2018/07/31 のログ
ご案内:「王都マグメール貧民地区 裏路地」にブレイドさんが現れました。
■ブレイド > 迂闊。あまりにも迂闊だった。
まさか目を離している間にいなくなっているとは、まったく思っていなかった。
あの簡素な服ではと、新たな服を買いに行っている間の出来事。
まったくもって迂闊がすぎる。
「くっそ…」
どのあたりに行った?少なくとも貧民地区からは出ていない…とは思う。
それほど健脚というわけでもないのだから…。
だが、逆にそれがいけない。
このあたりは治安も悪く、拐かしやら強姦魔などいくらでもいるのだ。
路地を歩き回る少年にもルナの行方がわかるはずもなく。
焦りが見え始めていた。
どこかへいったなら放っておけばいい。
そもそも、主など…柄でもないのだから。
だが、それができるなら、最初から遺跡に打ち捨てていたわけだ。
それをしなかった…できなかったのだから、放置などできるわけもない。
「ルナっ!どこだーっ!」
思わず声を出す。目立ってしまうだろうし、胡乱な者と見られるだろう。
だが、呼び声を上げるくらいしかもはや手はなく、名を呼びながら細い路地を駆け回る。
■ルナドール > 「――――― ある じ、…さま………」
そう、ぽつりと呟いたとき、人形の頭に浮かんだのは、誰の面影だったろう。
己を創り出し、此の世界へ送り込んだ『誰か』だったか、其れとも。
―――――もともと長くは保てない思考は、其処でぷつりと途切れてしまう。
何処かから己の名を呼ぶ声が聞こえてきたのは、丁度、そんなタイミングで、だった。
「……あるじ、…さま……?」
今度ははっきりと、つい先日己を連れ出してくれた、特定の人物を指して。
かくん、と逆の方へ首を傾げる仕草は未だ機械的だが、声の聞こえた方へ踏み出す足には、
確かにニンゲンらしい、意志の力がみえた。
覚束無いながら、一歩、また一歩―――――
「……ぁ、……あるじ、さま、あ……!」
何故だか、胸が酷く締めつけられたように痛くて。
三度其のひと言を口にする声は、細くとも高く、通りに木霊して響いた。
■ブレイド > 「…っ」
ミレー族の耳に少しだけ感謝した。
あと、自身の幸運にも。
どうやら意外と側にいたらしい。
声が届いたのか、か細くも路地に木霊する少女の声が聞こえた。
その方向に向かい、走る。駆け出す。
「ルナッ!ルナぁっ!」
まだ、確定できない場所。
呼び声をあげれば返事があるだろうか。
反応があるのであれば、そちらへと走る。いずれ、彼女のもとにたどり着けるだろう。
■ルナドール > 人形の耳は残念ながら、彼のものほど高性能では無い、けれども。
其れでも、―――――遠くは無い、そして、どんどん近づいてくる。
そう、知ることが出来れば、其れだけで充分だと言えた。
ルナ、と、己を呼ぶ声。
其の声に惹かれる様、また一歩、そして、もう一歩。
人形の足は未だ、走ることが叶う程、器用には動かないから。
ふらふらと、のろのろと、歩いているだけにしか見えないだろう。
けれど人形は此れでも、精一杯、急いでいるのだ。
彼の姿が、柘榴の視界に捉えられれば。
許可を得なければ、と思うよりも早く、飛びつこうとしてしまうほどに。
抱き止めて貰えるだろうか、――――抱き止めて貰っても、良い、のだろうか。
■ブレイド > 「いっ…!」
いた。幸いなことに人通りも少ない裏路地。
おかげさまで少女がだれかに襲われることもなかったのだから
この薄暗く人気のない場所にも感謝しなければなるまい。
「ルナっ…!ばかやろぉ!」
柘榴の瞳に白い人影。
紛うこともない。遺跡の薄闇に佇んでいた人形の姿。
慌てて駆け寄り、少女を捕まえるように…
その望み通りに抱きとめる。
「こんなところまで…ったく、心配させんじゃねぇよ…」
安堵の息とともに、ようやく表情が崩れる。
ふにゃっと微笑みながら、抱きしめたルナの髪をサラリと撫で。
■ルナドール > 己よりもずっと暖かい、其のひとの腕に抱かれると、ふっと力が抜けてしまう。
其れが『安堵』と名付けられる感情だと、いつか誰かが教えてくれるのだろうか。
感情の起伏を余り感じさせぬ身ではあるが、恐らくほんの少しぐらいは、
柘榴の眦も緩みかけていた筈だ。
「―――― ば、か………ルナは、ばかやろお、ですか………?」
きょとり、瞬いて首を捻る。
ばかやろう、というのは、果たして良い意味の言葉だろうか、逆だろうか。
―――――けれども、己の髪を撫でてくれる彼の顔を見たら、
「……ルナ、は、わるいこ、です……ごめんなさ、い、あるじ、さま。
でも、……あるじさま、あたたかくて……あの、」
『キモチイイ、です』
其のひと言は、ごく僅か、口許を綻ばせながらに。
其の言葉は彼が、『あるじさま』が教えてくれた大切なものだから、
一音ずつ、彼の耳にだけ届く様に紡ごう。
■ブレイド > 腕に彼女を抱けば、力が抜けていくのがわかる。
彼女も不安だったのだろう。
迷ったこともあるだろうが、ここまでつれてきた『主』がいなかったのだから
人形たる彼女がどう思ったかはしらないが…永きをあそこで過ごしてきたというのならば
また遺跡で座り続けていた日々がまた訪れることとなるのだから。
「そうだよ。ったく、このへんはあぶねーんだ。
つれてかれちまったら…いや、これはオレが言うべきじゃねーな…」
そもそもここまでつれてきてしまったのは自分なのだし。
ちょっと困った顔をしてなで続ける。
「いいって。オレもほっといちまったんだから…。
でも、外歩くならもうちょっと街に慣れてからのほうが…」
このあたりの情勢…いや、この街の悪徳は、無防備な少女をたやすく絡め取る。
自分が心配するようなことではないかも知れないが…それでも、つれてきてしまった以上は
心配くらいはするもので。
だが、その後の言葉が続かなかったのは…少女の囁きが耳をくすぐったから。
■ルナドール > 寂しさだとか、不安だとか、ニンゲンの持つ感情は複雑過ぎて、
目覚めて然程時の経っていない人形には、どうにも判別が難しい。
こころ、というものが己にあるとも、其れがくるくると良く動くものだとも、
未だ、認識していない己である。
けれど其れでも―――――『あたたかい』のは『キモチイイこと』だと。
其れだけは、もう覚えたのだった。
「あぶない……こわいところ、なのです、か……?
でも、あるじさまが居るところ、だから……ルナも、へいきなの、です」
何の根拠も無い、理屈にすらなっていないのだが、己はごくごく真面目である。
其れに、会話の間、ずっと撫でられているから―――――つまりはずっと、己にとっては『キモチイイ』。
世間一般の常識を何も知らず、従って彼の危惧も困惑も知らぬ人形は、
彼の言葉の、まるで別のところに引っかかる。
「街、に、なれ…るまで、あるじさまの、ところに、いても、いいのです、か?
ルナは、……でも、ルナは、」
何も出来ない、役に立っているとは思えないのだけれど。
傍に居ても良いのだろうか、もっともっと、『キモチイイ』を味わっていて良いのだろうか。
不自然な途切れ方をした言葉の先を聞き逃すまいと、琥珀の眸を覗き込みながら、
「………あるじ、さま?」
ひやりとした質感の掌が、そろり、と伸びて。
『あるじさま』の頬を、お返しの様に撫でにゆく。
■ブレイド > 彼女がなんなのか、完全に理解していない自分。
そもそも感情に関しても乏しいであろう反応を見せる少女。
危機感やそんなものがないと言われれば、それはそれでいいのだが…
それでも自分は心配したし、少女は自分の呼び声に応えた。
だからこそ、少女にぬくもりを与える。
「そうだな…ってか、いるって言っても側にいなきゃ
オレだってなんもできねーよ。
気をつけろよ?いや、勝手に連れてきちまったオレがいうことじゃねーけど…」
平気だという少女には苦笑して。
理屈はわからないが、絶対の信頼をいただけているようだ。
だが、それにしたって自分がいないところで危険な領域を歩かれるのは…
心配どころで済まないのだが。
「馬鹿だな。つれてきたんだから、なれてもなれなくても…いてもいいにきまってんだろ?」
自分が自分の意志で少女をつれてここまで来たのだ。
ならば答えはきまっている。微笑みながらも頬が少し赤く染まって
覗き込まれた双眸は困惑と色を増す。
「そういう言い方は…その、なんつーか…」
ずるい。とはいえない。
彼女の囁きに胸を高鳴らせてしまったのは自分の性癖というか、責任と言うかなのだから。
だから、頬を滑る手を心地よく感じつつも、困ったように笑う。
■ルナドール > 「……あるじさまが、気をつけろ、って、いうのなら、
ルナは…気を、つけます。
だって、あるじさまは、ルナの……ルナだけの、あるじさま、だから」
彼にはもしかすると他に、特別な存在が居るかも知れないのだが。
己を作った『あるじさま』は、己だけの『あるじさま』では無かったから、
―――――彼は己『だけ』が『あるじさま』と呼んで良い存在なのだと、そう、思いたかった。
感情の機微には疎いけれども、こころが動かない訳では勿論、無い。
だから、居ても良いのだと許されれば、―――――また、ほっと。
「――――― あるじ、さま……?
ルナ、また、わるいこ、でしたか?」
其れだけに、不安になる。
感情の見えない柘榴の色が、頼りなく揺らいでしまうほど。
困らせているらしい、と、何と無くではあっても感じて、やはり、
己が『わるいこ』だからいけないのだろうか、と。
―――――だから、決して悪気では無いのだが、
「それ、なら、……ルナのこと、おしおき、して、ください。
それで、ルナがちゃんと、いいこに、なったら……
もっともっと、キモチイイ、を、おしえて、ください」
偏り過ぎた基礎知識と、半端に学習した断片とが、何やら破壊力の在りそうな台詞を吐かせたが、
繰り返すけれども決して、悪気では無い、のである。
其の証拠に、人形はしょんぼりと項垂れて、彼の頬を撫でた掌を、
己の胸元へそっと宛て、祈る様な仕草をしてみせるのだ。
■ブレイド > 「まぁ、そうだな…
でないと、心配になっちまう。
ん、まあそうか…そうだな。でも、気にしなくてイイぜ?」
自身は隷属階級の種族の生まれであるから
主従という関係性は、彼女以外のものとはむすんでいない。
彼女だけの主。現状ではそういうことになる。
だが、主であることで、彼女を必要以上に縛る気もない。
彼女が望むのならば、そうするだろうが。
「いや、むしろオレが悪かった。
暫くは、あんま目を離せねーのはよくわかったしよ」
迷子になっていたときよりも不安そうな色を持つ視線。
その様子に苦笑すれば、そんなことはないと…撫でてやる。
「…悪い子じゃねぇからおしおきはまた、悪い事してからだ。
えっと…その、今回はオレが悪かったから…
お詫び…はできるけどな」
人はいない、来る気配もない路地。
それでこのセリフはよろしくない。
顔が真っ赤に染まってしまう。うなだれる彼女を元気づけるように撫でるも
自分も結構危ういことを言っていることには気づかない。
■ルナドール > 人形である己は、此の国の歴史が抱えている闇を知らない。
彼が被っているフードの下に隠れているものについても、
ふかふかして、つやつやして、触れたらとても『キモチイイ』もの、だとしか。
だから人形にとっては、此の上下関係に、可笑しな所など何も無く。
「あるじさま、を、心配、させるのは……やっぱり、わるいこ、なのです。
だから、ルナは、……ちゃんと、いいこになります」
未来のことは誰にも分からない、けれど今、人形にとって、
目の前の少年こそが、此の世界の全てなのだった。
否定されたら、拒絶されたら、何処か遠くでそっと、眠りに就くしかないと思える程。
首輪をつけて、今も何処かで己の在り様を観察している筈の『あるじさま』は、
また、別の存在であるし。
「あ、……あるじさま、は、わるくなんて、ない、です。
なんにも、いわないで、出かけた…のは、ルナが、わるいから、―――――」
此の儘では堂々巡りになりそうな、然し人形の思考回路の拙さが、
今、此の場面では幸いしたと言えるだろうか。
撫でられれば単純に嬉しくて頬が緩む、悪い子では無いと言って貰えれば、
素直に信じて、こく、と頷きさえする。
そうして少なからず『キモチヨク』なった人形の口からは、
また、爆弾が零れ落ちるのだった。
「おわび、より、キモチイイコト、がいいです。
ルナ、わるいこじゃない、なら、……あるじさまのところ、帰っても、いい、ですよね?
帰ったら、また、いっぱい……あたたかくて、キモチイイ、こと、して、ください」
柘榴の眸に宿るのは、いっそ無邪気なまでの甘い光。
彼が教えた、ひとの体温―――――其れから、熱くて苦しい、けれど『キモチイイ』こと。
其れらを、また味わわせて欲しくて―――ひと目を憚る、ということを知らぬ人形は、
臆面も無く、そんな我儘を口にするのだ。
■ブレイド > 「そうだな。ま、心配する必要がなくなりゃ、それはそれでいいけどな。
今は、ここに来たばっかだし…そう言えるだけでも、十分いい子だぜ?
ルナはな」
未来、目の前の人形が、自分以外に価値を見いだせる
『あるじさま』を見つけることができたなら
それは自分の役目の終わりなのだろうとおもう。
だが、それまでは…自分が彼女の『あるじさま』なのだろう。
起こした責任も連れ出した責任も、自分のものだ。
だから、否定も拒絶も、考えてはいなかった。
「そっか。じゃ、そういうことにしとく。
服、買っといたからな?それじゃ…まぁ、いろいろと不味いしよ」
簡素な貫頭衣。ひと目見れば、彼女は奴隷かなにかなのだと思わせてしまうような
このあたりで一人でうろついていれば『犯してください』というサインにすらなりかねない服。
だからかわりに…適当な服を買いはしたが、気に入ってもらえるだろうか?
あいにくともってきてはいないので、見せるのは帰ってからになるが…。
だが、ふわふわと撫でるルナの口から吐き出される爆弾。
彼女が『罠』であることの証左。
「…お、おう…」
言葉少なに答えたものの、無邪気さを孕んだ瞳から顔をそらす。
そして、人形の機能であれば知ることは容易だろう。
その言葉から生まれた、強い『欲』を。
■ルナドール > 「……ルナ、いいこ、ですか?
ん、…ふふ、なんだか、へんな感じ、します。
ここが、とっても……あったかくて、ふわふわ、って」
其れは、人形が初めて自然に洩らした、こそばゆさから来る微笑。
此処、と掌で押さえてみせた胸の辺りは、何故だかほっこりと温かく。
―――彼が其れと意図していなくとも、こうして人形は彼のお陰で、
少しずつ、生きもの、に近づいて行くのかも知れない。
「ふ、く……ルナの、おようふく、ですか……?
あるじさまが、ルナに、……あの、え、と、……」
何だったか、こんな時にぴったりの言葉があった筈なのだが。
えっと、えっと、とたっぷり考えて、ぱちりと柘榴を瞬かせ。
「ありが、と……ありがとう、です、うれしいです、あるじさま。
――――― ぁ、」
じわ、り。
感じてしまった、初めて身体を重ねた時と同じ、あの、熱を。
誤魔化しも、取り繕いも出来ない、素直で愚かしい人形は、
其れだけでうっそりと、柘榴の瞳を潤ませてしまうのだった。
「………あるじ、さま。
はやく、帰りましょ、う……?
ルナは、あるじさまの、えらんでくれた、おようふく……
あるじさま、に、着せて、もらいたい、です」
着せて貰う為には、脱がせて貰う必要がある。
そして、着せて貰う前に―――――少しぐらい、『キモチイイ』時間があったって、
きっと構わない筈だ、と、単純な思考回路は短絡的な答えを弾き出す。
先刻、そろりと少年の頬へ触れた手が、此度は確かな意図と熱を伴って、
彼の手を取ろうと動き出す。
きゅっと握ることが叶ったなら―――――薔薇色のくちびるを、蕩ける様に緩ませて。
「―――――かえりましょう、あるじさま」
―――――囁く声音で、彼の『欲』を誘う。
其れこそが己の、存在する意味だとばかり―――――。
■ブレイド > 「おう、いい子だ。
だからまぁ…次外に行くときは
一言残しといてくれ。なんもなしでいなくなってると、気が気じゃねぇ」
妙な話ではある。
縛りたくないと思っているのにこのようなことを言っているのだから。
この少女を、人形を、手放したくないという気持ちの現われか。
曰く独占欲が強いと言われる少年が、彼女の『所有者』を意識したときなのかもしれない。
「そうだ。つか…うん、気に入らなかったらちゃんと言えよ?
あたらしいの買ってくるから。
少なくともその…表に出ても、チンピラに襲われづらいような服でたのむぜ?」
自分のいないところで乱暴を働かれてしまっては
いい気分はしないものだ。
彼女がそれをいいと思うなら…『きもちいい』とおもうならば止めることはできないが。
汚された彼女が、つらい気持ちになるのならば、そうならないのが一番いい。
「わーったよ。着せてやるから…
いこうぜ?このへんで騒いで、変なやつに絡まれたくねぇ
………ん?」
自分で言っておいてなんだが、着せてやるとは。
着替えさせろということだろうか?
握る手から、人形に図らずも掻き立てられた獣欲が伝わってしまう。
囁く唇から紡がれる、甘やかな響きもそれを手伝って…。
■ルナドール > 「……わかり、ました。あるじさまが、そうおっしゃる、なら」
こくん、とまたしても素直に頷いたけれど、問題がひとつ。
実は此の人形、読み書きの知識が無い。
忠実に約束を守るべく、次回の外出時には書置きめいたものを残すだろうが、
其れを彼が解読出来るかどうか、甚だ怪しい。
然し、結果はどうあれ―――――『あるじさま』が己に少しでも執着してくれるなら、
不測の事態でも起こらぬ限り、人形は何処へ出かけても、彼の所へ戻ろうとする筈で。
「ちん…ぴら、という…のは、ひとの、名前、ですか……?
あの、よく、わかりません………でも、」
『あるじさま』が己に選んでくれるものが、人形の気に入らない、ということは先ず、無いと思われる。
どんな服を宛がわれたとしても、其れが己に似合っている、と、
『あるじさま』が思えば―――――己は其れを、すんなり『気に入る』のだから。
ところどころ、知識の外にある単語が混じって聞こえるものの、
今、何よりも人形にとって重要なのは、彼の抱く感情、というよりも情動である。
触れた掌から、指先から、全身が熱く痺れるほどの『欲』が伝わってくるならば、
―――――己はすっかり『女』の顔をして、彼を見つめ返す。
「ルナも、へんなひとに、からまれるのは、いや、です。
だから、……あるじさま、ルナを、つれてかえって、ください。
ルナが、また、……熱くなって、とろとろに、なって……
がまんできなく、なっちゃう、まえ、に―――――」
連れて帰って、熱い腕の中へ閉じ込めて、また、真っ白になるぐらい求めてほしい。
無邪気な素振りで寄せる身体は、先刻までとは比べ様も無い、確かな熱を孕んでいる。
手を引いて、連れて帰ってくれたなら―――――其の先は、彼の思う儘。
彼が望むことが、己の、人形の望み、なのだから―――――。
■ブレイド > 「…おう、そういや文字とか大丈夫か?
読み書きとか…」
そういえば失念していた。
彼女はずっと遺跡の小部屋にいたのだ。それを考えれば
今の文字の読み書きができないというのも無理からぬ事だろう。
だとすれば…それを教えるところからか。
暫く目が離せない時間が続きそうだ。
「まーそういう人種っつーか…わりぃ奴らだ。
人を攫ったり女を犯したり、奪ったり…そういうことをなんとも思わねー奴ら…。
まぁ、服の方は……喜んでくれるなら、オレも嬉しい」
喜ぶ、嬉しいといったことを少女が正しく理解しているかはわからない。
だが、彼女が…もともとそういう作りだったとしても『気に入って』もらえることは『嬉しい』。
そういった心の機微は、教わるものではない。
『気持ちいい』といった、情交による変化はすんなり覚えた彼女。
しかし、それが仇なのか、『欲』を掻き立ててくる。
『きもちいい』を求めてくる。
なにもしらないようで、女を、雌を、伝えてくる。
「オレが我慢できなくなんだろ…ばか…
してやる、してやるから、その…早く帰るぞ?」
この場で犯す。行為にふける。
それすら厭わないと思えるほどに…誘う妖花の罠。
手を引く少年の歩みは、一瞬止まりそうになるほどに。
だが、頭をふるふると振れば、なんとか彼女の保管場所としている廃屋までは我慢できるだろう。
ご案内:「王都マグメール貧民地区 裏路地」からルナドールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール貧民地区 裏路地」からブレイドさんが去りました。