2019/08/13 のログ
ホアジャオ > 「啊(おっと)……」

曲がり角、向うから手燭らしい灯りが近づいて来る。
恐らく、巡回の衛兵だろう。

数歩、後ろへ下がりながら辺りを見回す。
隠れられるような丁度いい場所は無い…走って、ずーっと向こうまで行ってしまおうか?
ものはついで、試しに手近の部屋のドアを押してみる。

「………」

開いた。
音もせずに。
考える間もなくその部屋へ身を滑り込ませて、また音もなく扉を閉じた。
扉の内側で息をひそめて……衛兵が、通り過ぎていく気配と、足音。

ご案内:「王都マグメール 王城 廊下【イベント開催中】」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 王城での定例会の様な会議の後。
夜半まで続いた会議で得た資料と、近々設立する予定の師団編成の資料を抱えて王城の一室で黙々と事務処理を行っていた。

王族としての特権をフルに活用し、人気のない一室で順調に作業は進んでいたのだが――

「……何者か。暗殺者の類であれば、赴く部屋を間違えたのではないかね?」

突如部屋に滑り込んだ女の姿に、ぱちくりと瞳を瞬かせた後、探る様に瞳を細めて侵入者の女へと視線を向ける。
ゆっくりと椅子から立ち上がると、革靴の足音を響かせてゆっくりと彼女へ歩み寄ろうか。

ホアジャオ > 「哎呀(わあ)!」

思いもよらぬ方向から声を掛けられて、飛び上がって息を潜めていたのが台無しな大声を上げる。
ばっと振り返れば、紅い瞳で見て来る…女の子?
響く足音と共に近づいて来るその姿を一瞥すれば、何だか身分が高そうなのは嫌でも気づく。

(糟了(しまった)…きっと明日、雇い主にここで怒られたことを怒られる…)

後悔というか申し訳ないと言うか、そんな気分が掠めたのは一瞬。
相手が足を止めるくらいになれば、すっかり居直って口を尖らせ、ぶすっとした声を返す。

「――ちょッと、迷子ンなっちまって。
 悪かったよ。誰もいないかと思ってサ…」

そう言いながら、相手の足元を凝視する。
こんなに奇麗なコなんだし、もしかして、幽霊とかだったりしないかしらん…

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 素っ頓狂な悲鳴を上げる女性をしげしげと眺めてみれば、先ず目に付くのはシェンヤンの物と思われる衣服。
そしてその顔立ちや言葉遣いを己の中で咀嚼すれば、納得した様に一人頷いた。

「…どこぞの公主の護衛か。暗殺者ならば、そんなに驚く事は無いだろうしな。とはいえ、迷子と言うのは……仕事を疎かにするのは感心せぬな」

恐らく己よりは年上なのだろうが、ぶすっとした様子のその態度に思わず苦笑いを浮かべながら言葉を返す。
しかし、彼女の視線が己の足元へと向けられている事に気が付けば、不思議そうな色を湛えた視線と共に再び口を開く。

「……革靴が珍しい、という訳でもあるまいが。何か私の足元についているかね?」

まさか彼女が己の性別どころか実在しているか疑っているとは露知らず。
怪訝そうな口調と共に彼女に尋ねるだろう。

ホアジャオ > 感心しない、と咎めるような言葉にあはは、と誤魔化し笑いをして悪びれた風もなく後頭部を掻く。
その間も視線はちらりちらりと相手の足元へ。
―――靴、じゃなくて脚ははどうやら、本物みたいだ。さっき、足音もしてたし。
となれば。
驚かされた仕返し(本当は自分が悪いのだが)とばかり、少し悪戯心が湧き出す。
視線をわざと足元に落としたまま…凝視するように細い目を更にすがめて。

「靴は流石に珍しくないよ。
 ……アンタの脚首、誰かに掴まれてる気、しない?」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 誤魔化した様に笑う彼女に小さく溜息を吐き出すが、その間も彼女の視線は己の足元に向けられたまま。
はて何事なのか、と傾げた首が深くなる寸前。彼女から投げかけられた言葉に、ふむ、と考え込む様な素振り。

「……そうさな。陥れた貴族か。政敵か。討ち滅ぼした魔族の思念か。足首どころか、全身に纏わりついていてもおかしくはあるまい。
と言うよりも。貴様とて分かって言っているのであろう?何せ、先程から貴様の背中。何人分乗せているのだ?随分と覗き込む顔が多いが」

真っ赤な嘘である。大体、そんな亡霊だの幽霊だのが己の足首を掴んでいれば、振り払って踏み付けるまでが己なのだから。
寧ろ、そんな言葉を投げかけた彼女に対してわざとらしくこれ見よがしな溜息を吐き出した後、その背後にゆっくりと視線を向けるだろう。無論、壁と扉しか無いのだが。

ホアジャオ > 「――…ッ!!!!」

相手の返答、前半にはつまらない、というふうに口をへの字に曲げて…続く言葉には、女が細い目を一杯に開いて足元からぞわああぁと寒気立つのが、相手の目に見えたかもしれない。

「……ま、まあ?アタシも結構殺ってるからねえ……」

相手の視線を追うことはしない。
そのまま急に何気なーい(?)鼻歌を歌って相手に近づくと、ぽんと両手を相手の肩に置いて。

「………ねえアンタ、お祓いの術が得意なひととか知ンないの?
 行くならついて行ったげるよ」

安心させるつもりの笑みを浮かべながら、その紅い口の端はちょっとひきつっていたりする。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 面白い程の反応を見せる彼女に、寧ろ此方が少し驚く程。
怖いのが苦手なら夜の王城など歩かない方が良いのではないか、とも思ったが、面白そうなので黙っておく。

「…お祓いか。そんなもので済むのなら…いや、もう何も言うまい。今はそんな事より、信じる神に祈ったらどうだ。お前の後ろのナニかが、お前の肩に手を置く前に――」

両肩に置かれた手を一瞥。ついで、己よりも僅かに背の高い彼女に視線を向けると、まるで憐れむかの様な弱弱しい笑みを一つ。

同時に、こっそりと魔術を発動させる。
己の魔力を用いる召喚術。生命体の紛い物。僅かな発光と共に音も無く彼女の背後に召喚されるのは、長い前髪を足首まで垂らしたオーソドックスな女性のお化け。

別に此処迄して脅かす必要も無いのだが、己の部屋に無断で入った事への罰。そして何より、とても面白い反応が見れそうだという傍迷惑な好奇心によって、主の命のままにお化け擬きは彼女の肩に手を伸ばそうと――

ホアジャオ > 「神様なンかに祈れるタマじゃァ無いンだよ、アタシ――…!」

憐れむような相手の微笑み。
それとほぼ同時、背後から漏れる僅かな光。
その気配が己の肩に伸びるのを、感じるや否や

「――こ…ンのォっ」

ぎゅん、と音立てる勢いで振り返ると、銀の輪を嵌めた左腕でその『お化け』を掴み、そのまま腕を振り上げて―――

「だりゃぁッ!!」

思い切り振り下ろす!
びたーん!!
…と、もしお化けモドキが実態に近いものを持っていたら、そんな音を立てて床に激突するやもしれない勢いだ、が

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「おぉ、見事なものだ。かんふー、とやらか。シェンヤンの武術は見栄えも良いな。うむ」

びたーん!どころでは無かった。
ろくに魔力も込められず、ただ脅かす為に造られた人造生命体は強かに床に身体を打ち付けるとぼろぼろと崩れる様に崩壊していく。それが彼女に向ける視線は、間違いなく恨めしいものであったかも知れない。別に自我は無いのだが。

「さて、幽霊を投げ飛ばして気も落ち着いただろう。先ずは名前くらいは名乗り給え。それとも、幽霊よりも恐ろしい王城の衛兵達を呼ばねばならんかね?」

ぱちぱちと彼女の投げ技に拍手を送った後。
今度は真面目な表情で、彼女の細い瞳をじっと見据え、詰問する様に一歩足を踏み出す。

やっぱり己よりも背が高いのか内心深い溜息を吐き出しながら。

ホアジャオ > ぼろぼろと崩れ行く様子に、両手をぱんぱんと払いながら気味悪そうな横目を投げる。
幽霊とて『掴めるし、ブン殴れる』と解った以上、もう怖いとも思っていない様子だった。
実際は大分、勘違いなのだが。
―――ともあれ
大分すっきりした表情で拍手をする相手に振り返ると、にっと紅い口で笑んで見せる。

「ありがと。今のは只の馬鹿力だケドね…
アタシは『ホアジャオ』てえの。いまは公主の護衛のアルバイトしてンだよ」

言い終われば、真面目な表情の相手に小首をかしげて

「アンタは?
 さしずめどッかの貴族のお坊ちゃん――…だよね?」

背が低いのもあるが、子供のくせに妙に色っぽいような風貌。
それでも言葉遣いがなんだか横柄なのには、男っぽいというか。
たまーに居そうな、男装好きな女の子とかだったりするんだろうか…
どっちにしろモテそうだなー、なんて呑気な事を考えて、また反対側に首を傾げている。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「ホアジャオ、か。覚えておこう。貴様ほどの腕があれば、公主の護衛等容易い事であろうな。護衛されている公主が羨ましい限りだ」

素直に名乗った彼女に向けるのは、純粋な賞賛の言葉。
脅かす為だけの召喚とはいえ、背後の敵を一瞬で投げ飛ばした挙句一撃で消滅させるというのは中々の腕前では無いかと判断したからが故に。
尤も、賞賛の言葉すら幾分横柄なものであるのだが。

「…何処に疑問符を付けたのかは敢えて聞くまいが…。貴様の想像通りだ。
私はギュンター・メルヒオール・フォン・ホーレルヴァッハ。此の国の王族を務めるホーレルヴァッハ家の嫡男。
簡単に言えば、大貴族のボンボンという訳だ」

呑気に首を傾げる彼女に家名まで告げたのは、一応貴族の部屋に無断侵入した事を反省して欲しかった事。そして、曲がりなりにも他国の人間であるのなら、敬意を以て本名を名乗るべきかと判断したが故。

尤も、なんとなーく己の性別を疑っている事は流石に察しがついたのか、向ける視線と瞳はジト目気味であったのだが。

ホアジャオ > 「ヘエー
 アンタ、やっぱボンボンなンだぁ!」

でっかい声で言いながら、大仰に驚いたように身を反らせる。
相手の様々な思惑なぞ微塵も気付いていない。
鈍感なのもあるが、元々そんな礼儀など身に着けていない山だしだ。
ジト目には全く怯む様子もなく、けらっと笑うと腰の横に手を当てて反らした身をまたずいと近付ける。

「ねえ、王族ってエこた、色々陰謀とかもあって、護衛雇うのに腕っぷしの強いやつとか知ってンでしょ。
 今度、紹介してくンない?」

『彼氏紹介して?』位のノリで相手へと詰め寄った。
細い目の黒い瞳は、期待できらきら輝いていたりして。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 己が王族であると知っても、驚きこそすれ特に恐れ戦く事は無い。寧ろ、子供の様なとは言わずまでも素直な感情を露わにする彼女に、王城では中々見られないものを見たと言わんばかりに小さな苦笑いと穏やかな溜息を吐き出すだろう。

「…腕っ節の強い…?紹介してやるのは構わぬが、また何故その様な者を求めるのだ?貴様が護衛を勤める公主の新たな護衛にでもするつもりかね」

此方へ詰め寄る期待に満ちた黒い瞳を見返しながら、怪訝そうに首を傾げる。
彼女に深い思惑や策謀は無いとは思うのだが、強者を求める理由が分からなかった為。

もう少し武というものに興味を持っていれば、彼女の言葉の意味も理解出来たのかも知れないが、生憎インドア極まりない己では、彼女の思惑を測る事は出来なかった。

ホアジャオ > 「モチロン、喧嘩ふっかけるためだよ!」

けらっと笑いながらもう勝手に、約束ね!何て言いながら少年の手を両手で持ってぶんぶんと振る。
もしかしたら、結果的に身体ごとがくがくと揺すってしまうかもしれない。

「まーアンタももし、物騒な案件とかあッたらアタシを呼んでよ。
並のやつなら3ダースくらい、訳ないよ」

ついでにおこずかい呉れたら助かるケド、何て言ってにいっと笑うと手を放す。
その手をまた相手の両肩に、今度はばん、と多少強めに置いて。

「――…ってェことで、アタシが仕事サボってうろついてた挙句不法侵入したの、チャラね!」

何にも対価を払っていないが、兎に角そう言ってまたにいーと笑う。
特に咎められなければ、「じゃ!」なぞと片手を上げ、そのまま踵を返して扉の方へと歩みを進めるだろう。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「腕試し、と言う訳か。それなら、別に今度相手をしてやっても良い……あうあう」

肉弾戦は兎も角、召喚獣達ならば彼女の求める強さがあるだろうか、と思っての提案は、大きく揺さぶられた身体から零れる間抜けな声に寄って何とも締まらないものとなった。

「…そうだな。その時は是非、声をかけさせて貰おう。3ダースでは済まないやも知れぬがな」

解放された頭をふるふると振りながらため息交じりに言葉を返す。
しかし、些か大き目の音と共に置かれた彼女の手によって再び衝撃が加われば、華奢な身体はふらふらと揺れる事になるのだろう。

「チャラにしてやる要素がは何処にもなかったと思うがね…。まあ良い、貸しにしておいてやろう。ただ働きにならぬ様、早めに貸しは返しておくことだな?」

僅かに乱れた髪を整えつつ、呆れた様な溜息と共に彼女に答える。
とはいえ、部屋から立ち去ろうとする彼女を特に咎める事も無く。巡回の兵士に見つからなければ良いのだが、とぼんやり考えながら彼女を見送るだろう。

ホアジャオ > 「アンタが相手してくれンの?ありがと!
 今度、誘いに来るよ!」

へえーと感心する吐息を漏らしながら、相手の姿を上から下まで見て、また下から上へと戻した。
確実に、本人が相手をしてくれるものだと勘違いしているが、ともかくも上機嫌に足取りを扉へと。
そおっと開けて、廊下をキョロキョロと左右見渡す。
そうして足を外へ踏み出す、直前に振り返って

「そだ。
 エート…ギュンター
 アンタ、短いあだ名とかないの?
 無ければ次会う時まで、にアタシが考えてきたげるケド」

どうやら本人が名前を覚えきれないという理由だが、にこにこと笑いながら最後の最後に要らないサービスの提案を。

ホアジャオ > 要らぬ提案に対して、果たして相手の反応はどうだったのか。
兎も角も上機嫌な足取りがまた月明りだけの暗い廊下に響き遠ざかり
再びの静かな夜が戻って来る……

ご案内:「王都マグメール 王城 廊下【イベント開催中】」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 廊下【イベント開催中】」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。