2018/11/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にネコアシさんが現れました。
■ネコアシ > 王都でも下層の住民が住まう貧民地区。
平民地区や富裕地区と比べて治安がすこぶる悪い地域であり、真っ当な貨幣の流通の仕方をしていない悪意の坩堝であるが、それでも夜は何処にも負けず賑やかである。
安酒に溺れ、一般人なら手を出さないあれこれが売り買いされ、奴隷が嘆き、腹黒い商人が笑むそんな世界で、何時もの様にそのお零れを頂く為に今宵も足音も気配も薄く空気すら揺らさずボロボロの布を纏った少年が歩く。
「……ヤダねぇ、早くこんな生活から何とか抜けれないものかね?」
と口だけは言うものの「生きるだけ」なら何とでもなる泥臭く生ぬるい世界に浸かりきった澱んだ瞳は決して言葉通りそれを望んでいる様には誰が見ても見えないだろう。
まあ、ともかくだ今宵の寒い寒い懐を誰が温めてくれようか?
鴨ならぬ、肥えたブタか蜘蛛の巣に掛かった綺麗な蝶か、何でもいいので幸せを少しだけ分けてもらおうと、顔見られぬように両手でフードの縁を摘んで深く被り直し、左右に鋭い眼差しを向けながら、ふらふらと賑やかなとおりを歩き彷徨い、自分より不幸なものでも構わないと、獲物を探して通りを進む。
■ネコアシ > 見知った顔は腐るほど、見知らぬ顔なんて居やしない。
だからフードを深く被り顔を隠す、見知った顔に無理難題吹っ掛けられても面倒であるし、その程度で済めばいいが気晴らしに殴られたり、財布の中の埃まで奪われかねない。
どうせ鳴いても喚いても助けは来ないし治安維持を目的とした兵隊さんの巡回だって、見てみぬ振りをするのだろう、実際に何度も助けを乞うた事はあったが何れもその後に金をせびられ、逃げたはいいが結局後で捕まって殴られて……。
「……ハァ………。」
ろくでもない世界なのである。
自慢のネコアシも限度があるし……。
まあいいさ、今宵はもう少し歩いてみよう。
深くフードを被り、顔を隠してゆっくりと歩きなれた道を歩く。
隙有らば温かそうな財布からお金を借りて、もし困っているモノが居ればそこにつけこんで、と結局今宵も何時もと変わらないのだろう。
変わらぬ日常、変わらぬ夜の通り……。
変わらないし、変えようとしない程に自分がこの界隈に馴染んでいる事に溜息を吐き出した。
■ネコアシ > モンスターやらなにやらに食い散らかされるよりは幾分かましか……と言うのが結論である。
温かい底なし沼の世界で生きるしか選択肢がない自分を恨みつつ、その辺は色々と折り合いをつけながら今宵も人ごみへと消えていく、足音も無く、風も揺らさず、欠伸一つだけを際立たせて夜の闇へと……。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からネコアシさんが去りました。