2019/10/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 夜の帳が下りて久しい王城の一角。
傍流もいいところではあるものの、一応王家の肩書きを持つ者の華燭の典が開かれた広間に小さなシルエット。
急遽、時間が空いたからという、誠にフワフワとした理由でいつの間にか潜り込んでいるようで。
尤も、式典の類はもっと早い時間帯に終わっていたし、今はその披露宴の参加者達も酒精が入ってグダグダ。
主役たる新郎新婦も引き上げた後で、遊興好きの輩がそれなりに居残っているといった所か。
そんな警備の意識も漫ろになる頃合だったから、身なりの良い子供がスルリと滑り込む余地は大いにあったのだろう。

「いやはや、何とも時勢の縮図たる顔ぶれよな。」

そう呟いたのは、帝国との和平を主張する派閥の顔が間々見られたから。
新婦が帝国の公主であったから、推して知るべしというもので、当然といえば当然だ。

「嗚呼、伯よ。
 今宵も宴三昧とは、中々に精強のようで何よりじゃ。」

給仕係からしれっと酒盃を掠め取り、顔見知りの参加者に声を掛ける。
齢六十を過ぎて老境に差し掛かった貴族は、小童の気楽な物言いにも目くじらを立てず。
寧ろ、”精強”の単語に、にぃっと口角を吊り上げた。

ホウセン > お互いに酒盃を掲げるのは、そこはかとない共犯者意識によるもの。
元々好事家だった伯爵が、年齢に起因する体力と精力の減退を嘆いていたのを見聞きし、
帝国の薬学に基づく精力剤を手配したという経緯が横たわっていた。
斯様な人物が居残っているのだから、この宴が清廉なものである筈はなく。
広間から抜け出して、事を始めている輩も少なくなかっただろうし、寧ろ、この会場の其処彼処に見える仕切りの裏側で何が繰り広げられているか想像に難くない。

「帝国娘にご執心というのなら、ちぃとばかり手配するのも吝かではありゃせんぞ。
 何しろ、儂は貿易商じゃからな。」

如何様にも取れそうな物言いを紡ぎ出した唇を、濃い赤紫色をした葡萄酒に付ける。
帝国出身のスタッフを融通すると聞こえるし、”商品”として帝国の娘を用意するとも聞こえる。
真意は兎も角、下世話な笑い声を漏らす老貴族と二言三言益体もない話をし、小さく手を振って分かれた。
壁際に進み、黒い瞳で広間を右から左へ一巡。
宴の参加者か、或いは護衛か、それとも来場者の為に見繕われた”供物”か。
何者か何事か。
興味を惹く者はおらぬものかと、釣り針を垂らす心地に近しい。