2021/04/13 のログ
ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
奴隷商人の潔さには、些か感心すら覚える。
おべっかと下卑た世辞ばかりの貴族達とは違い、支払われる報酬に対して正当な仕事を行い、用が済めば立ち去る。
或る意味、此の広間で一番の常識人なのかもしれないなと、内心苦笑い。

そうこうしている内に、手渡される手綱。
その先には、首輪に繋がれた少女。
王城という場所と観客向けだろうか。意外と手綱の質は良い。

「…別に構わんがな。どう呼ぼうと、何と呼ぼうと。
それが私と貴様の関係性を変化させるものではない」

淫欲は、少女という存在を既に殺してしまっているのだろう。
薬と精液と、その他諸々。どれほどの快楽と享楽が、此処まで貴族の淑女たる少女を壊し尽くしたのか。
物事には限度があるのだがな、なんて思案していれば。
己の前に座り込む少女の姿。

「いや、貴様で不足は無い。滾った熱を吐き出す道具としては、取り敢えず見栄えは上出来だからな。
此の場所では興が乗らぬだけだ。貴様は見られる方が興奮するやも知れぬが、私はそうではないからな。
ついて来い。どうせ"使う"なら、ベッドの上の方が私も楽で良い」

少女に不満がある訳でもなければ、此の侭大人しく解放してやるつもりもない。
己に捧げられた玩具でなければ、適当にその辺の貴族に犯させたかもしれない。
しかし、此の少女は今宵己のモノ。であれば、他の者に、少女を愉しませてやる義理も無い。
ぐい、と手綱を引っ張れば、宛ら犬…いや、家畜を引き連れるかの様に、広間を後にするのだろう。
慌てて少年の為に道を開きつつ、少女に劣情の視線を向ける貴族達を、全く気にする事も無く。


――別室に連れられて行く少女を眺めながら、一番最初に安堵の溜息をついた貴族は、満足げに肥えた腹を揺らす。
それは、少年の浮名。或いは性格と性質を曲がりなりにも知っているが故。
膨大な魔力を精力へと変え、愉悦の為に女を犯す。
少年が一度手を付ければ、一晩中犯され、精を注がれ、快楽を注がれ続ける。
それを知っていたから――少女を壊す為に、少年へと差し出したのだから。

ネリネ > 奴隷商が去ってしまえば。後に残るのは今も貴族である勝者と、貴族どころか人ですらなくなってしまった敗者。
この場で唯一人の敗者側であるソレに。幾多の勝者である貴族達が向ける眼差しは。
調教されきった性奴隷に対する肉欲を湛えた物も。決して存在しないわけではなかったが。
どちらかと言えばソレへと向けられている物は、矢張り。確実なとどめを望む、敵を見る眼差しなのだろう。
此処まで犯して壊して。それでも尚、油断の素振りを見せない徹底ぶり。そこだけは立派な物なのかもしれないが。

「ん ん、ふぁ――ぃ、よかった…ぁ――
じゃぁごしゅじん、さまぁー…♡ ネリネに、こんやはごほーしさせて…ください、ませぇ…」

物として、使う。そう言われて。いっそ安堵する様子をすら見せるのが。ソレが壊れている事実を、尚誇張する。
手綱の主となった少年に引かれれば。緩んだ微笑みを浮かべながら。ぺた、ぺた――小さな足取りが。家畜として連れ出されていく。
豪奢な薄絹を身に纏い、純白のそれが、さながら花嫁衣装をすら思わせようと。
良く良く見れば淫猥なそれに、何よりソレが浮かべた幸せそうな表情は…どこまでも、快楽を望んでの物。
だから矢張り、ソレの心は壊れているのだと。見送る貴族達は一様に安堵して。

…最後に彼等が望むのは、それこそ。女としても壊してしまう事。
どれだけ頭や心が痛んでいても。犯されて孕む事が出来てしまうなら、それは。貴族の血を後世へ残してしまうのだから。
それすら叶わない程に使い潰してしまう事を、少年へと期待して。彼等を送り出していく。

連れ込まれた先。ソレがどういう意味で壊れる事になるのかは。少年1人の手に委ねられて――

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