2019/04/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にスーファンさんが現れました。
■スーファン > 夜。
王都周縁に位置する貧民街の風は何処か街ならぬ雰囲気を帯びている。
悪所の煌めきや喧騒から少し離れた、眩く程に暗い路地は其処彼処に陰気なものを隠しもしない。
「……ン、堆きこと甚だしく、周縁がこれでは然もありなん」
そういった場所に在る廃屋の屋根の上。
時折死臭すら混じる冷たい夜風に旗袍を揺らめかして歩く私が居た。
恰も崩れそうな屋根から屋根へ、普段からそうしているかのように移り渡ろうものだが
時折眼下の暗い路地より剣呑な気配を感じもして眉を顰める事となる。
何もこんな所に迷い込む事は無いだろうに、と。
「……猫、見つからぬ」
何故に夜分、このような所に居るのか。
つまりは逃げたペット探しの御仕事中なのであった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にシラトリさんが現れました。
■シラトリ > 通称オッターモールの白い方。
神出鬼没の真っ白なメイド姿は、今宵もこんなところをうろうろと。
下手したら町の外……もっといえば違う町に出向くことすら当たり前にある彼女にとってすれば、この場所は割と日常生活空間。
情報を集め。酒を買い。薬を買い。
底が見えない微笑みを浮かべながら、夜の街を踊る。
するすると滑る様にメイド服が夜道を動いて……ぴたり、と足を止め、上を見る。
………くん、と鼻を動かして。
こちらも、階段を上るかのように崩れた塀を駆け上がり、そこからとん、と一度だけ大きく飛んで、屋根の上。
「こんなところで偶然出会うなんて、運命でしょうか。
不思議なものですね、良い夜、とは言えないかもしれませんが。」
廃屋の屋根の上で、しゃなり、とメイド服のスカートを摘まんで一礼。
■スーファン > 市街にあって市街に非ず。
斯様な場所で行方不明の猫を探すのは、ともすれば己が行方不明になりかねない。
「存外、彼処に住まう何某かに喰われてしまったやもしれぬ。夜も暗い、此処は日を改め──」
顎を撫で、一先ず潮時かと思う矢先に真白な何かを視た。
「──以火行《火行を以て》」
距離が近い。
私は反射で袖内から火符を取り攻撃を加えようとし、けれども次には真白い何かに目を瞠る事となる。
「……シラトリ。何故貴方が此処にいるか?」
先日、祭場で出会った大家の従者がいるのだから無理もない、筈だ。
しかも何やら当然と言った様子で挨拶をしている。
一先ず、此方も符を片付けはするが、礼を返す筈の頭は斜めに傾くばかりだ。
■シラトリ > 「何故。………そうですね。
メイドだから、でしょうか。 ………冗談です。
普通のメイドにはできないような情報収集をするのも、私の役割なのです。
それこそ、このような場所なども。
………そんな場所で出会えば、運命を一つ二つ感じてしまうのもわかっていただけるのでは?」
なんて、こてん、とこちらも首をかしげて。
ウィンクをぱちり、としながらも、変わらぬ涼しげな表情のまま。
「………まあ、ここに来たのはここでしか手に入らないお酒を一つ手に入れたい、という目的がありまして。
スーファン様はどのような目的で?」
ちゃんと、自分の目的を話したうえで相手に尋ねる。
まるで富裕地区で出会った時と、何も変わらない口調。
■スーファン > 「……ン、事情通であることは先日、知り得たが……しかし心臓に悪い。
屋根上であれば安全であるとばかり思っていた、此方にも油断はあろうものだが」
不自然なまでに自然に、先日のままに振る舞うシラトリに私は唇をやや、不満そうに尖らせる。
よもや知己に化けた精怪の類かとも、紅に縁どられた碧眼が訝し気にもなろう。
「此方は猫を探しに来ている。宿に出入りの商家の猫が行方知れずと言うものでな。
……しかしまあ、見つからぬ事甚だしく、些か困っていた。街の気がこれでは周囲に聞くのも憚られようものだ」
とは言えそれはそれ、これはこれである。
私は彼女の用向きを聞き、己の用向きも晒し、そろそろ戻ろうとしている所だった事を言外に明かす。
■シラトリ > 「この町で何かを探すなら、昼に広場に行くといいでしょう。
屋台などの匂いに釣られ、広場より少し奥の路地に動物などが集まってきていると聞きます。
ネズミなどが多いそうですが、野良猫もいる、と。
この夜に動物を探すことは私も難しいでしょうね。」
と、流ちょうに会話しながらも今からは難しいのでは、と一つ呟き。
「………では、明日一緒に探しましょうか。
主人からはしばらく情報を集めてこいと言われていますので、そのついでに。
……その代わり、宿の部屋をお借りすることにはなってしまいますが。」
如何でしょう? と尋ねるように首を傾げ。
あ、主人ですか。 終わったらすぐ戻ってこいとは言っていた気がします。
でも、すぐ、という言葉の解釈って自由ですよね。
■スーファン > 「そうか。確かに今時分では何処ぞに潜んでしまっているかもしれぬ。
それでは明日、日を改め……ン、それは助かる。すまない、私の部屋で良ければ、使ってくれて構わないとも」
シラトリの言葉は道理に適うもので、手伝いの申し出はありがたいもの。
私は首を傾げる彼女に近づき、その手を取って感謝の意を示す。
「それでは今宵は戻るとしようか。明りの見える通りまでは今暫く、屋根上を伝って行こう」
善意の協力者を得られた事は好ましく、私は颯爽と、まるで蝗のように軽やかに別棟の屋根に飛び移りシラトリを手招こう
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からスーファンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からシラトリさんが去りました。