2020/04/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城内 魔導研究施設」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 王都マグメールの王城内、魔導研究施設。
其の室長室に、何時も通り柔らかな椅子に寛ぐ少女の姿は在った。

目の前のデスク、其の上に散らばるのは幾つもの資料。
目を通したのか通してないのか、乱雑に散らばる様子から伺い知る事は無かろうか。

「……雨が無ければな」

窓の外へと目を向ける。
其処に見える景色は、強くはなくも弱くも無い雨降る景色。
本当は少し出掛けたかったのだが、其れを見た途端に諦めたのだ。

ミリーディア > 此の魔導研究施設は王城内に在りながらも、比較的自由な出入りを許された数少ない場所。
其れは研究と共に、室長で在る少女自身が行う魔導機器の鑑定や調整を行う場で在るからだ。
勿論、個人的な理由で訪れる者も居るのだろうし、依頼に出した研究の実験体が訪れる事もあるが。
気分屋で在る事を除けば確実にこなすと云う確かな腕。
辺りに触れ回らずとも広がる情報が其の証拠である。

因みに本日の客人は三名。
一名は私事を挟む理由なので語れないが、他二名は魔導具の調整で訪れていた。

「彼等が来た時は降ってなかったのに、儂が出ようとすると降るのか。
天候と云うのは何とも云い難いものだね」

小さな欠伸を噛み殺し、身体を伸ばす。
天候もあってか気分的にも動き回りたいとも思えない。
何も無ければ、今日は此の侭で寝てしまおうかとも思っているぐらいであった。

ミリーディア > 「アザリー君の時と、あの狐の娘の時。
あれから力の解放をする機会も無いから、偶には相応した相手を探しに出たりもしたい処だが…」

何かを思い出したかの様な呟き。
其れは少なからず自分の力を解放した時の事だ。
少女は相手と対峙した時、相手の力を判断して力を揮う。
弱ければ小出しでいけるから、時間を掛けて相手をしようとする。
逆に強ければ、小出しは不利と考える為にいきなり大技を繰り出す。
名を零した相手は後者に該当する相手達。
詰まりは少女が強いと認めた相手が、今は此の付近に居ないと判断している現われであった。

のんびりもしていたい。
然し偶には力を解放する様な気晴らしをしたい。
二つの相反する考えに悩む。
今在る立場が、其れを依り難しくしているのもあるのだが。

取り敢えずは、甘味でも味わって気を紛らわせよう。
結局の処、最終的にはそう考えが至るのは何時もの事であろうか。

ご案内:「王都マグメール 王城内 魔導研究施設」にゾーイさんが現れました。
ゾーイ > そんな研究所に、招かれざる客が一人。
高度な隠形の術式を交え、研究所の内部へ侵入する盗賊の少女。

「ここが魔導研究所か……『知識』と『情報』の宝庫!
 黄金の山なんかよりも、遥かに価値があるよ!」

比較的に出入りが自由な場所ということもあり、途中までは欠伸が出るほど簡単に侵入できた。
流石に深部ともなれば高度な魔道具等のセキュリティも警戒したが、そう言ったものも感知できない。
安全を確信すると、少女は研究所の資料、知の山の物色を始めようとする。

その研究所の主人に、全て筒抜けであるとは露とも知らずに。

ミリーディア > 「……成る程」

今だ椅子に座った侭の主が小さく言葉を零す。
高度な魔術とは云えども、自身が持つ看破の術を破る形式で無ければ意味を為さない。
其れが僅かでも食い違えば見逃す事は無いのだ。

何を目的とするかは本人に聞けば良い。
今は其れを知らずとも、ゆっくりと重い腰を上げる。

侵入と云えども此の研究所はそもそも入り口迄は開放されている。
其処迄は辿り着けるだろうが問題は其処から先である。
大きな扉が一枚、然し周囲を探ろうと窓は一つもない建物。
此れで研究施設と成り立つのは、其の扉から先の空間を少女が管理している為。

果たして其処からの侵入は果たせるだろうか?
其れを確かめ様と研究所の主は動き出す。
単に室長室から扉を開き出て、直ぐ側の扉を確かめるだけだが。

ゾーイ > 「窓はなし、扉が一つ。魔法の仕掛けは……」

右目に手を翳し、左目だけで扉を見る。
仔猫の黄色の目は物理的な視力がほとんど無い代わりに、魔力や霊力などの見えざる存在を視る力がある。

これで安全を確認すれば、後は鍵を破るだけだ。
錠前の素材が柔なら単に破壊すればいい。
扉よりも硬いならば扉の蝶番を破壊すればいい。
そも、5本バネのピン・タンブラー錠といった、この時代では最高峰であろう鍵でも破る自信が仔猫にはあった。

「……! 誰か来てる」

しかし、所長室(と彼女は認識していないが)から誰かが出ようとする気配を感じ、一旦物陰に隠れてやり過ごそうと身を潜める。
彼女の存在感と気配は、影や闇の中では術式によって大きく薄れるためだ。

ミリーディア > 室長室の扉を開き、此の研究所内部全てに通じる扉の前へ現れるのは侵入者依りも僅かに背の低い少女の姿。
其処へとやって来る頃には侵入者は身を隠しているだろう。
物陰へと魔術を用い身を隠す侵入者。
普通為らば間違い無く其れを見逃すであろうが。

「誰も居ない様だね、儂の気のせい…な訳でも無いか」

室長室から真っ直ぐに扉の前にやって来れば、其の眼を足元へと向けた。
其の視線が先ずは侵入者のやって来た方角へと向けられる。
そしてゆっくりとした動きで、確実に少女がやって来るのに移動した経路を辿り始める。
呟きで、侵入した事を察知した事を。
視線で、侵入した相手が移動した跡を。
まるで侵入者へと態と伝えているかの様な素振りだ。
侵入者が此方を見ている為らば、そう経たずして自分の居る位置が理解されてしまうのが解るだろう。

ゾーイ > 「…………?」

息を殺して様子を伺う。
一見すると気付いてないような素振りだが、『気のせいな訳でもない』と、何かに気付いたようなことを呟いている。
そして何故かこちらの足跡(そくせき)を、正確に視線で辿っている。

「……っ……」

程なくして、視線と視線が交差するだろう。
まさか、看破されている? 仔猫の心音が早鐘を打つ。
自分よりも幼く見える少女を、左目だけで視認してみる。
魔力の質、量、流れ……全て普通に見える。

ミリーディア > 看破はしているが敢えて其れは教えない。
其れとは別の方法で侵入者を追跡したのだと認識させる。
行ったのは其れであった。

「身を隠す為らば、先ずは其処までの導も隠すべし。
やって来た御身を隠すだけでは意味は無いと、身を以て経験したかい?」

視線が交差すれば、そう伝える此方が浮かべる意地の悪そうな表情が見えるだろう。
其の時、少女の左目には確かに映った。
侵入者を捉えた相手の眼に、何らかの魔術的要因が発現しているのを。
其れは抑えているのか元々大きな魔力を使う魔術では無いのか、非常に微弱なものだった。

ゾーイ > 「……う、あ……完全にバレてる……」

何かしらのギミックがある、とだけは理解できた。
しかし検知できた魔力は粒子の如く微弱で、仔猫には原理が一切理解できなかった。

「……うぅ、観念するしかないや」

一見すると特別な部分は見えない、目の前の少女。
しかしそれ故に、仔猫は恐ろしかった。
謎とは力であり、未知とは恐怖であり、それ故にこの少女は驚異であった。

「参りました」

まだ通行禁止エリアには踏み入れていないため、開き直ることも出来ただろう。
だが、見えざる実力差を感じた仔猫は、両手を上げて素直に姿を表したのだった。

ミリーディア > 素直に負けを認め姿を現わした侵入者の姿。
其れが姿を偽らぬミレーの少女で在る事に気付けば、其の姿を見詰める眼を細める。

「素直なのは良い事だ。
てっきり、諦め悪く面倒な抵抗をしてくれるものかとも考えてしまっていたがね。
だが、今回に関しては其れが正解だ。
下手な逃亡を企てていたの為らば、面白い事に為っただろうからさ。
特に、君の様なミレー族で在れば尚更だ。
……其の辺りは、確りと認識しているかい?」

言い聞かせる様な言葉と共にゆっくりとした足取りで少女へと近付く。
其の目の前迄に距離を縮めれば、右手で上げている両手を下げる様にと指し示し。

ゾーイ > 「抵抗って、例えばキミを口封じに始末しようとするとか?
 そんな畜生仕事、ボクはするつもりないよ。できるとも思えないし」

あくまで家業は盗みであり、その際に殺しはしないというのが仔猫のモットーだ。
まぁ、居直り強盗の経験はあるが。

「う……そうだね、連行されたら酷い目に合うのは目に見えてる。
 噂には聞いていたけど、キミがここの所長の……ミリーディア、かな?」

指示された通りに手を下ろす。オロオロしながら。
噂、と言っても大した情報は集めていない。というより集められなかった。
ミリーディア所長に関してはとにかく不明点が多すぎて、尾鰭のついた噂話が飛び交いすぎている所為だ。
『俺の爺さんが餓鬼だった頃には既に所長だったらしい』なんて主張をする兵士もいる程だった。

ミリーディア > 「始末迄とは云わないが、身柄を拘束等だろうかね。
成る程、あくまでも盗みを専門とする訳か、悪くは無い」

少女の主張に自身の見解も加え乍、納得した様子で頷いてみせる。
良いか悪いかで云えば盗みをしている時点で悪い筈なのだが。

「君みたいな見た目も可愛らしい娘で在れば、連れられる場所に事欠かないだろうね。
運が良ければ良心的な愛好家に拾われるだろうし、運が悪ければ飽きられる迄弄ばれる道を辿るだろう。
いや、若しかしたら壊されて廃棄なんて事も在るか。
……おや、儂を知っているのか。
所長と云うか室長と呼ばれているがね、呼び方は好きに任せる。
立ち話と云うのも疲れるだろう、付いて来給え」

戸惑う様子に細く笑み乍、さらっと少女へとそう返す。
予想される先を細かく伝えたのは、そう伝えられた少女の反応を見たいが為の悪戯だ。
其処迄伝えれば、やって来た室長室へと振り返って歩き出した。
此処で話し続けるのも良いが、研究員の出入りで目立つだろうとの考えもあってだ。

ゾーイ > 話し方にも年季を感じる。
外見年齢が実年齢と同一ではない、というのは間違いなさそうと確信して。

「……強調しなくても、ボクの命運がキミの掌にあることは理解してる。自己紹介しておくよ。
 ボクはゾーイ。ゾーイ・ナインライヴズ。隠しても意味ないし、一方的に名前を知ってるのも変な気分だし」

末路を事細かく伝えられると強がるも、耳や尻尾、肩や握り拳はふるふると僅かに震えていて。
そして、シラを切っても調べればすぐにバレるだろうと考え、名前を自ずから明かした。
その方が呼びやすいだろうという思考もある。

「(はぁ、ここまでかぁ。ボク、どうなっちゃうのかな……兄ちゃん、ごめんね)」

そんなことを考えながら、言われる通りに後をついて行った。

ミリーディア > 移動してから聞こうと思ったが、先に名乗る少女に意外そうな表情を浮かべた事だろう。
伝えた内容も理解している様だが、其れに関しての反応は想定内か。
怒りなのか、恐怖なのか、其の判別迄に正しくは至らないが。

「ゾーイ?
そうか、成る程、懐かしいものを思い出させる様な名前だね」

其れだけを伝え乍、其の侭室長室へと戻って来る。
飾り気の少ない質素な部屋だが、部屋の周囲を囲む様に並ぶ本棚が直ぐに目に付くだろう。
後は普通の棚に並ぶティーセットと、空に為って潰して置いてある銘菓店の箱ぐらいか。
そんな中、特に目立つのは乱雑に資料の散らばったデスクと、如何にも座り心地の良さそうな、柔らかそうな椅子だ。

「取り敢えず、其処に座れば良いだろう。
此れから先を決める大事な話さ、確りと聞く事だね」

傍らから、客人用だろう普通の椅子を対面する場所に置けば、自分は其の柔らかそうな椅子へと向かい座り込む。

ゾーイ > 「懐かしい…? まさか、由来がわかるの?」

驚きに目を丸くする。
ミレー族が信奉する神、アイオーン。
それは「プレーローマ」と呼ばれる4対8体の側面を持ち、ゾーイという名はその中の一つである「ゾーエー」を由来としている。
人間達の間で偽神ヤルダバオートが信仰の対象となってからは、すっかり忘れ去られている伝承だと思っていたが。

「……うん」

周囲を見渡す。
本棚を埋め尽くす書物は飾りではなく、長年読み込まれたものだと、破れた背表紙や手垢ですぐにわかった。
ティーセットとお菓子の箱にも目をやる。

「(王家の関係者なだけあって、流石にいいもの食べてるなコノヤロー)」

そんなどうでもいい羨望の念も抱きながら、居心地悪そうに椅子に腰掛けて、大人しく沙汰を待つ。

ミリーディア > 「こんな場所で語る様な内容では無い、とだけ教えておこう。
今や謳われる事の無い、闇に消された真実さ」

知っている、だが今の王国を考えれば其の名は禁句に近いものだ。
其れを示す様な含みを混ぜた言葉で少女に返しておく。
何故知っているのか迄は流石に伝えないが。

自分の椅子へと寛ぐ様に座り込めば、少女が腰掛けるのを確かめる。
散らかっている資料は取り敢えず無視だ、報告書と調整資料だけで重要性は高くない。
其の視線が部屋の周囲へと向けられるのは、物珍しいのだから当然だろうと指摘はしない。
其の際に何やら思う処在る様な雰囲気を漂わせていたが、其処も気にしないでおこうか。

「其の前に、先ずは目的を聞こうか。
金銭目的為らば、此処より安全で稼げる場所も在るだろう。
こんな危険な場所に侵入して迄も得る様な物が何なのか。
不思議で為らなかったのでね」

流石に知識には絶対の自信を持っていようが、他人の考えや気持ち迄もを読み切れるものではない。
其の内容次第で先も考え様と、少女への質問を向けた。

ゾーイ > 「……そう、だね」

仔猫はまだ年若いが、その含みを感じ取れないほど愚かでもなかった
人間の中にも、それを知る者がまだいるなんて。
その感動だけを胸に、それ以上の追求はせずに口を噤む。

「目的……ボクは、社会を一つの生物のように見てるんだ。そして、財産は血液。
 一箇所に滞らせていいものではなくて、全体に、足りない部分に行き渡らせる必要のあるものだって。
 知識や情報も同じ……いや、より重要な財産だよ。
 決して瓶詰めにして、独り占めしていいようなものじゃないって、ボクはそう思ってる。
 だから、盗みに来たんだ。ここに隠された至高の知を」

思っていることを、正直に話す。
どうやら、彼女は常人とは異なる価値観の中で生きているらしい。
奇妙な形ではあるが、そこには共存共栄の思想が見えるだろうか。

ミリーディア > 「理解が早くて助かる、納得はしてないだろうがね。
儂の元に居る者達に其れに近いのが居るからか、何と無く解るよ」

人間としての自分では無いが、別の存在とした自分に従っている。
正に其の信仰を抱いた者と、彼女と同じ種を愛した者。
彼等を思い出し乍、其れだけ伝え留めておく。

そして、次いで彼女が紡ぐ考えに静かに耳を傾けた。
考え方としては悪くない、珍しい考え方では在るが。
違いは在れども自分に近い考え方の持ち主なのだろう。
只、考え方に知識が追い付いていない部分も理解出来る。

「成る程、理解した。
だが、其れは正しき知識と今の世の流れに深い理解が在ってこそ行うものだ。
知識や情報は、確かに重く見るべき財産とも云えよう。
然し、君に其の知識や情報を正しく扱う術は在るのかね?
其の知識や情報が、真実で在るのだとの確証は在るのかね?
そして、今の此の世界が、そうで在ると思うかね?

そうなのだと、君が本当に思い至っている為らば。
全てとは云わないが、提供してやろう。
……如何かね?」

そんな価値観を持つ少女だからこそ、間違った行いを留める為に其れを伝える。
伝えた後に、今度は其れに対する少女の答えを静かに待つのだ。

ゾーイ > 「できるワケないよ、納得なんて。
 だからボクは、ミレー族であることを隠さない。
 ボクにできる反抗は、それぐらいだから」

自らの教えが邪と断じられ、迫害される。
そんな過去を持つ一族の末裔故か、そこには一種の反骨精神があった。

「ボクが無知だって、そう言いたいの?」

歯軋りをする。握り拳に力を込める。
悔しいが、事実だ。事実だからこそ悔しい。
苦虫を噛み潰したような顔で、目の前の少女を見据える。

「そう、だよ。ボクは何も知らない。キミと比べれば尚更だろうね。
 でも、『ボクは何も知らない』ことを知っている。それに、知識の中に触れてはいけない禁忌があることも。
 そして、それを見つけた時、人々がするべきことは『挑戦』ではなく、『封印』であることも。
 だから……ボクは知りたい。教えて。理解するための術(すべ)を」

それが、仔猫の答えだった。

ミリーディア > 「世の中には、そうするに不要なミレーの者も居るだろう。
だが、君は如何かね?
力に見合わぬ行動は、自分の身を滅ぼすだけだ。
自分が大丈夫だと思える程の力を持った時にこそ、其れを行うものではないかな?
そうで無ければ只の無駄死にと為る、君の反抗が誰にも届かない侭にね?
其れは正に先程儂と向き合った時に感じた筈だが」

此処に来る前に少女が見せていた雰囲気、其れを示す言葉。
尤も、其れは人間の意見としては如何なものかと思えるものだろう。

向けた問い掛けに対する少女の答え。
目を閉じて其れを聞いていた。
全てを聞き終えた後に、其の目を開く。

「面白い答えだ、何も知らないからこそ知るべきか。
良いだろう、其れを理解する為の術を教えてあげよう。
知識や情報を得る為には、其れ等を理解する為の術が要る。
要するに、此の世界に伝わるあらゆる言語の理解だ。
種に依って扱われるもの、遠い過去に扱われていたもの。
其れを得た時、君は其れ等が如何いったものか理解出来るだろう。
本気で、儂に其の術を得る教えを請うかね?
見返りは、君にとってとても大きなものとなるが」

覚悟だけで得られる為らば苦労等と云うものは要らない。
少女を真っ直ぐに見詰め乍、其れを確かめるかの様に最後の回答を求めた。

ゾーイ > 「……! ボクは! ボク、は……」

『君は無力だ』と、告げられる。
思わずカッとなり声を荒げるが、実際に此度は力不足であって。
言葉が詰まり、悔しさの余り下唇を噛む。

「ボクは、欲しい。何も知らないまま、何も理解できないまま、終わりたくないよ。
 教えて。キミの……いえ……教えて下さい。アナタの知る、理解する為の術を。アナタの知る真実を」

基本的に、仔猫は敬語を使わない。
相手を自分と同等と考える、生意気さがそうさせる。
その仔猫が、敬語を使い、頭を下げた。
自尊心をかなぐり捨ててでも、教えを乞いたいと。

ミリーディア > 「其れで良いのさ、今は其の悔しさを確りと感じておき給え。
悔い無くして成長なんてものは在り得ないのだからね。
只修行を行えば良い、只教えを請えば良い、只力を持っている。
そんな連中が真の成功なんてものは収められる事はない」

悔しさを露にする少女だが、其れを宥める必要は無い。
其れも又必要なものなのだと今は伝えるだけである。

そんな少女の決意を聞き、暫しの間を考えに向ける。
出会ったばかりなのだからどんな少女で在るかは解らない。
其の考え方以外は、だが。
其れでも、其の真摯的な様子を見れば真剣に考えての発言である事は理解出来た。

「教えるにしても限界は在るだろうが、君が望む通りにしてやろう。
先ずは言語と文字の理解からだが、其れは君の左目が在れば多少は難度も和らぐだろう。
其れが出来る様に為ったら、君の知りたい真実を教えてあげよう」

だから、其れに関しての返答は真面目に伝えてやる。
認識については、先程認識の力を使った時に少女の左目の力を端的にだが理解したのも在ったと云う処も。

「そうそう、その見返りだが…
ゾーイ君、ミレー族としての君の所有権を頂きたい。
此処に通う事に為るだろうから、在った方が便利だろう?
儂としても、色々と便利だからね」

そして続けて伝えるのは、其の様な内容だった。
立場を考えれば、何時捕まってもおかしくない。
只、其れが不公平なもので在る場合、そうする事に大きな意味が生まれる。
最低限、其れだけは避ける為の術である。
勿論、其れ以外にも理由は在るのだが。

ゾーイ > 「…………」

実感の湧かない仔猫は黙りこくってしまうが、それは確かだった。
野心やハングリー精神と呼ばれる類のものは、成長するに当たって最高の原動力(モチベーション)であり。
そして、既に満ち足りているものに、それらが備わっている筈がないのだから。

「左目……何で、わかったんですか?」

驚きに瞳孔が開く。
彼女の左目は、生まれついての特異体質であり、明かしたことは誰にもない。
とはいえ、『天眼通』などの似たような能力の伝承は各地にある。
あらゆる知の蒐集家たるミリーディアには、それに類するものだと看破されても不思議ではない。

「えっ。ボクの……所有権……」

自由人であることが、仔猫の誇りだった。
目の前の少女の言うそれが形式上だけのもので、実際に仔猫をどうにかするつもりはないとわかってはいた。
それでも、服従、従属、隷属、隷従といった立場に自身の身を置くことには、激しい抵抗があった。

「……わかり、ました……ボクは……ゾーイ・ナインライヴズは……今日を以って、アナタの……所有物……です……」

だから彼女は、目尻に涙を浮かべ、深く俯きながらそう答える。
下唇の端から、強く噛みすぎた余り、血が一筋零れ落ちた。

ミリーディア > 理解しての沈黙か。
確信とは云えないが、そう受け取って良いと判断しよう。
其れよりも。

「扉の前で、君も儂を見ていたのだろう?
君が儂の力を判断したのだから、儂が君の力を判断出来るのは当然ではないかね?」

明かさずとも、目を合わせた時にお互いに解った筈だ。
あの時に自分は認識の力を使っていたし、彼女も此方の力を認識する術を使っていたのだから。
逆に何で聞かれたのかと思える様な、不思議そうな表情を向けてみせた。

後は見返りと云う件の問題か。
さっきの主張から自由を好む性格なのだろう事は予想出来る。
現に其れを伝え、承諾をした少女の姿が其れをありありと見せていたからだ。
そんな姿を見ても表情を変えない自分を見て、少女は如何思うのか。
其れは、次に伝える言葉の後も含めて見ていたいもので。

「ではゾーイ君、君は今日から儂のものだ。
そうである印とかは無いからね、此処の研究員と同じ証明印をあげよう」

先ずは其れだけを伝え、デスクの引き出しにある紋章を取り出し、デスク越しに差し出す。
魔術の基本とも云える印、六芒星の描かれた紋章だ。
或る認識魔術が施されており、持ち主以外は認識しない様に出来ている。

そして、後に続いて残りをこう伝えるのだ。

「此れが在れば、君は自由に此の研究施設内も行き交いが出来る。
気が向いて見学したくなったら、邪魔に為らない程度に好きに見て回れば良いだろう。
通信手段にも為っているからね、呼び出すにも便利なのさ。

では、儂の所有物となったゾーイ君に先ず伝えるべきは此れだ。
呼び出した時には此処に来給え、後は好きにすると良い」

ゾーイ > 「そう、か……覗いているなら、覗き込まれているんだ」

しかし、その説明で合点がいった様子。
ここら辺は若さというより、稚気とでも言うべきか。

「六芒星の紋章……」

デスク越しに渡された証明印なるものを受け取り、
そして、呼び出したら来いと言う言葉に、ビク、と体を震わせる。

「えと、あの……その。ボクを呼び出すような『用件』って?」

全ては想定内、とでも言いたげな程に変わらない表情。
そして、仮にも犯罪者である自分に与えるには余りある特権。
だからこれは、目の前の少女へのメリットが薄すぎると感じたが故の、素朴な疑問だった。

「(ボクの体を使って、何か実験でもするのかな…)」

ミリーディア > 一通りの説明は終わった。
渡す物も渡した。
証明印を受け取った少女を見詰めていれば、少女からの素朴な疑問。
其の様子は如何見ても不安気な雰囲気を漂わせているものだろう。
そう思わせる様な物言いを敢えてしていたのだから当然か。

「ああ、気になるのは当然か、君の立場を考えればそうかもしれないね。
勿論、呼び出すのは儂の云う事を聞いて貰う為さ」

意味有り気に、ゆっくりとした口調で先ずは其処までを。
同じ様に続けて以下の言葉を伝えるのだ。
こうした遣り取りを好んでいるのがよく解るだろうか。

「美味しい甘味の噂が立ったら真っ先に向かって貰う。
其れに合う紅茶と共に持って来るのが重要な君の使命だ。
ああ、支払いは後で経費から出るから安心し給え」

ゾーイ > 意味ありげに、不穏に、ゆっくりと伝えられる言葉。
どんなことを言われるのか。
『言うことを聞いて貰うため』という発言に、体を縮こめる。

「…………はい?」

しかし紡がれた言葉は……何と言うか。
要約すると『お菓子買って来い、あと紅茶な』であった。

「使いっ走りかーい!!
 ボクがキミに抱いてた敬意を返せ!!!」

そして反射的に、本音のツッコミが飛び出てきた。
自分は揶揄われていたのだと、ようやく気付いたのだから。

ミリーディア > 自分でやっておいてなのだが、少女の反応は面白い。
身を縮込めたと思えば、自分の言葉に向けられるツッコミ。
思っていたよりも楽しめそうな相手で在ろうか。

「何を云う、糖分は頭を使う時には良いんだから重要だろう?
そして糖分を取るからには、其の味わいを楽しんだ方が有益ではないかね?
……ああ、勿論、君の分も序でに買って来ても構わない。
其れで良いだろう?」

そんな少女に対し、澄まし顔で答えてみせる。
道理も通っているし、少女にも得は在る。
如何だろうか?

ゾーイ > 「え、ボクも食べていいの!?
 ……じゃなくて! いや、最初から別に契約に文句はないけど、ないけど!
 あー、もう、敬語はなし! なんかキミ、敬う気になれない!」

わかりやすく怒り、わかりやすく不貞腐れる。
これはわかりやすく振り回されてくれそうだ、と期待が高まるかもしれない。

「何か、変な噂話ばっかり立ってる理由がわかった気がする……いっつもそうやって他人をからかってるんでしょ!」

ミリーディア > 「勿論、買出しに向かわねば為らない事を考えれば十分なものさ。
おっと、だが、あんなに嫌そうな素振りを見せていただろう?
いきなり酷い物言いだが、儂は最初から敬えなんて一言たりとも云ってなかったんだ、問題はない」

コロコロと表情を変える少女を其の侭見詰め続ける。
其の表情は相変わらずの澄まし顔だ。
内心では確かに期待が在る、其れは確かで。

「其の噂が、どの噂を指しているのかが気に為る処だが…
別に全てがそうでは無いのだがね?
君が良いと云ってくれるなら、君が思っていた通りの扱いもしてあげて良いのだが、何か在ったら後が面倒だしね。
其れよりもこうして楽しんだり、可愛がったりした方が面倒も無く良いものだろう」

事も無げにそう伝えてみせる。
少女が考えていた内容は一応考えに在ったのだと教える様に。
尤も、後に続く内容は別の意味での扱いに聞こえる訳だが。

ゾーイ > 「出不精すぎる……あのね、ミレー族相手に『自分の物になれ』とか嫌な顔しないワケないでしょ!
 良く良く考えたら『証明するものがない』ってことは所有権を主張する意味もないじゃん!」

通行証を所持しているなら、『雑用係にミレー族が買われたか』ぐらいにしか周囲に思われないだろう。
所有権という堅苦しい言い方からして揶揄われていた訳だ。

「どれも何も、『建国前から居た』だの『実はドS』だの『実はドM』だの、変な噂しかないよ!
 対等に楽しめればそれがいいのは確かだけど、可愛がるって……見た目はボクの方が年上なのにさ」

尻尾と耳がヘナ、と垂れる。
力みすぎていた分、一気に脱力したような雰囲気で。

ミリーディア > 「一応は此処の室長だからね、そんな理由で外出なんて出来ないだろう?
其れなのに新商品が出たら如何すれば良いか、買出しに誰かを向かわせるのが一番ではないか。
其の時に研究員を出す訳にもいかない、そう考えれば君が動いてくれるのが一番なのさ。

然し意外と気付くのが早くて吃驚だ、もう少し引っ張れると思ったのだがね」

彼女の云う通り、所有物とするつもりなら其れらしい印を作るのが尤もだ。
其れこそ、立場に相応しい首輪や、最悪焼印等も在るだろう。
そして揶揄われていた事を知られて尚、其れも想定に入っていたかの様に表情変えず答えて。

「成る程、思っていたよりも少なくて安心した。
其れは仕方無いだろうね。
君のそんな処を見ていたら、如何しても可愛がる方向に傾いてしまうものだろう」

今見ていただけでも表情の豊かさを感じるのだ、そんな少女の表情がどれだけの変化を見せるのか。
其れを伝えている椅子に座っていた姿が、気が付いた時には少女の隣に佇んでいる。
そしてまるで不意打ちの様に、伸ばされる手が優しく肩に置かれて。

ゾーイ > 「何かもっともらしく凄い理不尽なこと言われてる気がする!
 もー、もうちょっとわかりやすく喋ってよ! さてはわざと迂遠な言い回しで煙に巻くのが常套手段だなー!」

さては古風な口調も仕込みか!と頬を膨らませる。
ギャーギャー指摘しても余裕の澄まし顔なので、余計にヒートアップして。

「思っていたんかーい!
 もうちょっと改める努力とか……え、居な……っ!?」

一瞬の間に消えた。そして肩にそっと手を置かれる。
その瞬間まで、どこに居たのか全くわからなかった。
さーっと顔色が青くなり、冷や汗が流れ、尻尾はビクンと直立して、ブワ、と毛が広がる。

ミリーディア > 今だ続く少女の物言いに少しだけ口を閉ざし。

「使いっ走りと云うものは便利で良いものだ、そう思うだろう?」

正に少女が口走った直球の発言を其の侭流用した。

「其の者の本質を変えるのは容易い事では無いし、変えた事でどんな弊害が起こるやもしれない。
其れならば、無理に変えず其の侭を大切にするのが一番だ。

ああ、此処まで短い距離の転移なら、そう難しいものではないさ。
其れで、如何かしたかね?」

更に少女の言葉を流しての転移。
其の手の内を明かし乍、言葉尻に合わせ耳元に唇を寄せて囁く様に。

ゾーイ > 「うぐ……あの。まず、その有り余る力を部下を驚かせるために費やすのやめて下さいマジで」

火の玉ストレートとでも言うべき直球の発言にはぐうの音も出ない。
加えて空間転移と言うが、空間を置換したにしろ歪曲したにしろ、この距離でも魔力の消費は相応なものだろう。
つまりそれは、彼女の魔力の絶対量が消費を意にも介さない程のもの、と言うことで。
実力差まで見せつけられ、文句はお願いという形に格下げされるのであった。

ミリーディア > 「有り余る力だからこそ、何処かで使っておく必要が在る。
其れが何を行うのに使われるかを決めるのは、儂自身だろう?」

魔力の絶対量の大きさに加え、魔術の極みと云える程に深い理解度に依る消費量の削減。
其れが在ってこそではあるのだが、細かい説明は理解し難いものなので止めておいて。
相変わらずの言葉遊びを行い乍、立てられた侭だろう尻尾を下げさせる様に、柔らかく触れて撫でてゆく。

ゾーイ > 「ひゃっ…!」

やっぱり意地悪だこの人!などと考えていたら敏感な尻尾に触れられ、素っ頓狂な声を漏らす。
けれど、柔らかく優しく、気分を落ち着かせられるように撫でられると、少しだけトロンとした顔つきになってきて。

「あ、あのー……できれば、尻尾とか耳は、あんまり……」

一応、そうお願いしてはみる。

ミリーディア > 「つい最近に買出しは行かせたばかりだ。
だから今の処は買出しも不要でね、其の代わりに楽しむと云うのは如何かね?
もう少し深い所迄、君を知ってみたいと云うのもあるのさ」

そんな少女の姿を見ていれば、伝えた通りに違う少女も見てみたいとの思いが湧き上がるもので。
耳元での囁きを続ける侭に、其の手は尻尾が下げられても撫でられ続ける事だろう。
其の毛並みを指先に絡め感触を楽しむ様に、根元から其の先迄をゆっくりと、ゆっくりと。

ゾーイ > 「そ、それなら……ボクもミリーディアのこと、知りたいよ。ボクばっかりじゃ不公平だよ」

尻尾の毛並みな滑らかで、手触りはまるで絹のよう。
撫でられれば撫でられるほど、体は反応し、頬は紅潮していく。
耳元で囁かれる声も、耳への刺激となって背筋をゾクゾクと震わせる。

「ダメ……かな?」

ミリーディア > 「成る程。
ゾーイ君が知りたいのは、儂のどんな所かね?」

其の手触りも、少女の反応も、飽きさせる要因は無く。
其の反応をもっと引き出すかの様に、滑らせる手の動きは少しずつ大胆に為ってゆく。
耳元での囁きにも身を震わせる、又違う反応を求める様に舌を伸ばし舐め上げるのだ。

「其れは君の返答次第としてみようか?」

相変わらずのそんな意地悪も加え乍。

ゾーイ > 「ひ、ぁっ……その、多分、キミが思ってる、ことと、一緒……」

耳を舐られ、ゾワゾワと体を震わせながら。
ああ、でも、こんな曖昧な言い方では、多分許してくれないだろう。

「ミリーディア、は……エッチなこと、どんな風にするのかな、って……」

敏感な場所に刺激を与えられ続け、スイッチが入ってしまい。
遂には正直に、欲望を口から紡ぎ出してしまう。

ミリーディア > 「ゾーイ君、君がさっき教えてくれた儂の噂を忘れたのかね?
そんな儂を前にして、君がどんな姿を見せてくれているのかは分かるかね?
今の君を見て、其れが儂を如何動かすかに繋がるのかは…」

少女が段々と抑えられなく為ろうとも、其の調子が変わる事はない。
変わらない意味有り気な遠回しに伝える言葉。
勿論、其の間も手が止められる事は無い。

「君なら、きっと理解してくれていると思っているよ。
だが良いのかね?こんな場所だと云うのに、こんな風に為ってしまって」

ゆっくりと確実に少女を欲情へと誘い乍も、現実も又認識させる様に言葉で少しだけ引き戻す。
其れを繰り返し、戻れない所に迄少女を引き落としてゆくのだ。

ゾーイ > 「だ、だからボク、尻尾や耳はやめてって……我慢できなく、なっちゃう、から……」

段々と息が荒くなってくる。
切なげな瞳をミリーディアに投げかけるも、調子も表情も変わらない。

「う、ぁ……」

指摘通り、ここではいつ他の研究員が訪ねてくるか、わかったものではない。
ぎゅうっと脚を閉じて、いじらしく自分を抑え込もうとする。

ミリーディア > 「そんな君だからこそ、こうしたくなる。
其れは、君自身もちゃんと理解はしているのだろう?」

今の雰囲気から考えて、自分と云う相手を前にして。
受身に転じた少女の制止の言葉が意味する事を全く理解してない訳でもない筈で。
耳元から唇を離せば、向けられる切なげな瞳を真っ直ぐに見詰め返す。

「君が若し声を抑える事が出来るなら。
其の姿をやって来る誰かに見えなくする事は可能だ。
見えなくなるんだ、どんな風に弄られても、どんな姿を晒しても大丈夫だろう。
試しにやってみるかね?」

姿を見えなくさせられるなら、声を聞こえなくする事も可能だろう。
落ち着いている状況であれば簡単に思い浮かぶ事であろう。
然し敢えて情報は半端に伝えるだけに留め、撫でていた尻尾を其の根元を狙って握ってしまう。
握る指先を揉む様に蠢かせ刺激し続け追い詰め乍、少女の興奮を煽って思考を鈍らせる。
当然だが、スイッチが入っているのは此方も同じなのだ。
止めるつもりは既に無かった。

ゾーイ > 「うぅ……やっぱり、意地悪……」

そして、意地悪な相手に隙を見せてしまったのが自分なのだと、思い知らされる。
仔猫はただ、身を捩らせることしかできない。

「や、ダメ……無理ぃ……声、抑えるなんて……ひゃうっ!」

もしその状態で声を漏らしてしまったら。
その思考が、より背徳的な興奮をもたらす。
そして尻尾を強く握られ、小さな悲鳴と共に思考は攪拌される。
衝動と本能でしか行動できないよう、誘導されていく。

「……にゃあっ!」

その瞬間、彼女の思考回路は根本から弾けた。
ミリーディアに飛びかかって、彼女を押し倒そうと、体が勝手に動いていた。

ミリーディア > 「今更な言葉だと思うが、仕方無いとも云えなくもないか」

立場の違いも、其の思考の流れも違う二人だ。
其の流れが絡めば如何しても弱い立場の者が下がり気味と為るのは当然とも云えるもので。
身を捩らせる少女の姿に自然と目を細めてしまう。

「ああ、矢張り君は其の手の者なのだね。
其れなら其れで、楽しませて貰うだけさ」

状況を言葉で連想させれば、少女の興奮が増すのが手に取る様に分かる。
其れならばと、次のステップへと移る為の準備も始める。
握れば依り強い刺激が与えられ、少女の理性のタガが外れやすく為るだろうとは想定内だ。
見詰める視線の中で理性が弾け、何らか動きを見せようとする。
其の動きを予想していたかの様に、既に少女の腕力は子供以下に落とされていた。
ずっと触れていたのだ、其の機会は何時でも在ったのだから。

押し倒そうとする少女だが、きっと抱き付く程度しか出来ない筈だ。
だが其れで良い、少女と抱き合う様にし乍、柔らかな椅子へと戻って座り直すから。
其の侭、少女は膝の上に座らせておこう。

返答を聞かずの問答無用な伝えた通りの御遊びの開始だ。
此れは其れを意味するのだと、今の少女が理解出来るのか如何か分からないが。

ゾーイ > 「ふぅー……ふぅー……キミが、悪いんだからね……!
 ダメって言ったのに……キミも十分可愛いのに……」

押し倒そうとするも、力を削がれ抱きつくことしかできない。
しかしそれを認識するような理性も残っておらず、まるで押し倒せたかのような言葉を、もたれかかるような姿勢のままに紡ぐ。

「ん、にゃっ!?」

ぽすん、と柔らかい何かの感触。
抱きついた姿勢のまま運ばれて、先ほどの室長用と思しき椅子に腰掛けたのだという単純なことにすら、まるで理解が追いついていなかった。

けれど、そんなことはもうどうでもいい。
そう言わんばかりに、顔と顔を密着しそうな程に近づけて──。