2018/09/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「……う~ん?」

貧民地区路地裏。一人の男が書類を見ながら首をかしげている。
書類には、最近出現している存在についての情報。

「……ベルっちのゴーレム、とはまた違うみたいだな」

諸国漫遊していたら、いつの間にか国内で凄いトラブルが発生していた。
稼ぎ時を逃したか、と思いつつも。男も今回の一件について情報収集中。
なによりも、もしかして妻の部下のゴーレムの一種かと思ったのだが。
どうにも、目撃情報や報告の類からは、違うタイプの存在らしいということが分かった。

「安心半分。がっかり半分だな」

妻が厄介事に巻き込まれていないのはいいのだが。
有用な情報があまり無いことにはがっかり、であった。
とはいえ、まだまだ稼ぎ様はあるさ、と。
男は書類に目を通し続ける。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > ――カラン。
と、硬い木製の何かが、石の地面を叩く音がした。
重々しさの欠片も無いのは、履いている存在の体重が酷く軽いことに起因している。
夜の貧民地区、それも路地裏には最も似つかわしくない存在の一つであろう子供。
そんな風体をした人外が、屋根の上から路地へと舞い降りたのだ。

「ふむ、”ベルベル”と、駄々甘な阿呆旦那の蕩けた声で呼んでおらぬのは、なけなしの自尊心で格好でもつけておるつもりかのぅ?」

登場からして唐突。
概ね天災の類。
地味な色彩と柄の浴衣のせいで、三割増しで目立つ帝国東方形質の黒髪美少年。
腹の中やら頭の中がどうであるかは別にして。
こうして現れたのだって、見知った人間が不景気そうなツラをしていたから突いてやろうという魂胆に他ならない。

セイン=ディバン > その音が聞こえたとき、男はため息を吐いた。
その音に聞き覚えがあるからだ。そして、その音がキライだからだ。
とはいえ、相手もまた自分の関係者であるのは事実なので。

「……死ね、クソが」

開口一番、そう言う男。相手の姿は、紛うことなくその姿。
そしてその圧力も変わらない。超越者級。自身の敵。
だがしかし、男は相手のことを真っ直ぐ見ながら書類をしまう。

「久しぶりだな、クソガキジジイ」

敵意は込めず。そういう男。その表情は笑顔だ。

ホウセン > 憎まれ口の応酬は、概ね挨拶代わりであったし、実際に怨嗟の篭った呪詛の取り交わしであったとしても、やはり挨拶代わりなのだろう。
武装中立という表現が近しいか、果たして正鵠を射ているかは分からぬけれど、少なくとも旧交を温めるような間柄ではない。

「呵々。そう歓迎してくれるでない。
 儂も儂で色々と厄介ごとの後始末があった上、此度の騒ぎじゃ。
 四面楚歌の二歩手前の見目麗しい子供に対して、慈愛の念というものは浮かばぬのかのぅ?」

自らをして見目麗しいと口走る面の厚さは健在で、益体の無い戯言は何時見ても絶好調。
帯に挟んでいた扇子を抜いて、その先で書類の収納先を指し示せば、”此度の騒ぎ”が何に触れているのか察せるだろう。

「先に言うておくが、儂の手は白いのじゃ。
 今の均衡を崩すつもりはありゃせんからのぅ。」

にぃっと口角を吊り上げると、艶のある唇から覗く真っ白い歯。
それを隠すよう、扇子を口元に寄せて小さく開く。

セイン=ディバン > 「歓迎なんぞしてねぇよダァホ。
 ……ふむ。なるほどな。つまり今回の一件、お前はメインでは噛んでないってことか。
 しかしまぁ、お前さんは愉快犯のクソッタレだが……。
 敵を作りはしても、敵に狙われるタイプじゃないんじゃあなかったか?」

相手の言葉に男は興味深そうに言う。
この相手は、敵を作ることはしても、憎まれはしても、敵対されることは極端に少ないように感じていたのだが。

「……つまり、あれだろ?
 傍観者の位置がお気に入り、と。
 あぁそうだ。テメェが行方不明なせいで、イヌやネコのデリバリーができなかったじゃねぇか。
 それどころかあんなに強くて綺麗なお姉さまと戦わせやがって」

そこで思い出したように言葉を投げつけまくる男。
この相手の紹介で戦った女性。正直、生きて帰ったのが奇跡だった。

ホウセン > 婉曲でまどろっこしく、その上中身が薄い言い回しも、ある程度スムーズに理解できるようになっているらしい男の言葉に、採点をする試験官が如き面持ちで、扇子を微かに開いたり閉じたり。
人間如きの妖仙評に対して、一々目くじらを立てることはしないが、妙にむずがゆい。

「敵とは物騒な言い方かのぅ…精々”遊び相手”じゃよ。
 そして、儂が何をせずとも、先方から何事かを吹っかけて来るのを、完全に回避する術は無かろう。」

この件ではとばっちりもいい所だと、”北方帝国出身”で、”貿易商”という立場の人外は、薄っぺらい肩を竦めた。
その表情が動くのは、次のフレーズが耳に滑り込んでから。
擬音化するなら”うへぇ…”というように、珍しく苦虫を噛み潰したような顔。

「戯け。
 お主が下手を打つから、あの”蛇”に気取られて、儂直々に”遊ばねば”ならず、頭を丸齧りにされかけたのじゃ。
 退けられるとは塵芥程も考えておらなんだが、鎧袖一触にも程があろうぞ。」

故に、メイドのデリバリーを出迎えて、遊興の日々を過ごす事が出来なかったのだと。
それどころか、徹底的に消耗して回復に時間が掛かったのだと。
不満の表明として、扇子の先でトストストスと、軽く男の胸板を小突く。

セイン=ディバン > これまた相変わらずな余裕の表情。余裕の態度。
男としては今すぐにでも相手の顔面をぶん殴りたいくらいなのだが。
この相手は一応、契約というか、取引を結んだ相手。
それはまた今度にしておこう、と考えを改め。

「はっ、さすがに吼えやがる。遊び相手、ね。
 よく言うぜ。相手にちょっかいかけてくるように仕向けてるくせによ」

こういった目線が超越者だよな、と。
男は相手のことを改めてそう認識する。とはいえ、それもまた互いの立ち居地の違い。
いちいち相手の言葉に反感を覚えたりなど、今更しなかったのだが。

「知るかっての。こっちだって命まで取られてたらキリがねぇ。
 あの人に洗いざらい仕掛けのことを話して命が拾えるなら。
 いくらでも俺は情報吐くっつー。お前に恩義があるわけでもねぇしな」

いったら自業自得だろうが、と。男は相手にそう吐き捨てる。
そもそも、かの女性に自分をけしかけたのだって、自分のことを遊ぶ道具としか見てないからだろ、と。
逆に視線でそう問い詰める。

ホウセン > 冒険者の敵意なり害意を察知したとしても、それを掌中で転がして弄ぶ悪趣味な輩。
そういった意味では、対峙者の観察は、肝要な点を押さえていると言えた。
尤も、妖仙とて万能でも絶対でもないから、不測の事態が存在するのだけれど、それとて遊興の内としてしまう図太さは、視座の違いなのだろう。
それを公言するのは、少しばかり風流ではないと唇の内側に押し留めはするが。

「何、心配には及ばぬ。
 アレは、無益な殺生を好むような性質ではないからのぅ。
 ”手違い”さえ起こらなければ、半死半生で済もうぞ。
 ――そこそこの頻度で、村一つ分ぐらいの森を吹き飛ばしたりするが。」

その位のハプニング位、大した話ではなかろうと半目にした黒い瞳が物語る。
無論、冒険者の戦闘能力を概ね正確に把握して、まず間違いなく手の施しようがない大惨事になるだろうと予想しておきながら、意地悪く当て擦る。

「然し、それで儂が不利益を被ったのは事実。
 休業補償の一つでも、支払ってくれても罰は当たらぬぞ?」

駄賃はこちらとでも言うように、胸板を小突く動作を止めて、ビラっと扇子を広げる。
素直に支払う男とも思えぬし、請求する理由さえも曖昧模糊。
突っぱねられても当然と言えようが、上目遣いに見上げる妖仙の目は、”腹に一物抱えています”と語っている。

セイン=ディバン > 男の中では、この超越者はまだ対峙しやすい分類である。
まず、会話が成立する。しかも、行動目的が分かりやすい。
さらに、取引を持ちかけてきたりするので、色々とやりやすいのは事実なのである。

「あのなぁ。それは俗世間では『心配に及ぶ』って言うんだよ。
 ……とはいえ。あの人はすっげぇ美人だったな。
 それこそ、一晩お相手願いたいもんだ」

男としては、防衛戦、持久戦、撤退戦は得意な分類だが。
それとは別に、一対一の対人戦は大の苦手だったりする。
そういう意味では、今回の一件はかなりギリギリの戦いだったと言える。
だが……その相手もまた、男にしてみれば魅力的だというのだからどうかと思うが。

「……あのなぁ。それだったらこっちだって。
 明らかにランク違いなバケモノとやりあわされたんだ。
 十分な説明も無しにな。だったら、お前さんも俺に補填をしろよ」

相手の言葉に言い返す男だが。言い分も分からないでもない。
そこで男の言葉。要するに、互いに補填をする必要があるだろ、という取引提案。
男としては、相手に提供するのは当然……。

「もう一度。イヌとネコにお前さんにご奉仕するように命令しておいてやる。
 それで十分、だろ? それとももっと何か欲しいのかよ」

ホウセン > 随分酷い目に遭ったと察せるところだというのに、”美人”なんて表現を用いているところに、生温かい視線。
下半身直結脳め…と、言葉にせずとも、世の人々の八割程度が汲み取れそうな、あからさまな態度で。
自分自身の事を全力で棚上げしているのは、今更のことなのかもしれないが。

「それはそれで、お主が干物になっている未来図しか思い浮かばぬのじゃが、命の使い方は其々よな。
 骨は拾うて家に送ってやる故、存分に挑んでくるのじゃな。」

それで”蛇”の褥に到達できるかは別にして。
金銭でも載せよと差し出した扇子には何物も載せられず、さりとて収入が無かった訳ではないのでパチリと閉じる。
対価の交換だが、それには少しばかり心当たりがある。

「もっと欲しいと言うて、素直に提供してくれるとも思えぬがのぅ。
 ともあれ、儂からの補填は…”解呪”じゃな。
 お主…まさかとは思うが、気づいておらぬという事はありゃせんか。
 儂の”呪”、とっくりと染み渡っておるぞ?」

先刻、扇子で突いた胸元を指し示す。
接触と、接触のリズムによって式を描き、注意深く”呪”を流し込む…そういったやり口だ。

「お主の治療費と、儂が稼ぐ金銭の差額分とでも思うが良かろう。
 何、大した話ではない。
 少しばかり、お主の節操なしなモノに、躾をしてやっただけじゃ。
 目が覚めている間は不能となり、然し睡眠中は目覚めるまで勃ちっぱなし。
 無駄打ちも少なく、奥方にも喜ばれるじゃろぅ。」

戯言の成否は兎も角、性質が悪いのは、この場で妖仙の言葉の真偽を試す手段がかなり制限されていることか。

セイン=ディバン > 「おう。お前が何を考えてるかは分かってんぞ。
 ……ふんっ。俺にとっちゃ美人とのデートってのは重要なんだよ。
 命の次くらいにはな。……ハッ。
 ま、俺の感触だと。口説ける可能性はあるね」

馬鹿にしたような相手の様子と言葉に、男はやけに自信満々に言う。
相手の要求に応えられたかどうかの判定は相手次第ではあるが。
そこから相手の提示した条件には、頭を掻きつつ。

「あのなぁ。勝手に呪っておいて、それを解呪するのが報酬だぁ?
 アホかアホなのかあるいは大馬鹿か?
 そんなもん取引になってねぇだろうが。そういうのは補填になりえねぇんだよ」

さすがにコレには男も苛立ったか。
懐から取り出したリボルバーを相手のアゴに突きつけるが。

「……OKOK。正式に取引といこうじゃねぇか。
 俺は、お前にメイドを貸し出す。お前はこの呪いを解く。
 正しこれでイーブンだ。お互い、補填には別の物を用意する。
 さもなきゃあの蛇のねぇさんと協力してお前を追い詰める。
 取引ってのは対等にするのが基本。こんな姑息な罠なんぞ、取引というもの自体を馬鹿にしてる」

凄みながらも、男は体の中の状況を魔力を流し確認する。
確かに。呪いは発動しているが、その本質は掴めない。
まぁ、超越者の呪いだ。正体看破は人間如きにはできないだろう。
男はため息を吐きながら、どうしたものか、と考え込む。