2019/08/14 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にルドミラさんが現れました。
ルドミラ > 「まあ、……お戯れを。 力がお強いのね、とても逞しくていらっしゃるわ。
でも、そのように荒々しく掴まれては──あッ…….!?」

連日の夜会が催される城内。宴の会場からやや距離を置いた薄暗い廊下で、押し殺した女の声がした。

が、人の姿は廊下のどこにもなく。
かわりに豪奢な刺繍を施されたカーテンが揺れて、蠢いている。
揉み合う気配。衣擦れの音。
何事かを言い連ねる上擦った男の声と、たしなめるような女の声、とくれば、
布地の向こう側で何が行われようとしているかは、明白であろう。

ルドミラ > しかし。
この背徳の王城ではありふれた、ささやかな騒動は、長くは続かなかった。

「言うことが聞けないのかしら?」

落ち着いた、けれど鞭のひとふりのごとき鋭さを呑んだ女の声を合図に、カーテンの向こうが静かになる。
やがて──ずるずると、窓伝いに崩れ落ちた男の体。
カーテンの隙間から中途半端にはみ出した盛装姿はいずれの貴族か。
ごろりと床に転がされて、寝息を立て始めている。

中から、ふう、と息をつく気配に続いて響くのは、軽く、律動的なヒールの音。
厚ぼったい布地に漣が立ち、少し離れたカーテンの切れ目から黒髪の女が姿を現した。
床で眠る、先程までの襲撃者を肩越しに振り返って、

「ごめんあそばせ」

と、軽く膝を折る。

ルドミラ > 言葉の割に何の申し訳なさも感じていない黒目がちの瞳が、
窓ガラスに映る己の姿をとらえて。その反射を鏡がわりに、手指で髪や、ドレスの乱れを整え始めた。

賓客の端くれとして王城に招かれた以上、
いつものように常時護衛連れで歩き回るわけにも行かない。よほどの差し迫った用でもない限りは探しにも来ないはずだ。
となると、 こういう「事故」にも遭いやすくはなる。とりあえず相手に眠ってもらうのが一番事を荒立てぬ解決策であろう。

病的なほどに白いデコルテに、鬱血痕などついておらぬか。顎を反らして矯めつ眇めつ、確かめる。

「イヤね。痕でもあったら、会場へ戻れなくなってしまうわ」

もっとも、被害者面の女とて自ら「事故」を起こしにいく可能性が皆無とは言えぬのだが。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にエズラさんが現れました。
エズラ > ええい、参った――この城はとにかく広い。略式礼装姿の男が広大な廊下を早足で進む。
新兵訓練の補助を命じられて登城することは時折あったが、城の中まで入るという経験には乏しい――それも、これからは変えていかねばならない。
そういう主人の計らいであったというのに、この有様とは――そうこうしているうち、漸く主の後ろ姿を見つける。

「ご主人様!」

安堵と羞恥が半々に詰まったような声で呼びかける。
相も変わらず優美な立ち居振る舞いで、窓ガラスに向かって身だしなみを整えているらしい。

「いやまったく……や~っと見つけた……そこら中探しちまいました――」

夜会の会場から離れるのに気付き、暫し待つも戻らない――人外の跳梁跋扈するとの噂絶えぬこの王城、もしものことがあってはならぬとその姿をあっちにこっちに探し求めていたのであった。

ルドミラ > やや焦ったような、聞き覚えのある声が耳朶を打つと、女は鼻先だけをそちらへ向けて。
廊下の向こうから近づく男へと、目尻だけで滲むような笑いを浮かべた。
均整のとれた逞しい体躯を包む、先日誂えたばかりの礼装姿をじっくり眺めるにはよい距離感だ。

「エズラ。……その礼装、やはりなかなかよく似合っていてよ。惚れ直しそう。
──お化粧直しで中座していたの。大丈夫、心配するようなことはとくになかったわ。
結果的には」

護衛役の心配をよそに、意図せず実地訓練がわりの追いかけっこを演じてしまったらしい女主人は、涼しい顔で窓際、床に転がる誰かへ一瞬、目を落とす。
何かは起こったらしい、という状況は一目瞭然。
すぐに鏡がわりの窓ガラスに視線を戻すと、あら、と小さく声をあげた。

「ねえ、エズラ。ここ。目立つかしら? 鎖の太いネックレスでもしてくれば良かったわ」

首の付け根あたりに、果たして鬱血の跡。会場へ戻って差し支えないかどうかは、微妙な位置、微妙な濃さだ。
指先でそこを指し示しながら、相手へ尋ねて。

エズラ > 「ああ、そりゃあ嬉しいお言葉――しかしどうにも、こういうのは動きにくくっていけねぇ……いや、いけません、か」

少し荒くなった呼吸を整えつつ、ふと主の視線を追うと――そこに転がっている誰かを見て、何とはなしに察す。
ますます自己嫌悪に陥ってしまいそうだ――正しく、こういう輩を近付けぬために己がいるというのに。

「ありゃまぁ……こいつぁ、なるほど――」

どうやら不埒者は主自らの手によって成敗されたということらしい。
そして、問われるままに主の首を確かめるべく傍へ――

「ウ~ム、こりゃまた――」

元来、常人離れした肌の白さを有する主の指す場所には、確かにほの赤い痕。
どういう塩梅か――そんなことを考えるよりもまず、己の下腹部にフツフツと湧いてくるもの――

「……こりゃあどうにも難しいところで――もう少々じっくり、時間をかけて調べてみねぇと――」

背後からそっと主の腰を抱き――首筋に触れる寸前で耳元へつぶやく。

「――ちょいとこちらへ――」

ルドミラ > 城内では露骨に護衛としての存在を誇示せぬように、と言いつけたのは自分なのだから、
少しの時間差の間隙をつかれたとはいえ、彼が全責任を負わねばならぬ話ではない、
とでも思っているのか、女主人の方に気にした風はない。

が、顎を逸らして、鬱血跡を検分する男の視線に首筋を差し出しているうちに。
最初こそ神妙らしく唸っていた男から別の気配が漂う。さりげなく腰に添えられた手、そして耳元に被さる呼気の湿り気に、いささか擽ったそうに目を細めて。

「……時間をかけて、ゆっくり? それは一大事だこと──」

今宵もまた、王城の片隅で。人知れず、蜜事の空気が立ち昇る──。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からルドミラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からエズラさんが去りました。