2018/02/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にラエルノアさんが現れました。
ラエルノア > 真夜中だというのにも関わらずこの一帯は昼のように、或いは祭でもあるかのように明るい。
その理由は単純で、この一帯には大きな娼館がいくつも並んでいた。
その中の一つ、通りに面して大きく迫り出した窓のある娼館。
窓を覗き込めば、その大きな窓の意味がすぐに知れることだろう。
中には革張りの椅子に腰掛けた娼婦たちが思い思いの姿で客に媚態を送っていた。
甘い声で呼びかける者、胸元の開いたドレスで誘う者、窓の傍まで近寄って覗き込む酔客の袖を引く者。
その中で一人、ぼんやりと明後日の方角を眺めている褐色の肌の少女。

「……ぁ、ふ…」

冷やかし客の目を気にする風もなく、軽く口元を指先で覆いながらの大欠伸。
それから漸くに、どこか眠たげにも見える目を窓の外へと向けた。
覗き込む客達の顔をさらりと眺め遣った後、目が合った一人へと、屈託のない笑みを向ける。

ラエルノア > 「其方のお方。夜道は冷えますでしょう。今日はお泊りになってはいかが?」

純粋に相手の帰路と夜道の寒さを気遣っている風にしか聞こえぬ口調と声音。
椅子から立ち上がるとゆるゆると窓辺まで歩み寄る。
声を掛けたその相手の前で立ち止まると、改めて目を細めてそっと手を伸べた。
窓は枠のみ。体のいい檻でしかない。
が、それを気にする風も無く、相手が手を取ってくれるのを待つ。
窓が枠のみ、ということは即ち寒いのだ。そろそろ暖かな部屋に戻りたいのは自分の方だった。
客さえつけば、この場に居る意味はなくなる。
若し相手が手を取ってくれれば、その言下の願いも伝わることだろう。
何せ細い指先は、既に冷え切っている。