2016/11/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」にアイオスさんが現れました。
アイオス > 薄汚れた酒場の厨房で、短い銀髪の少年が手を動かしている。
コトコトと音を立てて煮込まれている鍋の横で、小さな獣の肉をさばく。
本来ならば兎肉を……といいたいところだが、ここは貧民地区。
全うな食材なんてものはありゃあしない。

チュー、チューと鳴く代用品となるものの喉を切り裂いて血を抜き、灰色の毛皮と細長い尻尾、小さな爪や歯を取り除いて切る。切る。
元が何やらわからぬくらいに。
それから、野菜くずが煮え立つ鍋へ放り込んだ。

『アイオス。アーイーオスったら!』

年経たが張りのある声に首を動かしちらりと振り向くと、厨房の暖簾をかき分け恰幅のいい初老の女がのぞき込んでいる。

『厨房はその辺にして、配膳を手伝いな。
客が増えてきたよ』

ピンク色に染まりつつある布巾で両手をぬぐうと、少年は焼きたての黒パンとシチューを乗せたトレーを受け取って、客の方へ急いだ。

アイオス > 汚い身なりの給仕が数多く動く中、若干浮いたように目立つ顔つきは、煤で汚れたのとも違う、独特の灰色肌。異民族だろうか。
150にも満たない小柄な身長、だがしかし手慣れたもので、場末とはいえ少なくない客の間をくるくると動く。

『ハイよ、エールお待ち!
ん?ああ、あの子かい。アイオスってんだ。
新顔だけどね、前のジョンと違ってよく働く子だよ。全く……なんでこの辺にいるのか知らないけど』

丸テーブルにたむろする常連客の前に、ドンッと安酒の入ったジョッキを乱暴に置くと、客の一人に問われた女主人は答える。

『ジョンかい?
よくサボる上に娼婦に貢ぎすぎて借金拵えたみたいでね。
売上くすねようとしたんで、素っ裸でゴミと一緒に放り出したよ。
今頃は野犬の餌になってるだろうさ』

彼女は空の食器を下げるために厨房へ戻った少年に、言葉を投げかける。

『アンタ!これ以上頑張っても給料は上げられないよ。
悪いことは言わない、貴族様へ奉公したらどうだい。学はあるんだろ?』

少年は戸惑った後青い目を伏せ、無言で首を横に振る。
女主人は腰に手を当て、ためいきをついた。

『……もしかして訳ありってやつかい。ま、そういう子はいっぱいいるけどねえ。
アンタはここらで終わる奴じゃない。アタシの方で何人か当たってみるから、ちゃんと考えとくんだよ』

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」に魔王リュウセンさんが現れました。
アイオス > 少年は答えない。
酒樽が積み上げられている棚へ赴き、銘柄を記した札と内容の合致、品質などをチェックする。
とてもじゃないが、これだけでもいち貧民のもつ技能とはいいがたい。

(あ、この樽漏れかけてる。グレードを落として低価格の棚へ移動、別のやつと取り換えなきゃ。
おばさんはかわいがってくれるし、ちょっと臭いけどそこそこ良い職場だ。
……でも、そろそろ潮時かな)

従業員としての持ち物は、粗末な給仕服だけ。
私物だって、大事にしている盾をのぞけば、本が数冊しかない。
今はお試し雇用のままだ、正式契約まで数日。労働力をいかんなく発揮し、評価が上がっているのは間違いない。
だが……もし明日消えても、まだ店の損失にはならないだろう。

魔王リュウセン > 貧民地区はいつ来ても 賑やかさと暴力が表裏一体。
何処からともなく現れたフードを深くかぶりぼろ布で体を覆った
…フードから髪がこぼれている上に体つきから辛うじて女と分かる存在は、酒場の扉へと中へと足を踏み入れた。

丸テーブルは常連客とおぼめしい身なりのモノで埋まっていた。
何処か席は空いているんだろうか?まぁ ちょろちょろととある目的もある事から、
何とか空いていそうな席を見つけると そこにちょこんと腰かけた。

「…取り合えずエール くれ」

注文 聞いてくれただろうか??

背丈は小さいが 得体の知れない魔力の濃さ。
そこだけ妙に常連客から揶揄われるとかがない。寧ろ寄ってこない エアポケット的な酒場には一寸浮く光景。

アイオス > ここの女主人の耳は良い。
何しろ“地獄耳”と二つ名を頂戴しており、自身や店に関する話を10km先からでも漏らさない。
喧騒で煩い店内で注文を聴き分けるくらい、朝飯前だ。

『はいよ!エール一杯!
アイオス、何やってるんだい!注文だよ!』

朝飯前だが……幸か不幸か、魔力がどうのとかそういう話にはてんで疎かった。
悪党の親玉だって、この酒場に来ることもある。周囲がドーナツ状に引くのもかまわず、奥に向かって声を荒げた。
少年は難しい顔をしながら酒棚からひょっこりと覗くと、客の姿を視界にとらえる。
と。どくん、と動悸が激しくなり、よろりとふらつきかける。
新客が黙していても放つ、濃密な魔力にあてられたが意識をぎりぎりで保ち、熱に浮かされたような表情でエールの棚を探した。
ほどなくして目的の樽を見つけると、半ば本能のようなものが働き、できるだけ質のいい樽からジョッキに注ぐ。
荒い息を整えて落ち着かせると、冷静を装っておそるおそる、ぽっかり空いた席に運んでいった。

「お待たせしました。エールになります……」

魔王リュウセン > 注文をして よもや 見た目が若いから出ないんだろうかと
妙にエアポケットと化した席に腰かけた胡散臭いフードとぼろ布女は一人そんな事を思っていた。

「…襤褸いからな 今 きちんとした格好の方が良かったんだろうか?」

悪党の親玉ならまだよかった このぼろ布女の正体は 魔王が一柱。
二つ名を持つ上に 真面に振舞えば魔王としての威厳とかあるのだが 今はただの小物と称している。
小物にしては魔力 一応出して―無意識に人除け状態にしている事は気づいていない。

本当に来ないんだろうか。
お、来た。何か ふら付いているような給仕少年の姿。
顔を上げれば フードの奥底から青瞳が少年を見つめる。

「うん。ありがとう。…ふらついているが 大丈夫なのか?」

ことっと置かれた ジョッキに注がれたエールを受け取ろう。ぐいっと傾けて一口飲む。

「うん、うまい。エールは場所問わず美味しい。」

アイオス > テーブルの傍に立ち、ジョッキを静かに置くと、少年は一礼して下がろうとする。

『アイオス、新しい方の相手をしてやんな。こっちは常連ばっかだから』

内心、えぇーと思いながら、頭を上げると少年の青い輝く眼が、フードの奥とばっちり合った。
やっぱりだ。このひとの周囲だけ、妙に魔力が濃い。
本人は意識しているのだろうか、膨大な、いや暴力的な魔力の圧に押しつぶされそうになるのを踏みとどまり。

「いえ、お気遣いありがとうございます……。
お酒だけでは胃に良くないでしょう、ご一緒に軽食いかがですか?」

そうして無理やり笑いかけ、小刻みに震える指先でテーブルに置いてあるメニューを指さした。
一応、やんごとない方々が来た時のために、まともな食事も取り扱ってはいる。
少年の背後では、常連客にシチューを振る舞っている女主人の姿があった。

『はあ……しかし奉公先か。アタシの知り合いじゃあ軍人とあらくれに偏ってるし。
ちょうどうまい具合にお忍びの偉い貴族様か、その従者でも居ないもんかねえ』

なにやら呟いている。

魔王リュウセン > 女店主とその給仕少年のやり取りをフード奥底より眺め聞いていた。
ふむ 少年は此処に雇われているらしいが、何かと視線が、体が震えているようだ。よもやその原因が己とは知らずに。

まだ全力ではない魔力の圧。少し濃いね程度に抑えている積りだが、
それを浴びる者によっては強すぎたり黙ったり色々と弊害が発生しかねず。

小刻みになんで震えてい…魔力発散していたか!隠蔽スキルが全くない為、蓋をするような感じになるが、
魔力の圧倒的な暴力たる流れを徐々に普通のヒトよりは濃いね程度に蓋をする様に閉じただろう。
これで目の前の少年の様子が変わればよい限りだが。

「そう。…これ位でいいか。
 軽食な、メニュー…何か美味しそうなものを見繕ってくれ。
 頼んだぞ。…   貴族?    奉公先??」

女主人の独り言に ぴくっと反応した少女。エールの入ったジョッキを一先ず置くと メニューをぱらぱらとめくったが、
お薦め若しくは 今日の一押し的な品目が分からない。目の前の給仕少年なら分かるだろうと 任せる的に声をかけよう。

アイオス > 周囲に満ちた魔力が、みるみるうちに薄くなってゆく。
同時に少年の顔色がよくなっていくのは、きっと気のせいではないだろう。

「そ、そうですね。
この時期だと肌寒くなってきましたし、温かいものがいいでしょう。
黒蜜パン、白身魚の揚げ物、野菜とキノコのスープ、でどうでしょうか。
直ぐお持ちしますので」

心なしか先ほどとは声の調子も打って変わり、ハキハキとした様子でおススメを告げる。
貧民地区でも少し力のある酒場なら、持っているであろう闇ルート。
新鮮な野菜やキノコ。あるいは港町直送の海産物。
税をかけられることもなくすり抜けてきた食材は、調理され、手ごろな値段で提供される。
まあ、そこから出た屑が先ほど一般客向けのメニューに早変わりするわけだが。
いそいそと厨房に向かう背中が見えなくなってから、向こうから女主人が声をかけてきた。

『おんや、聞かれてたのかい。
いやね、あの子、アイオスってんだけどさ。勤勉だけどアタシの酒場じゃあ持て余しててねえ。
このまま腐らせるのも惜しいから、どっか適当なお偉方に奉公に出そうかと思ったんだけど。
まあ、そううまい具合に話があるわけないさね』

それだけ答えると、アッハッハッハと腹をたたいて笑い、常連客の相手に戻る。
どうやら、従業員を含めこの酒場にいる誰も、貴方の身分に気付いていないようだ。

魔王リュウセン > 給仕少年の顔色が頗るよろしくなってきた。
先ほどのエアポケットは埋まった節はない、広がりもしないが狭まりもしない。そんな感じ。

(…此方の魔力の暴力の犠牲者と化していたようだ すまぬ。)

「うん、 宜しく。」

貧民地区も闇のルートも一寸その手の事を一時期遣っていた事もあり
出し抜く方法や色々と裏の事は熟知している積り。最近は手を出していないが大分変った事だろう。
之から出される料理は一般向けというか御偉方向けの料理なのだろう。
少年が奥に引っ込んでしまったので 暫し 女主人との会話に勤しもう。

「うん、そう。持て余しているのか。奉公に出す ほうか。
 話はどこで誰が拾うかは…    分らんよ。」

常連客へと戻っていく女店主の背中へと ぽつりと言葉をこぼす。
身分は解りにくかろう フードを被ってぼろ布に隠された正体が魔王で領土持ち つまり 王族、貴族としても名のある存在だと。

給仕少年が戻ってくる間 フードを取るか考えたが 彼が戻ってくれれば 何となく 女主人が言っていたことを告げてみよう。

アイオス > やがて香ばしい匂いが厨房から漂い。
小皿に2つ3つ重ねられた黒蜜パンと、からりと質のいい油で揚げた白身魚のフライ、湯気を立てる熱々の野菜とキノコのスープ。
それらを客の前にコトリと置くと、どこにしまってあったのか、綺麗に磨かれたナイフとフォーク、熱の伝わりにくいよう気遣われたスープ用スプーン。それらを真っ白なナプキンと一緒に脇に置く。
談笑している女主人をジト目で見やり、恨めしそうな顔を一瞬したが、何事もなかったかのように顔を戻す。

「そういう話が振られたのは事実です。
でも、まだまだ学も見識も足りません。そういう伝手もないですし、よほど運がよくなければ貴族様や、将校様のお耳に入ることはあり得ないでしょう。
ですので、おかみさんにそこまでしてもらうわけにはいきません」

これはいよいよもって、明日早く、この地区を出たほうがいい。
少年は心の中でそう決める。何やら決意の表情が、表にもわかるがその内はうかがえないだろう。

魔王リュウセン > エールは…料理が出来る間に飲み干してから、空ジョッキをコとっと置いた。
料理が出来る香はやはりおいしそうに思えてならない。小腹がすいているのも手伝ってから待ちわびた料理が置かれると
やはりフードを深くかぶっているのが阿保らしく思えてならない。

少年と女主人を視線でちらちらとみていたが 特に見ていただけ。
何を思ったかは定かですらない。

「ふむ… 伝手 そして 運  耳。
 それが今そろっているとしたらどうするのかな?」

フードをぱさりと下し フードに隠されていた姿は顔だけだが貧民街には似付かわしくない綺麗さを持つ。
手慣れた振舞方で 料理を食べ始めた。食べながらだが 少年へと再度視線を向け、

「少年よ 一寸 聞きたい事があるが 奉公したいのか?」

一寸そこに座れ、と空いている椅子を指さしてみよう。座ってちょっとお話ししようか、的な喋り方だった。

魔王リュウセン > 【後日に改めて 続く】
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」から魔王リュウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 酒場」からアイオスさんが去りました。