2016/01/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にロレンスさんが現れました。
ロレンス > 転移魔法の陣が路地裏に生まれると、そこから溢れるどんよりとした光の中から男がするりと現れる。
あたりには人がいない、見渡し確かめるとコツコツと足音を響かせて路地裏を抜けだした。
首輪に繋がれ、売り飛ばされている奴隷達、一夜を金に変えんと性を売る女達。
そして、それに群がる欲望を抱いた男達の群れ。
欲の世界へと足を踏み入れてしまったのをみれば、困った様に溜息をこぼすが、その顔は笑っている。

「やれやれ、どちらが魔の者なのだかな」

女を売るにしても、もっと綺麗に磨き、誰もが欲する仕上げにして売るべきだ。
こんなに壊れそうな顔をした仕上げをするとは、モノを知らん奴らだとか思いつつ、歩き出せばすれ違う娼婦たちに声をかけられる。
すんと女の香りを気付かれぬように確かめるれば、今日はいいと優しく微笑んで断っていく。
僅かに男の匂いが残っていた、きっと一仕事終わったあとなのだろう。
それを蔑むつもりはないが、趣味ではない。
こんな場所で似合わぬ好き嫌いをしながら、辺りを見渡しながら歩き続ける。
所々に見える、女に対する粗雑な扱いに呆れながら。

ロレンス > こんなアウトローな場所を身なりのいい男が歩いていると、奴隷を売りつけたい商人たちはこぞって声をかけてくる。
そうして見せられる奴隷一人ひとりを吟味するように見やるわけだが、大体はその様子に溜息をこぼすばかりだ。

「君らは…扱っているものが分かっているのか?」

奴隷だろう? と言われれば、一層深い溜息をこぼしながらうつむき、少々憤りが混じった目で商人を睨む。
驚き、たじろいだ商人を他所に、彼は勢い良く商品と見せられた壊れかけの少女を指差す。

「いいか? 女とは宝石と同じなのだ、それは磨かずとも原石で眩い輝きを放つ女性もいるだろう。だが、君らは磨くどころから、汚してるだけではないか!」

唐突に熱弁を始めた青年に、呆然とする周りの商人たち。
まるで分かっていない、そう分かっていない。
わなわなと指差した手が震えると、先ほどの商人を指差す。

「湯と布、それから…何でもいい、君の店にある衣装で一等の品を持ってくるんだ。どういう事か見せてやる」

いや、買ってくれるのか? と問い返そうとすれば、急げと睨みをきかされ、そそくさと商人は奥へと引っ込んだ。
衰弱した少女がこちらを見やるのを見れば、ゆっくりとしゃがみ込む。
こんな顔では売れるに売れないと撫でる掌に生命力を宿せばこっそりと注ぎ込んでいく。
血色が良くなる頃には商人が戻ってくるだろう。

ロレンス > そもそも女を商品にすること自体どうなのだと言われそうだが、世界の流れを変えることなどできるはずもない。
ならば、せめてもの最良をと思えば、こんな奇行じみた事を始めるのかもしれない。
振り回されてぐったりな商人が、言われた通りのものを持ってくれば、男はマントのボタンをとき、適当なところに放って引っ掛ける。
腕をまくれば、まずは湯と布で奴隷の少女を綺麗に拭き始めた。
ちゃんと風呂に入れて洗浄すべきだろうが、とりあえずと一通り綺麗にすれば、多少なり見た目がましになる。
それから持ってきた服を合わせながら、髪を整えてやり、ああだこうだと数十分。
小奇麗になった少女は、先程の淀んだ雰囲気とは打って変わり、そこそこ魅力を感じられる整いへと変わった。

「まぁ、こんなものだろう…どうだ、少し手を加えるだけでこうも違う。もっと手塩にかければ、いい商品となり、金のめぐりも良くなる。売れ残りの叩き売りとは無縁の生活になる」

だが、実際に売れなければ意味が無い。
訝しげな視線を他所に、通りかかった傭兵らしき男が少女に目をかけた。
帰った時にこんぐらいのがいれば、いい気分転換になると。
値段を聞かれた商品は価格を示そうとするが、瞬間、青年は商人の脇腹に肘をゴツリと当てる。

「今は価値が変わった、倍だ。それが彼女の正当な価格だ」

倍となれば、本当に欲しないかぎり買わないであろう。
彼の命令に、そんな無茶な話があるかと商人も食いかかろうとするが、素早く額に人差し指を押し付ける。

「倍だ、それ以外はまかり通らん」

謎に強制される商人は渋々と、傭兵にその倍額を提示ていくのであった。

ロレンス > こうして、今宵は商人にああだこうだと口出ししながら女の何たるかを解いてくのだろう。
鬱陶しい割には、品物が売れるのだから商人とは振り払い難く、面倒な夜が過ぎていく。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からロレンスさんが去りました。