2017/08/07 のログ
ご案内:「貧民地区 骨董通り周辺」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 夏の夕暮れ時、気が向いて貧民地区まで足を伸ばす。
ここには骨董品が集まってくるという噂の通りがあった。
貧民地区という治安の悪さゆえ倦厭するものも多いが
その分出回っている品物はいわくつきのものや掘り出し物などもあるらしい。
もしかしたら盗品や偽造品などもあるのだろうがチェシャが知ったことではない。
そんなものに引っかからないような鑑定眼だけはあると自負していた。

「♪~~~」

鼻歌を歌いながら露店に並ぶ品々を冷やかしていく。
悪質な客引きがこっちの腕を掴むのを滑らかに回避し足取りも軽く
ウィンドウショッピング(そんな上等なものではないかもしれないが)を楽しんでいく。

チェシャ=ベルベット > (何かティエに渡せる良い物置いてないかな……
 って、こういうところのものより富裕地区の上等なもののほうが良かったかな)

お目当てのものが見つかるわけもないだろうとはわかりきっているが
それでも何か面白いものが見つかればいいなと期待してしまう。
粗末な棚の上に並ぶ薬品瓶を眺めれば
惚れ薬だの、発情抑制剤だのエリクサーだの怪しい効果のものがわんさと並ぶ。

(こんなところにある薬品は何か混ぜ物が仕込んであるに違いないから
 買うのはなしだな。惚れ薬なんて無くっても全然困ってないし)

ご案内:「貧民地区 骨董通り周辺」にリンさんが現れました。
リン > 露店の一つで、大真面目に値切り交渉を試みている藍色の頭があった。
どうやら大悪魔が封じられたという古ぼけた小さな壺を安く買い求めたいらしい。
しかしそれは、多少魔道に通じているものなら人目でインチキと分かる
べたべたとわざとらしく札を貼り付けられたものであった。

「へぇ~こう見えて黒の王の時代の逸品なんだ?
 それでそれで! どれぐらい安くしてくれるの?」

それを知ってか知らずか、藍色の髪の少年は熱心に中年男の店主を身振り手振りで口説いている……

チェシャ=ベルベット > 見知った顔が露店で大真面目に値切りに精を出している。
それだけならばいいがどう見てもそれは偽物だろうというものに
引っかかっているのならばどうするべきか。
ため息一つ、リンの背後に立つと声をかけた。

「おい、そんな偽物にあっさり引っかかってるんじゃない。
 どう見てもそんな安物が年代物のわけないだろ。
 どうしても買いたいなら止めはしないけどさ」

大仰に眉をひそめ、今にも買い付けてしまいそうなリンを止める。

リン > 「あっ」

くるっと背中の相手に固まった笑みを向ける。
チェシャの声はリンのみならずもちろん店主にも届き、露骨な渋い顔をさせる。
値切りをするどころの話ではない。
あはは~と薄笑いでごまかして逃げるようにその場を去る――チェシャの腕を引っ張って。

「あのさ~ぼくだってあれが一山いくらの陶器に適当に貫禄つけただけだってのはわかるの。
 それでもあえてああいうしょうもないのを買いたくなることだってあるの。わかれよ! もう!」

件の露店からある程度離れると、インチキに助けられた礼を言うどころか渋面で文句を言いはじめる。
本気で言ってるのか、騙されていたことをごまかしているだけなのかはいまひとつわからない。

チェシャ=ベルベット > 「そりゃ失礼したね。
 君の持ち金を君がどう使おうと文句はないから
 あのしょうもないのを好きに買ってきたら? それじゃあ僕はいくから」

礼など言われたくて止めたわけではないし、
相手の図々しさにはある程度慣れていたから特に言うことはなかった。
そんなに屑品に金を払いたい趣味があるのなら止める気もなく
引っ張られた腕を払うと、足早にリンの元から歩き去ろうとする。
折角楽しい気分で露店を冷やかしていたのに興ざめだとでも言うように。

リン > 「あー、ごめん、冷たくしないでぇ~チェシャさまぁ~!
 冗談です冗談です~、悪徳インチキ商人からわたくしめごときをお守りくださりありがとうございますぅ~」

冷たくあしらわれると打って変わって媚びたような声を作って歩き去ろうとするチェシャに追従する。かまってほしいらしい。

「にしてもチェシャ様はどのようなご用件でこのような薄汚れた場所に?
 目当ての品があるならこの犬も一緒にお探ししますよ、へへっ」

自称美少年の容貌が台無しになるような卑しい笑みであったと言う。

チェシャ=ベルベット > 媚びた笑みで自分を追いかけてくるリンに辟易した様子で肩をすくめる。

「うっとおしいから猫なで声作るな!
 ……人に物を贈ろうと思ったけど何がいいかわからないから
 ちょっと露店を冷やかしていただけ。いいのがあったら買うつもりだけど」

嘘をついても仕方ないからとりあえずの目的を伝える。

「君はケチっぽいから人に物を贈ったりしなさそうだけど
 もし好きな相手に贈るんだったら何を贈ったりする?
 参考にならなさそうだけど一応聞かせろよ」

横柄な態度で腕を組み、リンに尋ねる。
足は相変わらず止まらずにのんびりと露店の間をすり抜けるように歩きながら。

リン > 「馬鹿にするな……!
 ぼくだって効率的に相手の心を長い間つなぎとめる手段として
 安価なアクセサリーを送ったりすることだってある……!」

一転して拳を握り、真面目くさった顔でどうしようもないことを言ってのけた。
贈り物、と聞かれるとふぅむ、と自らの顎に手を添えて考える素振り。

「ティエンファ氏かー。あまり豪華なものだと気後れしちゃいそうだね、彼。
 旅の武芸者だからさっきの壺みたいなのはじゃまになるだろうし……
 魔除けにもなる銀の装身具なんかいいんじゃない? 指輪や首飾り……髪留めなんかも面白いかもよ。
 それに、アクセサリーは相手が身につけてくれるのがわかるからね~」

チェシャの後に追随しながら、ごく真っ当に聴こえる助言を口にする。

「まあ、君のプレゼントならなんでも喜ぶだろうけどね!
 本人に直接聴くのもアリじゃない?」

あはは、と笑って。

チェシャ=ベルベット > 「僕が思っていたより君ってどうしようもない奴だったんだな……」

まぁわかってはいたけど……などと呟いて
つづくリンの言葉にはかぁっと頬を赤らめた。

「べ、別にティエが相手だなんて言ってないじゃないか……!
 まぁ、あってるけど……。
 僕もアクセサリーは考えたけど、ティエって武闘派だから身動きが束縛されるものって
 苦手かなって思ってさ……。でも髪留めくらいならありかも。
 ティエの髪、長いしちょうどいいかもしれない……うん」

リンにしては好意的かつ比較的まともな助言を受ければ
アクセサリーが置いて有りそうな露店に目星をつける。
露店の一つに足を止め、髪留めの並びに目をつければ先ほどとは打って変わって真面目な顔で商品を眺める。

「丁度君、髪が長いからどれがいいかアドバイスしろ。
 僕は髪留め買ったことがないし、結ぶ時簡単なもののほうが
 不器用なティエにも楽に留められるだろうし」

そういって一つ手にするのはオニキスのような石がはまった銀の髪留め。
ちょうど長髪を結うのに手頃な大きさのものだった。

リン > 「バレバレ。だって君、こういうのは一途なタイプでしょ?
 嫉妬しちゃうなぁ~」

わかりやすく赤面するチェシャにいいものを見れたとばかりに口元を歪め、冗談めかして言う。
指輪は殴る時武器としても使えるよねなどといらんことも付け足す。

「彼の長い髪は確かに飾ってあげたくなるよね。帝国人ってみんなあんな墨色の髪なのかな?
 んー、あ、それでいいんじゃない? 細工も確かだし、華やかすぎず地味すぎない」

ちょうど彼の手にした銀の髪留めを見て、うんうんと頷く。

チェシャ=ベルベット > バレバレってなんだよ、とむっとするが間違ったことも言われてないので怒るに怒れない。
ただ口を引き結んで、リンのからかいにぐっと堪えるように黙した。
殴るために使われる指輪が哀れに思えてきたので、指輪だけは決して送らないでおこうと思いながら。

「結構帝国人みてきたけど、皆だいたい墨色の髪が多い。
 ここらではあまり見かけない色だよな。

 じゃあ、僕の候補はこれにしておこう。
 ちびすけだったら何が似合うかな……。君の髪色も珍しい色しているから
 髪留めを選ぶのは大変そうだな……」

そういいながらもう片方の手で髪留めを選び、ヘアピン型のアクアマリンのような石がついたものを手に取った。
なんとはなしに、リンの横髪を分けてやり、そこにそっとヘアピンを飾ってやる。

リン > 「お、決まったかい? 誰がちびすけやねん。……」

犬か? あ、さっき自分で犬って言ってたなぁ。などと口の中で呟いて。
さりげない動きでヘアピンを飾られれば、え、と怪訝な顔に。

「……ってちょっおまえ、何してんの?」

元々の女顔は、ヘアピンで余計に少女めいたものになってしまう。
予想もしなかったことに、赤面こそはしないが狼狽を隠せない。
口をぱくぱくと開閉させる動きは、少なくとも嫌悪している様子ではなさそうだ。

チェシャ=ベルベット > 「何って、髪留め選び。お前の」

狼狽えるリンに平然とした様子で答える。
少女めいた風貌にヘアピンはよく似合ったので満足そうに薄く笑う。

「ちびすけ、女みたいな顔しているんだからもっと着飾ればいいのに。
 そうしたら案外モテるかもよ。
 それじゃあこれとこれ、買おうっと」

すいませーんと、露天商に声をかけ先ほど選んだティエンファ用の髪留めと
リンに飾ったヘアピンの代金を支払う。
本当にこれでいいのかな、という疑問が心の何処かにはあったが
ティエンファなら何を贈っても喜んでくれるだろうという先程のリンの言葉に
勇気を貰って買ってしまった。

紙袋に包まれた髪留めを受け取ると、まだ何か狼狽えてそうなリンにキョトンとした顔を向ける。

「何変な顔しているの? ヘアピンくらい大した値段じゃないし。
 それともそれじゃあ嫌だったとか? 図々しいな。
 ……助言の礼は言わないよ。助けた借りをいまここで返したことにしてやるから」

リン > 「…………え、何言ってんの? 嫌じゃないしむしろその正反対なんですけど!?
 あー!!」

怒りと恥ずかしさで顔を赤くし半ギレになる。
最後の短い叫びは羞恥に《アクリス》が反応して一回りちみっちゃくなったことに対するもおであった。

「モテるのにとか余計なお世話だっつーの!
 今でもモテモテです! こう見えても彼女とかいますしー!
 このウスラトンカチ! どっかで痛い目見ろ!」

がすがすと至近距離からチェシャの胸元めがけて頭突きを繰り返す。

チェシャ=ベルベット > 「はぁ? なんで縮んでるんだよこのちんくしゃ!
 彼女いるってまじで? うっそだー!
 痛いなー!なんなんだよもう!僕がウスラトンカチならお前はちくわ大明神じゃん!」

ガスガスと胸元に頭突きをくらいながら何故か照れて半ギレになるリンに抵抗する。
彼が何故照れているのか全くわかっていない様子であった。

「っていうか彼女いるなら僕に嫉妬する必要ないじゃんバカ!
 彼女に詫びろよ!ああもう……っなんだよ面倒なやつめ!
 それじゃあ僕はいくから!バイバイ!」

頭突きを繰り返すリンにこりゃたまらんと撤退を決め
くるりと身を翻し黒猫に変身すると、口に髪留めの包みをくわえて
さっさと貧民地区の汚い路地を駆け去っていってしまった。

ご案内:「貧民地区 骨董通り周辺」からチェシャ=ベルベットさんが去りました。
ご案内:「貧民地区 骨董通り周辺」からリンさんが去りました。