2018/11/15 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 王都貧民地区の一角。
概ね治安が宜しくないとされる一帯に、羽振りの良さそうな子供が一人歩き。
鴨が葱を背負ってきたどころの話ではなく、鍋も調味料も竈も燃料も纏めて持ってきたような無用心な行為。
おまけに、時間はとうに深夜に差し掛かり、素性の宜しくない輩が目を光らせる頃――
なのだが、妙にギラつく照明が溢れているせいで、そこはかとなく不穏ささえも曖昧になっている。
ここは、貧民地区にある淫具屋通り。
しかも、月に一度の見本市の只中。
そう広くもない道の両側に、猥雑な店舗が建ち並び、店先で新製品やら特売品やらを陳列しているのだ。

「くくっ…玉石が混じり合うておるが、立ち寄らぬせいで見逃したとあっては名折れじゃからのぅ。」

そんな呟きは、雑踏に紛れる。
貧民地区といっても、全てがみすぼらしい訳ではなく、こと娯楽に関しては、お上の目が行き届かぬこともあって放埓な発展をしている。
その野放図さを愛でている好事家の妖仙としては、顔を出さぬ理由は何処にもなかった。
一店の店先で足を止めると、凝った意匠のピアスに目を留め、店主となにやら話し込む。
当然、耳以外に装着する代物であるあたり、諸々推して知るべしだ。

ホウセン > 日頃、万事がそこはかとない上から目線を伴っている妖仙ではあるが、この時ばかりは大人しい。
さりとて、神経の図太さに定評のある人外であるから、陳列されている彼是に気圧された等という話はない。
ついでに言うなら、恐れ入るというのとも少し違う。
強いて、小柄な好事家の胸中に去来している感情を言語化するのであれば、”結構なお手前で”という辺り。
いわば、製作者や販売者に対するそこはかとないリスペクトに類するものを抱いているのだ。

「ほう、弾力性のある金具を用いることで、単なる固定具の域から責め具としての性質も強化しておるのじゃな。
 確かに銀細工の飾りで重たげに見ゆるし、これがゆらゆらと揺れるのであれば、突起を嬲るのに丁度良い。」

左右の袂へ互い違いに両手を突っ込んでの腕組み。
しきりに首肯するものだから、黒く真っ直ぐな髪が引っ切り無しにサラリと流れる。

「して、此処をこうして…ほれ、魔法仕掛けで振動するようにもなれば、より良い小道具になるのではないかのぅ?」

おまけに改良案を引っ張り出して来るのだが、店員は店員でこの界隈に現れるには幼過ぎる客を、自身の同類と見込んだようでぞんざいに扱いはしない。
ある種の共犯意識を抱きながらの、技術的な、或いは趣味的な、さらには採算性も踏まえた四方山話に花が咲く。

ホウセン > 夜は耽る。
しかし、耳目に入れるべき品々は尽きず、きっと明け方近くまでふらふらと歩き回る筈で――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からホウセンさんが去りました。