2017/09/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイーリスさんが現れました。
イーリス > 夜の貧民地区は、なじみのあるハイブラゼールと同じく賑やかだ。
特にこの辺りは娼館街ということもあって、目を惹く明るさと賑やかさに包まれている。
通りは着飾った娼婦やら男娼やらはもちろんのこと、それを目当てにした人々の活気がある。

そんな中、ちょっとした騒ぎが、とある娼館前で起こっていた。
その中心に立つ細身の男、と思しき人物は、最初こそ愛想笑いを浮かべてはいたが、今は最早その表情はうんざりしたもので、
すでに相槌さえなく、ただ時折ため息をつくばかり。

そもそも、なんでこうなったんだ…と見上げた空には、薄雲掛かる下弦の月。
はぁ、と何度目かのため息をつき、左右に視線を馳せてみる。
そこには煌びやかな女性が2人。
見ようによっては、いや、野次馬連中からすれば、「両手に華」ではあったのだが。

古物商との取引に、慣れない王都まで足を運び、貧民地区で取引を終えたのは先刻。
それを終えて、一宿を求めてウロついたのが、この場所、ということになったまでは良かったが。
何しろこの辺りに関しては、地理は明るくない。
だから、近くの少女に声をかけたのが…拙かった。
田舎から出てきたカモ、とでも思われたのか、こっちでどうぞ、いやいやうちで、と知らぬ間に2人の女性に腕を引かれている状況に。

そして気付けば。
最初こそ、自分自慢の女性たちだったが、今となっては、お互いの非難合戦になっている。
その豊満な胸の谷間を腕に押し付ける演出付なのは、さすが商売柄、というべきだろう。
ただ、細身の男、と思われているであろうこちらにとっては、特に心惹かれるわけでもないのだが。

だが、周りはそうじゃないようで、「両方買ってやれ」だの、「兄ちゃん、今夜は3Pだなー」だの、
まったく好き放題言うのだから、この状況を如何に打破するか、いよいよ本格的に考えなくてはならなくなりそうだ。

さて、どうするか。
この2人の娼婦を押し付けるカモ…もとい、通行人でもいるのか、
それとも何か他に騒動が起きるか、兎も角そんな期待を込めて、いまだ非難合戦続く女性たちから、通りへと視線を投げて。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイーヴィアさんが現れました。
イーヴィア > (この時間にもなれば、もう店の方はとっくに閉めている。
事務やら確認やら明日の準備やら、其の辺りの確認を一通り終えたら
未だ飯を食えていないと、夜の街へ繰り出したのが先刻の事だ。
適当に店屋モノを平らげて、さて、適当にふらついてから戻ろうかと
そんな気分で大通りを歩いていた、そんな時に――ふと、聞きつける騒ぎの音
何やら騒々しい女二人の喧嘩声に、人ごみからひょい、と顔を覗かせる野次馬の一人
この辺りで県下なんて日常茶飯事では在るけれど、娼婦らしき二人が
喧嘩してまで取り合うような上客とは、はて、一体どんなやからかと、巻き込まれているらしき男の方に視線を向けてから――)

―――……、……何してんだアイツ。

(ぽろり、思わず咥えていた爪楊枝が落ちた。
周囲からさんざ色男だの、両方買ってやれよだの騒がれている相手の顔。
確かに、旗から見れば整った顔立ちの青年、と思われても不思議ではないのかも知れないが

――少しだけ、考えた後に、後ろの方から人ごみを掻き分け進んで行く。
そして、ひょい、と覗き込んでは、『青年』の方へと歩み寄って行き。)

嗚呼、こんな処に居たのか…お客さん、何で又こんな所で迷子になってんだ?

(わざとらしく大仰に声をかけては、其の肩をぽむりと叩いて見せよう。
振り返れば、一応困ったような顔をしている――実際は、微妙に笑いを堪えている顔の男が
きっと浮かんでいる筈で。)

早くしないと、商談終わっちまうぜ? コイツが纏まらないと、アンタ破産モノだろうによ。

(掛ける言葉は、そりゃあ適当にでっちあげた話だ。
けれど、娼婦だのと言う物は、大概金の匂いと動きに敏感な物だ
今、此処で引き止める事で、この「カモ」が無一文になるとしたら――
さて、どんな反応をするだろうか)。

イーリス > 通りで遠巻きに囲む野次馬連中は、顛末をにやにやと人の悪い笑みを浮かべてみているばかり。
それも、好奇心にまみれた表情で、となれば、さすがにため息が深くなる。

「なあ、お嬢さん方。お嬢さん方がどれだけ魅力的か、は十分に分かったよ。
だから、とりあえず腕は放してもらえないか?」

これがモンスターか、自警団か軍の男相手なら、実力行使も辞さないが、相手は商売熱心な女性である。
そうなると弱いのは仕方がない。
ことさら穏やかな声色でそう声をかけて、すっかり忘れていた愛想笑いを浮かべる。
とりあえず腕を、と片腕を引こうとすれば、反対側の女性がここぞとばかりに引っ張るし、
いやいや、違う、と慌ててそちらを引っ張ろうとすれば反対側が、という何とも拙い状況。
結果、人混みの中から声がかけられるまで、右に、左にと右往左往するだけ。

「―――っ!」

その声に視線を馳せ、あぁ、と思わず安堵したような声が零れたものの。
すぐに、平静を装い、常の涼やかな、ともすれば聊か怜悧にさえ見える表情を浮かべ。

「あぁ、…いや、すまないな、少しばかり綺麗な花を眺めていたところだ。
…―――ということで、お嬢さん方、見ての通り、私は急いでいたんだった」

若干ギクシャク、とってつけた言い訳めいた台詞と、社交辞令等を交えながら、
こちらへとやってきた男をやや見上げれば、何とも言えない表情を浮かべている。
そりゃこっちも同じだ、と一言言いたいところではあるが、とにかく平静を装ったまま、
どうにか女性たちの腕から抜け出すことに成功すると、

「いや、まったくだ。折角の儲け話が水の泡になるところだったよ。
…じゃあ、麗しいお嬢さん方、また機会があれば。ではな、良い夜を」

ひらり、片手を上げると早々に挨拶を切り上げて。
さあ、急ごうか!とそこは本心込みの声をかけては、渡りに船、な男の背を軽く押して、早々に立ち去る。
とにかくこれ以上の面倒は御免だから、実に足早に、その人混みから共に去る心算で。

イーヴィア > (人前で、噴出しそうになるのだけは堪えつつ
逆に、其の笑いを堪えている顔が険しく見えたかも知れない
女達の腕を解いて、早々に逃げ出す事を選択されれば、己もまた素直に人込みへと
道を開けて通す様にと腕を振って周囲に促し。)

―――……麗しいお嬢さん?

(野次馬の輪を抜け、共に足早く退散する其の最中
背後に置いてきた彼女達へと聞こえない位の所へ離れた辺りで
――思わず、そんな言葉を呟きながら、くつくつと肩を奮わせて背後をからかおう、と。

ぽんぽん、と、肩に乗る手へと、もう大丈夫だろうと安心させるように己が掌を乗せては
くるりと肩越しに振り返り、改めて、相手の顔を――男装の麗人たる女の姿を見やり。)

クク、まさか、あんな所で掴まってるとは思いもしなかったぜ?
嗚呼いう時は、きっぱり断っちまいな、其の方が向こうも慣れてるんだしなァ。

(幾ら相手が悪意の無い商売女だからと言って、優柔不断では寧ろ皆が困るぞ、と
まぁ、其処まで強い忠告でもない、半ば戯言めいた物言いでそう告げては
角を曲がり、人気の無い方へと進んだ辺りで、僅か、歩みを緩めようか)。

イーリス > 人の輪を避けてしまえば、ちょっとした見世物めいていた騒動が終焉を迎えたことで、
野次馬連中も娼婦たちも興が冷めたみたいにいつもの状況へと戻っていく。
脚も止めず、ともかくこの喧騒から離れようと相手の背を押してはいたが、
肩越しに振り返って吐いた言葉に、背を押していた手が軽く拳を握り、
こつん、とその背を叩く。

「一応、仕事熱心な彼女たちへの賛辞の言葉だろ。………笑うな」

立場上、というべきか、この風体なのだから、そういう賛辞も言わねばなるまい。
しかも、こちらから声を掛けた手前、本来なら「買うべき」花を買わずに来たのだから、せめて言葉ぐらいは、である。

ようやく喧騒も落ち着いてきたから、手に触れるその掌に促されて、歩む速度を落とし、

「私だってあんなふうに掴まるとは思っていなかった。
ただ宿を聞いただけだぞ?
まぁ、彼女たちはそれが仕事なんだから、そう無碍に断るのも何となく、な」

相手の言う言葉に理解を示しつつも、優しいのか、優柔不断なのか、言葉が淀む。
相手が男であれば、勿論往なして終わり、な状況を見れば、ずいぶんと手ぬるいともいえるが。

「しかし、助かったよ、イーヴィア。
あのままだったら、朝まで問答を続ける羽目になった。ありがとう」

ようやく一息ついて、相手を見上げて礼を一つ。
この辺りまでくれば、喧騒は遠くで聞こえるし、あまり気を張る必要もないだろう。
表情に浮かぶのは、安堵と感謝のそれであった。