2016/01/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にモニカさんが現れました。
■モニカ > この国は物騒だ。
魔族の国と戦争中だし、主たる王家は後継者争いで泥沼らしいし
品物の値段は乱高下したりするし、猫が逃げたりもする。
色々と隙が多いのだ。
ただ、それだけにアンリ様や私みたいな者も、騒がしい物に紛れてしまえるのだけど――
「まったく、そんなに大事なら紐にでも繋いでおけばよかったのに。」
――騒がしさに紛れて逃げた猫を探して欲しいなんて仕事には独り嘆息混じりにごちもする。
報酬の良さに惹かれて引き受けて、こうも見付かる気配が無ければ悪罵の一つも白く宙に混じるってもの。
青から茜に色を変え、今は濃紫な空の元、私は紅い瞳をさらのようにして今は貧民地区と呼ばれる場に赴いていた。
貧民、と付くからには半ば廃墟のような場を想像していたけれど、中々どうして人通りは多く、露天商の姿も有る。
ただ、他の場所と違うのは通行人の風体が明らかにガラが悪かったり(ついでに臭い)、露天の品物も怪しげな代物だったりする事。
酒場と思しき店の入口には半裸に近いミレー族と呼ばれる種の女性が立っていたりする有様で、貧民と云うよりは単なる悪所のように思えた。
「……猫、居るのかしら……なーんか居たとしても、とっくに捕まって商品にでもされてそうなんだけど……。」
曰く逃げ出した猫は毛の長い白猫で、鈴付きの首輪をしているとのこと。
珍しい種類だそうだから、私の言のとおりも十分に有り得た。
■モニカ > 「お仕事中すいません。毛の長い白猫を見ませんでした?」
酒場の入口に立っていた猫に良く似た耳と尾を持つ女性に尋ねると露骨に厭そうな顔をされた。
おや?と思うも厭そうならば仕方ないので、傍に居た矮躯の中年男性にも同じ事を問う。
すると彼は乱杭歯を隠しもせずに笑み顔を作り、何やら検討違いの言葉を吐き出した。
「……あ、いえそういう"猫"じゃあなくて、本物の猫の方なんですけど……」
「猫」の認識が双方で違っていたらしいと気付いたのは彼が店内へ私を案内しようとした時。
……というか私の風体を見ても、そういう意味での猫を飼いに来たと思う辺りこの場の多様性が知れるかもしれない。
認識を是正すると矮躯の男性は「しらねえ」と言葉短にするのみで、それなら此方も「わかりました」で終わった。
どうも誰かに訊ねても意味が無さそうな気もするけれど、一先ずは往来の右を見て、左を見て、物陰を見て、時折物乞いと目が合ったりした。
■モニカ > 露天商の男性に訊ねると彼は「そんなの見つけたら毛皮にしちまうよ」と緩く笑い、
体格の良い禿頭の男性に訊ねると「そんな事よりうちの店で働かないか?」と目以外が笑った。
物乞いの老婆に訊ねると……返事が無いのでもう一度、訊ねた所で彼女が死んでいると気付いて首を振った。
「……見つけたら報酬って話だし。見付かりませんでしたー、で降りても良い気がしてきたわ……。」
私が無数の蝙蝠に姿を変えたり、霧化出来たりするのなら見つけるのは容易いだろうに、
生憎と夜でもばっちり視得る瞳くらいしか持ち合わせていない。他にも鼻が利いたりとかするけれど、
この場は様々な匂いが混じりすぎて意味が無い。
私はやるかたなし、と露天で水を買い、一口飲んで盛大に咽た。
露天商の女性を睨むと彼女は悪びれもせず
「水が悪いから少し混ぜ物をしているよ」
と歯の所々抜けた口でふわりと笑った。
帰りたくなった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にティネさんが現れました。
■ティネ > ――たすけてぇ~。
どこか間抜けだが切迫したような、そんなか細い声が耳に届く。
人通りの少ない、近くの路地の一本から聞こえてくるようだった。
そちらに足を向け、声の正体を確かめて見るならば、
毛の長い白猫と――それの前肢に毬かなにかの如くに弄ばれている
手のひらサイズの蝶羽根の少女を見つけることが出来るだろう。
どうやら彼女が声の主であるらしかった。
■モニカ > 銀の剣
十字架
大蒜
流れる水
日の光
あと、えーとなんだろう。
凡そ吸血鬼の弱点ーなんて人間に知られている物の殆どが私には効かない。
効かないけれど、水と血以外は身体が受け付けてくれず、迂闊に摂れば後が酷い。
危ない所だったと蹌踉めく足を御し、口元を拭い露天を後にし項垂れて――
「……ん?」
――何かが聴こえた。
通りから外れた路地のほう。人の目でなら暗がりに隠れて杳とする所。
治安の悪い場所だし、まあそういう事だろうと思いながらも一応の一瞥をし、
次には二度見をする事となった。
「んんんんん……!?」
毛の長い白猫と何かが居た。
何かって言うよりは妖精が居た。
人里のこんな悪所に妖精が居るなんて、ちょっとこの国は隙が多すぎやしないかと口端が引き攣る。
ともあれ好機には違いないのだから、私は抜き足差し足忍び足で近付き……
「……とうっ!」
妖精(?)に夢中な白猫(丸々と太った奴)を両手で掴み!漁師が獲物を誇るように高々と掲げた。
■ティネ > どうしてこう猫というのは小さくて動くものを見かけるとじゃれついてくるのか?
人語を介する猫にはなんどか会ってきたが、こいつは残念ながら説得の通用しない猫だった。
頭からがぶりといかれないだけマシなようなものだったが、
このまま永遠に遊ばれつづけられるわけにもいかない。
さりとてこれでは魔法のたぐいを使う余裕もない。
絶体絶命かと思われたそのときであった。
「おおっ……」
助けを呼ぶ声が誰ぞの耳に届いたらしく、
女性が訪れて猫をはるか上空へと持ち去っていき、自分は地べたにころんと転がる。
まさに天の助けであった。
彼女はこの不逞の輩の飼い主であろうか?
妙に誇らしげに猫を抱え上げるその姿は
背景に赤と黄色のめでたい光が放射しているかのようにも思えた。
どこかでラッパが鳴る。
「おみごと……」
彼女を地べたから見上げながらぺちぺちと拍手してみる。
飛んで浮かび上がろうとして背中の羽根がボロボロになっていたことに気がついた。
これでは飛べない。
■モニカ > 毛艶の良い白猫は首元に上質な革製の首輪をしており
恐らくは依頼の猫に相違ない。
これで報酬は私の物、と猫をぎゅうと抱しめて怪しげに含み笑うと
猫は不満そうに一声、あまり可愛くない声で鳴いた。
「あー良かった……に、しても猫に捕まるなんてドンクサな妖精ね、貴女。」
用意しておいた紐を猫の首輪に通して確保を磐石としたなら私の注意は妖精に向かう。
見れば蝶に似た羽は彼方此方が欠けて鱗粉も剥がれてしまっていて、少し痛々しかった。
「でもドンクサで助かったわ?私はこの猫を探している所だったの。貴女は何故こんな所に?」
その場にしゃがみ込み、人差し指でつんつんとつつく素振りをしながら気になる所を訊ねてみましょうっと。
■ティネ > 「どんくさじゃないし。猫に話が通じないことを忘れてただけだし」
ぷぅと頬を膨れさせて減らず口を言う。
ドンクサというのは今まで会ってきた者にもしょっちゅう下される評価であった。
もちろんうれしくはない。
「大した用があったわけじゃないよ。
散歩みたいなもん。このあたりはボクのシマみたいなもんだから。
そいつキミの飼猫なの? しつけはちゃんとしてよね……ひゃっ」
口を尖らせての言葉だったが、しゃがみこまれて指でつつく素振りをされれば、
それだけでその場にぺたんと尻もちをついてしまう。
■モニカ > 「話が通じる猫って魔物でしょうに。此処、一応人間の国よ。私が言えた事でもないけどね。」
頬を不満そうに膨らませたり、少々大仰に尻餅を付く様は見目に添ったもので、私の言葉が愉快そうに跳ねた。
「散歩にしては此処、大分治安が悪いと思うんだけどシマなんだ……意外とやり手?……ああ、この猫?
違う違う、私は迷い猫捜索の依頼を受けただけの冒険者。モニカ・フォン・モントグランツと申しますの。」
尻餅を付いた彼女をつまんで助け起すようにしてあげながら、芝居がかったような語調で自己紹介をし、紅い瞳が糸のように細くなる。
傾いだ首は言外に貴女のお名前は?と問うもので、応えて頂けるなら掌に乗せて、矯めつ眇めつ観察してしまおうかな。
■ティネ > 「そーそー。シマシマ。ここにいるやつなんか指先ひとつでダウンだし。
ボクはただのティネ。妖精っぽい暇人だよ」
実際のところは、単純に『見えづらい』ティネを
目視することができる悪人がそういないだけの話である。
「さっきの口ぶりだとキミも人外なの?
あんまりそういう雰囲気じゃないけど」
そう思って観察してみればどことなく漂う雰囲気が常人とは異なる気がする。
とはいえ貧民街でのんきに猫を追いかけているぐらいだ、
そう恐ろしい存在でもないのだろう、とこの妖精は考えた。
彼女の掌へと招待されれば遠慮無く裸足を乗せる。
人形のような体躯ではあるが、触れてみれば少女らしい柔らかさと体熱を持っていることがわかるだろう。
つぶさに観察されれば照れくさくなったのか俯いて視線をそらしてしまう。
赤みがかった金髪の奥で、同じく紅い瞳が戸惑ったように揺れた。
■モニカ > 「まあ怖い。それは御無礼を致しまして……。」
掌の上で可愛らしく居丈高な素振りの妖精――ティネさんに芝居がかった謝辞の言葉を向け、
彼女が私の言葉尻を捕まえた事には、ちょっと視線が左右に揺れた。
……ま、いっか。
「私、こう見えて吸血鬼なの。……と、言っても大した力も無いんだけど。」
御揃いの髪色で御揃いの瞳。連れ立って視線が揺れあえば少し気分も揺らぐもので、
小声で自己紹介の追加をし、鋭い犬歯を示すように笑う。
「好きな食べ物は新鮮な生き血で……妖精さんの血はどんな味かしら……なんて。」
そのまま口を開け噛み付く素振りの冗句を添えて立ち上がり、少し迷ったけれど
通りには戻らず路地を進むことを選んだ。猫を連れているし、掌上に妖精さんがいるとなれば
通りは少々人混みが過ぎるのだから。
「首尾よく猫を捕まえられたし、貴女の寝床までお送りするわ?その羽では飛べないでしょう?」
お家はどっち?と首を傾げ……わざと金髪がティネさんにかかるようにした。ちょっとしたおふざけ。
■ティネ > 吸血鬼――という名乗りにはそう動じることもなかったが、
唇を開いて牙を覗かせれば、さすがに目を見開いてすくみあがった。
しかしそれが冗談であると知れれば、かくんと肩を落としてため息を吐く。
「べつに吸血鬼なんてこわくないし。もっと怖いのいくらでも会ったし」
などと嘯く双眸は潤んでいるし、心なしか震えている。
いじめられっこそのものの反応。嘘をつけない身体であるらしかった。
寝床、と呼ばれて頭をひねる。
そうと決めた場所まで運んでもらうには少し遠い。
「ん、んー……とりあえずそこらへんの軒下とか、
厩とか、ひと目の付かない場所にでも置いてってくれれば――
ぶわっ」
髪の洪水に押し倒される。
なにすんだよもう、と紗のような髪束をかき分けて不平を言った。
■モニカ > ティネさんが余りに判り易く怖がってくれるものだから、
彼女の抗弁や髪の毛を掻き分ける合間、私は愉快そうに喉を鳴らしてしまう。
もしも私が猫だったら、きっとごろごろと鳴っていたに違いなかった。
「あら、失礼致しまして……ティネさんは此処いらを束ねる御方ですものね。
私も気をつけないと一ひねりされてしまうのかしら。」
暗い路地は迷路の様で、道の隅には生きているかも定かではない風体の人間が寝ていたり、
また建物の影では男女の睦み合う声が漏れ聴こえたり、
はたまた血の匂いが雑多な匂いを押しのけるかのように香ったり。
剣呑な気配もまた其処彼処に合って、私はそういう道を避けながら歓談を重ねていった。
「……あら、軒下で良いの?妖精ってもっとこう……いえ、上手く言えないのだけど
少なくとも軒下とかじゃあ無いきがするのだけど……じゃあ、この辺りでも?」
"この辺り"は使い古しの樽が三角形に詰まれた所。近付くと酒精の香りが感ぜられて
つい最近まで使われていたことが知れる。周囲を見回しても人の気は無く、一先ずは安全かと思われた。
■ティネ > 「そーだよ。
モニカなんて……仔猫を蹴散らすみたいに叩きのめせちゃうし……」
喉を鳴らして笑うのが仔猫よりも小さいティネの耳に届けば、
またびくりと肩を震わせて反応してしまう。
貧民地区特有の周囲の不気味な気配は感じてはいたが、
ただただ自分を掌中に納める少女のことばかりが胸でいっぱいであった。
「べつに……妖精のこと、なんにも知らないくせに。
ここで平気だよ……うん」
妖精らしさについて言及されればなぜかばつのわるそうな表情を浮かべる。
モニカが立ち止まった場所で、ティネとしては問題はなさそうだった。
モニカを見上げて何かを言いかけて、どこか遠くから男の怒声が響く。
「……ひ!」
怖がらせたのが効いたのかなんなのか、随分と気持ちまでもが縮んでしまったらしい。
普段なら気にもしない暴力の気配が肌にまとわりついて離れない。
そう簡単には見つからず、充分に羽根が回復するまで休むことが出来る……はずだったが
ここにひとり置いて行かれることが妙に心細く感じてしまった。
「……も、もうちょっとだけ、離れないでいて……?」
手の指のひとつに、それよりも細い腕でしがみつくように触れて、そうお願いする。
■モニカ > 「私の居た所だと妖精、殆ど見無かったものだから……虫の羽を持つ魔族なら居たけど
私くらいの背丈はあったから妖精とは違うでしょうしね。」
挙動不審に彼方此方を見遣る掌の彼女。様子からして夜目が効くほうではないみたい。
妖精のこと、殆ど知らないと揚げ足を取られたなら、そのまま倒立するように居直ってしまおう。
そうして酒樽の上に彼女を置こうとするのと、丁度何処からか男の怒声と、女の悲鳴。
それから何かが割れる音。暫く音のする方をじいっと視て、音源が近付く様子が無いと判れば視線をティネさんに戻した。
「ん、勿論大丈夫。今日はこの猫を送り届けるだけだもの。」
指にしがみつく様が、とても可愛らしく思えたから私は快諾をし、紐先の猫を一瞥。
猫はとっくに寛いだ様子でまあるくなっていたから、私は手頃な置石に座り込む。
「そうそう、妖精の事をなぁんにも知らない私だから聴いてしまうのだけど、
妖精さんってやっぱり花の蜜とかそういうのを食べるの?それとも普通にお肉とかお野菜?
それともそれとも一口に妖精と言っても色々あるのかしら。吸血鬼も一口に言っても色々あるくらいだし」
後は猫を殺すような好奇心が口から次々と零れて、紅い瞳が炯炯と興味深く見開かれたり。
■ティネ > 「……いつも、こうじゃないから。
今日は羽根も破れてるし、調子が悪いだけだから……」
承諾されれば、礼を言うのも忘れ、訊かれてもいないのに言い訳をこぼす。
ひかえめに言って情けなかった。
「花の蜜は……試してみたけど、そんなにお腹は膨れない。
やっぱり、肉か野菜が好きだな、ボクは。
まあ……いろいろ、いると思うよ。
ボクはボクみたいな妖精とは、……ひとりしか会ったことはないけど」
問いに答えていく。
置き去りにされなくて安心したはいいけど、両の紅い眼差しに見つめられると
なんだか気持ちがざわざわしてしまう。
「吸血鬼もいろいろあるんだ。
……やっぱ血を吸って、その……死なせちゃったり、するの?」
眼差しから逃げるように、小心にさまよった視線はモニカの唇へとたどり着く。
なぜかそこから目が離せなかった。
■モニカ > 「いいっていいって。調子が悪い時はお互い様。
私もさっき混ぜ物入りの水を飲みそうになって危うく調子崩す所だったんだから」
妖精も吸血鬼も人間も、其の他数多の存在全てが常に十全に足りている。
なんて事はありえないのだから私は鷹揚に微笑んで見せ、
ティネさんの説明にはふむふむと頷き、これはアンリ様にお聞かせする良い土産話になったなと心裡で頷く。
その折、有る意味で至極当然とも言える質問が飛んでくると、私は彼女に犬歯がようく視得るように再び口を開けてみせてあげた。
「んー……吸い殺すまで行った事は無いかなあ……と云うのも重ねて言うけれど吸血鬼も色々でね。
私の叔父様とかはそりゃあ巨大な蝙蝠になるわ、大木は濡れ紙を裂くように引き千切るわ、血を吸うなら数人分は平らげるわで凄かったけど
私の御父様は蝙蝠にはなれなくて、でも全身を霧と化したり、大蒜食べても平気だったり……みたいな感じ。
妖精さんだから言ってしまうけど、私はどうもそういうのてんでダメでね。怪力も無い、変化も出来ない。魔法も使えない。
それじゃ人間を捕まえる事も出来ない。みたいな……でもその代わり凡そ吸血鬼の弱点ーなんて言われているのは殆ど平気だし、怪我の治りはやたら早いし
血も生き物なら大体は平気だったりするんだけどさ。」
そのままはーやれやれと肩を竦めて苦笑い。牛の血とかはあんまり美味しくないよ、等々の恐らく不要な情報等もお付けして差し上げましょっと。
■ティネ > 「そっか……。
その、ありがとう」
気さくな物言いに、ようやく素直に頭を下げることができた。
牙が見えれば息を呑むものの、さすがに二度目ともなれば怯えることはなかった。
「へえ……。
得意もないけど、弱点もないのか。
なんだか人間とあんまり変わらないんだね。
なーんだ。ビビって損した~」
こわばっていた表情を崩して、率直に思ったことを口にする。
さっきまでの怯えはどこへやら図々しくすらあった。
恐るべき変わり身の速さである。
少なくとも先程よりは随分とリラックスできたのは確かだった。
「ボクも妖精にしては狡賢くないとかどんくさいとかしょっちゅう言われるよ。
人里じゃなくて野山にでも暮らしてろとか。
そんなこと言われたって困るんだよねぇまったく」
なにせ元は人間だったから、とは言わない。
真似るように肩をすくめて笑ってみせた。
■モニカ > 「どういたしまして?何もお礼を言われるような事でもないけどね。」
玩具の御人形さんが御辞儀をしているような素振りにちょびっとばかし居丈高に鼻が鳴って得意気な感じ。
でもティネさんが思った以上に思ったことを吐露すると危うく座った置石からずり落ちそうになって、慌てて座り直す。
「損って事は無いでしょーよ損って事は……まったく。これでも片腕が吹き飛んだりしたくらいなら瞬く間に治るんだからね。
流石に全身バラバラになると、ちょっと時間がかかるし、お腹もすっごい減るんだけどさ。」
人間と余りに変わる所を、と云うか私の唯一の強みを不満そうに告げて、ティネさんの頭を人差し指で軽くはたくようにしてやった。
「……で、貴女もしょっちゅう言われてるんだ……なんだか揃って"らしくない"のね、私達。
髪の色も、瞳の色も御揃いだしなんだか親近感が沸いてしまいそう。……あ、でも肌は私の方が綺麗ね、ふふん。」
肩を竦めてお互いにころころと笑い、ティネさんに頬を示して綺麗な肌を誇示してみせる。
手を伸ばせば届くでしょうし、触れるならきっとすべすべだって知れる筈。