2020/08/02 のログ
■アンヤ > 負の感情の吸収、治癒の力、僅かな幸運を授ける能力、諸々……。
こんな力があると自然と貴族や騎士のお歴々と顔見知りになる。
今宵はとある貴族の一人が娘の縁談の相談があると言う事で王城に招かれ、そこでその貴族の一人娘を紹介され、その娘に小さな幸運を授けて、縁談を良縁に傾けてほしいといわれて――…まあ気紛れに物理的な報酬で小さな幸運を授けたその帰り道。
1人静かになりたいと貴族に相談したところ、その御つきのメイドに案内されたのがこの中庭である。
若干暑苦しさと湿度のある夜風の所為なのか、その夜風が吹くと中庭の緑や花々の香りがむせ返るほど香る微妙な場所であるが仕方なし、能力を使った後は少々疲れるので誰にも見られない場所で休む必要性があっての一人静かになりたい、という奴で。
ドスンッ
と、中庭のベンチに腰をかけ、ベンチの背もたれに全力で背中を預けて「あ゛ーーーーー」と薄気味悪い声をあげ、口を大きくあけて、疲れとだるさを口を通じて外に逃がそうと。
本来ならこうならないように、負の感情や相手に呪をまく事で中和するのだが、今夜は生活費が足りないお陰で「あ゛ーーーー」と叫ぶ破目になってしまったのである。
巫女や信者、となる女が居れば――…まあマシだったのだが、如何せん、自分が良縁に恵まれずという奴で威厳も何もない顔で態度でいるから酒に溺れているから、いやいや…もう考えるのも面倒である、少し回復せねば。
その主を見守るは人間の掌と同等のサイズしかない真っ黒人型の小鬼、周囲を警戒するのに良く使役される小型の鬼は影に紛れ中庭の草木に紛れている、気配を感じ取ることが出来る騎士や魔術に精通している者であれば気がつくかもしれない。
■アンヤ > ――…荒神(アラガミ)。
神と文字がつくけども所詮は悪鬼羅刹か精霊とか妖精に近い存在、で有れば適度な補給が無ければ、それはもう弱体化だってする、代わりに人間と同じ食事である程度まかなえるワケだが、効率は非常に宜しくない。
だから早急にその手の手段を確保すべきなのだが、この王都は本当にその辺りが厳しく、己より強い奴はわんさか居るし、こうして何とか伝手を使って溶け込んでいくしか、生き延びる術はない。
「あ゛あ゛ー……。」
と誰しもが弱点である首を仰け反らして、真四角な中庭から夜空を見上げてはまた奇妙な声をあげて、自分に篭る負の感情を発散させるというか、やってらんない、と言うキモチを発露し昇華させていく。
それにしても――…なんだ。
貴族でも矢張り一人娘というのは可愛いのだろうか。
家と家をつなぐための道具、だとそういう考えの人間ばっかりだと思っていたのだが、何とも面白いものである。
■アンヤ > 世にも奇妙な愚痴?のようなモノを吐き終えると、ベンチから立ち上がり仮の住まいに帰るべく王城を後にするのであった。
ご案内:「王都マグメール 王城/中庭」からアンヤさんが去りました。