2017/05/22 のログ
■リン > 「冗談だって……。愛され系美少年はそんな醜態は晒さないよ。
まったく、もっと上手なやり方があったと反省してる。……」
向けられた感謝の言葉と微笑みを、そっぽを向いて受け流そうとする。
「本当に全然ダメだ。ぼくは“小さい”よ……」
聞こえるか聞こえないか、そんな声量で零す。
怪我のうちに入らない、とまで言われれば怪訝な顔をするが。
言葉にはどうやら強がりのようなものは感じられない。
この間斬られてもわりと大丈夫なほうな少年と遭ったことを思い出すが、それとは全く別物だ。
本当に大丈夫なんだろうな、と納得してしまいそうな説得力が彼にはあった。
こんなことも一度や二度ではないというのが、古傷からは伺える。
くるりと反転して背を向け、剥き出しの《アクリス》を担ぎ、数歩離れる。
思い切り鈍器のように扱ったそれには凹みも歪みも見て取れず、それもまた呪物としての力のうちなのかもしれない。
「怪我は治るかもしれないけど、傷のせいで病気にならないようにね。
……本当に大丈夫そうなら、ぼくはもう行くよ。こう見えても忙しいんだ」
掌で自分の顔を触れると、まだ熱い。
別に今後の予定など入っては居ないが、これ以上彼にくっついているのは、
なんというかよくない、そんな気がした。
■ティエンファ > 「愛され系美少年ねえ…まあ、嘘じゃないけど、自分で言うかねそう言う事
いや、あれが一番良い手さ 俺も、無駄に殺す事にならないで良かったしな」
さら、と物騒な事を言う少年。 …物陰から賭場での戦いを見ていたリンは分かるだろう。
武器を持たなくても、相手が大男でも、そうする事が出来る技量を、武芸者は持っている。
そんな血生臭い身体であるのに、リンの呟きに返す表情は子供のように柔らかくて。
「今小さいなら、これからもっと大きくなれるさ 大丈夫、今日助けてもらった俺が保証する」
独り言のようなその呟きに、しっかりした声でそう返した。
怪訝なリンな顔には、どん、と胸を叩いて強がって見せる。
そんな行動が流石に傷に響いたのか、ちょっと顔をしかめつつも、
明るく笑って見せす姿は、リンを安心させるだろう。
背を向けるリンを見れば、人通りのある場所まで送るよ、と申し出るけれど、
「そうか? …残念だけど、まあ、仕事があるなら仕方ねえやな
…リン!」
歩き出す楽師の名前を呼ぶ。
振り返る楽師に、明るく笑う少年。
「またな 次会った時は、上手いもん食わせてやるから覚悟しとけよ」
暗い賭場で血生臭く戦う武芸者。
義憤に駆られて怒り狂う正義感。
そして、リンに微笑む子供の様な顔。
様々見せて、少年は身を翻し、足音も無く貧民街に消えるのだ。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/賭場」からティエンファさんが去りました。
■リン > 「嘘なら嘘で、言っているうちに本当になるかもしれないでしょう?
……ならよかったよ。ぼくも血なまぐさい場面は苦手なんだ」
平和主義者というわけでもないが、血を見ることはどうしても苦手だった。
ティエンファが殺し合うことをためらわない人間だったとしても、それで嫌いはしないが。
「……ほんと、気楽に言ってくれるよ」
あまりに陰りや遠慮のない楽天的な言葉には、リンとて苦笑するほかない。
逞しく、強く、自分にないものを持っていて、それでいて恐ろしくない。降参だ。
「ああ、せいぜい楽しみにしてるよ。配当金も忘れないで」
呼ばれて振り返り、やや力なくも笑ってみせる。
そうしてまた、リンも歩き出した。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区/賭場」からリンさんが去りました。