2016/07/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にノネットさんが現れました。
ノネット > 「……」
首輪に繋がれた鎖はポールに括られており、鎖の届く範囲でしか、彼女は動けない。そのことに人々は何も思うことはなく、通り過ぎていく。それは彼女が奴隷であるから。そして、忌まわしきミレー族の一人であるから。

「誰か、買って……ご主人様……」
ひとり、ぽつりぽつりと主を探すように呟かれる言葉に、人は見向きもしなければ、何も思わない。それが当たり前だというようにその場を後にする。ご主人様が見つからない苦しみや辛さに彼女は押しつぶされそうになっていた。

ノネット > 「……一人は、寂しいよ」

そう言い切るかくらいでその場に座り込む。繋がれた鎖が、じゃらりと音を立てる。それ以外に音は聞こえない、あるのは自然の音だけだ。早く買われて愛されたい、性玩具として愛をこの体に受けたい。彼女の頭の中にはそれだけしかなかった、それだけが、彼女の望みで希望だから。

「誰か……誰か」

うわ言のように、壊れたおもちゃのように、繰り返して紡がれる。表情は虚ろで、ぼんやりと虚空の一点を見つめている。やはりというべきかそんな彼女に、誰も手を差し伸べる様子はなく。通る人は皆素通りし、あるいは彼女に邪魔やら、死ねばいいと言った罵倒を口にして去っていく。何一つ、代わりはなかった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にエレイさんが現れました。
ノネット > 「……私を、犯して、ご主人様」

虚空を見つめたまま、願い事をひとつ。と言っても買われるなりなんなりしてご主人様を得なくては、叶うことのない願い。ヘタをすればこのまま誰にも買われることなく、罵声を浴び続け一生を終えるかもしれない、何ていう恐怖感にも苛まれてきて。運よく奴隷を探している誰かがふらりとここを通りかかり、私を見てくれたら、なんて願いはするものの、叶うのか。

エレイ > 通りかかった男の一人が、また彼女に向かって罵声を浴びせる。
死ねだの何だのといった、代わり映えのしない暴言。

しかしその男は、鈍い音とともに突如として真横に吹っ飛んでいった。

「……思うにお前が死ねば良いのではないか? いや別に殺す気はないのだが…」

そう呟いたのは、無造作に拳を突き出した姿で立っている金髪の男。
自らふっ飛ばした男に目を向けてみたが、その男は地面に横向きに倒れて動かない。
しかしピクピクと小さく痙攣しているので、どうやら命に別条はないようである。
それを確認すると、金髪の男は少女の方に向き直り、へらりと緩い笑みを浮かべた。

「……よう。大丈夫かね、お嬢チャン?」

近くまで歩み寄ればしゃがみ込み、首を傾けて顔を覗き込みながら片手でぽふりと頭を撫で付けて。

ノネット > 「ぁ……」

罵声を浴びせて去っていく男の一人が、吹っ飛んでいた。というのも鈍い音に顔を上げた瞬間に、男は吹っ飛ばされているような位置に横向きに倒れていた。一体誰が?こんな私のために?なぜ?そんな疑問が、頭を埋め尽くす。というのも、彼女はこうして奴隷として買われるのを待つ生活を始めてから、暴言を吐かれたことはいくらでもあるが、今回のようなその相手が吹っ飛んだりというような――守られると言ったことは、なかったのだ。
 彼女の表情に、困惑しているような様子が伺えるであろう、声が未だに出ない。掠れたような小さい声はいくらでも紡げるのに、なぜだろう。彼女が彼の問いかけに、ちゃんと声が出せるようになったのは、彼が彼女の頭を撫で付けた後だった。

「あ、の、大丈夫、です……ありがとうございます、ご主人、様」

 ゆるい笑みが心を落ち着かせていく。微笑んだりと言った様子は未だ見られる様子はない。しかし声は出せるようにはなってきているらしく少し片言になりながら、感謝の気持ちを伝える。まだ主ではないのに、ご主人様と呼んだのは――彼女なりの暫定的な呼び方であり、特に深い意味はなかった。

エレイ > 殴り飛ばされた男は結構な距離を飛んでいた。彼女の視点からだともう足の裏ぐらいしか見えないかもしれない。
なお突然に発生した暴力事件により、周囲から人は失せていた。

「ン、ならばよし。……んでキミは何か、こんなトコに繋がれてるとゆーことは奴隷か何かですかねぇ?」

片言の返事が帰ってくれば笑みを深め、そのままよしよしと更になでてやり。
それから首を傾げたまま問いかける。
見れば明らかに判ることではあるし、彼女がミレーである以上、その辺りは問うまでもないことかもしれないが、敢えて。

「それもこーして表に出されてる訳だから……売りに出されているといったところかな」

自分の顎に手を当てふむぅ、と唸りながらそう呟くと、彼女の姿をジロジロと眺めてゆき。

ノネット > 「そう、です……私、ずっと、私を奴隷として買ってくれるご主人様を探していて」

 撫でられれば、嬉しそうに髪と同じ色の尻尾が揺れる。それを見てはっとなり、恥ずかしそうに左手で尻尾を押さえる。恐らくご主人様の手前、それは失礼だと躾けられているからの行動であろう。
 彼の質問には嘘偽りなく素直に返事をした。ジロジロと眺めるような視線に恥ずかしそうにほんの少しだけ身動ぎをする。つながる鎖が無機質に、小さく音を立てて、動いたことを知らせる。といっても、動作は見ているから鎖の音がなくても彼にはわかるだろうが。 

「……ご主人様は、その、なぜ先ほど、私を」

 守ってくれたのですか? と聞きかけて、口を閉ざした。恥ずかしさとそんな野暮なことを聞いてどうするんだ、という自問自答が始まったからだ。恥ずかしそうに少しだけ頬を染めて、目線は彼から少しだけ逸らし、鎖骨のあたりを見つめた。

エレイ > 「なるほどなという顔になる」

返事を聞けばウンウンと納得したように頷く。
その間も頭を撫でていたから、尻尾が揺れているのも目についた。
それを恥ずかしそうに抑える仕草を、微笑ましげに目を細めて見つめ。
続く彼女の言葉には、きょとんと眉を持ち上げ

「……んあ? 女の子が無意味に罵倒されてるのを放っとけるワケがないという意見。ましてやこんな可愛いコに死ねとか一般的に考えられないでしょう?」

男は異邦人であり、王国に蔓延るミレー族差別の常識には一切囚われていない。
故にこんな台詞が当然のように出てくる。
頭を撫でていた手を、彼女の染まった頬へと移すと、するりと撫でながら顎をくい、と上げて顔をこちらに向けさせ。

「……まああそれはそれとして。えっと…名前はなんというのかね? ちなみに俺は謙虚な旅人で冒険者のエレイというのだが呼ぶ時はさん付けで良い。ご主人様でも別に構いはしないが…」

それから、ふと思い出したように彼女の名を問いかけ。ついでに変な自己紹介も付け足した。

ノネット > 「わ、私は、可愛くなんて……っ」

 男性らしいしっかりとしている手が頬を伝い顎にくればくい、とあげられて。目線がしっかりと彼の方に向かされてしまう。こういう時は目線を泳がせたくなるものだが、泳がない、泳がせれないのが彼女。自分の赤い瞳と、彼の碧い瞳が混じりあうような、錯覚。溶けこむような不思議な感覚に浸りかけていた所で、彼は名を名乗る。

「ええ、と、それなら、続けてご主人様と呼ばせていただきますけど、いやなら、嫌と言ってくれたほうが、私としては助かります……私には、決定権はないので
 申し遅れましたが、私はノネット、と申します」

 呼び方の面に言及した後、自分の名を名乗る。自分で決めれないのはやはり、自分に決定権がないと思っているからで。気付けば片言さも無くなりつつあった、時折しっかりとしたソプラノボイスが、このあたりに小さく響いていた。

エレイ > 「決定権とか細かいこと気にするなよ。別にイヤじゃないしキミが気軽に呼べる呼び方がそれだってんなら俺様からは文句はにい。──ノネットだな、ふむ」

次第にしっかりしてきた喋りに目を細めつつ、笑顔を見せてそう答える。
名前を教えてもらえば、復唱したあと視線を落としてまた考える仕草。
程なく顔を上げ、改めて彼女の顔を見遣り。

「とりあえず……買い手がついていないんだったら俺様がノネットを買っても問題はないということだな?」

そう問いかけながら、彼女の首輪に繋げられている鎖をじゃら、と片手で持ち上げて。

ノネット > 「……ご、しゅじん、さまっ」

 なんて、優しい人だろう。鼻の奥がツンとしてきて、目が潤む。私を呼ぶその声が、暖かくて、優しい。

「は、はい! ご主人様の性処理から身の回りのお手伝いくらいなら、頑張ります……! ご主人様の性処理は、私にとっては愛なので……ぁ」

 嬉しさのあまり勢い余って余計なことまで口走ってしまったと、口をパクパクさせる。引かれてないかな、と心配そうに彼を見つめた。

エレイ > 「お、おう……まあなんだ、そういう事ならどちかというと話は早いかな」

勢い込んで言葉を並べる彼女に軽く面食らうも、特に引く様子もなくすぐにフフ、と悪戯っぽく笑う。
男が彼女を買うとした理由の半分かそれ以上は、そちらの目的のためだからである。

「じゃあお買い上げっちゅー事で……この鎖はもう要らないだろうな。──せいッ!」

そして笑顔でそう言うと、手にした鎖を両手で掴み、ブチッと紐でも千切るみたいに引きちぎってしまった。
この程度はオーラを出すまでもない。
ふぅ、と一仕事したように息をつくと、きょろりと周囲を見渡し。

「……で、お会計はどこですればいいだよ? 会計係がいないならもうタダで持ってっちゃうぞ?」

等と言いながら、彼女の手を取ってゆっくりと立ち上がらせようと。

ノネット > 「わ……!?」
 本日二度目(?)の困惑。彼は何者なのだろうか、頑丈そうな鎖を一発で引きちぎった。それも、紐と変わりがないくらいに容易く。自分を買い取った主である彼は、一体どんな人なのか――今の関わりだけでは、想像はつかない。

「ぁ、お会計はこちら、です……けど」
 小さな声で「連れ去るのなら、今のうちです」とタダで持って行くこともできると言ったニュアンスのことを告げる。立ち上がれば豊満な胸は普通に揺れて。

お会計の方まで行くのなら、相場よりかなり下の値段でノネットを買うことができた。
行かなければ、彼女は会計係に見られていないことを確認しながらエレイとともにその場を後にした。

エレイ > 立ち上がった彼女の囁き声に、また軽く思案して。

「──ふむ。……ま、買うって言った以上流石に全くのタダはな。だが…コイツが奴隷屋の懐に収まるかどうかは運次第といったところかな」

そう言って笑うと、彼女を繋ぎ止めていたポールの近くに金貨を一枚放置しておく。
彼女を正しく買った場合の適正価格に見合うかどうかは知らないが。
ともかく、男はそのまま会計係の目につかないように彼女を連れてその場を去ってゆく。

はてさて、その後あの金貨が奴隷商の目に止まるか、それとも通りがかりの誰かに拾われるかは二人の知るところではなく。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にノネットさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からノネットさんが去りました。