 「裏から表をじわじわと侵食していくの…
――食事をすれば毒が入っているかもしれない…
――女を買えばその女に殺されるかもしれない…
――道を歩けば少年少女に刺されるかもしれない…
そんな恐怖を、豚に…ね…。」
彼の大きな笑い声の裏で、淡々と言葉を紡ぐ女。もはや貴族ではなく豚扱いである。
勿論女にとっても良い貴族も居るであろうが、今はそれは除外。
「…あら、何度か騙された事、あるの?」
騙されるのも面白い、の彼の言葉には女も頷き。
騙し、騙されの男女の駆け引きが気持ちを高めあう術でもあることは女も知っている。
だからこそ今こうして悪い口を開いているのである。
「別に言い触らされても構わないのだけれど…仕事がやり難くなるから…ねぇ?
――メイド?貴方の?…貴方が金を与えれば良いんじゃない?
…使える子なら雇っても良いのだけれど…私、厳しいわよ?」
突然の提案に首を傾げる女。そこまで金に困っているのに、主人の彼は何を手を拱いているのか、と。
それはそのメイドが彼から金を受け取れない、という気概からなのだろうか。
女は腑に落ちないような顔をしつつも、生意気なら躾けるわよ?と嗤いながら答えて。
■セイン=ディバン > 「……ふぅん。ま、せいぜい頑張ってくれや。
俺ぁ貴族共からは小金掠め取るくらいにしとくからさ」
相手の言葉。底冷えするような悪意。あるいは害意。あるいは敵意?
そんな物を感じ取りながら、男はそれを嗜めるでもなく。
ただ、飄々とそんなことを口にした。
「あん? そりゃあまぁなぁ。
俺だっていい歳だ。いつもいつも、スムーズに女を食ってきた訳でもない」
だからこそ、いろいろ学んできた、と笑う男。
右手を宙に伸ばせば、転送魔術で家の倉庫からワインとグラスを取り出し。
手早くワインを注ぐと、相手にそれを差し出し。自分は瓶から直接酒を飲む。
「仕事が、ね。くくっ。
……俺は、給金以外は払わない主義だ。もしもアイツが欲している金額をくれてやれば。
そりゃあ俺への借金に他ならん。それじゃあアイツが自分自身の身分を買い戻すのが遅れるだろ。
雇うか、一晩味わうだけか、その辺は本人に相談してほしいんだがな。
腕は立つ。アサシンギルドと、冒険者ギルドにしっかり登録してるし……。
何より、ネコのミレーだ。隠密行動だけ見れば。俺らより上かもしれん」
相手に語る間、男の表情は真剣な物になっていた。
男とメイドの間には、それなりにルールのようなものがある。
だからこそ、施しなどしないのだ、と伝えつつ。
相手とメイドを引き合わせる方法を考える男。
■フラニエータ > 現れたワインとグラス。手早く己に差し出されればそれを受け取り、揺らして香りを立ち上らせる。
彼の言葉に耳を傾けつつ冷たくも甘い微笑みを向けながら、
スムーズに食べられる女なんて面白くないんじゃないの?とジト目を送って。
「…そう…腕は立つのね…そのメイドの身元は貴方、でいいのね?」
彼の説明に女は一考。少なくとも全く知らない人間よりも、彼の息がかかっている人間の方が都合も良い。
そして身元が彼ならば、もし公にできない事柄を口にされてもまだ安心できる。
「――マスカレードで…これを渡しながらブラックベルベットを注文させなさい…
間違ってもレッドアイを頼んじゃ駄目よ?…店主が勘違いしちゃうから…」
女は脱ぎ捨てられている己の服から、店の名の焼印がされている一枚のコルク製コースターを手にした。
それは彼が店で一度も見かけた事の無いもの。所謂使われていないもの、である。
■セイン=ディバン > ワインの飲み方も堂に入っているな、と思いつつ。
下品に酒を飲む男。
相手のジト目は気付きつつも無視。
スムーズに食えるならそれはそれで楽だろう、と思う。
「あぁ。俺がトゥルネソル商会から正規で買った。
正真正銘。法に触れていない俺の所持する奴隷だ」
相手のことを真っ直ぐ見ながら、はっきりと口にする男。
少なくとも、主人である男に弓引くような存在ではないのは確かだ。
……今の所は、であるが。
「……分かった。そう伝えておく。
ちなみになんだが、レッドアイを頼むとどうなるんだ?
もしかして、お前の敵としてみなされる、とかか?」
受け取ったコースターを、転送呪文で自宅に送る男。
そのまま、興味本位で尋ねてみる。
もしかしたら余計なことだったか、と思うが。
かの奴隷メイドは……愉快魔というかなんというかな所があるので。
釘を刺すためにも、情報がほしかった。
■フラニエータ > 「トゥルネソル商会から?…ふぅん…成程…手広くやっているのね…」
あの商会から買ったという事実に、少々思考を巡らす女。
マスカレードに酒や食材を卸しているそこが、まさか奴隷の売買をしているとは思っても無かった様子。
しかしあの商会ならば奴隷の扱いもそれなりのものであろうし、教育もされていそうではある。
今度頼んでみようかしら、と口角を上げる女。
「…対象が店主になるだけ、よ…ほら、赤いでしょ?目…」
表立ってはできない仕事を請け負う為の手段の一つ。つまりはそういう事、なのである。
■セイン=ディバン > 「あぁ。しかも、最近はなんか。ドラゴン絡みの商売も始めたとか……」
噂で聞いたことを口にする男。
少なくとも、あの商会の奴隷の売買は。
他の場所でのそれとは意味が違う。
あえて言うなら、奴隷と言うよりは。純粋な労働力の売買に近いのである。
だからこそ、男は奴隷を買った訳なのだが。
「……あー、そういうことね。
分かった。間違わないように伝えておくさ」
なるほど、と納得したように頷く男。
そして、その情報は、男自身もしっかりと記憶しておく。
「……さて。俺はそろそろ家に帰るが。
お前はここで一泊しておくといい。
人払いはしてあるから、ここは安全だしな」
一通り話を終えたところで、男がイスから立ち上がり、そう宣言する。
もちろん、この店の個室の代金などは、男が払うつもりだ。
■フラニエータ > 「…そう…本当に手広い事…そういった意味では…使える商会…なのね…ククク…」
なにやら含んだ笑いをする女。
何を考えているかは解らないが、商会の人間が見れば震え上がるかもしれない、妖しい笑顔で。
「…コースターは回収するから。使い回せないわよ?
――ええ、遠慮なく好意に甘えるわ…勿論好意、よね?」
立ち上がる彼を見上げながら長巻を消し、ワインを揺らす女。
彼が部屋から出て行けば、女はグラスに残ったワインを一気に飲み干すだろう。
全てを手に入れてやる、そんな妖艶な、腹黒い笑い顔を晒しながら。
■セイン=ディバン > 「……なんか企んでるだろ」
その笑みに、薄ら寒いものを感じながら。
しかして男は咎めることをしない。
なにせ、相手の行動を邪魔する立場に無いのだから。
「……あ、っそ。用意周到ですこと~……。
好意でも義理でも情でも、お好きに受け取ってくれ」
相手の宣言に、舌を出す男。どうやら裏を読まれたようである。
そうして、男は相手に背を向け部屋を出る。
少しだけ触れた、相手の心の中。
それは、自分の予想以上に暗く、冷たいものだと感じながら。
それでも……男は、相手と縁を切る気にはなれなかった……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフラニエータさんが去りました。