2016/03/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリーユエさんが現れました。
リーユエ > 貧民地区、大通りから少し外れた道の端に少女の姿はあった。
何をしているのか、今はその地域にいるお年寄りの方を診ている。

今日は貧民地区と呼ばれる場所を散策しようと思い立った。
勿論、何かが起こりそうな細い路地や人通りの少ない場所には行かない様にする。
そう思って向かったのが今朝方の事。
大通りで目に付いたのは、道の端に佇んで、ただ座っている子供の姿。
声を掛け、体の調子が悪いのだという事を聞く事となる。
お金がないので医者には掛かれない、それを聞けば、自分が診ましょう、そういう話の流れになった。
診断ならばお金を取る程の事でも無い事を伝えれば、その子供も気兼ねなく誘いを受けてくれた。
因みに、その子供を診た結果は、少しばかり風邪気味だったというもの。
もう少し体を温めてゆっくりと休むように伝え、別れた。
それを聞いていた他の方々も集まりだせば、子供一人だけにというのも躊躇われて、来る方々の相手をする結果となったのだ。
そして、今診ているお年寄りの方が、最後の一人だった。

どうすれば良いかを的確に伝え、頭を下げるお年寄りの方に、頭を下げて返す。
気が付けば、日ももう沈みかけていた。

リーユエ > (帝国の方々も、王国の方々も、環境は違えど人としては変わらないものですね)

ちょっとだけ疲れたかもしれない、そんな事を考えながら、壁に背を預けて深呼吸。
なかなか見る余裕もなかった周辺を、見渡すように目を向けていった。
平民地区と呼ばれていた所と違い、そこまでのものとは言わないけれど、活気はある。
人々が行き交い、語り合い、そして消えていく。
どこにでもあるような光景と少女は感じていた。

手にしていた器、そこに注がれていたエールを口に含む。
診ていた方々の一人が、お礼にと渡してくれたものだ。
安物で悪いとは言っていたけれど、少しばかり乾いた喉を潤すには十分だった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にイニフィさんが現れました。
イニフィ > 「んふふ……盛が出るわね?さすが医学生さん。」

そんな笑みと、そして声。
ちょうど大通りと貧民外を結んでいる細い路地のところに、彼女はいた。
少し模様が違う、真新しい格好と新調した新しい旅行カバン。
それを傍らに置き、脚を組んだ格好で木箱の上に鎮座していた。
ロングスカートなので中身までは見えないものの、肘を突き、掌で顎を支えている。
ふわり、とその場から降りると少し釣り目気味の目で、リーユエを見た。

「こんばんわ、リーユエ。…こんなところで慈善活動なんて、頑張ってるわね?
それとも……たまたまなのかしら?だったら私も見てほしいわねぇ?」

このあたりが疼くの、と胸元を押さえて少しふんぞり返り。
――――正体がばれている以上、それを包み隠したりなんかしない。
むしろその会話すらも楽しんでしまおう、そんな表情が見て取れる。

リーユエ > もう少しだけのんびりしてから今日の処は戻ろう、そう考えていた時だった。
聞き覚えのある声に、その方向へと顔を向けた。
声の響きから距離はある、そんなに焦って振り向く必要は無いのだと判断して、ゆっくりと。
視線の先に見えたのは、大通りから外れた方向へと続く細い路地。
木箱の上に佇む女性の姿だった。
以前会った事のある、邪な存在として認識していた相手だ。
自然と緊張が走るものの、慌てず騒がず、落ち着いておく。

「こんばんは、イニフィさん。
偶々こうして私に出来る事があり、それをしていただけ、別に慈善活動なんて思ってはいません。
本当に具合が悪いのでしたら、診る事は致します。
けれど、この前の様な事だけは為さらないで下さい…約束出来ますか?」

どの様な存在か分かっているのに、それでも、こうして会話が成り立つ相手ならばどうしても出来る限り対応をしてしまう。
確かに前は何かをしていたのだが、それがどこまで害意を含んでいたものか分からない。
ただの悪戯だったのかもしれない。
実は襲おうとしていたのかもしれない。
そこまでは判断出来なかったからだ。

イニフィ > 邪な存在というのは当たっている。
だが―――それはあくまで人間として、という意味であろう。
あいにく此方は人間ではない。たとえ邪悪だとなんだといわれようとも。
少し顔がこわばっている。緊張しているのはわかっている。
少しずつ姿を現し、くすと笑みを浮かべながら。

「まじめねぇ、私には到底真似できそうにないわ。
それに、診てほしいとは思ってないわ、ただの冗談よ。
………この前のようなって言うのは、もしかしてアレのことかしら?」

発情させようとして、失敗した。
フェロモンを魔法防壁のようなもので防がれて結局何も出来ず。
だけれど、それもまた楽しい。うまく行くばかりでは本当に面白くない。
快楽主義である自分には、やはりある程度のスリルはほしい。
抵抗して、そして陥落させられれば―――また更に愉しい。
ふわり、と甘い香りが漂い始めた。

「悪いけど、私は淫魔……欲望にとーっても忠実なの。
んふふ……快楽に落ちた人間ってね、とっても可愛いのよ?
リーユエ、あなたの快楽に落ちた蕩けた顔も見たいわ?」

悪戯などではない。本気だった。
襲うのは間違いない、だけれど出来る限り相手が受け入れる耐性に持っておきたい。
だって、そのほうが――――愉しいじゃない。

リーユエ > ゆっくりと相手は近付いてくる、それは目に見えているのだか分かるのは当たり前だ。
ただ、その表情が変わらぬ笑みを浮かべているのが気になった。
何かを考えているのかもしれない、そんな不安がジワリと浮かび上がってくる。

「貴女は旅人でしょう?医術師である私と同じ様な事が出来ないのは当然の事でしょう。
冗談、ですか。それなら、私には何の用も無いのではないでしょうか?
アレ、と仰られても私には理解の出来ない事、それは貴女は分かっているのでしょう?」

(この方は、またこの前の力を使おうとしている!?)

言葉を交わしながら、その途中で鼻を擽る香り。
同時にゾワッと背筋を走る悪寒を感じた。
右手の指先が胸元へと触れ、そこに隠している護符へと触れ、上からなぞるようにして印を描く。
力を発動する護符は、これでこの何かの力を含む香から身を守るだろう。

「淫魔、ですか。
私には、貴女の言う事は理解出来ません。
理解をする気もありません。
すぐに力を解いて頂けるならば、私が何かをする事も無いでしょう。
そうして頂けませんか?」

話だけは聞いた事がある。
だから、相手が害意を向けるようになっていれば、もう大人しくする訳にはいかない。
護符は発動している、香に関しては問題無い。
だけど、これだけが相手の力だと考えるのは甘過ぎるだろう。
右手だけを相手に突き出し構える、左手は印を組む。
相手が如何に動くのか、先ずはそれを確かめるように。

イニフィ > 余裕、というものだろう。いつもこういう笑みを浮かべている。
旅行をするときこそ人間のフリをして、喜怒哀楽を表現することは多々としてある。
だけれど、淫魔の本質は「楽」である。イニフィをみていれば分かるかもしれない。
何もかもが―――欲望に忠実で、愉しいのだ。

「…医術師さん、ね?……でも、ただの医術師さんなのかしらね?
んふふ、そういうものでもないわ?…あの時言ったわよね、面白いって。」

理解できないといいつつも、既にその力は発現されている。
淫魔のフェロモンを防いでいるその障壁、それは胸元辺りに何かを隠している様子。
そういえば前も、そこを何かしら弄っていたはず。
だけれど――――今日は少し違う。
防壁が、匂いをごまかしきれていないのがわかるだろう、以前よりも力が増している。
人が少ないからこそ―――大きな力も使えるのだ。

「あら、怖い…。なにをされちゃうのかしら、んふふ♪
解いてほしいなら力尽くでどうにかしてみたらどう?」

左手と右手の構え。―――調べて解ったことがある。
シェンヤンには独自の魔術があり、言葉を必要とせずに指の動きでそれを具現化できると。
なるほど、やはりただの医学生ではなかったか。
構えもせず、フェロモンの香りを漂わせ。
なにをしてくるのか、それをただ見るだけであった。

リーユエ > 少女には到底理解の出来ない事だろう。
意思ある存在であるからこそ、欲望を抑える事も必要だと理解をするもの。
それを抑えぬ事を、良しと思える訳がない。

「医術師です。ここでこうしている私は、医術師以外の何者でもありません。
何を以て面白いとするかは、自由です。
ですが、他の者を陥れるような事を楽しむなんて認められません」

そう、私は医術師だ。
道士の修行を積み、誰からも褒められる力を持とうとも、そうあるべきなのだ。
だからこそ、自分を道士として相手に主張するなんてしやしない。
ふと胸元の護符に現れる異変に視線が下を向く。
以前、あの相手を前にした時はこれだけで十分防げた筈なのだ。
もしや、あの時の力は加減されていたもの?
その考えに到るならば、躊躇いも無く相手へと突き出していた右手が服の中へと差し込まれる。
そこから取り出したのは数枚の札、印を組んでいた左手の指先で札の数枚に触れた。
それは少女の周りへ囲むように展開される。
護符の力を抜け、再び鼻を擽るように掛かる匂いが再び止まった。

「これ以上為さるならば、私も加減は致しません。
最後の警告です、この力を止めて下さい、イニフィさん」

右手にはまだ数枚の札を残し、左手は印を組んだまま、キッと睨み付ける。
この相手は強い、加減なんてしている場合では無い。
それならば、早々に決着を着ける方向に考えるしかないだろう。
これでもまだ続けようというならば、攻撃に転じなければならない。
ここまでされても尚、少女は相手を攻め様とはしていなかった。

イニフィ > なるほど、あの札が魔力の源か。
おそらく今まで隠していたものがあの護符、という事はリーユエは道具を媒介にするタイプという事か。
防がれた甘い香りに―――イニフィはなおも嗤っていた。
面白そうに、愉しそうに。

「陥れるなんて、人聞きの悪いことを言うのね…。
私はただ、溜め込まれていた欲望を開放してあげたいだけなのよ?
我慢も必要ないし、自分のしたいように。すばらしいじゃない?」

淫魔は快楽主義者だ、いちいち人間の言う理性だとかそんなものに興味なんかない。
そもそも、そんな邪魔なものがあるから、戦争が起きるし人殺しもする。
愚かで、下種な人間を開放してあげているのだから、とやかく言われる筋合いはない。
淫魔はそう、答えるだろう。

障壁の力が強くなり、再び臭いが立ち消える。
だけれど―――その周囲にかかる靄。目に見える「淫魔の霧」はどうだろうか。
匂いではない、立ち上るその靄を防ぎきるのはちょっと難しいかもしれない。
もっとも、体の魔法防御も高ければ効果は薄いだろう。
だからこそ、これでどうにかできるとは思っていない。彼女を手玉に取るには―――。
屈服、させるしかない。
にぃっと、淫魔のその口が弧の字を描く。

「んふふ……、あらそう?加減が出来ないならいいわよ。
…貴女に私を斃せるなら、このまま帰られるけど……。」

もし、負けたら…?
くすくす、と笑みを浮かべる淫魔はそっと後ろに重心を移した。
何か仕掛けてくるのか、それとも―――このまま逃げるか。
バチッと、どこかで火花がなる―――。

リーユエ > 香りは防いだ、だけど、それを追うように周りに霧が掛かり始めた。
これとて、どういった効果を持つのか分かったものではない。
この身に受けてしまうのは避けた方が良い、そう思った。

「誰しもが、必ずしもそれを良しとする訳ではありません。
貴女が、貴女の好きに欲望のまま動くのは構いません。
それによってどの様になるか、それは私には分かりません。
ただ、そうでない者を巻き込む事は許されません。
私から言えるのは、それだけです」

主張の違い、主点の違い、それはもうどうしようもない。
存在そのものの違いは、ここまで交わる事の出来ない事なのか。
この方を説得する事は、自分には出来ない。
それを己の未熟さと思い、悔やむ。

「分かりました、仕方がありません。
シェンヤンが道士、リーユエ。貴女を打ち倒すべき邪なる存在と判断致しました。
ですが…」

印を組んだ指と共に、力を持った声を発する。
ユラッと足元の地面から僅かな砂埃が舞い始めれば、ブワッ!とそれは一気に辺りを吹き飛ばさん突風へと姿を変えた。
霧が霧であるならば、簡単に吹き消されるだろう。
香りであろう先ほどから向けられていた力も巻き込んで。

「…私の見解が非常に甘かった事は認めます。
今回は引きますが、次はありません」

続く言葉を投げ掛ける。
この相手は、半端な力で相手をするべきではない。
置いてきた道具も揃えて相手をしなければならない。
そう思ったからこそ、今は逃げの手を打つ事に決めた。
悔しいけれど、ここで無理をして何かあったら申し訳が立たない。
強く地面を蹴り、女性の居た反対側の路地へと身を翻した。

イニフィ > 淫魔の香りと、そして霧。この二つは単純に「相手の性欲を強烈に煽る」ことに尽きる。
吸い込んでしまえば、匂いをかいでしまえばそれだけで効果があるが、魔法の力に耐性があればほとんど硬貨はない。
リーユエは、元々魔力が高く、それに対する備えもしている。
一筋縄で発情させることは難しそうだった。

「あら、そうかしら……?私が会った子はみんな、とっても素直だったわ?
んふふ、魂までもらっちゃってね。ほんと、とっても可愛いわよ?」

何人か、この町でもこの淫魔の毒牙にかけた。
今ではすっかり快楽に順応してしまって、ほんとに素直になった。
そのこともまた面白くて、くすくすと笑みを浮かべてしまう。
今頃、どこでなにをしているのかは定かじゃない。だけど―――。
次に合ったら、もっと面白いことをしてあげるの、と自慢げに語った。

「ドウシ……?へぇ、シェンヤンだと魔法使いのことをそういう風に呼ぶのね」

さて、なにを仕掛けてくるのだろう。
そう思った矢先だった、唐突にリーユエの週から吹き荒れる風。
霧として霧散させているイニフィの「淫気」は簡単に言えば霧雨のようなもの。
風に飛ばされてしまえばそれはあっけなくリーユエからはなれる格好で飛ばされてしまう。
おまけに、フェロモンそのものすらも吹き飛ばされてしまった。
可デから、自分をガードするかのように腕を前に出し、突風に耐える。

「…あら、帰っちゃうの?んふふ…次はない、か。」

その次がないのはもしかしたら貴女かもしれないわよ?
踵を返し、自分に背中を向けたリーユエを追いかけはしなかった。
確かに、逃げる相手を追うのも面白い、だけど―――。

全力でかかってきて、それを砕かれた相手の顔も、とても可愛い。
だから、このまま見逃すことにした。次に会うときが、もっと楽しみになりつつ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリーユエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からイニフィさんが去りました。