2018/10/10 のログ
ツール > 「さて、散歩を続けるか。」

そうつぶやくと、横を歩く犬の頭を軽く撫で男は夜の街を静かに進んでいく。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からツールさんが去りました。
ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」にクロバネさんが現れました。
クロバネ > 貧民街。読んで字のごとく貧しい民が住まう区域と言っても、大通りは日が落ちても賑やかさを失わない。
理由としては通りにゃ大小様々な酒場や、娼館なんかが軒を連ねているからで、一口に貧民街と言っても色町や悪所としての顔もあるからだ。
それだけに道行く人々の種類もまた様々で、その中の一つには盛大に蹴り飛ばされ、店外に叩き出される大男の姿、なんてのもある。

「悪いけどあんたの酌婦じゃないんだよこっちは。絡むなら他所あたれ 他所。」

そういった給仕が居る酒場でもないのに、メイド服を纏った女の姿。なんてのもある。

「……チ、聴こえちゃいないか。まあいいさ、先に手出したのはそっちだからな。自業自得だ。」

一人で騒いでくだを巻いて他の客に絡む。良く居る手合いだが絡まれる側としたらたまったもんじゃない。
何しろさっきまで絡まれていた私が言うんだから間違いない。
あーだーこーだと言いながら人の胸やら尻を触るような輩は蹴り飛ばされて往来で伸びているのがお似合いだ。

クロバネ > 倒れている大男の事なんざ道往く連中は気にする素振りすら見せやしない。精々一瞥くれる程度だ。
物陰からこっちを覗う襤褸を纏った連中は別だが、こいつらは騒動を気にしている訳じゃない。
狙いは気絶している大男で、程無くして取り付いた連中は慣れた手付きで酔漢の身包みを剥いで行く。
止める奴は、居ない。

「少しは薬になるだろ。……にしても、商人にゃ見えないが冒険者にしちゃ身形がいいなこいつ。」

偶々実入りの良い仕事に有り付いて、物資を整えた後に酒場にでも繰り出していたんだろうか。
てきぱきと裸にされていく大男を見て首を傾げた所で声がかかり、振り向く。
顔を向けると柳のように細い男が居た。彼はこの店の店主だと名乗った。

「……あー悪いけど文句はそこの伸びてる奴に言ってよ。私はどちらかっていうと被害者だから。」

今や全裸に大の字となった大男を指差して苦笑する。
すると店主も苦笑をし、男が度々訪れて飲み喰いしては他の客に絡み、挙句暴力をちらつかせて支払いをせず。
と、店における凡そ迷惑を詰め込んだような輩なのだと教えてくれた。

ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」に黒須さんが現れました。
黒須 > 「・・・。」

(久しぶりに自分の育て故郷に帰っては、酒でも一杯飲んでいこうと思ってやってきた。
口に咥えて蒸かしていた煙草を取り、適当に投げれば、道で寝そべっている全裸の男の体の上に落ち、火の先が酒場を指す。
謎の男を見ながらも体の上に乗った煙草の火を消し、そのまま店内へ)

「邪魔するぞ?」

(入り口から現れたのはさっきの大男よりもさらに大きそうに見える人狼。
全身が黒い毛で覆われ、着ている革ジャンの前のチャックは開き、引き締まった腹筋が丸見えの姿をしていた。
そのまま、ドカドカっと大きくゆっくりと足音を当てて歩き、カウンター席に着く)

クロバネ > 「つまり結果オーライってこと? いいね、面白──」

私が機嫌良さそうに鼻を鳴らすと今度は店主が首を傾げた。
そんな所で男の上に吸殻を落とし、踏み消して訪いを告げる更なる大男──いや狼男に目を瞠る店主と、私がいた。

「よ、隣空いてる?まあ待ち合わせとかだったら相手が来たら退くからさ。」

狼男が席に着いてから少し経って隣の席に座り、やや不躾に彼の顔を視る。
良くいるミレーとは明らかに違う顔立ちや、雰囲気は好奇心をそそられた。

「私はクロバネって言う、まあ見ての通りのメイドなんだけどさ。
話すと長いんだけど、御主人様っていうか御嬢様が、彼方此方の面白そうな話を従者に蒐集させる趣味があってね。
今夜はこの店に来る人から話を聞いたりしている所って訳。
……なんか見るからにタダモノじゃなさそうだし、奇妙な噂とかそういうの無い?
なにもタダとは言わないさ。お支払いはオッターモール家が受け持つからね。」

ポケットからメモ帳なりを取り出して、どう?と眉尻を下げて訊ねてみた。

黒須 > 「ん?なんだ?ここの店は客一人一人に酒を注ぐ店なのか?」

(隣にやってきたメイドに向けて冗談を言うかの様に一言いう。
待ち合わせの相手が居ると言われれば、居ないと答えとりあず酒を頼もうかと軽く顎を掻きながら書く。)

「ほぅ、自己紹介か…。
俺は黒須・狼。元貧民地区の住人であり金貸し屋、今は第6師団の師団員をしている奴だ。
面白い話か…。」

(メモ帳を取り出し、好奇心を高く持っているメイドに対してふぅむっと大きく鼻で息を吐けば頬杖を付く)

「自慢話なら、興味がねぇで終わらせて構わねぇ…。
おりゃ、貧民地区では喧嘩を売るようなやつが居なくてな。
なんせ、売られた瞬間、勝てないのは確信した方が良いっと言われたぐらいに強かったみてぇでよ…。
道を歩けば影で隠れて見られて、めんどくせぇ毎日を過ごしていたな…。」

クロバネ > 陽気な演奏と正反対に静かに沈んだ声。だけれども音楽に負けず耳に良く通る声だ。
見目と相俟って威圧感を感じさせ、もしも出会った場所が裏路地とかだったなら、流石の私も声をかけたりはしないと思わせる。

「そんな店じゃないってば。……違うよな?」

冗談なのか本気なのか、判然としない言葉に手を振って否定をするが、万が一があるといけないから
カウンター向かいの、柳のように細い店主に確認をする。彼も頷いたので此処はそういう店じゃない。

「金貸しで師団員って兄さん随分あっけらと言うなあ。一応、そういうのって表向きは無いって事になってるもんじゃない?
でも金貸しか……その図体なら借り逃げしようって輩はそうは居なさそうだね。ついでに喧嘩を売る奴も。
貧民の出って言ったけど、そういう所を見込まれて師団員になったって所?」

店主にエールを二つ頼みがてら、今度は黒須と名乗った彼の身体を見る。
上着を羽織っただけの上体から覗く腹筋などは見るものに見事な肉体美を想起させるもので
ダイラスの闘技場辺りに赴けばスター選手になれそうだなと思う。

黒須 > 「知らねぇな?別に仕事に関しちゃ、金がもらえりゃそれで満足だからよ?
ま、居る事には居たな?働けねぇだの金がねぇだの言い逃げする奴も居たし、俺が来た瞬間に逃げようとした奴もいたけどよ…こっちも仕事だから、そんなところ甘やかさずに全部返させてもらったな?」

(思い出した自分の面倒な日々を。
貧民地区でもかなりのクズが多く、すんなりと仕事が終わる事はまずなかった。
故に、それ相応の対応をしながら金を返してもらい、追いかけるなどもたくさんあった。)

「ま、俺が入りてぇって言ったら、入れてもらったのさ…。
タナール砦って知ってるか?あそこで師団の副団長に合ってな、背中合わせて戦って、俺が入団希望を言えば許可をもらったって話だな?」

(出されたエールを受け取り一口飲む。
服装も人間らしくズボンと靴、革ジャンを着ており、革ジャンの下には衣服は無い。
体中狼らしく毛がふさふさと生えており、胸元にはチャームポイントと言わんばかりの毛玉が生えている。
顔も狼であり、口を開けば立派な牙が生え揃えている)

クロバネ > メモに記されるのは彼の名前と風体。出身経緯と現在の生業。
何処までが本当で、何処までが嘘で。はたまた一切合切が嘘か本当だとしてもそれは重要じゃあない。
結局は猫を殺す程に好奇心旺盛な御嬢様が満足すればそれで良いのだから。

「成程ねえ……でも確かに金がちゃんと出るなら満足だよな。」

金は大事だ。私が今こうしているのも強いて言えば金の為。
だから彼の言葉に頷きもするけど、『全部返させた』と言う所で表情が苦笑いになる。

「その光景だけでもちょっとした見物になりそうな……。」

屈強な狼男が借金の取立てに街中を駆け回る。事によったら魔物と勘違いした真面目な衛兵なんかが飛び出してきそうだ。

「と、入りたいって言えば入れるものだったの? それはちょっと予想外……ああ、うんタナール砦は知ってる。
しょっちゅう魔族とドンパチやってて奪い奪われ繰り返してる所で……ほうほうそこで副団長と。
一緒に戦って見初められたって所?」

脳裏に想起されるは精悍な騎士と大立ち回りをする黒須の姿。立身出世を描いた絵物語の一幕と思えなくもない。

「でもその副団長って人も随分と変わり者というか……ああ、気を悪くしたら御免ね。
王国側の人って、あんまり、ほら、ミレーとか獣人に対して好意的なのは少ないじゃない?」

今でも店内の客の何人かは黒須の事をちらちらと見ている。
かくいう私も、メモを取る手を止めてエールを飲みながら彼の尾なりを見た。
……嬉しいとやっぱり揺れたりするのかな。と気にもなるけど流石に聞くのは憚られようってもの。

黒須 > 「別に金が全てってわけじゃねぇが…ねぇと困るからよ…。」

(貧民地区でもやはり酒や女の類はそれなりの金額が必要の為、仕方なく働いていた部分が多かった。
金貸しは親の跡継ぎの為、取り組んでいた。)

「別に、毎回毎回ボコスカ殴ってるわけじゃねぇがよ?
言い訳が長すぎたり、刺したりと殺りに来た時には普通に素手で殴り飛ばしたさ。」

(腿とと言えば確かにそうかもしれない。
しかし、実際行う所は少ないため、場合によっては地味な絵のままで終わる事も多々ある。)

「戦う気持ちがありゃ、誰でも入れた気がするな?なんせ、数が少ないらしくてな。
ちと、かっこわりぃかもしれねぇがよ?迷子になってタナールに言ったら、魔族と間違われて拘束。けれども、本物の魔族が出たから、そこで一発共闘してな?
それで、腕を買われたって感じかもな?」

(懐かしくも思い出したあの光景。
魔族とタイマンを張ったのは初めてであったため、かなり刺激的であった。
しかし、今は集合も侵入も聞かないため、ある意味暇なのである。)

「ああ、そうらしいな?ミレー族だかはあんまし認められねぇみてぇだが、第6師団は誰でも歓迎な所らしくてな?
俺がこのなりでも、構わずに入団を認めてくれたみてぇなんだよ。」

(力を貸す人間が居れば誰でも構わないっと言った所らしく、こんな自分でも認められたようだ。)

「ま、俺の話はこんな感じだな?
あとは…なんだ?惚気話か?
けど、他人の惚気話程退屈な物はない…だったか?」

クロバネ > 「そりゃ勿論。それだけに返す段になって、返すと困る輩も出る事もあって、
そうなると兄さんの腕っ節の出番も出てくるって事だろ?」

問題は殴られたら死ぬんじゃないか。と思わざるを得ない所だけど
それについては借りて返さないのが悪いのだからエールで流して口からは出ない。

「へえー意外と人手不足なんだ?でもまあ……好き好んで魔族と最前線で戦いたい!なんて奴
早々居ないか……いや兄さんの悪口じゃなくて一般論って奴。腕を買われて、だなんて格好いいじゃない。
私も元々冒険者だったけど、そんな良い話は一度も無かったなあ。」

冒険者から紆余曲折を経て、奇妙な主と奇妙な同僚に色々掻き回される毎日。
決して悪くはないけれど華は無く、何処か遠くを見るような黒須に対して此方は嘆息を吐くばかり。

「うーん見事な立身の話だ……。そうそう、最近の魔族の動向とかは──惚気話?」

何だか予想外な単語を聞いた気がして、ついと聞き返す。

「もしや素敵なロマンスとかあったり?恋物語なんていいじゃんいいじゃん。差し支えなきゃ是非是非。」

店主に何か食べるもの!と注文をしながら黒須に続きを促そう。それはもう目とかキラッキラさせて。

黒須 > 「ま、この体も親父から鍛えられたものだしよ。体も親父に出しな。」

(自分の仕事は元を返せば親からの仕事を自分も受け継いだため、体格やゆすり方、解決方法等などもすべて教わったのである。)

「ま、そう思うならそれで構わねぇな?
魔族となんざ、正面から当たりてぇってやつはいねぇ…。
国のためにだとか思う騎士は別だがな…。」

(人手不足の原因はそうなのかもしれない。
確かに、初めてであった魔族の存在。あれは普通の人間が相手をしていいような存在でなく、とてつもなくおぞましい。
自分たちの様に肝の座った人間でなければ、所属しないだろう。)

「…初めは蒸し暑い昼だったか?酒でも飲んで一日を終えるかと思っていたが、途中で白い猫を見つけたんだよ。
手を伸ばして近づけば素直に撫でられてよ、嬉しそうにゴロゴロ言いながらすり寄ってな?
俺も何があったのかそいつに興味を持ってな、そのまま撫でていたんだが…途中で雨が降ったわけだ。
革ジャンで傘がわりにしようかと思った矢先、突然、その猫は人間に変わったんだよ。
それから…そいつとの関係が続いたって話だ…。」

(内容はかなり変わっている話である。
道の端に居た白猫を可愛がっていると人間に変化し、それから関り始めたっと言う話である。
表情は変わらずの強面な顔であるが、背後の方では箒でも掃いているような音がし、下を見れば、垂らしていた尻尾が揺れ、床を掃いていたのである。)

ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」から黒須さんが去りました。
ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」に黒須さんが現れました。
クロバネ > 「憂国の士って奴。そりゃあ多少は居るんだろうけど、多少だからこその人手不足。
こーゆー話をうちの御嬢様とかにすると『そう、じゃあクロ。貴女ちょっと行ってみなさいよ。』とか言い出しそうで
ある意味おっかない事実だわ……。」

多分、きっと、そうなる。御嬢様に話す時には人手不足の部分は上手く誤魔化したほうがいいな、と心に誓った。

「ほうほう蒸し暑い時期に……日が落ちてでもいれば、ちょっとした怪談で通りそうな感じだけど……
その猫は魔法か何かで猫になっていた感じ?ほら、悪い魔法使いに云々なんて絵物語によくあるし。
あ、でもそれなら兄さんこんな所で飲んでいたらその子が心配するんじゃない?恋人に心配させて悪い人だなあ。」

マスターが肉の串焼きを乗せた皿を運んでくるのを横目に、私はにやついた顔で黒須の事を肘で突く。
物静かな語り口調はまるで他人事のようであったけど、彼の尾が揺れているのを見逃しはしない。

「そうそう恋話といえば私の同僚にシラトリってのが居るんだけど、こいつが誰それの寝所に忍んだとかなんだとか、
嘘か本当か判らない事を実しやかに語ったりする奴で、そんなもんだから御嬢様もその手の話は結構好きでさ。
……で、兄さんのいい人ってのは可愛い感じ?それとも綺麗な感じ?」

まあまあ串焼きでもお食べよ。的に皿を黒須の前にずらしながら言葉を並べる。白猫だと言うならきっと、色の薄い
綺麗そうな感じだろうか?と勝手に思いもした。

黒須 > 「主人が居るらしくてな?召使いにするために魔術で人型になれる様にしたらしいんだ。
元を返せば猫だが、ま、そんなの今となれば関係ねぇ話だな。」

(前に話したの事を言う。
魔術で自由に猫にも人にも寝れる連れの話。
猫に恋をしているというのもおかしな話だが、今はそんなこと関係なく一途であり、悪いと言えばそう思い、会いに行かなければと心中思う。)

「両方だ。撫でてやれば可愛いし、黙っていりゃ綺麗さ。
ま、どっちもどっちでいい女だ。
あんなの…ここいらの国じゃどこを探してもまず見つからねぇな?」

(差し出された串焼きを1本とっては大口を開けて食べる。
器用に肉汁を零さずに飲み込み、しっかりと肉の味を堪能する。
その後も止むことの無い自慢のような惚気。
顔に出ずとも、尻尾がそれを物語っている)

クロバネ > 「うわ本当に魔法使いか。私もちょっとは魔法は使うけど、そういう変化させるのは縁がないなあ……
うん、出自は関係無い事さ。兄さんとその子が睦まじいなら結構な事じゃんか。」

狼の顔。と言うものは表情が判り辛い。見慣れていればその機微を察する事も出来るんだろうけど生憎と私には判り辛い。
ただ黒須が相手を想っていると言う事は、彼の問いに対する答えで良く、判った。

「両方って言われたら私は参ったって言うしかないなあ。いや御馳走様御馳走様。
幸せそうなカップルの話ってのは気持ちが沈まなくて良い。今日の私はツイてたね。」

獣人の男性と魔法で人間になった猫の二人。無銭飲食を重ねた酔漢を偶然蹴り倒した話なんてのよりは余程好ましく
御嬢様も好まれるだろうと私は満足そうに頷き、席を立つ。

「いい話をありがとね、黒須の兄さん。それじゃ私はそろそろ帰るとするよ。」

店主に御代を支払った後に、黒須の肩を気安く叩いて手を振って。
私は陽気な演奏の満ちる店内から立ち去るのだった。

ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」からクロバネさんが去りました。
ご案内:「酒場『ブルーヘブン』」から黒須さんが去りました。