2022/08/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 『小礼拝堂』」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 王城内、王族貴族などが儀礼に使う大礼拝堂ではなく、王城の中にいくつかある小さな至聖所。
一人の影が、そのいくつかの礼拝堂のうちの一つを訪れていた。
火の尽きた蝋燭に新たに火を灯し、新しい蝋燭と入れ替え。
夜の祈りの時間を静かに過ごすための場を整えている。
作業の間、かすかな声音が聖句を紡ぎ、歌うように旋律を奏で。
一通りの準備を終えると女自身が祭壇の前に跪き、手を合わせた。
俯きがちに、白いウィンプルがそこに影を作り表情をうかがわせることはない。
王城に勤める修道女にしては素朴な生地の修道服に身を包んだ女は先ごろ神聖都市から出向を命じられて、ひとまずは王宮内の至聖所に勤めているところだった。
「────」
蜜蝋の、かすかに甘い香りが漂う中、目を伏せ、静かに祈りの言葉を諳んじていた。
■マーシュ > 発言するものもなければ、訪うものもない。
ただただ、静謐の水面に浸かるように女は微動だにすることなく。
幼いころより慣れ親しんだ聖句を紡いでいる。
───上層部の爛れた事情を知らぬ女にとってはこの出向についても、数ある身の上の変化というものでしかなく。
あるいは、それを知っていてすら何ら感慨を抱かないのかもしれないが───実際のところ、女は無知であり。
ただ、幼いころからの生きる術として、信仰に寄り添っているのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城 『小礼拝堂』」にセリアスさんが現れました。
■セリアス > 「お偉方というのはなぜああもお話が回りくどく時間をかけるのでしょうねぇ……」
王城にて、御用聞きと挨拶回りを済ませ、大手の商会ほどではなくとも幾許かの取引を約束した帰り。
普段なら寄らない其処に足を向けたのは貴族相手で気疲れした故に静かな場所へ寄せられたのと。
本当に偶さか時間が余ったからにすぎなかった。
けれど、聞こえる聖句に、興味を惹かれてその場所にさらに足を向けていく。
見えるのは王都では珍しいと言っても過言ではないかもしれない。
敬虔そうな、信仰の徒の姿。
声をかけるのも野暮かとも思いつつ。
「……何のための、お祈りで?」
独り言とも取れるような声色で。けれど静謐なそこでは想像よりも響いたかもしれない。
信仰を理解しないわけではないが、神より金を重んじるような考えが先に立つ。
故に、何のため祈るのかと疑問を零した。
■マーシュ > 扉の開く音に、諳んじていた句を、区切り迄紡いでからその口を噤んだ。
かけられた声音に、合わせていた手を解いて、跪いていた姿勢を僅かに崩すと視線を背後に。
こういった場を訪れる王宮の誰かというよりは、訪れた客人だろうか?
悠然とした余裕のある態度に、蝋燭の明かりを弾く金の髪がまぶしい。
衣擦れの音とともにゆっくりと場を開ける様に立ち上がると首を垂れた。
「何かのため………とおっしゃられるのならば、感謝のために」
問いかけにはわずかに考えを巡らせるように視線を伏せて。己の中にある答えを告げた。
此処にあること、日々を過ごせること。
生まれ育った環境がそうだからと断じられてしまえばそれまでだが、どのことに愁いを帯びることはない。
あるいは教団の真実を知ればそういった憂慮を抱くのかもしれないが、少なくとも今はまだ。
「───祈りにおいでになられたのでは?」
今度は女からも問いかける。
此処はそのための場所で、そして己はそこの管理を任されているもののうちの一人だ。
それゆえ当然の問いかけを。