2018/05/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリタさんが現れました。
■リタ > ここは貧民区に存在するバー、名前はマスカレード。カウンター席は6、テーブル席は1という、大層こぢんまりとした店だ。
料理の味はそこそこ、酒の質もそこそこ、お勧めはシェパーズパイ、ザワークラウトと一般大衆向け。
店の扉が開き、鼻歌交じりの店員が店から外に出る。
たった今開店を告げるプレートが店員の手によって扉に掛けられた。
扉を開いたまま、その前で、通りを行き交う人々を見ながら肩を回し、腕を伸ばしてストレッチ。
「さてと…今日はどんなお客さんが来るんだろ…。」
頭に浮かぶのは常連その1、その2、その3…良いお客さんでもあり悪いお客さんでもあるその常連達。
寝る人、尻を触るのを日課にしている人、ツケようと必死な人…
笑顔を見せながらの溜息がどんな客かを物語っている様だ。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にセイン=ディバンさんが現れました。
■セイン=ディバン > 貧民地区の路地を歩きつつ、今宵の羽休めはどこにするかな、と思案している男。
どこも決め手に欠けるな、などと考えつつ、とある店の前で足を止める。
「……あれ、ここって……」
その店の看板を確認し、記憶を辿る男だったが。
ちら、と視線を横に振れば、店員らしき人物がいた。
一度礼しつつ、店を指差す男。
「今、やってるのかい?」
にこり、と笑いつつそう尋ねる男。
貧民地区に現れるにしては、その笑顔と格好はちょっと不釣合いであった。
■リタ > 見れば自分に近づいてくる一人の男性。多分…お客様なのだろうか。こんなに早い時間に来てくれるなんてラッキー。
そんな事を考えながら、その風貌を見る。中々イイ男…いやそうでなく。
その格好がちょっとばかり場所に相応しくない…そんな違和感を覚えるも、
笑顔を向けてくる彼に負けない営業スマイルを浴びせつつ。
「ええ、たった今開いたばかり。小さな店ですけど…。」
彼と同じように店を指差しながら小首を傾げて「寄って行きます?」と一言。
彼が足を運んでくれるなら、店員は先立って店に入り、早々とカウンターへと戻るだろう。
■セイン=ディバン > 男は看板に書かれている店の名前を確認すると、ふんふん、と頷く。
更に、開いている扉の奥、店内を覗くと、更にうんうんうん、と頷き。
そうして、店員さんらしき女性へと笑顔で声をかけ。
「へぇ、それはツイてる。ちょうど一杯ひっかけたかったんだ。
じゃあ、お邪魔しようかな。小さな店の方が、質が良い。
オレの持論でね。期待してるよ」
相手の言葉に笑顔を強めつつ、男は店内へと向かう。
先にカウンターへとたどり着いた相手に向かい、笑顔のまま人差し指を立て。
「じゃあ、まずは黒麦酒を。
ちなみに店員さん。カクテルはどの程度作れる?」
手早く注文をしつつ、そう尋ねる男。
これはなにも、相手の実力を疑ってのことではない。
店の現在の酒の在庫によっては、作れないカクテルも出てくるだろうと思ってのことだ。
要するに、『カクテルをどの程度知っているんだい?』ではなく。『今、どの程度のカクテルなら作れるかな?』という質問だ。
■リタ > なんかふんふんうんうんしてる彼を迎え入れると、手拭で自分の手を丁寧に拭きながら。
「あ~…ツイてないかもですよ?お酒、あんまりお勧めできませんし。
安酒が出番はまだかと倉庫の中でアピールしてますしね、ウチ。」
指先を立て、黒麦酒を注文してくれる彼に向かってのその一言を流しながら、
店員はカウンターの下にある保冷庫に手を突っ込み、奥にあるそれを探す。
「ん~、今作れるってそんなにないかな…レッドアイとか…ドックノーズとか…ブラックベルベットとか…
カクテル、好きなんです?」
栓を抜く音の後に彼の目の前に現れる、タンブラーに入った黒麦酒。
辺りの湿気を受け、濡れているタンブラーは「俺、冷えてるよ!冷えてるよ!」と彼に訴えかけていた。
■セイン=ディバン > 自分の言葉に、なんとも明るくない反応をする相手。
だが、その言葉に男は肩を揺らし笑う。
「ははははは、貧民地区のお店の店員さんにしちゃずいぶん正直なんだな?
いいじゃないか、安い酒。安いイコール不味い、でもないだろ?」
そこらの貧民地区の店ならあることないこと口にして、ぼったくる店だって珍しくないのに。
ずいぶんと、全うな商売をしているのだな、と思いつつ懐から細巻きを取り出す男。
視線だけで、相手に『吸って大丈夫か?』と尋ね。
「ふんふん。ってことは、ビールにトマトジュース、シャンパン、ジンあたりはあるってことね。
うん? あぁ、酒は大概好きさ。ただ……そうさな。
キミみたいな良い女と会話するとき、そのきっかけになるって部分を気に入ってる」
相手の提示したカクテルから原材料を思い出し、その辺りで何か作ってもらおうか、と考えれば。
尋ねられたので、率直に答える。カクテルはバーテンダーの実力がモロに出るので、男は試しに頼むことも多いのだ。
そうして、タンブラーを掴み、一気に黒麦酒を飲み干す。
キンキンに冷えたその苦味は、男の脳に多幸感を一気に生じさせる。
「か、あぁ~っ! この、一杯目に麦酒、っての。
最初に考えたやつはスゴイな」
その美味さに唸りつつ、相手を観察する。
端的に言うのであれば。『カッコイイ女性』だ。
仕事着が実に似合う。気風の良さが香ってくるような雰囲気すらある。
■リタ > 「美味しいお酒のお店なら他に沢山あるし、別のウリを作んないと生き残れないんですよ。
この界隈、生存競争、すっごいんだから。」
彼の視線を受けるとこちらも視線をカウンターの隅へと送る。重ねられた灰皿がそこにあり、
「お好きにどうぞ」と笑顔を向けた。
「あら、良い女?ありがとう。…お客さん、詳しいですね。尚更店、間違ったんじゃない?
ウチ、シェイカー無いから基本ステアするだけ。」
良い女は華麗にスルー。社交辞令なんて巨万と受けている店員は勿論本気にせず。
それでもまあ、常連客(おじさん)に言われるよりは嬉しいのだろう、少し綻んだ笑顔を見せる。
そして一気に酒を呷る彼を見ながら、うんうんと頷いた。
何故か気取って飲む酒を全否定している店員は、嬉しそうに、満足そうに彼の姿を見ている。
そして彼の前へ、味見程度に小さく分けたシェパーズパイの乗った皿を置いて。
「これ、サービス。お召し上がり下さいな。…お酒進むと思うので。」
黒麦酒の瓶を手に取り、にこやかにおかわり如何?のアピール。商魂逞しい。
彼がシェパーズパイに口をつけたら、もう一度、「お酒進むと思うので。」と繰り返すだろう。商魂超逞しい。
■セイン=ディバン > 「ウリ? ウリならとっくにあると思うがな。
綺麗に清掃された店。正直な店員さん。安く飲める酒。
騒がしくない店内。それで十分だろうさ」
くつくつと笑いつつ、灰皿を手に取ると、男は細巻きを吸い始める。
愛飲している一本の味に目を細めつつも、煙が相手に向かわないように注意する。
「ははは、そのかわし方。客に口説かれ慣れしてると見た。
店を間違う? オレが? シラフだったのに? 冗談。
オレはこの店に来たかったんだよ。あぁ、そう。そうなんだ。
偶然にしては本当に良く出来た偶然だ。いや、ラッキーってのはあるもんだ」
相手のスルースキルに男は手を叩き笑う。そのまま、相手の言葉に強い反応を見せた。
物の一杯で酔っ払ったような、いきなりの饒舌さ加減だ。
そのまま、一人で何が楽しいのか、くっくっく、と声を殺し笑う。
「おぉ、こりゃあありがたい。……へぇ? シェパーズパイか。
ますます気に入ったよ。昨今、ただの豆やら、ぐずっぐずの干し肉を出してくる店も多いってのに。
あ、黒麦酒もう一杯頼めるかな?」
出てきたパイの正体を看破しつつ、一口ぱくり。
口の中にスパイス、肉、ジャガイモの風味が一気に広がる。
苦味に対し、肉と芋の味は愛称抜群だった。
確かにこれは酒が進むな、と思いつつ。男は薄く笑い。
「カクテル、あぁ、そうだ。カクテル。
なぁ店員さん? 作れないにしても、『ハンター』ってカクテル知ってるかい?
いや、アンタが作ったらハンターじゃなくて『ポインター』って名前になるのかな?」
それまでとは笑みの質を変えながら。男はそう言う。
相手は気づくだろうか。男の気配が、それまでの陽気な執事服の中年という物から、荒事ヤバ事に慣れた、冒険者のそれに変わったことに。
■リタ > 「ラッキー?この店、探してたんです?奇特ですねお客さん。」
少しその様子が変わる彼に対して眉間に皺を寄せ、訝しげな顔の店員。
突然笑い、言葉がするすると出てくるその豹変振りにほんの少し警戒心が擡げた。
しかしながらも今の彼は未だお客さんである。
店員は黒麦酒を彼のタンブラーに注ぐと、パイを食べる彼を注視していた。
そして彼の続けられる言葉に、ぞくりと背筋を震わせる。
「チェリーブランデー、無いからハンターは流石に無理。
…代わりにチェリーリキュール使ったらどうなるかな…。それをポインターって名付けてみるのも良いかも。
…で…そのカクテルに何の用?」
ああ、彼は裏の自分を知っている。
その口からも、その体全体からもたちどころに漂う雰囲気が、貧民地区に相応しいものとなった彼。
一応店員らしい言葉を投げかけながらも、その表情は店員らしからぬものへと代わっていた。
■セイン=ディバン > 「そうなんだよ。いや、探していたというか。
一度来たいと思いつつもなかなか縁無くて、アンド店の場所が分からなくてってやつ?」
ふひぃ、と。笑いすぎて痛くなった腹をなでつつ男が言う。
音も立てず、割と上品気味に……とはいっても、カウンターに肘を置いているので上品ではないのだが。
少なくとも、零したり音立てたりなんてせずに、酒とパイを味わう男。
相手の言葉に、男が片眉を上げ、にやり、と笑う。
「チェリーブランデーってどこで手に入るんだろうな。
オレは終ぞ見たことがないんだが……。はははっ、そりゃあいい。
それか、スナイパー、って名前もいいんじゃないか?」
世の中には、自身オリジナルのカクテルを作るバーテンダーも多いと聞く。
その発想力と行動力には頭が下がる思いだな、と男は考えつつ。
目の前の相手が、表情を変えたのを見て、んふ~、と鼻から息を漏らしつつ笑う。
「うん? いや、別に用事は無いよ?
ただ、冒険者や盗賊なんて仕事をやっているとね。噂を耳にするんだ。
針の穴を通す、なんて陳腐な表現でも足りない。あれはまさしく……『魔弾の射手』である。ポインターに見られるな。
見られればその時お前の命はない、な~んていう噂。
キミ、裏の世界じゃ有名だぜ、リタちゃん?」
その相手の表情を気にしていないのか、男は黒麦酒を飲みつつそう語る。
そこで、相手に微笑みかけると。
「率直に言って、今後もしもキミの力が必要な仕事があれば、パートナーになってほしい。
オレの持つ銃は近距離専用で、遠距離戦闘は苦手なんだ。
……せっかくだし、オレが奢るからキミも飲んだらどうだい?」
そこでようやっと男は表情を真面目なものにし、相手にそう願う。
懐から冒険者免許を取り出すと、カウンターに置き、相手にそれを差し出す。
更に、相手にも一杯どうだい? なんて、実に気安い態度だ。
■リタ > 「洞察力、凄いですね。運も味方してるっぽい。――やりにくいな全く。」
頭をぽりぽりと掻きながら、店員は店の扉へと向かった。
そして開店を告げていたプレートを引っ繰り返し、閉店を告げるそれへと変える。
スナイパーの言葉を背中で受けながらカウンターの隅の灰皿を一つ取り、カウンターへと戻れば、
「このご時世にクロスボウなんかじゃスナイパーには成れないですよ。
装填遅いし、飛距離短いし、取り扱い面倒だし…銃とか魔法とか、もっと向いたものは沢山ありますしね。」
他の客が入ってこれない状況を作った店員は、探るような言葉を止めた。
裏の事を知っている彼に対して接客する必要など無い。たった今決めた。
後は手酌でどうぞ、と黒麦酒の瓶をカウンターへどん、と置く。
そしてスラックスのポケットからくしゃくしゃになったタバコを取り出すと、それに火を付けた。
「パートナー?私が?貴方の?時々なら別に良いけど…
――で、貴方はどちらさま?ここに書いてるの、偽名じゃないの?」
タバコを咥えたまま差し出された免許を気だるそうに見つめながら、結構あっさりと了承する店員。
酒を勧められれば店員は新しい麦酒を出し、栓を抜き、新しいタンブラーにそれを注いだ。
■セイン=ディバン > 「じゃなきゃオレはこの歳まで冒険者やれてない。
観察、情報収集は生命線、ってね」
相手の言葉に、くすり、と笑う男。対して能力の高くないこの男が生き延びている理由。
それは、経験と直感、思い切り。まぁ、そんな所だ。
「ん、そうなのか? オレぁショートボウしか使ったこと無いけど……。
でも、腕が確かだ、ってのは確かな話だろ?」
相手の言葉に、男が目を丸くする。ちなみにショートボウは一回使って使わなくなった。
男は、弓に属する武器を使うのが致命的にヘタだった。いや、ドヘタだった。
どご、と置かれたビンから酒を注ぎつつ、相手を見ればタバコを吸っていて。
「あぁ、全然構わない。もしも共同戦線を張ったら報酬は6:4。そっちが6でどうだ?
その冒険者免許、冒険者登録ナンバー書いてあるじゃん?
偽名かどうかは、冒険者ギルド『エデン』に問い合わせれば確認できるよ。
……あ、いや。偽名は偽名か。うん。セイン=ディバン。偽名です」
相手のタバコを吸う様子。似合っていた。実にスマートだ。
男は免許の番号を指で示しつつ、更に酒を流し込む。
ついでに、偽名であることを白状した。と、言っても。
本名はとっくに捨てたのだ。どんな名前だったかも覚えていない。
■リタ > 「観察、情報収集したものを生かせる技量もあるわけですね。成る程…」
免許を裏返し、表に返してそれが偽造であるかどうかを確かめながらタバコを吹かす。
一応それは本物らしく、確認が終わったら彼に返すだろう。
「適正な距離なら威力だけはあるんで…それに頼ってる所もありますよ。
――うん、セインさんね、了解。報酬は折半で良いですよ。
その代わり危なくなったらお互い見捨てる。それで良いでしょ?」
偽名であることもさらっと受け流す店員。この界隈は本名を名乗る方が珍しい。
だから正直にそれを告げる彼に好感を持った。
タバコを灰皿に乗せビールを男らしく呷る。そしてまたタバコに戻る手。すこぶるおっさん臭い。
「…でも…セインさんってあのセインさん?本当に?…話に聞く感じじゃないんだけど…
猫被ってます?」
手持ち無沙汰になった店員。つまみにとパイとザワークラウトを手際良く準備しながらのその言葉。
■セイン=ディバン > 「ま、しくじりも多いけどね。大抵の事は度胸よ、度胸。
ブルっちまってちゃ手札も使えない。張るときはでかく張るのさ」
ケタケタと笑いながら、男も煙を吹き、免許を懐へと仕舞う。
男としては、冒険者免許を預けるということは絶対の信頼を意味する行為だ。
「はぁ、なるほどね。オレはどうも弓はなぁ……。
いや、そうもいかない。こうして押しかけて、脅すような形で協力してもらうんだ。
報酬は、リタちゃんが6。ここは譲れない。
……二個目の条件も飲めないな。キミがオレを見捨てるのはいいけど。俺はキミを見捨てない。これも譲れない」
相手からの条件提示には、首を振り再度条件を改める。
男にしてみれば、強力してもらう側なのだから、相手にはその分の見返りを渡したい。
見捨てるなんていうのもありえない。この男の女好きは筋金入りなのだ。
「……それ、どういう意味? オレみたいな中堅どころの冒険者なんぞ、噂になる要素なんて……。
無くも、ないけど。そこまで有名じゃないはずなんだけど?」
お、ザワークラウトおいしそう、なんて呟きつつ、相手にそう確認する。
大方、女に手が早い、だとか。冒険者としてのキャリアの割りに実力が無いだとか。そんな噂だろう、と予想。
あるいは、一時期呪われてフタナリボディになった時に、闘技場で大規模輪姦的なことをされた件か?
■リタ > 「あ、それなんとなく解るかな。後悔とか恐怖とかは後にしとかないと、何も出来ないですしね。
――冒険者なら当たり前、か。」
徐々に敬語が少なくなっていく辺り、彼の事を認めているのだろう。笑顔も増えている。
身分証明を晒す必要なんて無いのに、態々見せてくれた事もその一端。
「…セインさんがそう言うのなら…でも、やっぱりなんか嫌なので、その分料理と酒でお返し。良いよね?
…でも…やっぱり話と違って…その…カッコいいですね。」
しぶしぶながらも了承する店員。
女好きだから当然女を喜ばせる話術を知り尽くしているのだろうが、店員はまだそれを見抜けないでいた。
だからこそ漏れる賞賛の言葉。
「え…見た目と違って可愛いから掌で転がすと面白いとか…
女にだらしないからからかうと面白いとか…
話力は妙に高いから話してて面白いとか…あ、ダーリンと呼ぶとハニーと返ってくるから面白い、とかも。」
誰からの評価なのだろうか、何故か全部面白いである。
「…それでいて仕事出来るから憎ったらしい、とも言ってた。うん。」
少なくとも彼の予想は一つを除いて杞憂だろう。
勿論一番最後のあれではない。一番最初のそれである。
■セイン=ディバン > 「動くときは大胆に。耐えるべきときは不動。
な~んて、格好いいもんでもないけどね」
相手の言葉遣いには気づきつつ、指摘はしない。
男としても、敬語を使われるよりは気楽に話してもらった方が嬉しいのだ。
「ん。その辺はまぁ、男側の見栄とメンツをわかってもらいたいね。
ははは、それなら喜んでお返ししてもらおうかな。
……カッコいい? オレが? リタちゃん、お世辞上手いなぁ」
相手が条件を飲めば、男は満足そうに頷く。
だが、相手からの一言には、目を白黒させ、ぷい、と横を向きつつ酒を呑む。
どうやら照れているらしい。
「……うん? ……う~ん? ……おーし。
あの女、いつか泣かす」
相手の言葉を黙って聞いていた男だが。その3つを聞いて、そんな話をした相手を特定する。
両手の指をゴキゴキと鳴らしつつ、ふっふっふと怖く笑う男。
「……んが。アイツ……。はぁ……。
アイツの前じゃ仕事したりした覚えもないし。
純粋な盗賊技術ならアイツのほうが上だってのに。
妙に敵視してきやがるんだよな……」
頭を掻きつつ、呟く男。どうやらまた照れているらしい。
男としては、その知人の女性の実力を評価しているし。
スキル的に盗賊としては負けていると思っているのに、なんて。
ぶつぶつ言いつつ、相手にちら、と視線向け。
「ま、カッコいいだのなんだのってのは嬉しいけどさ。
そういうリタちゃんも美人さんだ。彼氏とか、パートナーくらいいるんじゃないか?」
いよいよ酒も回ったか、そんなおっさん丸出しなことを尋ねる男であった。
■リタ > 「男の人ってホント、そういうの気にするからな~。そゆトコ見るのも楽しいんだけど…。
アハハ、さっきのお世辞のお返し。社交辞令。営業トーク。」
少し慌てる彼は確かに可愛らしく、あの言葉は本当だったのだろうか、と。
そんな時、指を鳴らしながら笑う彼が目に入った。その視線が横を向けば店員は察する。
あの言葉はどうやら本当なのだろう。確かに面白い。面白すぎる。そして可愛い。
「敵視?してるのは認めてるって事じゃないかな。
本当に敵視してるんなら話もしないし…私なら消しちゃうだろうし…
どうのこうの言っても、セインさんは素敵ですよ。色んな意味で。」
視線を向けられれば新しい黒ビールとビールの瓶を両手に掲げ。
まだ飲みます?と小首を傾げてみせる。
彼の言葉には軽くも「勿論」と告げながら。