2020/02/18 のログ
ご案内:「王都マグメール王城 庭園」にエリザベートさんが現れました。
エリザベート > 朝まだき、四季咲きの花々が美しく、瑞々しく咲き誇る庭園の片隅。
石造りの瀟洒な四阿の中に、蒼白い女の姿が在った。

ベンチに腰掛けた肢体は何処かしどけなく、ローブの長い裾は酷く乱れて、
片脚はほぼ、腿の付け根近くまで剥き出しにされている。
淑女らしい慎みも忘れたかのよう、緩く開かれた内腿には、白く筋を描くものがあり。
白み始めた空の色を、ぼんやりと見上げる眼差しは茫然自失のようでいて、
薔薇色の頬には不自然な笑みの気配が滲んでいた。

「――――――、――――……」

紅い唇がぎこちなく動き、掠れた声が細く紡ぐのは子守歌。
両手が己の下腹辺りを緩々と撫で摩る動きはまるで、其処に宿るナニカを、
慈しんでいるようでもあり――――しかし決定的に、何かが欠けていた。

ご案内:「王都マグメール王城 庭園」にリヒトさんが現れました。
リヒト > 王城へと乗り込んだ理由は後ろ暗い理由があっての事である。
人目憚るような届け物を無事に済ませた後は、人目避けながら抜け出すのみ。
それなりに弾まれた報酬の重さには、ローブの下の頬も緩むと言う物。
そうして庭園の影を辿りながら、適当な抜け道でも探す途中、一人の女が男の視界に入った。

「……おうい、こんな所にいては、躰を冷やすぞ。」

王城へ出入りする際、どこか噂に聞いたことのある狂女その人だろうかと推測。
本来ならばそそくさと身を縮めて逃げるだけであるのだが、芽生えた邪な考えに身を任せ。

試しとばかりに声を掛けながら、東屋へと寄り、彼女のすぐ傍へとぬっと身を近づけていく。
女の反応が鈍ければ男は、その腕を掴んで引き摺るように立ち上がらせるつもりで。
部屋まで返してやろう、だなんて大嘘をつきながら、庭園の影の方へと連れていこうと。

エリザベート > 城内では、あるいは王都でも、己の存在は半ば怪談めいて、
口さがない者たちは其の噂に、彼是と尾鰭もつけているらしい。

しかし、己には与り知らぬことである。
悪意ある噂話からも、好奇の目からも、遠い処で生きている己であった。

「――――――……」

声を掛けられたぐらいでは、己は反応しない。
ゆらゆらと頭を揺らし、調子の外れた歌を聴かせるばかり。
掴まれた腕はきっと、酷く冷え切っていることだろう。
ぴくん、と肩先を跳ねさせて、茫洋とした眼差しが、
掬い上げるような角度で男の顔を映した。

「――――― だぁ、れ……」

問うているようでいて、其の実、相手に興味など抱いていない。
まるで人形のように容易く、引き摺られて行くだけである。
向かう先が自室であれ、男の部屋であれ、あるいは何処ぞの暗がりであれ、
たどたどしく運ぶ足が、其の行く先を察して留まることは無く――――。

ご案内:「王都マグメール王城 庭園」からリヒトさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール王城 庭園」からエリザベートさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2・師団長室」にアマーリエさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城2・師団長室」にラファルさんが現れました。
アマーリエ > 大概の事は笑って許すつもりは――、あ、いや、ない。

笑って煽れる範囲の事は面白がって煽るし、怒る時は怒る。それがいかに同格だろうと、あるいは上位だろうと関係ない。
職務として果たすべき最低限のことは為すが、其れ以外の事は割とそっちのけで好きなことを遣ってしまうのが己だ。

だが、しかし、だ。今すぐ使う予定だった書類に他愛がないとはいえ、いたずら書きをされるというのは大変困ることだ。
ただでさえ最近奇妙な武装集団が横行しているだの、反乱分子が王都を跋扈している等という噂があるのに、ついつい貴族院の会議でそのまま書類を読み上げるところだった。
不幸中の幸いだったのは、同席していた副長がメモ書きとはいえ助け舟を出してくれたコトだ。

どうにかこうにか、当座の予算を毟り取ったあとに自分が遣るべきことと言えば――。

「――幼女、お仕置きすべし。慈悲なんてないわ」

復讐であった。とはいっても、全軍を挙げてというわけにはいかない。
王城に第十師団用に与えられた執務室で、豊かな胸を寄せ上げて支えるように腕を組みながら笑っていない目で嘯く。
曰く、獅子は弱き獲物を狩るために全力を尽くすという。竜とてそうであろう。しかし、表沙汰になるとなれば色々と面倒となるのが人の世である。
此度の下手人については、ご丁寧に痕跡を残してくれている。記憶にもあるものであればあとは、どうすればいいのか。
簡単だ。呼び出すだけだ。公的な様式で手短に綴った書簡を然るべき処に送付し、いつ、何処其処に来るように申し付ければいい。

火の灯っていない暖炉の上に置かれた機械時計をちらと見る。今の時刻は、夜。子供の寝ている時間であろう。
しかし、日々の執務で適度な空き時間を捻出できるとなればこの時間しかなかった、
消化しきれていない休暇を消費するには、他の騎士達のシフトの調整もあるために直ぐにはうまくいかない。

ラファル > 自宅に、とは言っても王都の方、トゥルネソル商会の方に一通の書簡が届いた、其れは残念ながらもみ消す前に、有能な家令長から、家の主である少女に届くのであった。
 内容を読んだ姉は、一言にこやかに命令するのだ

『ちゃんと行ってきなさいな。』と。

 逃げる積り満々ではあったが、ドラゴンはドラゴンからは逃げられない。家令長の目からは逃げられず、姉の使役するドラゴンたちからも逃げきることは流石に無理である。
 戦いは数だよ姉貴、と長女の指揮の元捕まえられて、次女の魔法で、己の能力の殆どを封じされてしまえば、たかが10歳児、何かできるわけでもなくて。
 こうして、ロープでぐるぐる巻きにされたうえで、その場所―――第10師団の団長の部屋へと郵送されたのである。
 因みに、ドラゴン急便の配達であり、配達の費用は当然幼女のお小遣いからの天引きである。

「……えへ?」

 ぐるぐる巻きの簀巻き状態の幼女。
 ちょっと怖い雰囲気の師団長の前に、にへ、と愛想笑いしてみるのである。
 隣に見える竜のおねえさんもちょっと雰囲気が怖い、マルカジリされてしまいそうだ。

アマーリエ > 手紙にはちゃんと期限を区切って、これまた公的な様式で書いている。
悪戯でも何でもない。見るものが見ればわかる真面目なものだ。
揉み消されたらまた、直々に己がメッセンジャー代わりに送り直す。それだけならば、酷い手間暇はかからない。
噂に聞くかの商会ご自慢のドラゴン急便で送られてきた“荷物”をサインと共に受け取り、去ってゆく使いを見送って、それを見よう。

この部屋は師団全員が詰めるには足りないが、主だったものが集まって話し合う程度には広い。
来客用のテーブルとソファはあるけれども、絨毯を敷いた床に座らせた幼女を見下ろして息を吐く。

「お久し振りね、ラファルちゃん。早速だけど……これ、なぁに?」

視線は合わせたまま、腕組みを解いて尻を載せた卓上に手を遣ろう。
見るまでもない。質の良い上等な紙に書き込まれた書類だ。それを摘まみ上げて、ぷらぷらと簀巻き幼女に見える位置に掲げよう。
もっともな事が、あるいは益体もない事が書かれた――真面目な書類であったはずの、なれの果てである。
おまけに、下手人たる執筆者の名前入りの代物であった。覚えもある名前を見逃す筈もない。

故に、件の商会へと問い合わせたのだ。全軍を使って風のようなものを捕まえるより、ずっと手っ取り早くシンプルな手段である。

ラファル > 「やほぅ。お久しぶり、アマーリエさん☆」

 いま、彼女の様子は―――そう、とても危険な匂いがすると幼女の本能が告げている、噴火前の活火山のような、それでいて、平静を保っているのは意志の力である。
 下手なこと言うとこう、やばい。そんな雰囲気がひしひしとするのである。
 そして、簀巻きで転がっている幼女、そんな彼女の目の前に見えるのは―――先日侵入して悪戯したモノ。
 ドラゴンから見たご飯とかの事である、寝床には金が沢山あるといいとか、何処の牛さんがとてもおいしくてやる気がもりもり沸くとか。

「あ。」

 本当であれば、幼女の侵入の痕跡は一切ないのだけれども。多分、侵入されたこととかに関しては彼女は把握してなかったのだろう。
 しかし、致命的な、本当に致命的な間違いを、幼女は犯していたのだった。


 書類に 名前 書いてました。

 犯人 自白 してました。

「えと……。あの……」

 しどろもどろ、どう、答えようか。

「ドラゴンさんたちが喜ぶと思ってやりました、後、こっそり書いたら驚くかなと思いました。ごめんなさい。」

 此処は、正直に言うことにした。

アマーリエ > 「ええ、ごきげんよう。とっても元気そうでおねーさん嬉しいわぁ」

古参の兵士や叩き上げの騎士等がやるように、大きな声で罵声を響かせるというのは好きではないし柄ではない。
語尾にハートマークでも付けると似合いそうな抑揚で宣うも、やっぱり目は笑っていない。
ケースバイケースだ。刺激的なセリフをウィットを利かせて言うと決まる時と、そうでない時の使い分けは重要だ。
その辺りの年季がまだまだ足りないと言われてしまえばそれまでだが、現状はどうにかうまく回っている。
詰まりは特に問題はないということだ。竜は兎も角、ヒトは職務に対して然るべき褒賞を与えることが何より重要だ。使い潰しは効かない。

竜については――なるほど、確かに見るべきものはあるのだが。

「律儀なのか考え無しだったのかは聞かないケド、御蔭で手間は省けたわねぇ。
 さっすがはその名も響くトゥルネソル商会。ちゃんと分かっていて、助かるわ。今度大口の物資の買い付け依頼頼もうかしら」

そう、なぜこんなに早く調べが付いたのか。悟ったのだろう。悟ったか。
冗句で残すには余りに赤裸々な痕跡があったからだ。
過日に万全とは言い切れないが、近衛の警護をすり抜けてこの執務室に潜入を果たしている幼女の仕業となれば、犯人捜しなんてばからしい。
摘まんでいた書類をぺーい、と放り投げそうになる自分を抑えて、冗句混じりに嘯く。その位は埋め合わせとしていいだろう。

「喜ぶというか、書き出した奴を見せたら笑ってたわよ?うちの竜たち。野生の竜よりも舌肥えてるもの。
 せめて書くなら、廃棄予定の書類の方に書いて欲しかったわね。……紙だって安くないのよ? 知っているでしょ」

思った以上に正直に答える様に嘆息して、書類を卓上に戻そう。
こつ、こつと爪先で床を叩きながら、視線はそらさない。ずらさない。じー、と。その目を見続ける。