2017/10/03 のログ
グラスシエル > 「あー、悪いね、時間取らせちまって。まあまあ、ナンパでもキャッチでも宗教の勧誘でもないから安心してな」

まるで友人に語りかけるように、にこやかに語りかける。敵意は見せず腹の中も見せず、見せるのは数枚の銀貨。あとは多少のおだてである。
抵抗がなければ、素早い手つきで、動きが止まった瞬間に手を取って銀貨を数枚握らせる。

「ま、あんたが娼婦なら迷わず買ったんだけどアンタみたいに可愛いのが娼婦とか似合わないね、って事でちょっと助けてほしいんだわ」

大して困ってる様子は見せないが、拝むように手を合わせる。ぺろっと舌を出してとりあえずは相手の様子をうかがおうか。ボーヤ扱いはこの際無視である。

「そそ、この翼の通りさ、ちょっと人を探してるんだよ。ちみっこくて、栗色の髪をしたがきんちょの翼持ち――天使って見たことないか?」

セイン=ディバン > 「別に時間はいいんだけど。……そういう用件だったら、即無視させてもらうんだけど」

随分気軽なガキだな、と。その態度に少女は内心僅かに苛立つ。なんというか。
背伸びしている、とはまた違う。変な余裕的なものが、少女には少し気に喰わなかった。
だが、その思考の一瞬のスキを突いて手に銀貨を握らせられれば、驚いたような表情になる。

「お生憎様、私は高いわよ。……助けて欲しい? いきなりねぇ」

手の中で銀貨を弄びつつ、少女は芝居がかった相手の様子に溜息を吐く。
どうにも。素直に信用できないような相手にしか見えないが。
わざわざ金を前払いしているということは、本当に困っているのだろう、と思い。まずは黙って話を聞くが。

「……ふ、ん。なるほどね。
 ……ボーヤ。ちょっとこっち来なさい」

同然。その言葉には反応を返さざるを得ない少女。
勘が間違っていなければ、恐らくその天使とやらは知り合いだ。しかも、割と深い仲の。
少女は、一旦表情をニヤケたものに変え、細い路地裏へと歩いていく。
人に聞かれたくないから来い、と。雰囲気だけで演出するが。相手には伝わるか否か。

グラスシエル > 「あー、全然違うって、つーかわざわざこんな時間にこんなとこで可愛い女の子に声かけないって。金持ってそうなオッサンとかオノボリさん選ぶよ俺なら。」

カラっとした笑顔は随分と友好的。だが、内面は相手を見透かすように見つめてる。というか、この匂いが気になる。天使じゃなく、この独特の匂い。と、驚いたような表情になった相手にはそんな気持ちはおくびにもださずに、わざと、腰の革袋を締め直す。じゃらりとなる硬貨の音。分かる人にはわかるというか、金をチラつかせてる

「アンタが買えるならそんなケチな金じゃても握れないだろうよ。――ま、簡単に言えば人を探してる。見ての通りこれでも天使でさ、身内探してるんだよね――」

と、困ったように頭を掻いて見せる。とは言っても手当たり次第である。ここら辺の娼婦とあの糞ガキが会ってるのはわかってるから、後は自分が探し回ってるのがあのガキにも伝わればいい、程度のもの。
――とかおもってたのだが。
少女は自分から路地裏に入っていく。首を傾げながらも、懐から別の革袋を取り出しつつも、少女についていく。路地裏を何度か曲がって

「おいおいおい、オトコを連れてこんなとこ来て大丈夫?俺が危ないやつだったらどうすんだよ?」

セイン=ディバン > 「……ま、それはそうだろうけど。とはいえ。初対面でこうも軽薄そうに声かけてくる男の子を信用するほど私も青くないわよ」

表面上は、笑顔に裏はなさそうに見える。だが、かといって底の浅い人物像にも見えなかった。
どこかアンバランス。だけど、警戒を怠っていない感じもある。
演技にしては少し過剰か。などと。値踏みはするが、実の所読めてはいない。
故に、少女は気を抜かずに、相手の金を鳴らす音をただ無機質に聞いていた。

「あら判ってるじゃない。……身内探し、ね~……。
 ま、この街も大概広いからね」

相手の言葉を飲み込み、思案。これは、もしかするともしかするぞ。
自分の欲しかった情報を、上手いこと手に入れられるのではないか。
そう考え、少女は相手を路地裏へと誘い。

「ご心配なく。私こう見えても冒険者で、結構腕には自信あるから。
 ……で、だけど。その探してる天使? もしかしてシャルティアって名前じゃない?」

後ろを付いてきた少年の言葉には、振り向きもせず、応え。音無くホルスターから抜いたリボルバーをひらひらと見せ付ける。
そのまま、人気がなくなったところで振り返り。少女は、真っ向勝負のカードを切った。
できれば、自分の求めている情報は絶対に手に入れたい。だが、状況によっては相手に情報は最小限しか与えたくない。
このトークは随分シビアなものになりそうだ、と。少女は表情を引き締める。

グラスシエル > 「ガキだから苦労してんだよ、娼婦にもガキ扱いされるし道行く奴らには怪しいガキに見られるし。ホント苦労してる、温泉でも入りたいわ―」

どうにもオヤジ臭い。笑顔は絶やさない。こういう時に表情を作るのは処世術である。
金の音にもあまり関心がないような態度。さてさて、次は何の手札を切ろうか、金貨を出すか宝石か。まあ相手の出せる情報と態度次第なわけだが

路地裏を何度も曲がった突き当り、あまりに人がいなさすぎて逆に小綺麗な袋小路、さて、この小娘はどんなつもりで、ここまで連れてきたのやら。まあ、懐の金目当てなら痛い目を見てもらおう



と思った矢先、思ってもみない名前がでてきた、ビンゴ!まじかよ!?
少年は目を丸くした。それも一瞬の話で、話に食らいつくような態度を見せる。焦るように懐から革袋を取り出しつつ

「ってまじかよ!? そいつなんだけど――ちょっとでもいいから情報くれない?どこで見かけたでもどこで出会ったでもいいんだ、頼むよ。」

と、先程までの態度は崩さず、ひょいっと革袋から放り投げる親指大のルビー。
カットはされずしかし綺麗な卵型のそれの中心には魔法陣。
魔宝石とよばれる特殊な加工をしたルビーだ。簡単に言えばルビーとしても美しいが、中にはインスタントで扱える魔法が仕込んである。
宝石の価値も高く、マジックアイテムとしてはもっと価値のある一品。
これ一つで富裕地区の高級娼婦が3人ぐらいは一晩買えそうである
それを、惜しげもなく、少女に放り投げたのだ。
手に取ったリボルバーに、両手を上げて

「おいおい、俺はお前ら人間とか獣人とやりあう気はねーんだよ。だからとりあえずソレ、しまってくれね?」

まあ、味方でもないけどな、と内心舌を出しながら

セイン=ディバン > 「しゃーないでしょ、それは。実際見た目が幼いならそう扱われて然るべきなんだし」

自身をガキだと断じながらも、それを実に冷静に判断できている。
扱いづらいな、と少女は考えるが。ここではいサヨナラ、とするにはあまりにも相手の存在はもったいなかった。

まず。反応あり。やはり思ったとおりだ。そう思いつつ、少女は食いついてきた相手の言葉を聞いているのか聞いていないのかという様子で。ぽん、と投げつけられたルビーをキャッチし、値踏みする。
宝石自体も上物だが、内部に仕込みがあるな、と見切った少女は。それを何も言わず懐にしまう。

「私だってやりあうつもりはねぇわよ。今のところはね。
 ふむ……情報、ね。まぁ、このルビーはとりあえず手付けとして頂く。
 で、あの子なら良く九頭竜の水浴び場に現れるわよ。ってか、ほとんどそこで出会ってたし。
 あとはまぁ、タマモって人に聞いてみたら? あの子と私の共通の知り合いで、物知りさんだから」

リボルバーをくるくると回し、しまってから情報を提供する少女。
最低限、相手から情報を引き出すには、こちらもある程度は身銭を切る必要はある。
そこで少女は懐から細巻きを取り出し、喫煙し始める。

「……ねぇ。あの子、なんで天界に帰れないわけ?」

少し踏み込んだ質問。少女の知りたいことの一つ目だ。さて、相手は教えてくれるか。いや、そもそもその理由は知っているのか。

グラスシエル > 「だから、こうやって多少は身銭を切らないとイケないわけ。
いやー懐辛いわー、金欠になっちまう」

と、言う割には大層な物を手付けとして投げてきた少年の態度は変わらない。カラッとした笑みを向けるだけである。
同時に、脳内では思考を巡らす。
チ、扱いづれえなコイツ、今の宝石に目の色一つ変えねーとか度胸以前に可愛げがねえ
しかもど真ん中見てる辺り、魔法石の価値わかってんじゃねーか?
あーめんどくせ、脅して痛めつけて無理やり聞き出すか
なんて危なっかしい考えを巡らせてはいたが、少女はおもったより軽く情報を流してきた。九頭竜の水浴び場に来てるらしい、のは分かってはいる。つーか、娼婦街も九頭竜も巡ってるのになんで合わねーんだよあの糞ガキ、絶対泣かす。
という考えは表情には出さない。いつもの気安い笑みのまま――
しかし、煙草の煙を吐きながらの問いかけに、少年の表情が変わった。
というか、表情が消えた。それは、冒険者は見たことがあるだろうか、殺し屋にも似た、無表情である

「んー、おねーさん…なんでアイツが「帰れない」って知ってんのかな?アイツは単に迷子になっただけで、俺が保護しに来た「って事になってる」んだけど?」

と、半歩、間合いを詰める。ちょうど、もう一歩左足を踏み出して、右足を上に伸ばせば側頭部に蹴りが届く距離。自然過ぎるそれは、素人ならば気がつかないであろう足運びで

セイン=ディバン > 「その辺の事情は察するけどね。少なくとも、探し物をするなら金をケチってちゃいけないわけだし。
 ある程度は我慢しなさいよ。ボーヤ」

言葉とは裏腹な笑顔のままの相手に、少女はやれやれ、といった様子で返事をする。
同時に、何か空気がピリピリとひりついてくるのを感じる。
どうにも、お互い自分側を有利に置こうとしているのは同じようで。
やれやれ、面倒にならなければいいのだが。もしも面倒になったら……。うん。ケツを捲くって逃げるとしよう。
そう考えつつ、ぷかぷかと細巻きを味わっていれば。いよいよ相手の様子が変わり。

「……んあぁ……やっぱり魔族の国原産、血刀草の細巻きは美味いわねぇ……。
 ……ボーヤ。それ以上近づくなよ。それと、質問に質問で返すな。
 ……とは言え。私としてもアンタからの情報は欲しいわけだし。答えてあげるから感謝しろ」

剣呑な空気にも関わらず、細巻きを味わう少女。しかし抜け目無く、距離を詰めていた相手に対し。
再度、音無く構えたリボルバーを相手の額に向かってポイントする。
表情は冷たい笑顔。ニヤニヤと笑いつつ、ぴこぴこと細巻きを揺らす。

「実際の所、詳しくは知らないわよ。ただ、シャルが『捨てられた』って言ってたし。
 あの子は天界と連絡を取って無いっぽいことを言ってた。
 つまり、帰ることができないんじゃないか、って予想しただけのこと。
 はい、答えたから今度はちゃっきりかっきりしっかりアンタが質問に答えろ。
 あの子に何があったの?」

あくまでも。主導権を握るのはこちらだ、とアピールする少女。
表情と真反対に、声と精神は抑揚無く。

グラスシエル > 「この場所から逃げよう、とか都合のいいこと考えるなよ?
此処に誘ったのはお前だぜ?最後までエスコートしろよ女ァ?」

口調も声色も、変わった。もう猫をかぶるのはナシだ、めんどくせーしこの女にはそういうのは通用しないのはよくわかった。ならこちらが合わせてやる必要もない。さて――まず脅しとくか

一瞬の呼気、殺気も気配も無く、ただ脚を伸ばす。撃たれるなら其れも結構、どちらが疾いか見せてやる必要がある。
とはいえ、狙うのは側頭部ではなく咥えた煙草の、先端だけ。反応が遅れたならその火だけをつま先で消して見せて

「舐めんなクソアマ、人間の銃ごときでビビってたら戦天使やってられねーんだよ」

主導権を握る必要はある。多少の脅しは必要だが、敵対する気は無いのだ。お互いに主導権の握り合いである

が――

「……ガキんちょ気づいちゃったかー、だよなぁ」

と、突然その場にしゃがみこんでしまう。本気で落ち込んでるというか気が抜けたように、しばらく地面とにらめっこ。その後、やけに力の抜けた…でも、目つきだけは悪い上目遣いで見上げて

「なぁ、お前さんアイツの何?どういう関係? あのガキが気づいたとこで他人にボクすてられちゃったのーとか言うタイプじゃないってわかってるでしょ? なんでそこまで知ってんの?マジで」

と、質問を畳み掛ける。その表情はもう疲れ切ったオヤジ臭さまで出てる。 あー最悪だ、あのガキが順応しやすいのは分かってたけどここまで親密になってる相手がいるとか、あー、めんどくせえ

セイン=ディバン > 「エスコートしてほしけりゃ女敬えガキンチョ。
 それとも、目の前で尻でも振ってほしいか?」

相手の気配が変わったのをきっかけに、少女も地が出てくる。
最近めっきり出てこなくなっていた、男性としての側面。
流石にこれだけひりついた空気ともなれば、少女の精神も肉体も呑気をしていられないらしく。

瞬間。相手の足が伸びてくる。が、あまりにも殺気も無く、距離感的にも中てる気配が無い。
少女はそれを瞬きすらせずに見届け。……細巻きの先端の火が消えると同時に。懐からマッチを取り出し、再度点火をしていた。
どうにも。速さなら譲らない、という意味合いで更にニヤニヤ笑う。

「おぉおぉ吠える吠える。何、あれなの? 天使ってガラ悪いのが基本なの?
 そっちこそ、魔王・古竜・大妖と渡り合ってきた人間舐めんな?
 命ベットして生きるのが冒険者様だってのよ」

ギリギリギリギリギリギリギリギリ。少女の口から盛大な歯軋り音。
どうしても譲りたくない部分があるらしく。相手が折れるまで自分から折れるつもりは一切無い、とアピール。していたのだが。
相手がしゃがみこんでしまえば。おりょ、と呟き。リボルバーをしまう。

「……あぁ、その前に。私はセイン=ディバン。冒険者。
 今は呪われてこんな姿だけど、本当は30過ぎのオッサン。
 で、関係? 聞きたい? その前に質問に答えろよ。
 一方的に質問に答えてもらえると思うな、ってことよ」

見事に意気消沈の相手に、更に追い討ちの様に自己紹介だけしつつ、順番があるだろう、と言わんばかり。
ニヤニヤは更に増し、愉快愉快という心の声が漏れそうなほどだ。

グラスシエル > 側頭部に当たってれば、即死か再起不能かの蹴りを見てなお再点火する女。
度胸も捷さもいっぱしじゃねーか気に食わねえ、マジで痛い目見せておくか、なんて考えてはいたが――相手の挑発にも、パタパタと手を振って返すだけでしゃがみこんだまま立ち上がろうともしない。
やる気が失せたというか、予想以上に悪い方向に行ってる現実に疲れ果てたのだ。少なくとも、クソガキは我慢強い、あのガキが泣き言を言ってるのを見たことがない。ソレを見たことがあるのは――と考えつつも、疲れ果てた表情で見上げて

「あー、グラスシエル、お前らの言う天界の「ひとつ」の戦天使、まあ兵隊とおもってくれりゃいいよ。  …30すぎのオッサンがなんであのガキとつるんでるの?え、ゲイですか?」

へらず口はデフォルトらしい。とは言え、これ以上ここで何もしないと何も進展しない、というか疲れるだけだ。とはいえ

「めんどくせーんだよ、話長くなるし
あいつは捨てられたの、で、ソレを快く思ってない別の偉い天使が俺に命令して俺はアイツを保護しに来たの。
これじゃだめっすかね?これ以上になるとめっちゃ話ながくなるんスけど…」

と、「お願いだから返して?」的な態度になってる。
心底めんどくさがりやである。というか話が複雑なのだ
そして人間にソレを説明してやる義理もないわけで

セイン=ディバン > もしも相手の行動に、少しでも殺気やら、当てるという気配があれば。
少女としても行動するもやぶさかではなかったが。
流石に、無駄に歳を食っているだけはあり。その辺の察知はお手の物、であった。
目の前で疲労困憊な相手を笑いながら見つつ、少女はさて、腰を据えてお話しようか、とばかりに。路地に打ち捨てられていた木箱に腰掛ける。

「ふむ。自己紹介ご苦労。兵隊、ね~。……何と戦うんだか。
 ゲイじゃねーっつー……あぁいや。バイ? どっちでもいいよ、私のことなんざ。
 興味ねぇだろ? こんな人間如きの生態とか」

割と律儀に自己紹介してきた相手に対し、少女は茶化すでもなく受け答えをする。
続いての言葉には頷きつつ話を聞き。

「ふむ。……つまり、天界も一枚岩じゃない、ってことね。
 ふぅ……せめてその捨てられた理由ってのを教えなさいよ。
 協力できることなら協力するし。というか、その理由を教えてくれれば……。
 次のアンタの質問に答えてあげる。ギヴ・ア~ンド・テイク」

肝心なところを語らぬ天使に、少女は細巻きを突き付け、さぁしゃべれ、とばかりに目を細める。
主導権を握った訳ではないが。相手が弱っているなら追い討ちをかけるべし。
少女的には、目の前の天使に同情する部分も無いわけでは無いので。ちゃんと情報は払うつもりらしい。
いわゆる。冒険者故、組織に属する天使に同情、というやつである。

グラスシエル > 「決まってんだろ、魔族とか裏切った堕天使とか、まぁお前らが想像してるような連中とだよ。 天使が戦うって言ったらカミサマに背く連中って相場決まってんだろ」

あー、ダルい。もう帰って温泉入りたい
そんな事を考えても、目の前の重要人物を捨て置くわけには行かないわけで。
面倒くさそうにゆっくりと立ち上がる。ゆらり、とした動きとは裏腹に、瞳には炎のように燃える色した瞳が揺らめく。此方が少年の素のようで。

「その理由ってのがめんどくせーし胸糞悪い話なんだよなぁ…まあいいか。1から説明してやるよ。
まず、天界つっても、色々あってだ。
主神の元戦乙女やら地上の英雄を拾い上げて敵対する種族を打ち倒そうとする連中
唯一神の元で絶対的な王国を築き上げようとしてる連中、
んでもって、俺らの天界は、神様っていう絶対的な支配者を崇める宗教的な存在。まあ、お前らの世界で言う宗教的な「いない」カミサマを崇めて纏まってる宗教国家って思ってくれりゃ良いよ。まあ、それぞれの天界は別個の世界だしお互い不干渉だけどな。天界っていっても世界や次元が違いすぎていくつあるかわからない。 なので、ここでは俺らの天界についてだけ説明するぞ?」

心底面倒くさそうだが、最初から説明するようだ

「で、宗教国家――といえばわかると思うしさっきの台詞の通り、天界は1枚岩じゃないわけ、何人もの大天使がいて、お互いに派閥争いをしてる。次の大天使長の座や、天界での権利、権益のためにな。 あーくそ、これだけで胸糞悪いっすね天使
で、今まで天界を牛耳っていたクソ天使共――元老院の連中が昔実験的にあるものを秘密裏に作りました。
戦闘能力に秀でた、天使のホムンクルス――天使同士の愛によって生まれるわけではなく、戦天使として調整されて「造られた」存在――まあ9割は失敗作だったわけだが、1割は成功、少数個体は戦天使として配属――まあ、此処まで言えば誰のことかわかるよな?」

と、気味の悪いモノを見た後のように、唾を地面に吐き捨てる。ガツ、と少年の靴の先端が地面をえぐって

セイン=ディバン > 「あ、そ。どこも変わんないわねー。人間も天使も魔族も。
 戦争戦争戦争戦争。なーにがおもしろいんだか」

大方予想していた回答なだけに、驚きはしない。というか。
むしろ呆れるという感じ。結局、どの種族もやることが一緒なのだ。
なんだかなぁ、と思っていれば、相手が立ち上がり。少女はその様子をただ見つめている。

「はいはい。お聞きしましょう?
 ……ん~。……ん~~~?
 うわぁ、本当に面倒くさそう」

勉強嫌いの少女、聞かなきゃよかったかなー、と思いつつも。
この事柄からは逃げるわけにもいかないので。真面目に話を聞く。

「いよいよ俗物っぽく聞こえてきたわね、天界。
 ふ~ん。なるほどね~……。
 ん? あれ? 今の会話の流れだと……。
 じゃあ、シャルはグラスシエルが発見して保護すれば、天界に普通に帰れる?」

思ってた以上に、天界ってパラダイスでもないなぁ。でもまぁ、そりゃそうかー。
そんな風に話を聞いていた少女だが。そこで少女はその事実に気付き、尋ねる。
要するに、あの可愛らしい天使の少年は。自発的に家に帰れないだけなのか、と。

グラスシエル > 「そもそも悪魔の中には、天使から堕天した大天使とかが魔王だったり、元々どこかで神様として崇められてたのが宗教戦争に負けて悪魔扱いされたりしてっからな。外敵がいなきゃまとまらねーのは人間も天使も一緒だ。」

肩をすくめてみせる。そのまま、煉瓦の壁にもたれかかりつつ

「で、まあ最近、他の派閥が結構力をつけてきて、元老院を脅かしてるわけ。そこにもし天界にあるまじき人造実験なんてのがバレたらまずいっしょ? ってことで、証拠になる天使を処分しようとしたわけ。此処は本来俺たちも手を付けない地域だからな。まあ、俺は他の天使に保護してもらってる身だ。俺も同じ造られた存在なわけ」

と、まあ肝心なとこはボカしておこう。女の問いかけにはコクリと頷いて

「だから、俺は最初から保護しに来たって言ってんだろ? だから素直に引き渡してくれねーかな?」

なんか思ったよりチョロいぞこの女。このまま引き渡してくれお互いの幸せのために。つか、あのガキが好きな相手と事を構えたくないです

セイン=ディバン > 「あ、それ私の妻がそのタイプだわ」

しれっ、と。本当にあっさりそんな事を口にする少女。
たしか、妻自身がそんなことを言っていたような気がする。

「へー、なるほどねー。
 アンタも大変なのねぇ」

あまり感情を込めずに言う少女。しかして。その天使たちの境遇に関しては、思うところもあるようで。
なにせ、親に捨てられた経験が今の少女を作っているのだ。

「……ん。そうは言ってもね。私もシャルとの連絡手段があるわけでも無いし。
 まぁ、今度会ったら話くらいはしておくけどさぁ。
 でも……シャルが天界に帰ったとして。確実にあの子の身柄の安全は確保できるの?」

話を聞いている分には、どうにもすんなりことが運ぶとは思えない。
無論、あるべき存在があるべき場所に帰るのは賛成なのだが。
保障やらもなしにあの天使っ子を説得して帰らせるのが本当に最良なのかどうなのか。
確証無いいまの状況では、明言が出来なかった。

グラスシエル > 「―――」

少年の瞳が、ゆらりと揺れた。
やっぱこの女のニオイはそういう事か、と納得する
そうなればますますこの女とあのガキは引き剥がさないといけない
魔族とは休戦状態とはいえ、天使が魔族、魔王と親しくなるとかありえねーし。つか堕天しちまうし
確信を得たように少年の拳に力が入る

「確保できるようになったから迎えに来たんだよ
あのガキの事を可愛がってた奴がようやく大天使になってな
俺らみたいな奴らでも幸せに暮らせるとこにしようとしてる
まあ、身の安全で言ったらこっちのほうが確実に上だろ?」

まあ、政治の道具に使われるかもしれない
再び、戦天使として戦場に出るかもしれない
しかし、捨てられるよりは良いだろうと言う考えである。

「ここまで喋ったんだから、いい加減こっちの質問に答えてくれねーかな?
お前は、あのガキのなんなんだ?可愛いからとか同情なら、というか、幸せを願うなら、『迎えに来たよ』って、アイツの絶望を消してやって、天界で暮らすのが一番幸せなんじゃねえの?」

と、女の本心を探るように。妻といった。魔王なのか、悪魔なのか分からないが、愛する相手がいるなら結構。魔王の旦那(どう見ても女だが)の時点で殺してやりたい気もするが、そうさせないのはあのガキのためである。

「お前だって、妻とやらと離れ離れになったらいやだろ?あのガキだって帰りたがってたんじゃねえの?」

セイン=ディバン > 「おぉ、怖い怖い。その目……。
 あぁ、最近はとんと見ることのなくなった。邪魔者を排除する時の目だわ」

妻と結婚した当初は。いろんな場所でいろんな存在にその目で見られた。
故に。その目をする相手に対して少女が油断することなどありえない。

「ふぅん……なるほどねー。
 それはまぁ、確かに。そういうことなら」

相手の言葉にはうんうん、と頷き。頷きはするものの……。
どこか、上の空というか。素直にその交渉に応じる様なつもりはない、という雰囲気も醸し出しつつの返答であった。

「あぁ、ゴメンゴメン。確かに私ばっかり質問してたわね。
 う~ん。関係としては……恋……人……?
 ……あ~。ごめん。それに関しては。否定させて?」

質問に答えよ、と言われれば。素直に謝罪し、答える。のだが。
若干、その答え方に疑問系が混じってしまったのは。まぁ、実際恋人としての立ち位置を完全に確立したわけでは無いので。仕方ないと思う。
だが。

「それは、そう。そう言われれば確かにそうなのだけれども。
 私はここで、胸を張って言える。このささやかな胸を張って。
 ……シャルは、私の側が一番幸せだ、ってね」

その中途半端な恋人は。殊更に自身ありげに。
そんな事を口にした。

グラスシエル > 「ん?あ?そう見える?
まあ、天使としちゃ、魔王の旦那さんとなったら――なあ?
安心しなよ、アンタがどうにかなったら、あのクソガキがびーびー泣く
そういうのは嫌なんだよ」

「な、わかるだろ?このまま此処にいても、天界の事を思い出すたびにに悲しむのは、お前だって見たくないはずだ」

こちらの要求に、頷く相手に心底胸をなでおろす
そして、疑問形が混じる恋人と言う単語に、微かに耳を疑った

「おいおい、お前は妻がいるんだろ?こちとら本気で全部ぶっちゃけたんだ、そういうお巫山戯は無しにしてくれよ」

質の悪いジョークと思ったのか、苦笑気味にクツクツと笑っていた
だが、その笑いが止まる。同時に、この一体が魔力で歪むほどの殺気が生まれる

「――あ?
魔族の妻が、天使を恋人にして幸せだ?
なんか俺、耳が悪くなっちまったかな?」

冗談ではない
いくらあのガキと深いつながりがあろうと、許せない
魔族だか魔王とかどうでもいい
天使を手元に置いて、恋人とも言えない半端な関係で

「てめえの側にいいるのが幸せだ?恋人にもなってないのに?
いいから黙ってこっちに引き渡せや。こちとらアイツの帰りを待ちわびてる奴がいるんだよ」

セイン=ディバン > 「えぇ見えますとも。怖い怖い。天使怖ーい。
 ……ふ、ん。冷静なのね。そういう所は」

からかうように、おちょくるように言う少女。
しかし、相手のその様子に、おどけた様子を引っ込める。

「うー。それを言われると弱いなぁ」

実際。帰りたがっていた感じもあったし。涙も見た。
となれば、真っ当に考えれば帰してあげるのが道理なのではあるけれども。
それはあくまでも、理屈の話であり。感情はまた別になってくる。

「おふざけに聞こえたなら、平和で素敵なことね。
 ……ふふん。地が見え隠れしすぎよ、グラスシエル。
 余裕無さ過ぎるわね」

笑っていた相手が、殺気と怒気を噴出させる。
一瞬、背筋に冷たい汗が流れたが。真っ直ぐに相手を見据え、言い返す。
ここが、少女にとっての譲れない点だというかの様に。

「だ~ってしょうがないじゃ~ん。
 エッチしてたら懐かれて。この間なんて、シャルが私を犯して、『お姉ちゃんはボクのものだー』って言ってきたのよ?
 さすがにそこまで言われたら悪いきしねーっつー。ねぇ?」

凄む相手に、飄々とした様子のまま答える少女。
実際、申し訳ないと思う部分が無いわけでもないのだ。
だが、少女としても愛着がわいてしまった以上、はいそうですか、とすんなり帰したくないし。
そもそも、安全になったから帰っておいで、とか。虫が良すぎるとも思うので。

グラスシエル > 「よーく覚えておけよ?俺はあのガキの味方であって、お前ら人間の味方じゃねえぞ?」

これは脅しではなく、事実だ。
天使は人間を救うのではない、神を信仰するものを救うのだ
だから、目の前の人間を手にかけるのは別に良心は欠片も痛まない

「ようやく、帰る場所を作れたんだ。アイツがようやくあのクソガキと対面できるんだ。アイツも、あのガキも、幸せになれるんだよ
それをてめえなんかに邪魔されてたまるかよ!」

自分を救ってくれた大事な天使
自分が唯一惚れた天使
でも、求めたのは自分じゃなくてあのクソガキ
だったら――

「これ以上邪魔すんじゃねえよ!」

ダン!と地面を蹴り割る。同時に魔力の風圧がそこを中心に広がる
これ以上は無理だ、コイツは危険だ、殺せ、と冷酷な自分が命じる。
同時に、それをしたら、どれだけあのガキが傷つくかを考える
最悪の状況を考えながら、一歩、一歩、間合いを詰めて

「てめえにゃ妻がいるんだろ?
恋人ってのも自信がなさ気だったよな?
それなのにたったその程度で、好かれたから、気に入ったからってだけでこの話を蹴るならもうやめだ
てめえをツブしてあのガキの未練をすっぱり断ち切ってやるよ」

7割本気3割は脅しである。これで相手が怯えれば、まだ交渉の余地はあると。ゆっくりと路地裏に追い詰めていく

「頼むよ――アイツを、あのガキを、二人共、幸せにしてやってくれ」

セイン=ディバン > 「そりゃ知ってる。シャルから聞いたもん。
 天使は人間を助けない、って」

相手の言葉には、掌をひらひらと振りつつ、わかってる、と意思表示。
むしろ、何を今更事実の再確認をしているのだ? という様な様子すら見えるだろう。

「……? アイツ?
 ……ふ、っむー。なんだか知らないけど……」

いよいよ一触即発という様子の中。相手の言葉。その一節が引っかかる。
クソガキ、という部分は。恐らくあの可愛らしい天使のこと。
なれば、アイツとは? 少女はそこに興味を惹かれる。

「よっ、と」

何かをしてくるだろうな。そう直感していた少女は、ふわり、と空中に浮かぶ。
重力軽減の魔法により、少女の体重は半分ほどになる。
いつもの脚力で地を蹴るだけでも、実に軽やかに舞うことができた。

「いるね。最愛の妻が。そりゃもう可愛いのさ。
 そうだね。恋人になるって約束したわけでも無いし。
 ……ふ、ん。随分とまぁ。なんだかね。
 その余裕の無さ。あぁ、そういうことなのかしら」

凄まれ、距離を詰められても。なお少女は怯まない。
いや、むしろ笑顔を強めてすらいる。

「なんだか知らないけど。随分難儀な立ち位置みたいね。グラスシエル?
 ……断る、とここであしらうのは簡単だけど。それじゃああんまりにもあんまりだし~?
 オッケーわかった。今度シャルに会ったら、まずきっちり迎えが来ていること。それと、帰れるんだよ、大丈夫だよ、ってことを教えてあげましょう?」

とん、とん。何度も地面を蹴り、ふわふわと宙を舞う少女。言葉こそ理解を示し、優しげだが。その表情は何かを企んでいるのが丸分かりであろう。

「その代わり、帰るかどうかはシャルの判断次第。
 プラス、その伝言をしっかり伝える代わりに……ねぇ?
 私一応冒険者だから。ただ働きって嫌いなのよねー」

グラスシエル > 「人間が空を飛んだ気でいるんじゃねえよ、地べたを這いずってろ」

少年は腕から魔力の鎖を生み出す。チェーンバインドの魔法はセインを捉えようと伸びていく。もし、捕らえられるならシャル程ではないが力任せに引っ張り、その手中に収めようと。もし、逃げられるなら自分も飛べばいい。

「最愛の妻とやらと愛し合ってくれ、だから、あのガキは返せ。
ただの同情だろう?哀れみだろう?だったら、幸せにするために返してくれ」

笑顔を強める様子にカチンと来たのか、鎖、或いは飛翔で間合いをつめようと――だが、約束の言葉に、懐から革袋ごと宝石を放り投げる。ありったけの財産全てだ。金で動く相手ではないことは承知してる、だが、少年の精一杯の誠意だろう

鎖は宙を貫き、ふわりと舞う相手の虚空を虚しく貫いた後霧散する

「言質は取ったぞ? 俺の宿も教えておく――」

と、魔力のこもったカードを一枚、風に載せる。平民地区の小さな宿の住所が載っていた

「さっきの宝石が10個は入ってる。これが全財産だ
あのガキをこれ以上たぶらかすな。お前が本気で愛してるのは最愛の妻なんだろ?」

と、やけに友好的な態度の相手に、訝しげに眉をひそめる。
ここで言質を取っただけで返していいものか――いや、どっちにしても、この女にたぶらかされる前にあのガキを見つけて連れ帰ればいい、と考えて

セイン=ディバン > 「あんっ。あら大胆」

ふわふわと宙を踊っていた少女だが、魔力の鎖が迫れば、くるり、と身を翻す。どこかイタズラっぽく。目を細めたまま、相手を見つめる。

「そりゃ言われるまでもなく。……返すも何も。束縛はしてない。
 同情でも無いし、哀れみでもない。愛してる以上は傍においておきたい。
 ……んだけど。それを決めるのは、シャル自身にすべきよね」

どこまでいっても、態度を変えない少女。余裕の表れ、というわけでも無い。
実際、あの天使に帰れることを話したら。案外にあっさりと、帰っていってしまうかもしれないから。
不意に、投げつけられた袋を難なくキャッチするものの。
少女の表情は、退屈そのものといった感じで。

「はいはい。ウソは言わないわよー。
 アタシだって、信頼がウリなわけだし」

続いて飛んだカードをキャッチし、少女は袋を弄ぶ。中の宝石に対する興味など、欠片ほども無い様子だ。

「ん~。いらな~い。金には困って無いし~?
 ……うん。いいわよ。約束する。
 今度シャルに会ったら、エッチには誘わない。伝言は全て伝える。
 た、だ、し。そこでシャルが帰らずに私の傍にいたら……。
 その時は諦めなさいな。ボーヤ」

袋を投げ返し。少女はケタケタと笑う。それはまるで悪魔が人間をからかう様な。そんな深いな笑いで。

少女は、言葉を投げかけたかと思えば……。

「そうねぇ。報酬はぁ。
 うん、決めた。グラスシエル。今度私に会ったら、アナタ私に抱かれなさいな」

そんな。突拍子もなく、素っ頓狂なことを。報酬として要求していた。

グラスシエル > 「てめえのそれはただの同情だ!」

それは、決めつけというよりは、少年にとっての確信めいた叫び。
そうでなければ、恋人だと言えるはずだ。でも、恋人未満ならばそういうことだろうと、まだ、恋愛感情に疎い少年は思う

帰ってくる、帰ってくる。そう、ようやく、あるべきシアワセノカタチが帰ってくるのだ。邪魔なんかさせない。
少年の表情は、追い詰められたような表情になってるかもしれない
革袋を、クルクルと回し、そのまま放り投げられると、片手でキャッチする。約束を聞き入れたように、少年は踵を返しながら

「あのガキが、天界を忘れられるもんか」

と、自信あるようにいいながら、報酬の要求には

「てめえがあのガキを返してくれるならこんな身体でよけりゃ好きなだけどーぞ? てめえが満足行くような身体じゃねえけどな」

と、背中を向けたまま言うと、そのまま消えていく

セイン=ディバン > 「……さ~て。どうかしらね」

相手の強い言葉には、僅かに表情陰り。
自身でも、愛だと断言できない部分には気づいているのではあるが。
それを認めたくないから。口にはしない。

そうして、少女は姿消す少年の背をただ見つめていた。
しばらくして、路地裏に完全に一人になったのを確認すると、一度大きな溜息を吐く。

「……あぁもう。昔の私はこんなんじゃなかったと思うけどなー」

何かに執着するなんて。そう思いつつも。その自分の変化を楽しんでいる部分もあり。

少女は、さぁどうしたものか、などと呟きながら。自身の家へと帰っていった。

ご案内:「貧民地区/娼婦街」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「貧民地区/娼婦街」からグラスシエルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にジェイルさんが現れました。
ジェイル > 先日耳にした、裏の店。
その店を確認するため、普段はあまり近づかない貧民街に足を向けた。
近づかないのは治安が悪いからなどという理由ではなく、自身が本来堂々と表通りを歩き回っていられる立場ではないから。
尤も本人は逆を付いて堂々と人間のふりをして暮らしているので、貧民街に来る理由もなかったのだ。

「……この辺りのはずなんだが…」

周囲には、何もない。
崩れかけた建物が並んでいるばかりだ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にザイケルさんが現れました。
ザイケル > 「毎度あり。そんじゃまたよろしくな」

ある意味情報という商品を欲しがる者が多い貧民地区。
一見廃屋に見える建物から出れば挨拶を返して路地を歩く。

それなりな儲けに懐が温まり、このまま娼館へでも行くかと考えて歩き。
その道中、住人を避け、時には小銭を渡して話を聞きながら歩いていれば先に知った顔を見つけ。

「ジェイルか?こんな場所で何をやってるんだ?」

そこには知人の女、珍しい場所で見たものだと歩み寄って。

ジェイル > 「……どこだ…?」

流石というべき隠蔽で、何処がそうなのか全くわからない。
片っ端から開けて回るかと悩んでいた矢先、後ろから不意に声をかけられればびくっと肩を跳ね上げて。

「!?
 おま……っ、その、前に言っていた店を…探しに……」

色々とあった故の、歯切れの悪い返答。
今までであればまっすぐ顔を見たのだろうが、それもしない。
いや、出来ない。

ザイケル > 「どうかしたか?
あぁ、あの店か。見つけにくいからな…」

声をかければ驚いたのか肩を跳ねさせる姿に肩を震わせて笑い。
何をしているのかと聞けば、そう言えばと思い出し納得をする。

「どうせなら案内するか?変な場所に迷い込んでも面倒だろ?」

どうせ後は娼館にでも行くつもりだっただけ。
ならば女の為に時間を使うのも悪くはないと考え、
案内すると言えば馴れ馴れしく肩に腕を回していき。

ジェイル > 「べ、別に…どうもしていない。
 廃屋に見えるところばかりでどこが当たりなのかわからん…


視線を逸しながら言いつつ、そのまま改めて周囲を見回す。
何度見ても、廃屋が並んでいるようにしか見えない。

「…そうだな。頼む」

片っ端から開けて、マフィアの隠れ家でも引いたら一大事。
そう思えば、大人しくついていくほうがいいかと考えた。
肩に回ってくる手には、借りてきた猫のように縮まって。

ザイケル > 「そうは見えないんだけどな。
そういう場所にあえて隠してるって場所だしな」

なれないと全部同じ廃屋に見えるかと女の視線を追いかけてみて。
迂闊に開けていない事には用心深いなと関心をする。

「変に開けて浮浪者のたまり場に迷い込まなくてよかったな。
そうなってたら俺でも助けられないんだよな」

肩に腕を回し、まるで借りてきた猫の様な様子になんだ?と思いながら案内をして歩き出し。

ジェイル > 「いいから気にするな…!
 確かにこういう場所ならいい話はありそうだが…」

ブラックなんだろうな、と內心思う。
尤もブラックだろうが別に問題はないのだが。
元が斥候であればこそ、下手に蜂の巣があるかもしれない場所を突くようなことをしなくて正解だったようだ。

「…その時は私一人なら逃げられる。
 通る隙間もないほど囲まれでもしなければな」

一方的に気まずさを感じているなど口に出せるはずもなく。
連れられるまま一緒に歩いて行く。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からジェイルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からザイケルさんが去りました。