2019/06/15 のログ
カーレル > そのまま、店を閉めるまで客が訪れることはなく
どうして食っていけるのだろうか?という疑問を残しながら、店番の依頼を終わらせれば貧民地区を後にするのだった

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からカーレルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……はぁ」

貧民地区の細路地で、ため息を吐く男一人。
ちら、と見た空。どんより曇って星も見えない。
雨は止んだようだが、またいつ降り始めてもおかしくないだろう。

「あー、こんな天気じゃ気分も落ち込むぜ……」

元来、ぐーたらな性質ではあるが。
雨と湿気にやられてはなおさらぐーたら。
冒険者稼業もシーフ稼業もする気せんわぁ、という感じに。
どこかで一杯ひっかけるか、と。酒場を覗いてみるけれど。
どうにもピンと来なくて、貧民地区をうろうろ、である。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にフラニエータさんが現れました。
フラニエータ > 貧民地区の細い路地、その軒下。女はそこに佇んでいる。
いつもの女なら目を引く姿で周囲に色気と恐怖を振りまいているのだが、
今日の女は珍しく全身に外套を纏っており、フードを目深に被っていた。

「…止んじゃったわね…ギリギリだったわ、ね…」

フードを下ろせば安堵の表情を晒す女。その顔に軒下からの雫が落ちた。
それを指で拭いつつ周囲を見渡せば…

「…これはまた…退屈そうな男が居るわね…」

女の言葉通り、退屈そうな男が居る。歩いている。徘徊している。
あえて付け足せば彼は女の知人。
だからその言葉を彼に聞こえる程大きな声で、アンニュイな表情を向けながら発するのだ。

セイン=ディバン > そもそもこの男にとっては、過ごしやすい時期、などというものの方がレア。
暑いのもキライだし、寒いのはイヤだし、と。
まぁ~文句の多い人種なのである。
さて、男がのそのそと路地を歩いていれば。
耳に聞き覚えのある声。

「……これはこれは。性悪女様じゃありませんか」

その声に、うげぇ、という顔になりつつ。
声のした方向へと振り返り、そう言い返す男。
相手の姿は、いつもと違ってだいぶ大人しいもので。
なるほど。さすがにこの雨では寒いか、なんて考えて笑う男。

「お前ってさ、いっつも見かけると暇そうにしてねぇ?」

ここで会ったのも何かの縁か、と思いつつ。
前々からの疑問を口にする男であった。

フラニエータ > 性悪女と言葉を返されても、怒るどころか笑う女。
振り返る彼、あからさまに嫌な顔をする彼に対して、にっこりと淑女の笑みを返す辺りやっぱり性悪なのだろう。

「暇?…そうね、今は暇よ?」

含みのある女の言葉。先程までは暇ではなかった、と言いたげである。
そんな女の足元、地面は濡れていた。先程まで降っていた雨、そして赤い何かで。

「…雨、もう少し降っていて欲しかったのだけれど…ねぇ。」

雨がその赤を洗い流すには、まだ少々時間が足りなかったのだろう。
女は恨めしそうな顔で天を仰ぐ。

セイン=ディバン > 別段、男は相手のことがキライでは無い。
かといって好きか、と問われると。これまた返事が難しいのではあるけれども。

「かー、流石に凄腕盗賊さんは違いますなぁ」

自分みたいな二流とは違って、暇を持てるほどに生活が余裕ですかー。
そう言おうとしたところで、男が相手の異変に気付く。
瞬間。男は相手の腕を掴み、無言のまま歩き始める。

「来い。……近くに知り合いの店がある」

それだけを告げ、ずんずんと歩く男。
しかし、その腕を引く力は決して強くは無い。
拒絶するならご勝手にどうぞ、なんていうかのようだ。

フラニエータ > 女にとっても彼は嫌いな人種ではない。多分今、この場に訪れたのが嫌いな人種なら、
女は“シて”その後“ヤる”だろう。何をか、を聞くのは野暮である。危険である。

「あら、貴方に言われると嫌味にしか聞えないわよ?…それとも嫌味?」

勿論嫌味なのである。が、それを解っている女は、くつくつと笑いながらそんな言葉を返した。
そんな時、唐突に己の腕を引き始める彼。

「ちょ、ちょっと…どうしたの?――…ああ、成程…あれは私の血じゃないわ…
…もしかして、心配してくれているの?――可愛いじゃない…ククク…」

その場から数十歩、彼に引かれて足を動かした後、彼の突然の行動をなんとなく察したようだ。
恐らく己が怪我でもしているのでないか、若しくは己の身を隠そうとしてくれているのはないか、と。

「…“シて”“ヤった”後なの…処理は済んだわ…」

何をか、を聞くのは野暮である。危険である。

セイン=ディバン > 「別に。俺みたいに暇をもてあましてるんじゃないだろうと思っただけだ」

相手の言葉に肩を竦める男。男は、暇をもてあました暇人。
相手はまぁ、たまたま暇になっただけの真面目な勤労者なのだろうと。
そう思って吐いた言葉なだけであるが。

「だったら何だ。お前のだろうが、お前のじゃなかろうが。
 ヤバ事マズ事に変わりはねぇだろ」

ちなみに、男は最初相手がケガをしているのではないか、と考えたのだが。
腕を掴んだ瞬間、そうではないと気付いていた。
もしも怪我をしているなら、腕を引いたときに反応があるからだ。
それが無い以上、相手の血で無いことは理解できた。
相手のからかうような言葉に反応はせず。

「……いいから黙ってついて来い」

相手の言葉の意味を問わぬまま、男は路地裏の酒場へと入る。
そこは暗く、カウンター内のマスター以外は一人も客がいない店であった。
男がマスターに目配せをすると、マスターが男に鍵を投げ。
そのまま、男は奥の個室へと入っていく。

「奥にシャワーがある。使うなら使え」

男はそう言うと、備え付けのベッドのシーツを撫で、小さな小さな暖炉に、懐から取り出した弾丸を炸裂させ、火を灯した。
相手の体を冷やさぬよう、という気遣いだ。

フラニエータ > 女は珍しく、溜息交じりの息を吐きつつも彼の言葉通りに黙ってついて行く。
着いた先は酒場。店主と彼のやり取りを見れば、恐らく彼の息のかかった店なのだろう。
他に客の居ないのは好都合である。
半ばきょとんとした顔のまま彼と共に個室まで足を運び、彼が暖炉に火を灯すのを見ながら言葉を落とす。

「…嫌いじゃないけれど…強引過ぎないかしら…フフ…」

雨にじっとりと濡れ、重さを増やした外套を脱ぎ、床に落とし。
巻きスカートを解き、ショートパンツを脱ぎ、

「あらあら、性悪女に対してサービス過多じゃない?…使わせて貰うわ、ありがとう。」

チュニックを脱ぎ、下着を脱ぎ…彼の前でサービスのお返しとばかりに全裸になる。
そして脱ぎ捨てた服を拾い、抱える女。服の所為で見えそうで見えないのは、意図しているのかいないのか。
間も無く女はシャワーを浴びに奥へと足を運ぶであろう。
そして擦りガラス越しに女の肌色が湯を浴びている光景が、彼に届けられる。

セイン=ディバン > 男もいわゆる二流冒険者ではあるが、それでも経歴は長い。
個人的に付き合いのある知り合いや、いざという時に使えるアジトじみた店もある程度は持っているわけで。
今回相手を連れてきたのも、そんな秘密の隠れ家の一つ、という訳で。
内心、この相手には知られたくなかった、なんて思いも無くは無い。

「黙ってろ。おしゃべりは一息吐いてからだ」

とことんまで真意読めぬ、からかい気味の言葉に。
男は冷たく答えながら、部屋を整えていく。
それは、ただ単純に相手を休ませる為だけの準備であり。

「お前が礼を言うなんざ。
 明日は雨だけじゃなくて雷まで来るか?」

嫌味な物言いをしつつ。相手の裸身を、一瞬だけ見る男。
興奮。しないでもない。いや、しないわけが無い。
だが、それでも体の奥底や股間が冷えたままの自分を内心褒めつつ。
男は、相手が湯を浴びている間に、最後の準備を進める。
窓にカーテン引き、懐から一つの石を取り出し、床に叩き付ける。
無音で割れた石は、光を放ち……個室を、外の世界から隔絶した。
結界石。一定範囲を、防音、人除け、生命感知阻害の呪文で包むマジックアイテムだ。
男はそこでようやっと一息吐き、部屋の隅のイスに腰掛ける。

「……はぁぁぁぁぁぁぁ。
 らしくねぇことしてる~……」

項垂れながら苦笑する男。さて、相手が体を綺麗にしたら。
そこから……どうする? なんて思案。

フラニエータ > 「貴方が私を助けるなんて…明日は雪?それとも雹?なんて…ね?」

彼がやっとの安堵を取り戻し、椅子に座って一人言つ時、女は優雅に黒髪を湯に流し、その身を泡に包ませようとしていた。
が、石鹸が足りない。脱衣所にあった新品のそれを手にして入るのを忘れたのだ。

「…ねえ、石鹸…とってくれる?」

女は扉を開き、彼に声をかける。
石鹸までの距離は女の方が近いのに、彼にそれを伝えるのは意地悪以外の何ものでもない。
もっとらしくない事をさせようというのである。性悪女ここに極まれる。
女は濡れた体を扉から半身覗かせたまま、彼が脱衣所へ入ってくるのを待っていた。
彼が作り出した暖かい部屋の空気が脱衣所まで流れ込むと、
女は彼が部屋を暖め待っているのを察したのだろう、微かな微笑みを浮かべている。

セイン=ディバン > 「言ってろ。百年に一度のきまぐれだ」

軽口と嫌味の混合の応酬。どこかそれを楽しみながらも。
無事に安全な場所を作り終えた男。
頭の中では、色々なことを考えていたのだが。

「……テメェで取れよめんどくせぇ。
 それとも何か? 俺はお前の小間使いか?」

イラァッ、とした表情のまま文句を言う男だが。
ふ、と立ち上がり、脱衣所へと入り、石鹸を探す。
すぐにそれを見つければ、相手にそれを差し出し。
そのまま……じとっ、と相手を見ていたが。

「……で。どこで何をしてきたんだ?」

唐突に。真剣な表情でそう。
相手にいきなり尋ねた。
そのまま男は、ずい、と脱衣所どころか。浴室へと身を滑らせようというくらいの勢い。

フラニエータ > 軽口と嫌味を言い合えるのは、やはりお互いの立場が近しいものがあるからだろう。
そしてまったく同じ立場では無いからこそ、愉しさがある。
そんな愉しさに女は微笑を浮かべ、文句をいいつつも石鹸を差し出してくれる彼に

「…百年に一度のきまぐれが本日二度目…奇跡ね。」

そんな軽口を叩いてみせるのだ。
石鹸を受け取り、泡を立てようと包装を剥いでいる時、彼の真剣な言葉が女の耳に入る。
女は身を乗り出してくる彼、そして視線をそのままに返答する。

「…別に特別な事はしていないわ…仕事を邪魔した男を…始末しただけ…」

彼の目の前で惜しげもなく、恥ずかしげもなく全身に泡を纏わせながら、
さも当たり前の様に言葉を続ける。

「――ね?…私、悪い女でしょう?…ククク…」

セイン=ディバン > そう。言うならシンパシー。男には男の信念と流儀があり。
恐らくは相手もそうなのだろう。
それを感じるからこそ、男はこの相手に惹かれてはいても、決して信用せず。深入りしなかった。
……深入りしようと口説いて、痛い目を見たのはまぁ、笑い話である。

「ハッ、マジで口の減らねぇ女だな」

相手が石鹸を受け取ったのを見つつ、気を吐く男。
脱衣所の戸に背中を預けつつ、相手を睨むように見るが。

「……らしくもねぇな。俺らシーフってのは、盗みはしても殺しはしねぇってのが原理主義だ。
 殺しはリスクあれど儲けが少ねぇ。それはお前もそうだと思ったけどな」

男はそんなことを口にするが、これは別段シーフギルドの鉄の掟、ということでもない。
中にはアサシンギルド所属なんじゃないか、というほどの筋金入りなヤバいやつもいる。
シーフギルド=善良な盗みのプロばかり、ということではない。

「……別に。この国じゃあそんな悪人吐いて捨てるほどいるだろうよ。
 ……例えば、お前の目の前の男、とかな」

自嘲気味に笑うような相手の言葉に、男は表情緩ませぬまま、浴室へと入り。相手を見下ろす。
自分のことなど気にもせずに体を洗う相手の頬に軽く触れ、そこでやっと目を細め。

「……確認だが。怪我ぁしてねぇんだな?」

そう。本当にこの男らしくも無い優しい声色で尋ねた。

フラニエータ > 「…貴方も十分、口が減らないと思うのだけれど、ね?」

そんな言葉を交わしながらも、女は極当たり前のように体を洗い、黒髪にも泡を纏わせ始めた。
彼の視線も全く気にしないのは、やはり彼だからなのであろう。
知らない男であればあるほど、女は女の武器を最大限に利用する。彼にはその必要が無い。

「…見合った儲けがあったから、よ。部下…塒…それなりの金…基盤という価値の高ぁい儲けが、ね…」

女が対峙した男は盗賊で、小さいながらもそれなりに勢力を持つ盗賊団の長。
それを自分のものにする為に、女は女を使ったのである。
縄張り争い、権力闘争…そんなものが、盗賊にもあるのだ。

「…ええ…怪我なんてする暇も無いわ…
――泡、ついちゃうわよ?」

己の頬に触れる彼、その手を払う事も無く、女は黒髪に手櫛を入れ、泡を満遍なく纏わせ続けていた。

セイン=ディバン > 「……カカッ、違ぇねぇ」

どこまでも。互いに軽口を途切れさせない。
だからこそ、不意に男に愉快さが襲い掛かり、笑みが漏れた。
髪を洗い始める相手の姿に、男はそそられるも。
それでも、男の股間はいまだに静かなままであり。
この辺り、女好きで通っている男にしては正に奇跡のような話。

「……なぁるほどね。相変わらず計算高いこった」

相手の仕事の手腕を、男は知っている。
男のように、冒険者とシーフの兼業をしているコウモリとは違う。
己の手腕で生き延びる、純粋なシーフとしての実力者。
だからこそ、男は相手を同業者として、性別の垣根を越えて認めている。

「そうかい。なら安心だ。
 ……心配するところはそこじゃねぇんじゃねぇの?
 俺を前に裸ぁ晒すなんざ。危ねぇとか思わねぇ訳?」

俺の噂は知ってるだろ? とか。今までのやりとり覚えてるだろ? とか。
そんな感じの意図を瞳に込めて相手を見る男。

「今まで俺をからかってきた分、ここで酷い目に遭わされちゃう~、とか。
 そういう心配したほうがいいと思うけど?」

首をかしげながら問う男。しかし、相手も気付くだろうか。
普段この男が狙った女性相手に発する気配。欲情の気配が、まったく存在していないことに。

フラニエータ > 欲情の色を見せない彼。勿論女もそういう素振りをしていないのだから当然だ。
恥ずかしいと思う事も無く、その演技も必要としない。
女は単純に、何も腹に抱えず、ただ湯で体を流し、宣うだけ。

「私のようなか弱い女は…計算しないと生きていけないの…」

湯が女の黒髪を濡らし、泡を流すと、濡れ羽色の黒髪が流れ、纏まる。
女の体を包んでいた泡も、それにあわせてゆっくりと流れていく。
泡が全て流されると女は脱衣所に目を向け、彼にタオルを取ってと視線で訴えながら

「…なぁに?発情しちゃったの?…また苛めて欲しくなったのなら遠慮なく言いなさいな…」

彼の言葉ににたり、と口角を上げ、面白そうに嗤う。
私の噂は知っているでしょう?今までのやりとりを覚えているでしょう?
そんな感じの意図を瞳に込めて、舌舐めずりをしながら彼を見つめ返す女。

セイン=ディバン > この相手には、何度もからかわれ、手を出そうとすれば袖にされた。
だからといって、この相手を手篭めにする……まではいかなくとも。
一度、喰らおうという思いが消えうせたわけでもないのだが。

「そりゃあ男も一緒だ。……今のこの国じゃあ。
 地位を持たないようなやつ等はみぃんな一緒くたさ」

本当に強いもの以外は、例外なく搾取される側。
そんなこの国の現状を思いながら、それでも男は怒りを露にしたりはしなかった。
相手の目線に気付き、タオルを手に取れば、素直にそれを相手に差し出し。

「……い~や。弱ってる女抱く趣味はねぇよ。
 ただ、無防備すぎる、って言ってる」

相手の笑みに、ようやっと調子が戻ってきたか? と思う男。
いや、表面上も奥底も。最初から調子は狂っていなかったのかもしれないが。
それでも、今宵出会った時に違和感を感じたのは確かだったのだ。
相手の舌が実に色っぽく見え、男は、くっ、と相手に近づくと。
軽く、触れるだけのキスをした。

「……そういやさ。お前って、マジで男より女の方が好みな訳?」

本当に。ちょん、と触れるだけのキスの後。
男はそう尋ねながら浴室から出て行く。
個室の中は、暖炉のおかげで幾分か温かくなっていた。
男はそのままイスに座ると、細巻を吸い始める。

フラニエータ > 「そうよ、だから地位を望むの…表じゃなくて、裏の、ね…
表の肥った豚を食べてやるのよ…愉しそうでしょう?」

素直に石鹸を差し出してくれる彼に少々目を丸くするも、
受け取ったタオルで髪を挟み、湯を拭き取り始めれば、乱れる髪の隙間から女の笑顔が見えるだろう。
計算もなにもされていない、女本来の笑顔が。
触れるだけのキスが終われば、白々しくも人差し指を顎に添え、考える仕草を一つしながら
部屋に戻る彼に言葉をかける。

「…無防備?…フフ…そうかもね…
もっと生娘らしく恥らった方が良い?それとも…拭きなさい、って命令されたいの?
ああ、媚びて甘える子がお好みなら、時間を頂戴な…アレ、疲れるのよ…」

そんな冗談めいた言葉を零しつつ、女は体を拭き終えて大きめのタオルを手に取り、
体に巻きつけて、細巻を吸う彼の元に。

「…どっちも好きよ?…御しやすければ…ね。女の子にそれが多いだけの話…
貴方も私の駒になってくれるのなら、たぁっぷり可愛がってあげるわよ?…男も…女も…」

意味深い言葉をかけながら女も椅子に座り、私にも一本くれる?と小首を傾げて。

セイン=ディバン > 「お前なら表でも成り上がれんだろ。
 貴族の妻、とか。それこそ、酒場の経営者、とか」

別段、裏にこだわる必要などないだろう、と暗に言う。
相手ほどの美貌と頭脳なら。『真っ当』に成功することだってできるだろうに、と思うのだ。
だが、相手の笑顔。そう、正しく初めて見る相手の本当の笑顔に、男は何も言えなくなる。
もっともっと踏み込めば。あるいは傍に寄り添えるのだろうか。
そう考えて……恐らく、相手はそんなの望まねぇよなぁ、と苦笑。

「バカ言ってんなっつー。
 そういう演技とか、萎えるだけだろ。
 ……どっちかって言うと、お前さんの底を見せてもらったほうが嬉しいね」

恥らうのも、高飛車なのもゴメンだ、と言いつつ浴室を出る男。
もしも叶うのならば。相手の心根。その奥底までを覗きたいと思うが。
きっとその闇は底も見えないほど深いだろうから。
もっともっと準備がいるよな、と。勝手に納得。

「なるほどね。ったく、スティグの野郎。適当言いやがって。
 ……俺ぁもう仕える相手は決まってんだ。
 そっちこそ。俺の部下になるなら、可愛がってやるぜ?」

相手が、男性に興味が無い、なんて言ってきたシーフギルド所属の情報屋のことを思い出し、毒を吐く男。
そのまま、相手に細巻を差し出しつつ、また軽口。
お互いに分かっているだろう。お互い、人の下で働くようなタイプでないことは。

フラニエータ > 「…貴族の妻?…私は人間よ?…少なくとも裏の人間の方が…人間らしいと思うけれど、ね…」

貴族は人間ではない、と暗に言う女。表社会は女の興味を全く惹かない様子だ。
それでも酒場の経営者、と彼が言葉を続ければ、女は少々考え、もうなっていると言葉を添えて。

「…演技は演技とバレない限り、演技じゃないのよ?女が男を落とす為の手段でもあるわけだし…ね?」

彼の言葉の意味は解る。女の女自身を知りたいという事だ。
勿論その欠片は彼に見えているだろう、だからこその欲求だろう。
けれども女は全てを曝け出さない。そんな関係も望まない。

今の女にとって枷となる存在は必要ない。必要なのは盲目的に従う僕だけなのだ。

「…ありがとう。スティグが言ったのね…ちょっとキツイお仕置が必要みたいね…
――…貴方の部下?…ククク…情報提供元の名を…ぽろりと零す…貴方の下に仕えろと言うの?」

そんな言葉を投げかけつつ細巻きを一本貰えば、それを口に咥えて火の点いている彼の細巻きへと近づいて。
先端を重ね、細巻きを吸い、火を己の細巻きへと移して行く。
そして紫煙を大きく吐き出せば、

「――女の子の方が愉しい、それは否めないわ…何処かにイイ子、居ないかしら?」

なんて言葉を吐きつつも足を組み、その上に肘を突き、顔を支えて…ぴこぴこと細巻を揺らしてみせる。

セイン=ディバン > 「……カハハハハハハハハハッ!
 あぁ、あぁあぁ、そうだそうだ。そうだった!
 それも違ぇねぇや!」

相手の言葉に、腹を抱えて笑う男。
その言葉は、男にとっても真実その通り。
名も無き村の貧民の出の男にとっては。そうだからこそ、反骨し生きてきたのだった。
それを思い出し、ついつい男は笑った。涙が出るほどに笑った。

「逆言うと、バレっと急激に萎える訳。
 ……バカな男だって、騙されてると気付けば知恵もつくさ」

ふっ、と表情を緩いものにしながら言う男。
だが、こうも思う。そんな女の演技に。気付いたまま、騙されるのもまた面白いのよな、と。
相手が酒場の経営者ということを言えば、あぁ、そうだったなぁ、なんて笑いつつ。
馴染みの酒場で醜態晒したことを思い出し、凶悪な笑みが浮かぶ。

「あんま虐めんなよ。あいつの情報、確かなもんは確かなんだからよ。
 バァカ。お前だったら、俺にそんな与太吹き込んだヤツなんてすぐ調べつくだろ」

くくくっ、と笑いつつ、相手の細巻に火をつける男。
言っておくが、これ、割と高いんだからな、と相手に言いつつ。

「……そうだな。俺の雇ってる奴隷メイドが、ちっと金を欲しがってる。
 一晩買ってやってくれねぇか。……生意気で、右腕を失ったバカなメイドだが。
 味は良い。使い込んでる割には締まりもいいし。どうだ?」

相手の言葉に、少し考えるようにする男だが。
そこでまさかの提案をする。これは、相手に対してのサービスというよりは。
そのメイドに対しての気遣いであった。