2015/10/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にリュドミラさんが現れました。
■リュドミラ > 深夜であっても人通りの多い、貧民地区の歓楽街。
建ち並ぶ娼館から零れる光が眩くて、つい目を細めてしまう。
「おなか、へった……」
ほとんど声には出さず呟きながら歩く少女が一人。
兎と同じ白い毛に覆われた耳が時おりひくひく震えるのは、娼館の中や近所の建物から、夜食を作る調理の音が聞こえてくるからで。
■リュドミラ > ぐうう……と音を立てて鳴るお腹を押さえ、撫で摩りながら少女は周囲に視線を走らせる。
盗賊とはいえ、どこかに盗みに入ったり旅人を襲ったりするばかりではない。
(お金、持ってそうなヒト…いないかな…)
きょろきょろと周囲を見回しながら、スリのカモにできそうな相手を探す。
この時間になると流石に露店は少ないが、代わりに懐の温かそうな人の姿もちらほらある。
客引きやら娼婦やら、あちらへこちらへ行き交う人達の合間を彷徨いながら獲物を探して。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にフォルさんが現れました。
■フォル > ゴミ捨て場でもぞもぞと生ごみを漁るみすぼらしいマント姿。
「…ん、あった。」
そう呟くと大分身のついた状態の手羽先を見つけ、とりあえず口に咥えると他にも何か食べられそうなものがないか物色するが大したものは見つからなかったようだ。
そのままゴミ捨て場を走り去る。
(食事も、リーシャの世話になってばかりじゃいけないしね。)
結婚後も結局生活スタイルは大きく変わらず、売春をする気がない時は専らゴミ漁りをしているのであった。
ガリガリと齧りながら軟骨まで食べつくし、骨に吸い付きながら物陰を歩きまわり次の食事を物色していく。
そんな折、娼婦でも物乞いでもなさそうな、どこか場違いな印象を受ける少女の姿が目に留まった。
更に見ると自分とは違うが獣耳がついている。
あまり見たいタイプだが、あれもミレー族なのだろうか。
少しそれが気になり、思い切って声をかけてみた。
「ねぇ…、キミ、それって、ミレー族?」
■リュドミラ > お腹が減ったら盗めば良いという最初の体験の刷りこみがあるせいで、ゴミ漁りをすればもっと安全に食事にありつけるという事実に気づかないあたり、やはりあまり知能の高くない兎頭であった。
獲物を物色する最中、不意にこちらへ向かってくる足音を捉え、頭上の耳がひくりと動く。長い耳の方が先にマント姿の少女を向いた。
「っ…!?」
かけられた声にびくりと肩と耳を震わせ、きょろきょろと当たりを見回してから、
「私?」と尋ねるように自身を指さし、少女へと体を向ける。
あまり表情は変わらないが、焦った様子は存分に周囲にまき散らしているため無音ながらも騒々しい。
「そ、う。…あなた、も?」
普段あまり人と喋らないせいでどことなくぎこちない発音ながらも、精一杯好意的に聞こえるよう努力して。
視線はついつい、少女のフードに隠れた頭の辺りを見てしまう。
あまり常識のない兎は、彼女がどんな耳を持っているのか気になるあまり、邪気も悪気もなくついついフードに手を伸ばそうとしてしまう。
■フォル > 相変わらずガリガリと骨を齧りながらおせじにも行儀が良いとはいえない態度で話しかけるが、そのことについて特に悪感情を抱く相手ではなかったようだ。
とはいえ急に話しかけて驚かせてしまったのだろうが、態度が固い。
とりあえず、あなた”も”ということはあれもミレー族なのだろうという事は分かった。
そんなことを考えていると、不意に少女の手がフードへと伸びてきて反射的に身を引いてしまう。
「…っ、ご、ごめん。フードを、取られるの、怖かった、から。」
■リュドミラ > 少女が身を引く動作に、こちらも反射的に手を引く。
緩く瞬きを重ねる間に少女の言葉が聞こえた。
数秒考えてようやく自分が彼女を怖がらせてしまったのだと理解した様子。
理解した途端、慌てて小刻みに首を横に振る。
こういう時何と言うのだっただろうかと少ない語彙を引っ掻き回して、
「ごめん、ね?」とたどたどしい口調で謝罪の言葉を返す。
「もう取ろうとしない、から。あなたもそこにお耳、あるのかなって思っ…たの」
ごめんねともう一度繰返しつつ、相手が齧っている骨をじっと見つめる。
真顔で見つめるせいで、背の小さな少女を相手には少し威圧感があるかもしれない。
骨とはいえ、元手羽先の残り香が美味しそうで、
少し見つめた後、ぐううう…と派手に大きな音を立てて腹の虫が鳴いた。
■フォル > 「う、うん…。わたしも、ミレー…。」
いきなり身を引いて驚かせてしまったのは流石に悪いと思い、フードを少しだけめくり少女にだけ見えるように少し耳を出すとすぐに引っ込め。
「ミレー族、あんまり、知らないから、そういう耳、珍しいな、って…。」
たどたどしくではあるが、声をかけた理由をちゃんと言うことにした。
「…おなか、すいてるみたいだね。お金、ないの?」
そして少女の腹の虫に気づくと、また不躾な質問を。
■リュドミラ > フードの合間からちらりと見えた耳に目を瞬かせ、ほんとだ、と呟く。
淡々としているようでいて、そこはかとなく嬉しそうな響きの混じる声で。
「珍しい、の?」
自分の頭上に手をやり、耳の形を確かめるように何度か触れる。
そうしながら見回す周囲。たまに通りかかるミレー族や、過去にすれ違ったミレー族、目の前にいる少女と順番に思い返していく内に、「あ」と唐突に小さく声を上げ、
「ほんと、だ。里のお外では、見たことない、かも」
他の里の者にも、似たような耳の部族はいるのだろうけれど、少なくとも自分は会ったことがない。
「気づかなかった…。あなた、すごい、ね」
ぽつぽつと落とす言葉でぎこちなく、彼女の指摘の鋭さを賞賛する。
不躾な質問を不躾とも思わないまま、こくこくと今度は縦に小刻みに首を振って頷く。
「お金、ない。だから、いいヒト、いないかな、って」
■フォル > 「みんな、猫耳かと、思ってた…。」
色々と言葉が足りないが、ようするにミレー族はみんな猫耳かと思っていたということだ。
これで相手に伝わるかは怪しいところだが。
「そっか…、いいヒト、なら、ここはまずい、かな…?」
■リュドミラ > 「いろんなお耳があるって、聞いたことある、よ」
珍しく自分が教えるようなことを口に出来たから、紅い瞳を少しばかり嬉しそうに輝かせる。
「わたしのお母さんもお父さんも、兎の耳だった、の。あなた、も?」
思い出したように尋ね、極僅かに微笑みを浮かべる。
両親も同じ猫耳だったのかと尋ねているつもり。
「ここ、駄目…だった?お金、持ってそうなヒト、よく通るから。良いかなって…思った、の」
お金を持っていて、盗みやすそうなヒトを思い浮かべながら言うせいで、
目の前の少女とは異なる「いいヒト」を思い描いているやもしれず。
物騒なことを思い描きつつ、けれど口調は淡々と、声音には悪意の欠片もない。
■フォル > ふるふると首を横に振った。
「ミレー族のこと、も、あんまり知らないし…。親の、事は、覚えてない…。」
思い出せない事は仕方ないと普段は思っているが、改めて意識すると親の事を覚えていないのは少し悲しい。
少し落ち込みながら答えた。
「う、うん。こういう、娼館の、近くだと、野良は目をつけられる、から…。こっち、ついてきて。」
まさか盗みの相手を探しているとは思わず、勝手に娼婦としての相手を探していると勘違いしたままそれに適した場所まで案内しようと先を歩いて行く。
■リュドミラ > いまいち機微に疎いというか脳みその足りない兎ではあるが、目の前の少女がどことなく落ち込んだ様子になったのは察知した。したものの、気の利いたことも言えずにおろおろと手を上げては下げて。しばらくわたわたした後で、
「じゃ、じゃあ……わたしが、お母さんになってあげよう、か?」
等と、何の解決にもなっていない上にだいぶテンパった事を口走った。
哀しいことに本人はこれでも慰めようとしているのだった。
自分が野良という自覚もイマイチ薄い脳みそだが、ついてきてと言われれば素直に頷く。
先立つ相手の半歩後ろをついて歩きながら
「どこ、行く…の?」
と小声で尋ねる。
誰かと一緒に歩くのは久しぶりで、足取りはいつも以上に軽い。
■フォル > 「そんな、気を使わなくて、いい…。」
お母さんになってあげるなどと、妙に気を使わせてしまったかなと思いながらも歩みを続け娼館のある通りからどんどん離れていく。
どこに行くかと聞かれても、いいからついてきてとだけ答えるのみ。
そしてそろそろいいかなと足を止めると振り返り。
「この、辺りなら、おすすめ、かな。」
やってきたのは人通りが少なくあちこちに死角のある細い通り。
こういうところでは野良の安い娼婦が客を探している事が多いと知られており、娼館と客を奪い合わない内は半ば黙認され放置されているのだ。
「キミは、いくらぐらいで、いつも、やってる、の…?」
フォルは当然売春の値段のつもりで聞いたが、果たしてそれが相手に通じているものか……。
■リュドミラ > 「ごめん、ね…」
自分よりも小さな子に気を使わせてしまった…と耳をしおしお伏せながら謝罪を一つ。
小さな背について歩く内、いつもは人通りがあまりないからと足を向けない方角のようだと判ってくる。
細い道の死角のところどころからは客を待つ娼婦のものだろう吐息や、あるいは客とまぐわう物音が微かに耳に届く。その度に頭上の耳はそちらへ向いて。物珍しそうに視線を巡らせる。
「いくら…?」
問われればきょとんとして小首を傾げる。
若干足りない頭で少し考えてから、あれ?とようやく齟齬に気づいた様子。
周囲から聞こえてくる音やら声やらを聞く内に、はたと思い至って。
「えっと…。わたし、そういうのしたことなく、て」
勘違いしていた気恥ずかしさに徐々に頬を染めながら、もごもごと口の中で呟く。
「いつもは、そうじゃなくて……お財布ごとぜんぶ、もらっちゃう…の」
■フォル > 「…泥棒?」
自分と似たような境遇かと思って気が緩みかけていたのが、途端に警戒した気配に変わり後ずさる。
「…泥棒は、ダメ。」
言葉面は非常にまともだが、別に道徳や正義に照らしあわせての言葉ではない。
警戒したまま言葉を続ける。
「泥棒で、捕まったら、殺される、よ…。」
■リュドミラ > 後ずさる少女の姿に、緩く首を傾けたまま瞳に寂しそうな色を浮かべる。
忠告の言葉に、少しばかり考えてから、
「捕まらなかったら、だいじょう、ぶ?」
今まで捕まらなかったのは逃げ足の速さと運が良かっただけなのだが、そこまでは考えが及ばずに。反発する気持ちはなく、ただ確認してみただけという、他意のない口調。
更に少し考えた後で、「心配してくれた、の?」と問いを重ねる。
■フォル > 「…捕まらないなら、まあ。」
そこまでは考えが至らなかった。
もし絶対に捕まらないのであれば、それはそれで問題がないのかもしれない。
「…一応、心配は、した。」
ほんのすこしではあるが、彼女を心配する気持ちがあったのは確かなのでそこは素直に頷く。
だけど、と言葉を続け。
「泥棒とは、一緒に、いられない…。盗まれたら、困る…。」
■リュドミラ > 「心配、してくれて、あり、がと。捕まらないように、気をつけ…る」
慣れないお礼の言葉を、僅かな笑みと共に伝える。
気をつければ良いと言うものでもないのだが。
続けられた言葉には小さく首を振る。
「あなたから、は、盗らない。お金、あるヒトからしか。だから、だいじょう、ぶ」
安心させようとしてぎこちなく微笑みかける。
ふと見上げた空は月が沈み始めていて夜明けが近い。
名残惜しそうに目を伏せ、耳を伏せ、
「そろそろ、行かなくちゃ…。あなた、は?」
■フォル > 「そういう、ことなら…。じゃあ、気をつけて…。」
結局珍しく発揮した親切心はあまり意味がなかったようだ。
それが少し悲しい気もするが、これは勘違いして先走ったのが悪いという面もある。
「わたしも、今はお客取るつもりじゃ、ないし…。帰る。」
徒労だった事に軽くため息をつくと、別れを告げて立ち去ろうとした。
■リュドミラ > 「おやすみなさい。また、ね」
どこか懐かしい挨拶を思い出して口にしてから立ち去りかけ、
ふと思い出したように振り返る。
「いろいろ、ありがと。あなたも、気をつけて。また逢えたら、お話…聞かせて、ね」
付け加えて、小さく手を振ってから再び歩き出す。
やがて路地の向こうへと姿を消して――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からリュドミラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からフォルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」にルーキさんが現れました。
■ルーキ > 貧民地区は独特の雰囲気が漂う。
すっかり陽も暮れた中、馴染みの店の帰り。
あかり灯る店の前を通り過ぎる帯剣の女が一人。
「――すっかり、遅くなってしまった…」
長話に付き合わされた。小さく溜息を吐き空を見上げる。
物騒というには少し早いかもしれないが……何事も無く通り過ぎるに越したことはない。
最も剣は身につけているし、万一の場合も対応は出来るのだが。
■ルーキ > この区域には数える程しか訪れたことはない。
だからこの娼館通りも、同じ程度しか通り過ぎたことはないのだが――
「……この時間帯になると、こうなるんだな」
窓を開けているのか、それとも壁が薄いのか。
女達の嬌声を耳にして呆れるような表情を浮かべていた。
それは貧民地区に限らず、どこの区域でも似たような場所はあるのだが。
「……どうやら、随分と賑わっているようだ。繁盛しているんだな」
金銭に余裕のない男達が訪れるんだろうか…と勝手に想像巡らせ、つい足を止めてしまう。
別段、店に足を運ぶ気にはならないのだが。
■ルーキ > 「……とはいえ。金持ちどもに買われこき使われているよりは、此方の生活の方がまだマシか…」
一応の自由はあるのだし。
仮にも王族の身、そういったことを考えないことはない。
まして平民地区に友人は多い。尚更である。
「……ま。わたしがそういうことに頭を使うのも、何かな」
難しいことは性に合わない。
ただ自分はのんびり自由を謳歌していれば良いのだと。
足が疲れたので、傍らに偶々設置されていた長椅子に腰を下す。小休止。
■ルーキ > 「……そろそろ、戻るとしようか」
あまり長居して、魔族にせよ飢えた男女にせよ、襲われるのは勘弁願いたい。
ゆっくり腰を上げると、軽く伸びをした。
平民地区まではそう距離も無い。
特段周囲に気を配るでもなく、緩やかに歩いていく―――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区」からルーキさんが去りました。