2019/04/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリタさんが現れました。
リタ > ここは貧民区に存在するバー、名前はマスカレード。カウンター席は6、テーブル席は1という、大層こぢんまりとした店だ。
料理の味はそこそこ、酒の質もそこそこ、お勧めはソーセージ、ザワークラウトと一般大衆向け。

ただ今店員は、鼻歌交じりでソーセージを数本ボイル中。
腸詰めも巧くいったし、長さも揃ってるし、味もまあまあイケる。
その甲斐あってか売行きも好調で、売れ残った数本のソーセージを纏めて茹で、自分の腹に収めようとしていた。
湯の中で泳いでいたソーセージを一本、トングで挟み、ふーふーと息をかけ…お行儀悪くそのままぱくり。

―ぱり。

「ん、イイ感じ。ハーブ効きすぎてると思ってたケド、そうでもないかな。
――あー、やっぱお酒も飲みたくなるよね、それは仕方ない、準備しとかないと。うん。」

いそいそと保冷庫を覗き込む店員。冷えたビールが数本残っているのを見れば、
嬉しそうに、大事そうに保冷庫を閉じた。

タイミング良く客が来れば我慢して提供すればいい、とは思っているのだが…
やっぱりほら、心は既に閉店後の晩酌。
今来客があれば、店員の物凄く残念そうな顔が見ることができるだろう。

リタ > 何を思ったのか、店員は突然余った玉ねぎを細く切り始めた。
それが終われば今度はジャガイモの皮を剥き、一口大に切りそろえる。
やっぱりソーセージだけでは味気ないと思ったのだろうか、一手間加え始める店員。
程なく店員は深めのフライパンを温めると、油を注ぎ、伸ばし…切られた玉ねぎを放り込んだ。

玉ねぎが飴色に輝きを帯び始めると、大きな鍋に入ったブイヨンをフライパンの中に。
弾ける油の音、香りたつブイヨンの香り。
店員の腹がぐう、と鳴った。

「――~~~~~♪…~~~~~♪」

塩コショウで味を調えながらの鼻歌は佳境を迎えているのか、ビブラートがかかり結構大仰だ。
次の出番は丁寧に切り揃えられたジャガイモ。
フライパンに入れられたそれは、玉ねぎの甘さが移ったブイヨンに浸る。

コトコトと音を立てるフライパンに蓋が乗せられると、店員はちらりと窓の外を見た。

「今、お客さん、来ませんように…」

営利より自分の欲が勝った瞬間である。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシスター・マルレーンさんが現れました。
リタ > さて、玉ねぎのスープで温められたジャガイモさん。
ほっこりと温められたその中に、突如ザワークラウトが突っ込まれる。
新たな酸味という味を加えられたジャガイモさんは、新たな友達を得たのか満足そう。
勿論これは店員の視点である。

「おお!ザワークラウトさん!一緒にひとっ風呂浴びないか?
いいねジャガイモさん、しかし熱いね今日の湯は。」

芝居がかった声が店員から漏れると、本日の主役、ソーセージ様の出番である。
満を持してソーセージがフライパンの中へと入っていった。

「――…ソーセージ様のご入浴~♪」

敬称が付いているのは主役だからであろう。
かくしてソーセージ様は、玉ねぎとジャガイモ、ザワークラウトと一緒に煮込まれていくのであった。

シスター・マルレーン > なんやかんやで駆けずり回るいつものシスター。
あっちにいって、こっちにいって。
食事も忘れて歩き回って、夜遅くでちょっとお腹の鳴る時間。
こんな時間に食事、なんて考えたりしないのだから、明かりのついているお店をちら、と外から覗き見て。

「………まだやってます、かー…?」

そろりと扉を開けたところで、すごく楽しそうに料理をしているのを見て、二回瞬きをして、一歩後ろに下がる。

あ、これプライベートのノリだ、と一瞬で理解をできるシスター。
良い匂いがして、くぅぅ、とお腹はなるんだけれど。

リタ > 来店を告げる、ドアに下げられたベルが鳴る。
その音を聞いて店員は大きな、大きな溜息を落とす。

「…だよねー、うん。神様はきっと、絶対、邪魔するって思ってたよ、うん…」

小さな小さな愚痴を落として一呼吸。
営業スマイルを携えた店員は、営業モードへと一転した。

「ええ。やってますよ?多分お客さんが最後。そして丁度オススメ料理が出来たトコ。
運、凄く良いですね。」

訪れた客、遠慮してか一歩下がる彼女に微笑むと、手招きして…
きょとん、と一度目をぱちくり。あれ、どうやら店員の見知った顔の様である。

「――いらっしゃい。オススメはソーセージのさっぱり煮込み。一食だけの限定ね。」

営業スマイルは店員本来の笑顔へと変わっていく。

シスター・マルレーン > 「……あら。」

目をぱちくりとさせれば、ちょっとだけ頬を赤くして、周囲を見回し。
少しだけ照れたらしく。見知った顔のお店だと今さらながらに気が付いた。
相手の笑顔にちょっとほっとしたように近づいていけば、カウンターに腰かけて。

「……本当はリタさん、自分のために茹でてましたよね?
 最後、ですか。 なんだか申し訳ありません……。」

鼻歌交じりの上機嫌な様子に、少しだけ確認するように見上げながら尋ねて。
さっぱり煮込みは美味しそうだから欲しいところではあるけれども、うん。

リタ > さて。自分が食するものから一転、客に振舞われる事となった料理。
さすがにこのままでは提供できないと思ったのか、店員はスプーンでスープを掬い、味見をした。
少々お疲れの様子の彼女をちらりと見ると、味を濃くする為に塩を一掴み、追加して味を調える。
この時点で、料理は店員のものから彼女のものになった。

「んーん、ソーセージはまだ少し残ってるしね、気にしなくていいですよ。お客様優先。
――私はこっそり、ソーセージ齧ると思うけど、ソコはこう、見て見ぬ振りをお願いします、なんて。」

深めの皿に出来上がったソーセージの煮込みを盛ると、
彼女の目の前へ湯気の立つそれを置いた。

「飲み物はどうします?お酒?ノンアルコール?それとも…水?
大抵のものはありますよ、安物ばかりだけれど。」

なんて冗談が出てくる辺り、ほんの少しだけ、彼女を客扱いしていない証拠。
自分の命を救救ってくれた彼女に対して聊か失礼だろうけれど、その感謝も含めての言葉だった。

シスター・マルレーン > 「仕事は終わったから、ちょっとだけお酒を頂こうかしら。
 本当は飲まないんですけれど。……ちょっとくらいならね。

 ……ふふ、優先してもらえるなら、ありがたいかも?
 でも、一緒に食べるくらいでいいですよ。 隣に来ます?」

なんて、茶目っ気たっぷりに隣の椅子を叩く。
こっちも店員扱いはしていない様子のままで、ふー、っと少しだけ吐息をついて、鞄やら棍やらを横に立てかけて。

「……でも、ありがたいわ。
 ちょっと忙しくて、ばたばたしていたせいで、お昼から何も食べていないのよね。」

とほほ、と肩を落としつつ、いただきます、と手を合わせ。

リタ > 隣を薦められれば、一応営業中だから、と少々乗り気ではない様子。
それでも彼女が最後の客になるのだろう、と考えた店員は、歩みを店の入り口へ。
準備中を告げるプレートを扉の外へぶら下げると、カウンターへ戻りながら彼女に告げる。

「ん、お酒、何にします?ビール、ワイン、ウイスキー…
決められないのなら勝手に作って提供するけれど…甘いのとか、辛いのとか、言ってくれれば。」

「マリー、相変わらず忙しいみたいだね。
お腹を満たして、疲れを癒して…ココはそんな場所。ゆっくりしていってくれると嬉しいな。
勿論愚痴もOKだよ。」

彼女が食事を始めたのを見れば、姉が妹を見るような視線で見つめ、微笑み。
自分は棚に並べられた酒、その残りをチェックし始めていた。

シスター・マルレーン > 「あんまり辛いのは得意じゃないので、甘くて軽いもので。
 流石にべろべろになって教会に帰るわけにもいきませんし。
 ……まー、帰ってくる人もいますけど。」

いろいろ思い出したのか、ちょっとだけ遠い目。
司祭様と呼ばれる中年男が酒の匂いをさせて帰ってきて、更に尻を掴まれたことは忘れてはいない。

「……ほん、っとに忙しいんですよ。
 まさか闘技場にまで出ろって言われるとは思いませんでした。
 無事に帰ってきたのが不思議なくらいで。」

うー、と肩を落としながら溜息をついて。 愚痴と言われて愚痴が即出てきた。
なんとなく優しい視線を向けられると、いつもは視線を向ける側の彼女も、ちょっとだけ素が出てしまう。

リタ > 「ん、了解。流石マジメなシスター。適当に作るね。
――でも偶には、べろべろに酔ってすっきりするのも良いんじゃない?
べろべろになっても、ほら、後ろのテーブル席のソファがベッド代わりになりますので。」

冗談を交えながらも店員は顎に指を添えて少々悩むような表情で、並ぶ酒を見入っていた。
そして少々の思考の挙句、桃のリキュールと、オレンジジュースを手にした。
手早くグラスに氷が入れられ、桃のリキュールが注がれる。
次はオレンジジュースがグラスに注がれた。
マドラーによって桃のリキュールとかき混ぜられ、桃の香りとオレンジの香りが店内へと広がっていく。

「闘技場?え、今のシスターってそんな事させられるの?
もしくは賞金目当てとか…?っていうか怪我とかしてないの?大丈夫?
――はい。リキュール少な目にしといたから、ジュース感覚でどうぞ。」

彼女の話を親身に聞きながら、店員は彼女の元へ、一杯のカクテルを届けた。

シスター・マルレーン > 「……次の日に仕事が無い日ってものが無いのですよね。
 明日は起きなくてもいー、って日があれば、べろべろもありなんでしょうけど。
 それに、あんなところで私がぐーぐー朝まで寝ていたら、開店時間に邪魔になりますよ。」

苦笑をしながらもぐもぐとたべつつ、ソーセージは美味しいのか、表情は緩み。
暖かいスープで心が穏やかになっていく。

「……いや本当。一回負けたんですけど、よく生きて帰ってこれたなーって。
 怪我はちょっとしましたけど、まあ一日あればなんとか。
 ありがとうございます。………お酒も久々ですね。
 知らない店だとあんまり飲む気がしなくて。

 そちらはどうなんです? 何かお変わりでも?」

甘やかなアルコールを喉に通せば、ほ、と吐息。
リラックスした様子で、頬を少しだけ赤くする。

リタ > 料理を終えたフライパンを洗いながら、彼女の言葉に耳を傾け。
彼女の一言一句に反応し、笑い、うんうんと相槌を打ち…

「あー、私と一緒だね。私も明日、起きなくて良いって言われたら、間違いなくハメを外しちゃうな、うん。
…ん、開店は夕方だし、別に構わないよ?常連客が結構、あそこで寝てる事あるし…
ま、でも明日の事もあるだろうから、今日は程々に。」

味を調えたとはいえ、自分向けに、結構適当に作られた料理。
美味しそうな表情をして食してくれる彼女を見れば、ちょっとだけ安心感。

「相手は戦うプロだろうしね…。ちょっとの怪我で済んだのなら、御の字って感じじゃないかな。
これを機にちょくちょく顔を出してくれると嬉しいな。ほら、この時間、客が引くから。

――んー…あまり変わってない、かな。前に会った時の私のまま。
忙しい毎日をだらだらと続けてるよ。このままで良いのかなって思いながら、ね?」

残った片付けを終えた店員は、保冷庫からビールを取り出した。
そしてボイルの終えたソーセージを3本、乱雑に皿に盛り、ザワークラウトを沿え…
それらを持ち、彼女の横の席へ移動する。
店を終え、唯一の楽しみであるプライベートタイムへ突入した様子。

シスター・マルレーン > 「……私、この服しか今無いんですよね。
 ですから、結局あそこで寝てるとシスターだってすぐばれちゃうんですよ。」

とほー、っと肩を落としながら、お酒を飲む。
久々のお酒に、暖かい料理で心も体もリラックスして。

「そうなんですよねー。 まあ、………
 なるほど、ではまた……この時間とかになっちゃいそうですしね、私は。」

もう一度行くことになりそうなんですけど、って言葉は飲み込んでおきつつ、次のお約束を一つ。

「そういう意味なら、どっちもどっちですね。
 このままでいいのか、って思いながら続けてます。 どうにも、何かしなきゃって思ってはいるんですけど、ねー。」

横にやってこれば、まずはこちらもグラスを持ち上げて、軽く乾杯を一つ。

リタ > 「…シスターが朝まで寝てる店…違う意味で話題になりそう…あははは。
――美味しい?おかわり要るなら遠慮なく言ってね?リキュール減らして酔わない位にしたげるよ。」

彼女の隣に座り、大きく背伸びをして今日の疲れを追い出して。

「ん、是非いらっしゃい。この時間だと、今日みたいに余りものになっちゃうだろうけれど、ね。」

しっかりと営業活動をしながら、彼女のグラスにビールの入ったグラスを軽くぶつけた。
程なくしてフォークが、皿の上のソーセージを刺し、店員の口へとそれを運ぶ。
そしてそれをビールで流し込み、満足そうに息を吐き…なんともおっさん臭い店員。
営業中では無いのだし、こんな姿を見られて困る相手でもないから出来るのだろう、結構恥ずかしい姿。

「…でも、変わらない毎日を過ごせるのも、それはそれで幸せなのかもしれないよ?
ちょっとした刺激が欲しくなったら来るといいよ。料理とお酒で迎えてあげる。
毎日お尻触ってくるおじさんが来る店だけど、ね?」

けらけらと笑いながら、ソーセージをがぶり。

シスター・マルレーン > 「ありがとうございます。じゃあ、後でもう一杯だけ。」

お互いに伸びをしながら、ふー、っと吐息。
少しだけ心地よくなってきた疲れを感じながら、同じくソーセージをもぐもぐと。

「ええ、ではぜひ。いいんですよ、その分安くしてもらったりとかそういう。
 なんて。

 ………変わらない毎日、という意味では真逆なんですよね。
 常になんか新しいことをやれだの、これをなんとかしろだの言われるんで。
 ある意味刺激しかないんですよね……」

ふふふ、と冗談交じりに笑いつつ、刺激の話になればふー、っと溜息を一つ。

「……あはは、教会にも時々出るんで。」

遠い目をした。にっこり笑ってダメですよ、っていうけど、本来なら殴ってる。

リタ > 後一杯、の言葉を受け止めれば、店員は直ぐにカウンターへと戻っていく。
空になっている彼女のグラスを受け取ると、先程と同じ手順で酒を注ぎ…少しだけ、リキュールを少なめに。
彼女の目の前にそれを置けば、疲れ、溜まってるね、と囁き落とし。

「えー、正直この店、安いよ?それでも値切るの?
あーあ、今日のこの料理、適当に作ったヤツだから、
タダにしてあげようと思ってたのに、どうしようかなー、どうしようかなー?

――って、あそっか、色々やらされてるんだものね…やっぱりイヤな事ってあるでしょ?
さっきの闘技場の事とか…望んでない事、結構多そう。」

「あははは…お尻触ってくる人が出る教会ってどうなの?それ、アリなの?」

けらけらと笑いながら彼女の元へ戻り、隣に腰掛け、もう一度乾杯しよ?とグラスを近づけて。

シスター・マルレーン > 「ふふ、適当なんて思えないくらいですよ。
 まあ、その時々に応じて時価ですかねー?」

なんて、こっちも適当なことを悪びれずにこぼしつつ、………まあ、少し? と、疲れに関しては微笑みを返そう。
確かに最近動き詰めで、身体が重い。

「……まあ、ありますよ。
 闘技場では脱がせろだとかいろいろそういう罵倒をたくさん浴びましたし。
 望んでないって意味なら、本当は街の教会でずっと暮らすだけでもいいんですけどね、私は。

 ………バフートの礼拝堂行けって言われた時は断りましたけど。」

フフフ、と遠い目をする。
おしりを触られるだけならまだマシですしね、最近は、なんて、遠い目を続行中。
多くのシスターが性の奴隷のように連れてこられた話は、しっかり耳に入っている。

はーい、と普段よりも緩い声でお返事をしながら、かつん、と乾杯。

リタ > 「いや、時価かどうか決めるの、コッチだし!うっわなんて横柄な客…」

突っ込みを入れつつも笑顔が途切れないのは、会話が楽しいからだろう。
向けられた笑顔がほんの少し、無理がある様に感じられた店員は、ただ一言ご苦労様、と言葉をかけ、微笑み返して。

「脱がせろ…あー、そういう試合ね…。もう一度聞くけど、マリーってシスターだよね?
…バフートに礼拝堂、あるの?そんなトコに行けだなんて…なんか神様信じられなくなりそう…」

遠い目をする彼女の心境がすっごい判った。彼女の苦労が身にしみて判った。
なので乾杯を受けると、小さな息を吐いて。

「…うん、いつでもお店においで。」

――疲れと、苦労。貴女の、そのストレスを発散する場所は此処にあるのだから。
優しくそう、目で訴えかける。

シスター・マルレーン > 「最近自分がシスターなのか分からなくなってきました。
 ですからちょっとくらい横柄なお客さんになってしまってもいい気がしますね。」

頬に手を当てため息をつきながら、……ちょっとだけ冗談を織り交ぜて。

「ううう、本当ですよ。
 そりゃ聞き流しますけど、多少傷つくってものがありまして。

 ………ふふ、なんだかありがとうございます。
 本当に、またどこかでここで寝ちゃってからお仕事でもいいかなぁ。」

優しさに包まれていることを実感してるのか、とろん、と幸せそうに笑って。
ごはんもお酒も、皿とグラスは空っぽにしてしまい。
ふにゃーんと力の抜けた表情で、仕事に対して珍しくゆるいことを口にする。………甘えている、と自覚して、少し自分で自分に驚く。

リタ > 「…シスター辞めたらもっと横柄になりそうな勢いだね…怖い怖い。
でも、そうやって遠慮なく冗談言ってくれるのも嬉しいかな。安らいでくれてるワケだしね。
――冗談だよね?」

言っていてちょっと不安になり、確認。
もし冗談でなくても、寧ろ普段、気を張って生きている彼女の安らぎの場を与えられるのなら、
少々の我侭も許されるのだけれど。それが常連の特権であるのだから。

「…ん、もう結構な時間だし、危ないし…そこで寝てく?
着替えは私の貸すし、毛布位なら出すよ?勿論タダで。――無理、しなくていいんだからね?」

彼女の幸せそうな笑顔を見れば、逆に常日頃の彼女の辛さが判る。
しっかりと平らげられた料理と酒も、気丈な彼女から滅多に聞けない愚痴も…
全てが彼女の本音を訴えているようで。
抱きしめて頭を撫でて頑張ったね、と甘やかせてあげたい。でも、そんな事は出来ない。
だから店員は、代わりに姉の様に優しい口調を、姉の様な優しい微笑みを向け、そう告げた。

シスター・マルレーン > 「冗談、冗談ですよ。
 辞めたら何にもなくなっちゃいますから辞められませんし。

 ……まあ、教会では言えないですからね。仕事先でももちろん。
 知らない店でちょこーっと愚痴ったら、それを綺麗に教会に報告されまして。」

はっはー、と遠い目になる。2分に1回くらい遠い目してる。
だからありがたいんですよ、と付け加える。肩の力を抜いてゆるい顔ができる空間。
その上で更なるお誘いに、……ぅ、と少し悩む様子を見せる。

「…ふっふ、私はこう見えても腕には自信があるんですよ。
 ですから心配ならご無用、では、まあ、あるんですけれど。」

揺れている。珍しく揺れている。
割とこういう時はちゃんと断って、しっかり教会に戻って報告もこなし、日報を書いて眠るのが基本なんだけれど。
久々にこんなに優しい目で見られて、優しい言葉をかけられると、暖かい毛布のように出たくなくなるわけで。
もごもご。

リタ > 「…教会って怖い…」

彼女の言葉から導き出された、凄くシンプルな回答。
愚痴を零す事も許されないのか教会は、と考えつつも、
…今日のこの状態を教会に教えたら…なんて悪戯心も芽生えてきてしまい。

「…常連客の秘密は守るよ?常連客の、ね?
ここで寝ちゃう位、遠慮知らずの常連客なら、ね?」

意地悪く言いつつも、正直無理をして欲しくは無いわけで。
どちらにせよ、明日からの彼女はまた、無理難題を受け、疲弊してしまうのだろうから。

「うん、腕が良いのは知ってる。帰り道の安全よりも明日元気にシスター出来るのか、
それが心配なんだよね。
――明日からまた、頑張れる?それなら早く帰ってぐっすり寝る事。無理そうなら回れ右して、ソファーにどうぞ。」

自分は明日の準備があるから、まだ寝ないと。
自分が寝る頃、朝には起こしてあげると言葉を添えながら、グラスに残った少しのビールを飲み干した。

シスター・マルレーン > 「怖いですよー、司祭様同士のマウント合戦とか。
 ……常連になります、なりますよぅ。もー。」

ぷー、と頬を膨らませながら微笑み。 その上すこーし言いづらそうにしばらくもごもごしていたけれど。

「……じゃあ、ここで。」

甘えることにした。
普段ならやらないことをしている感覚が胸の内に広がるけれど、罪悪感というよりも、ちょっとした高揚感。
よいしょ、と椅子から立てばソファの方に歩み寄って、ぽふ、とお尻を下ろす。
程よく柔らかいソファは自分のベッドとほとんど寝心地は変わらなさそう。

「じゃあ、………おやすみなさい?
 ふふ、いきなり閉店間際にやってきて、品物を値切った上に寝かせろーって。
 横暴ですねー?」

ふふふふふ、と、愉快そうに笑いながら。んー、っと伸びをしたまま、すぐに寝るわけでなくとも、ころんと横になって。

リタ > 「あー…派閥っぽいのもありそうだね…教会もやっぱり、人の集まりなんだねぇ…
――はい、常連客一人ゲット。」

彼女に似た遠い目をしたのもつかの間、にっこりと笑い新たな常連客が増えた事に喜ぶ店員。
彼女がソファに腰下ろせば、店員はカウンターの奥、プライベートな空間のある奥へと続く扉を開く。

「ん、おやすみ。横暴な常連さん。
どんな時間に来ようが、店が開いてるんだったらウェルカム。値切るのも自由。安くするかは別だからね。
――着替えと毛布持ってくるから。」

店員は店の奥へと足を運ぶ。
戻ってきた時に彼女が寝てしまっているのなら、毛布をかけてあげればいいだろう。
彼女の寝顔を見つつ明日の仕込みをするのも悪くない。
そんな事を考えているのか、足取りは軽く、ものの2~3分で戻ってくる事になる。

シスター・マルレーン > 何も言わず見送って、………戻ってきたところで、少しだけ先ほどよりもとろん、としつつも目を開いて待っているシスター。
毛布や着替えを持ってきてくれる姿を見上げながら、ぽそりと口を開いて。

「不思議ですね。
 そうやって毛布を人にかけてあげるのが教会の役割だと、ずっと思っていたんですけど。
 ………最近はどうにも、そこにいると寒さが身に染みて。」

ははー、と力なく笑いながら体を起こして、少しだけ視線を左右に揺らし。

「……言い過ぎましたね、忘れてください。」

こほん、と咳ばらいを一つ。ちゃんとしたシスターの顔に戻ります。

リタ > 「全ての人に、平等に毛布をかけるのが貴女達。
特別なお客さんに毛布をかけるのが私達。営利目的だよ、所詮は、ね?」

なんてウインクをしながら冗談っぽく告げると、彼女に毛布を手渡して。
着替えはカウンター席、テーブルの上に置いて。

「んー、忘れないと思うよ?私、結構意地悪だから。なんてね。
――ほら、修道服が皺になるのがイヤなら、さっさと着替える着替える。」

その言葉をカウンターへ戻っていく店員。
嫌そうに腕まくりをし、面倒くさそうに明日に出す料理の下ごしらえを始める…気持ちを奮い立たせる。

シスター・マルレーン > 「……ふふー、特別扱いはあまりよくないと思うんですけど、まあ、なんとなく喜んでる自分もいます。」

はぁい、とゆるい声で返事をしながら、しゅるりと修道服を脱いで。
分厚い生地のそれを折りたたんで近くの椅子にかける。
その中はつやっぽいものでもなんでもなくて、レザー生地の、修道服を崩さない程度のアンダーアーマー。
完全に武闘派なそれをも脱げば、ようやく薄手の衣服と下着。

「じゃあ、少し失礼しますね。………あれだけは替えがたくさんあるんですよ。」

はっはっは、と乾いた笑いを浮かべながら、久々の他の衣服に心が躍る。
そ、そりゃあ、ちょっとはね? 踊る心だって残っているものです。

頑張る姿を見ると、逆に簡単に「手伝う」は口に出せずに。……ソファに座ったまま、その姿をぼんやりと眺めて。

リタ > 「特別扱いする分、しっかりお金は落として貰うから…喜んでもいいんだよ?なんて。」

服を脱いでいく彼女をちらりと見れば、修道服の下から出るわ出るわ…シスターらしくない防具。
これは着るのも大変そうだな、と思いつつ…

置いたのは簡素な腰紐がついたパンツ。上は袖なしのシャツ。色気もなにも無い無地のもの。
それらを着る彼女をちらりとみれば、ふう、と大きく息を吐き…明日提供するであろう、芋の皮むきを始めた。

「…ん?なぁに?どうしたの?眠れない?」

彼女の視線を感じる。手は動かしたまま、彼女に向かってそう告げて。

シスター・マルレーン > 「あはは、そうですねー。
 なんだかんだ、自由に使えるお金が無いわけでもないですし。」

簡素なそれに身を包めば、立派な村娘の完成。
普通の服装なのに不思議と特別感があるのか、それだけで表情が緩んで。

「いいえ、眠れそうではあるんですけど。
 ……でも、普段と光景が違うんで、興味がわいちゃうのかもしれません。
 どちらかというと、いつもは逆の立場っていうか。」

人を寝かしつけてから仕事をする。
よくある、日常の光景だ。 それが逆になったのだから、奇妙な感じだと彼女は口にして。

リタ > 「ま、特別扱いはもうしてるよ?普段はカクテルなんて作らないし。アレ、売り物じゃないんだからね。」

店員の手から長い芋の皮が流れ落ちていく。綺麗に剥かれた芋がボウルに落とされ、次の芋へ。
時折彼女をちらちらと見ながらも、意識は芋に向いている様子で。

「…ああ、成る程、そういう事ね。
この芋、明日のマリーの朝食にもなるんだから、しっかり見ると良いよ。
そして…いつもマリーがどんな事してるのか。それを見ている皆はどんな気持ちなのか。
――そういう風に考えると、気持ちも楽になるんじゃない?」

手は休める事無く、言葉は優しく。
あれよあれよと芋はその皮を剥かれ、ボウルに山を作っていく芋。
次はそれを茹でるのか、店員は大きな寸胴に水を入れ、湯を沸かし始める。

シスター・マルレーン > 「………へへ。」

照れた。分かりやすく照れて、ソファに座ったまま毛布を被り。
こて、と横になって手すりに頭をもたれさせたまま、その言葉にぽぉ、っとする。

「………………こんな気持ちに。
 …だとしたら、なんとなく明日もがんばれそうな気がしてきました。
 まあ、自分も最近愚痴ばっかりでしたし。」

てへ、と舌を出しながら、前向きな気持ちが充填されてきたせいか、先ほどのスープのせいか、胸の奥が暖かい。
半ば眠りかけのような目を開いたまま、ぼんやりと。
まどろむような様子で………でも、気分がいいのか、ふにゃー、っとゆるい笑顔。

リタ > 「また作ってあげるから、仕事に疲れたら遠慮なくおいで。――あー、次からはお金、取るからね?」

あ、照れた。凄く分かり易い。
照れるような事、言ったかな?なんて思いつつも、可愛らしい仕草を見る事が出来たのだから、よしとしよう。

「そうそう。でも、頑張り過ぎないようにね。適度に手を抜いても、結果はほぼ同じだし。
私だってほら、こんなに手ェ抜いてるし。お客様には見せられないな、うん。」

どぼん、どぼんと乱雑に湯に投げ込まれる芋。
それを見せ付けつつ、言葉を続ける。

「で、もう無理!って感じたら私が慰めてあげるから。安酒と手抜き料理で、ね。
――ん、眠くなったかな…朝日が出る頃には起こしてあげるね…
おやすみ、マリー。」

茹る芋。そのひとつだけをトングで挟み、取ると新たなボウルへと入れて、ゆっくりとつぶし始める。
他の芋は大きめの鍋へと移しかえられて。
どうやらこれは、彼女の朝食、自分の夕食になるのだろう。

シスター・マルレーン > 「はい……おやすみなさい、リタさん。
 明日も……また……」

言いながら、すぅ、っと眠りに落ちていくシスター。
今はシスターというよりも、疲れに任せて眠ってしまった普通の女。
居心地の良い空間に甘えるように体を丸めて、すぐに寝入ってしまえば。

きっと本当に起こされるまで、起きないで。
もうちょっと、なんて寝言を言って困らせるのだろう。

リタ > 「…寝ちゃった、か。――今日もお疲れ様。」

その言葉を最後に店員は作業へと心を戻していく。
すっかり夜も深まり、静寂の中下ごしらえを続ける店員。
勿論疲れもあるが、彼女の可愛らしい…?寝顔を見ればそれも吹き飛ぶというもので。

潰したポテトにミルクとバターを加え、味を調えたクリームポテトにトーストが、彼女の目覚めを迎える品。
しっかり食べて英気を養って、明日もまた、頑張ろう。
そう思ってくれる様に、店員は真心を込めて、彼女の寝顔を見ながらポテトを掻き混ぜる。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」にイチカさんが現れました。
イチカ > 「……」

酒場の隅で一人、少女が酒を飲んでいる。
場に不釣り合いな年齢の少女だが、その雰囲気は妙に酒場にあっていて、周りも気にした様子はない。
普段なら女とみれば絡むごろつき共も、彼女に絡むことはなかった。

貧民地区に幅を利かせる裏ギルドの一つ、盗賊ギルドの人間に手を出すものは珍しいのだ。
ごろつき共の大半は、後ろ盾も実力もない群れるだけの連中だ。

最も同じ裏ギルドの者や、向こう見ずな連中ならそんなことは関係なく、彼女に絡むこともあり得るだろう。

彼女が存在してないかのような雰囲気で酒場は今日も騒がしかった。

イチカ > ぽりぽりと、小魚の焼いたものを頭から食べる少女。
海に面している王都は魚が豊富であり、
こういった小魚をただ焼いただけ、というものを出す店も多かった。
と言っても雑魚に火を通しただけの料理であり、あまり人気が高いものではないのだが……
 少女の前にはすでに空になった皿が5皿、魚が盛ってある皿が残り5皿残っていた。

黙々と食べ続けるイチカ。すぐに皿が空になり、残っている皿は4皿になった。

イチカ > ちびちびとミルクを舐めながら、魚を食べていく。
酒場とは思えない健康的な食事である。
おかげで孤児出身の割にはイチカの発育は悪くない。
背は人並みだが、胸や尻の肉付きはそこそこよかった。

ちなみに昔、ミルクを飲むイチカを笑うごろつきがいたが、
今ではみな王都近くの海の底で、乙姫様と楽しく戯れているだろう。
送ってやるときに罵られたが、感謝してほしいものだ、とイチカは考えていた。
無駄に生きるよりこういう魚のえさになったほうがおいしいし、と。
そんなことを考えていたら、残りは3皿になっていた。

イチカ > 今日の稼ぎを思い出す。
最近公主が嫁いできた関係で各所が騒がしく、それゆえに隙だらけな場所が大幅に増えた。
貴族宅などから小物を拝借する盗賊であるイチカの売り上げは大幅に増えている。
今日手に入れた宝飾類も、かなりの値段で引き取ってもらっているし、
ここ最近の稼ぎを考えれば一月ほどは働かなくてもよいだけの金を手に入れていた。

と言ってもミレー族の自分にとって、金などいつ取られるかわからないものだ。
なのでちょこちょこと、自分のための出資に使っているが根が貧乏性の自分ではあまり使いきれていなかった。

一皿完食し、残りの魚の山は二皿に減った。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」にマコさんが現れました。
マコ > 今日も一仕事を終えた。
基本的に何でもこなすが、今日の仕事は討伐。

最近、シェンヤンからやってきた貴族にまぎれて、そちら方面の盗賊が流れてきているという情報。
斧討伐をギルドから依頼されて、幾人かの冒険者でパーティを組む。
いつもの、マコのスタイルでそのお仕事を終わらせてきたのが、今から少し前のこと。

他の冒険者から、打ち上げに誘われるもののそれを断る。
男と一緒に飲んでもねぇ、と笑いながら断るまでが、マコのルーティン。
そのまま宿に戻ろうかと思ったが…正直、お腹がすいた。
何か食べてから帰って、そのままベッドにボフンっとダイブして、今日を終わらせようと考えていた。

「こんばんわーっ……っと、あれ?」

”……入る店、間違えたかなぁ?”
結構騒がしいのは気にならないが、その顔ぶれが冒険者っぽいんだけれども、もっといかつい。
どっちかといえば、裏のほうの仕事がぴったりな…。

”まあ、冒険者やってるボクだし、人のこと言えないか…。”
頬を書きながら苦笑して、どこかできるだけ目立たないような位置に移動しよう。
ちょうど、向こうでミルクを舐めているあたりがいいかもしれない。
雰囲気も違うし…と、そっちに歩いていく。

イチカ > 最近で回っている薬の噂を聞いて、そこの薬局で薬を買ったのを思い出した。
美容液、と言っていた。塗ると綺麗になるらしい。
美容にあまり興味はないのだが、正直見た目がいいのはそれだけ得をする。
ナルシストではないが、自分が見た目が良い方だと理解しているイチカは、得をするために美容には多少気を付けていた。

たしかに、そこで買った美容水を使うと肌がつるつるになった。もっとも、それなりに高いので今後も買えるかわからないが……

そんなことをぼけーっと考え柄、魚をさらに一皿食べ切ると、こちらに向かってくる女性に気付いた。
雰囲気から言って、あまりこのあたりに慣れている人間とは思えない。

「……なにかよう?」

近寄ってきた女性にぶっきらぼうにそう尋ねた。

マコ > 酒場に入るのは慣れているが、こういう裏の店っぽい酒場は初めてだった。
しかもマコのスタイルを凝視している男がたくさんいる、正直…耐え難いかもしれない。
こういう視線い離れているけども、さすがに数が多いとちょっと…。
だが、空腹もそろそろ限界で、できれば早くご飯にありつきたい。

”しょうがない、ここで我慢しよう…美味しそうなのは間違いないし。”
そう思うのは、その鼻が料理の匂いを嗅ぎつけたから。
肉にしようか、魚にしようか…そんなことを考えて。

「あ、ううん…ご、ごめんね?
あの、ちょっとだけ……相席、させてもらえないかなーって。」

ぶっきらぼうにあしらわれてしまった。
でもここで負けたら、きっと周りの男の視線に耐えきれなくなって逃げだしそうになってしまう。
だから、ここは勇気を振り絞って、苦笑交じりにそんなお願いを。

「あ、アハハ……だめ、かな?
ちょっと視線が気になっちゃって、できれば目立たないところでご飯食べたいな、って思ってさ?
もし相席させてくれたら、一皿くらいはおごっちゃうよ?」

両手を合わせて、少しだけ頭を下げる。
この子の雰囲気からし撃て、きっと冒険者だ、そうだきっとそうだ。
そうであってほしいと願いながら、マコはもう一度、頭を下げた。

イチカ > 「……かまわない」

このまま追い返したい気持ちが9割以上だったが、追い返すと、
あっちのごろつき共がきっとこの子に絡む。
別にこの子がどうなろうが構わないが、この子の今の足さばきを見る限りかなり腕が立つだろう。
絡まれたこの子はきっと大立ち回りをすることになり、そうなったら今日はこの店は閉店ガラガラだろう。
めんどくさい、と思いながら、一品おごるというので席を促すことにした。

「マスター。この子にもミルクと雑魚一山。私にはかたまり肉一つ」

おごってもらえるならいいものを頼もう。
そう思ってイチカは容赦なく大きな肉を頼んだ。

マコ > 「ほんと!? ありがとう、助かるよ!」

正直、追い返されると思っていた。
一仕事終えてくたくたなので、できればそういうことはしたくはなかった。
だから断られたらどうしようかと思っていたので、その言葉に正直ほっとした。
胸をなでおろしながら、素早い身のこなしで椅子に座り、注文してくれる……くれ、る?

「え?……あー、うん。まあ、いいか……。」

雑魚一山…うーん。
お腹いっぱいに慣れるならいいかと、マコは苦笑しながらも受け入れることにした。
肉の塊をと頼んでいるイチカに一切れもらおうかな、と考えつつ。
そんなマコも、盗み見るようにイチカを見ていた。

”……こっちの食事も、悪くなさそうだしね?♪”
半目になりながら、先に届いたミルクに口を付けた。

「あ、そういえば名前を言ってないよね。
ボクはマコっていうんだけど、君はなんて言うのかな?」

そんな名乗りをしながら、頬杖をついた。
その視線を向ければ…まあ、ちょっとだけどきりとする程度の魅力を咥えてみて。

イチカ > 「イチカよ」

それだけ述べて、マコと一瞬目があった瞬間に変な圧がかかったことに気付きあわてて目をそらす。
何か魔法か能力か、そういったものをマコが持っていることに気付く。
面倒なことになったと考え、席を立とうとするが、マスターからかたまり肉とミルクが届き、席を立つタイミングを失してしまう。

まあいいかと思い、かたまり肉にかぶりつく。
値段がする、と言っても場末の酒場の謎肉の塊である。10ゴルドしかしない。ミルクも雑魚も1ゴルドしかしないのだが。
そんな硬くて筋ばかりだが、大きさだけはイチカの頭ぐらいある肉の塊をガシガシとかじり始める。

肉は体を作る、筋肉は大事。そんなことを考えながら、一心不乱に肉をかじり続けるのであった。

マコ > ”あ、気づかれてる……。なるほどね?”
どうやら瞳の能力に気づかれてしまっているようだ。
視線をそらしているイチカをみて、マコは笑みをより深くした。

魔的な力を感知できるのはちょっと面倒かもしれない。
だが、それは別な意味を咥えれば非常に美味しい食事になるということ。
何しろ、魔力というものはマコにとって良質な食事になるのだから。

「……………。」

誰にも、見られてないよね?
一心不乱にかぶりついているイチカの様子と、その背後を眺めながら。
マコはその肉にかぶりつているイチカのほうを見て、そして。

「…………えいっ♪」

少し無理やりになってしまう、でももうお腹もある意味限界なのだ。
その頬を挟み込むように持ち、自分のほうを向かせて…全力の、チャームアイを発動させた。

「……ね、イチカちゃん?ボクね、お腹すいてるんだ。」

イチカ > 「う、ぐっ!?」

そこまで強硬な手段に出ると思っていなかった。
魔眼を気合でレジストしつつ、咄嗟に肉をひっくり返して距離を取り、背後にある窓から飛び出す。

「ああいう子、嫌い」

闇夜に消えるべく、魔眼に犯された体を引きずり必死に逃げ続ける。
恩を仇で返すとはまさにこういうことだ、せっかく優しくしてやったのに。そのまま逃げてしまおう。
重い体を引きずって貧民街の廃屋、隠れ家にしている家に逃げ込むとそこには……
既に先ほどの女性、マコが待ち構えていた。

「……これはまいったね」

完全に降参だ、と思いながら、ナイフを抜いた。戦闘で勝てる気がしないが、抵抗をしないという選択肢はなかった。

マコ > 「………ひゅう♪」

口笛一つ、笑みを浮かべながらマコは逃げていくイチカを見送った。
全力のチャームアイをレジストするなんてと、感心したのだ。
だが、それがますますマコの食欲をそそる。
美味しそうな食事が逃げていくのを、マコが許すはずもなかった。

「マスターさん、ごめん、ツケといて!」

逃げていくイチカを、何事かとお客さんたちが見送るのをしり目にマコも走り出した。
闇に紛れて逃げていくのを追いかける。
逃げる場所は、匂いで追いかけた。

全力のチャームアイだ、レジストしたとしてもマーキングはうまくいっているはず。
その先に先回りして……その先に、無人の民家がある。
そこが隠れ家で会ってくれと祈りながら、マコは真正面で待ち構えていた。

「……おかーえり♪ あ、手荒なことはしたくないんだ。
ただ、ご飯になってほしいだけなんだよ…だめ?」

だが、すでに臨戦態勢をとられている。
だったら、やることは一つ…少しだけ痛い目を見てもらうしかないかな、と。
マコも、背中の槍に手をかけていた。

イチカ > 「……」

交錯は一瞬。負けたのは当然、イチカであった。
単純に獲物の長さの違いが圧倒的に加えて、護身を目的とする技術と敵を打ち倒すために鍛えられた技術の差があった。
くるくるとナイフが飛び、壁に突き刺さる。

「……」

にらみつけ続ける。すでに万事休している。しかし何一つ渡さない、そういう意思が目に現れていた。

マコ > 「そんなに怖い顔しないでほしいなぁ?
大丈夫だよ、殺したりはしないし、むしろ気持ちよくなれるかもしれないよ?♪」

負ける気はしなかった。
身のこなしは身軽、だけど圧倒的なものが足りていない。
それは経験、実戦経験が足りていないようだった。

四肢を押さえつけ、見下ろす形でマコはイチカを凝視していた。
力を奪えばチャームアイは聞くかもしれない、だけどこういう強情な子を少しずつ。
絡まった糸をほぐすようにするのも、面白そうだ。
お腹はすいている、しかしじっくりとご飯は食べたほうがおいしい。

「強気な目、いいね?♪
それじゃ……いただきます♪」

まずは、その唇からいただいた。
唇を嘗め回しながら、首筋に舌を滑らせて、そして吸い付く。
サキュバス特有の、その体液を塗り付けながら最後に、唇をふさぐように奪った。

”初めてなのかなぁ、いやそんなことなさそうだなぁ?でもいいや、美味しそうだし♪”
もう空腹も限界、だけど楽しいことが何よりも大好き、
四肢を押さえつけたマコは、イチカの唇や首筋を嘗め回し始めた。

マコ > 【部屋移動です】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」からマコさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」からイチカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイチカさんが現れました。