2020/02/19 のログ
■ラファル > 「うん、ボク、何時も元気だよっ!」
にぱっ、とぐるぐる巻きの幼女は、嬉しそうに、楽しそうに笑顔を作り上げるのである。
目が笑って居ない、ああ、怒ってる、だらだらと汗が滲む幼女であり、必死の綱渡りをしているような気分になるのだった。
彼女の目はじっとこちらを見ていて、そして、外されない、其れこそ、威圧してるかのようにも見えるのである。
「あははは……、その時はお姉ちゃんによろしくね、きっと喜ぶと思うなー。」
視線がざっぱんざっぱん、右に左に泳いで渡り、そして、彼女の言葉に乗っかる様に話題のすり替えとか、逃がしてしまおうという幼女の魂胆。
むろん、その魂胆は一瞬にして潰れてしまうのであろう、そもそも成功することの無い賭けで、無謀ともいえるのだろう。
「あはは……差し出がましいことになっちゃったかなぁ……。
はい、上級の紙はコウキュウヒンデス。」
一般市民が読み書きに使うような、混ぜ物沢山の紙、それでもそれなりの金額になる。
そして貴族が使うような、綺麗な白い紙であれば、数枚程でも本当に金のかかるものなのである。
一応物の価値は判っているし、竜の目はそういった物に関しては天性の能が有る。
だらだらだらだらだらだら。
汗が滲む、見つめられ続けて、幼女の笑顔、微妙に硬くなるのである。
あ、オワタ、という思考。
■アマーリエ > 「元気なのは良いわね。
大人になるとそんな風に笑っていられなくなるのよ。立場ばかりが増えるのって面倒だわ。
かといって、――家柄だけの分かってない愚鈍な奴に仕事を任せる、させるワケにもいかないから遣るけど。」
視線は逸らさない。かといって、ありありと分かるような怒気はぶつけない。
口元だけは笑みの形を保ちながら、卓上に置いたままの白磁のカップに手を伸ばす。
カップで揺れる紅茶は温くなってはいたけど、呑めない程ではない。言葉の合間に喉を湿らせる。
「ふふ、取り合えず検討はしておくわ」
視線は逸らさない。眉を撓らせて小さく笑い声を転がし、当座で足りないものを思う。
恒常的に不足しがちなものをリストアップして、どれだけの速度と予算で揃えられるかどうかを打診するのがいいだろう。
噂に聞く範囲で考えれば、そうは問題はないだろうけれども、兵数を考えれば他師団と比べて自分達は少ない。
しかし、全力で軍を動かす時が来ればその時の物資の消費速度は、勝るとも劣らない勢いで干してゆく。
戦争は経済活動でもあるという言葉を地で行く勢いで、だ。
「昨日や今日で始まった編成の部隊じゃないもの。鞍だって工夫もするわ。
――でも、じゃろって何よ。じゃろって。尤もらしいコト言ってくれてるのに台無しじゃない」
更に視線は逸らさない。見つめ続けられて脂でも溜まりそうな勢いで見詰め続ける。
進言、意見具申の類は大変結構。悪しきを善しに改めると書いて、改善と呼ぶ。硬直化した意識は撃ち破るべきである。
せめて、此れが悪戯ではなく真っ向からのものであれば。
はあぁと魂が抜けるような嘆息と共に、カップを置いてしゃがみこもう。簀巻きの幼女の視線と近しい高さになるように。
■ラファル > 「大人って、タイヘンデスネ……。」
静かだからこそ怖いのである、噴出する怒気は、叩きつけられるような其れは、発散しているともいえるのであるから。
颱風の目のような、穏やかさだからこそ、その力を溜めているようにも思えて幼女は恐怖を覚えるのである。
普段ならともかく、今は幼女は力を奪われていて更に、簀巻きにされている、喰い込む縄は、身じろぎしても抜けられ―――無くはない。
忍びの業と言うのは、こういう時にさえ、対応する業が有るのだ。が、それを行使するのは良くないだろう。
流石に今現状其れをしたら、自分だけではなくて、他にも迷惑がかかる人が出てくる、幼女は幼いけれど、それでも、やっていけない事ぐらいは解るのだ、ちゃんと、教えてもらって居るのだ、教師に。
弁えるという言葉は短いが、色々な意味を持つ大事な言葉である。
「ハイ、マエムキニオネガイシマス。」
だらだらだらだらだらだら。幼女の全身から零れる脂汗が、地面をじっとりと濡らしているようにも見える、正直に言えば、其れは感覚的なものであり、言う程地面を濡らしているわけではないのだ。
自分を見つめる碧眼の冷たさは、氷よりも冷たく感じるのに、汗が止まらないと錯覚してしまうのである。
薄く持ち上がる彼女の唇さえも、三日月の刃のように見えて、何時それが自分の首に落ちないかと感じてしまうのである。
「あ、ハイ。
おふざけが過ぎました、ごめんなさい。」
悪戯のつもりで書いているから、終始まじめなつもりもなかった、隠形も、脱出も侵入も、全て完璧にできていたはずである。
名前を書いてしまったという、致命的なミスをして、それで見つかって今の現状。
すべて自分が悪いという一言である、こうなれば幼女に出来る事は只々、謝り、反省するしかないのである。
「―――ぴぃっ。」
彼女が動いた、そして、目の高さを合わせるようにしゃがむのが見えたのだ。
同じ視線の高さに向けられて、幼女はブルりと震えるのである。珍しくも幼女の目に涙が浮かぶのだった。
■アマーリエ > 「ええ、大変なの。だからって子供に戻れないから余計に大変だわ」
此れが長男、次女――であっても変わるまい。
家を捨てて自分に都合よく生きるにしても、家の名を名乗り続けるとこれもまた、巡り巡って家の方に来る。
面倒なものだ。だから、こうして長子としての責務を果たすことを受けて立つ勢いで師団長の座を継いだ。
マウントを取りたがる貴族たちに迎合するばかりではなく、自己の勢力を保って国を守るという任を果たすがために。
力を奪われていても、封じられていても油断はしない。
此処に立つのは、竜を従え、竜を駆る騎士達の頭目である。その身一つで竜と伍すものだ。
如何に忍びの技の使い手だからとて、一挙手一投足を見据えられる処に居るのであれば遅れはしない。
「貴女次第ね。……なーんて、冗談よ。冗談。けど、おイタには罰を与えなきゃいけないわ」
視線は、やっぱりそらさない。醜態を晒して己の興を買うように仕向けるつもりなんて、ない。
それでは釣り合いが取れない。人間は過剰な罰や何やらを与えがちだが、子供の悪戯に本気を出すワケにはいかない。
ただ、程度は低いとはいえ機密に関するモノを見ている可能性はある。その点については、釘を刺さなければならない。
「あの書類はね。直ぐ使うものだったの。とっても、とーーーーっても、困ったわ。――だから、次はしないで頂戴」
靴を脱ぎ、東方やあるいはシェンヤンで言う処の正座と呼ぶ姿勢に膝を曲げて座しつつ、簀巻きの幼女を縛る縄を掴んで引っ張ろう。
己の膝上に持ち上げ、横たえようとしながら言い聞かせるような声音で告げる。
■ラファル > 「――――。」
彼女の言葉に対して、返答の言葉が出ない、流石に10歳の幼女には子供に戻れないから大変だという大人の苦労が理解できない。
それに、気ままな竜であるゆえに、家に縛られるという感覚も――――なんとなくそれに関しては今わかった気がする、家に連絡が来て、一族総出で捕まえて『提出』される、その状況が今、家に縛られるという事なのだろう。
なんとなく、そう理解するのである、がそれを言葉にして紡ぐほどでもなくて。
出来る事、見抜かれているかどうかはしらねども、出来る事をせずに、唯此処で縛られ怒られること、これは、自分なりの反省でもあるのだ。
ちゃんと話を聞いて、ちゃんと理解する為に。
「あい………。」
見つめられ続けている、視るという事は圧がかかるという事でもある、長い時間じっと見つめられていると、其れこそ圧迫感を感じるものである。
そして、彼女の手が動き、少女の縄を引っ張るのだ。
ずりり、ずりずりり、長い毛皮の絨毯の上を幼女の軽い体が引っ張られていき、彼女の膝の上に横たえられる。
自分の視界の上、彼女の乳房に、彼女の顔が見える。
じっと見つめ続けてくるその視線には、恐怖すら感じずにはいられない。
「はい、もう、しません。」
ちゃかすなど考えられなかった、少女は、こくんと彼女の言葉に一つ頷くのであった。
■アマーリエ > 「――……ま、難しいお話は此処までね。説教がましい事なんて好きじゃないの。
お酒でも呑んで忘れちゃえば良いんだけど、スカっとするには足りないから、ね。こうしたのよ」
細かなことをあげていけば、際限なくなる。
機密保持を行うにはこの部屋自体の設備、施呪の類では足りない、防備が足りない点。
防諜を行うには、近衛の練度や理解力が足りていない。此れでは他国の侵略に対して云々な点。
最終的には――この国、大丈夫か?という疑問にまで至ってしまう。それでは善くない。
善くないにしても、であればどうすればいいのか、といった解まで考えなければいけなくなる。
軍備とは暴力装置である。理性を以て的確に動かすべきであるものを、一時の感情任せで動かすというのは放埓な獣にも劣る所業だ。
大事なのは、再発がないよう教訓を互いに与えるコトだ。
幼女を膝上に横たえれば、位置としては乳房の辺りが顔や頭に掛かってしまうポジションである。
意には介さない。矯正の下着の手応え越しに小さな体躯を押さえこみつつ、眼を細めよう。
「お願いね。今回だけは――、お尻ぺんぺんで赦してあげる」
次は、流石に堪忍袋の緒が切れることであろう。
腰を左手を載せて押さえながら、ゆっくりと右手を持ち上げよう。あとは勢いよく――叩きつけるのだ。
幼女のお尻をぺーん、ぺーん、もう一つぺーんと。
リズミカルを通り越して努めて冷静に、寧ろ淡々と。乾いた音を静かな部屋で鳴らす勢いで。
■ラファル > 「ぉ……?」
少女は簀巻きにされたまま、見上げる形になっていたのだけれども、それが急にくるんと天地が変わるような視界の移動が発生する。
うつぶせの状態に回されて、然し動くことができないので、視線は師団長の胸に向かうのであった。
何事なのだろう、彼女の言葉、こうしたの、という一文が理解できず、困惑の表情。
なんとなく、じっと見つめられた視線が外れたという安堵も又、有るのであった。
「―――ぴゃー!?!?」
ズボンが下ろされる、ぷりんと、小さなお尻が晒される。
左手が小さな腰を抱え込むように押さえつける。
「ぴゃー!?ぴゃー!?」
次の瞬間べしーんと、言う音が響く。
痛みは、然程ない、竜の肉体は頑丈であり、幼女もまた頑丈なのである。
しかし。だ。
さんざんに精神を揺さぶられて、そしてからの、尻への殴打。
ダメージとしては無くても、精神に来るのである、そして、その精神へのダメージで幼女は泣くのだ。
少し俯瞰してみればお仕置きされている図でしかない。
それでも幼女は視線によって刻まれた恐怖に、淡々と打ち付けられるお尻ぺんぺんに、泣いてしまうのだ。
■アマーリエ > 詰まるところ、落としどころが必要ということである。
所詮子供の悪戯である、という一言で片づけるには仔細に事象を分析してしまうと、どうしても事が大きくなってしまう。
暴力装置であるという理性と、国の公文書にも記載される予算案等が事前に誰かに漏らされるはなくとも、見られてしまった点。
騎士達を動かすには至らず、憂慮すべき事態にはならなかったということを思うなら――。
「……嗚呼、やっとすっきりしたわ。今回は此れで勘弁してあげる」
二度叩いて、三度目に強く叩いて。子供を文字通りしつけるような所業でお尻を叩くのを罰とする。
この位が自分の裁量でどうにか出来る範囲での落としどころだ。
偶に近衛が当てにならないと思う事を感じるとなれば、機密保持のためには別途予算繰りをして対処はしないといけないだろう。
何にしても悪気があっての所業ではない。そうでなければ、血眼になって奔走していた程の事案である。
事が済めば手を下ろし、肩にかかった髪を払って息を吐く。背筋を伸ばし、押さえた手も戻そう。
「……――、よいしょっと」
幼女の鳴き声、もとい、泣き声に僅かに罪悪感は覚えるが、それは飲み干す。心を鬼とする。
自分が謝って済むようなことでもないからだ。悪い事には罰を。罪を憎んで人を憎まず。
下ろしたズボンを摘まんで、もどのように戻して縄を解いてやろう。然るべき罰を与えた後は、開放することに躊躇いはない。
■ラファル > 「ぴゃぁぁぁ………。」
師団長の白い掌が幼女の尻をぺしーんと叩く度に、幼女は泣くのである。物理的な痛みというよりも、心に対する痛みにたいして。
罰を受けて、そして、いけない事をしたと反省をするのであった。
悪戯娘も、珍しくと言って良いだろう、基本的には魔獣にかみつかれても泣きはしない幼女であるが、叱られて泣くのは、初めてか。
ズボンを戻されている間も、えぐ、えぐ、とえずいていて。
勘弁してあげるという言葉も、聞こえているのか聞こえていないのか、という所であった。
「ぴゃ……?」
そして、違和感に気が付いた、ぐるぐる巻きの簀巻きにされている縄が解かれている。
さらに、彼女の前に立たせてもらっている。
「………………………。」
きょど、きょど、きょろきょろ。
不安そうな様子で、幼女と白い竜が変化した女性と、師団長の三人(というには語弊があるかもしれないが)しかいない執務室。
涙目で、アマーリエとトルデリーゼを、交互に見やるのである。
反省はした、罰は受けた。
もうやらないと誓った。 ―――あとは。
「ごめんなさい。」
もう一度、言うのだった。
■アマーリエ > 耳から抜けるくどくどとした説教は、功徳にもなりやしない。教訓というのは概して痛みを伴うものである。
竜身であれば斯様な一撃なぞ、魔力でもそれこそ乗らない限りは痛痒にもなりはするまい。
あのように泣くのは、経験が薄い、あるいは無いのではないかという別の意味での危惧を覚えてしまう。
だが、口にはするまい。よそ様の家の養育方針まで関与できる権限も、義務感を抱くというのはそれこそ傲慢が過ぎる。
「解いてあげたから、行っても良いわよ。
ほら、この書状も持っていきなさい。今回限りだけど此れがあれば正規の道筋で外に出ても咎められないわ」
上着のポケットに入れた三つ折りの書状を断たせた姿の、ズボンの後ろポケットに差し入れておこう。
竜が竜らしく外に出るとなれば、警備の兵が騒がしくなる。そういうのは願い下げだ。
きょろきょろと見回す視線が、執務室の外のバルコニーで一連の風景を欠伸をしながら、見守る竜の化身たるもう一人の女を見つけることだろう。
その銀髪の女が「良い良い。気にするな」といった風情で手を振り、肩を竦める姿と気配を見遣って。
「ええ、それで良いわ。お願いね」
ちゃんと謝罪の句を述べる姿に漸く、目尻を下げて笑っては手を伸ばそう。
ぽんぽんと軽く其の頭を撫でて、善く出来ましたと褒めるように。
■ラファル > 泣いたのは、経験が薄いというよりも、其処に至る前の精神ダメージの方が大きかったのである。
じっと見つめられ続けたうえでの説教で、心が折れたというのが正しいのかもしれない、犬猫のような物ではあるが。
実際な話、どちらかと言えば野生のドラゴンに近い精神構造、更に子供、なのであった。
「いーの……?」
彼女の懐から取り出された書状は、少女のポケットにねじ込まれる。それが無かろうとも、誰にも気が付かれずに帰ることはできなくはないのだが。
今回は彼女の厚意に甘えた方が良いのだろう、ポケットから書状を取り出したうえで、それを眺め、そして、立っている彼女を見上げるのである。
その次に向けた視線の先の。銀の髪の竜のが、ひらりひらりとぞんざいに振られ、肩を竦めるのは興味無さそうな動きに見える。
実際に興味が無いのだろう、きっと。
「あい。」
ぽんぽん、と金色の髪の毛を撫でる彼女の掌、少女はもう、帰るべきなのだろう。
だから、少女はペコ、とお辞儀をし、彼女の部屋の扉を開いて、辞するのであった。
珍しくとことこ、と、正面の入口から去っていく――――。
■アマーリエ > 凝視し続けて威圧を重ねる説教法は、思ったよりも幼い子供の心には堪えたかもしれない。
体罰に走るよりは効果的なのかもしれない。
まして、肉体的にも強靭な竜の化身となれば、痛みよりも精神的打撃の方が効果的だろう。
仮に自分が子供を持つようなコトがあれば、どうなるやら。
心置きなく孕ませてもイイ者が居れば試す機会はあるのだろうが、それはさておき。
「また簀巻き直して、宅配し直すワケにもいかないでしょ。斥候として雇うならちゃんとしたルートでそうしてあげるから」
見た目と精神は兎も角、能力があるという点については間違いはあるまい。
後は使いようだ。麾下の竜騎士団に迎えるには若すぎるが故に、今は考えてはないが臨時の編成としてはアリだろう。
主である正面から戦う、隠れもしないというスタイルは隠蔽しようのない竜の巨躯と相俟って隠密行動にはあまり向かない。
己が配下である竜の仕草は兎も角、優しく幼女の頭を撫でて言葉を投げかけ、外へと送り出してゆこう。
やがて、閉じられる扉の隙間から見えなくまで見送って。
「……――さて。」
改めて職務に戻ろう。
跋扈するよく分からない兵力の動向、その監視。次第によっては討滅の算段を立てなければなるまい。一息ついて、椅子に座す。
夜はまだ――明けない。
ご案内:「王都マグメール 王城2・師団長室」からラファルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2・師団長室」からアマーリエさんが去りました。