2019/05/13 のログ
アルフレーダ > 他所に行ってくれれば結構。
足に絡み付く邪魔な蔦が外れれば、王女としては何の問題もないのである。
ところが執事は去るどころか雰囲気を変え、無礼千万な言葉を投げ掛けてくる。
王女は舌打ちし、苛立った様子を隠すこともなく金髪を掻き上げ、執事を睨んで。

「ふん。だから教養のない貧しい者は嫌なのよね。
 王族に対する口の利き方も理解していない世間知らずはどっちかしら。」

鼻で笑うと林檎酒の甘い匂いが甦る。
闇に溶け込むような漆黒のドレスの中、ヒールの音が響くと魔力の周波が広がった。
言わば犬笛のようなもので、王女に仕える護衛だけに届く聴こえぬ音律。
極度に高慢な言動は、当然これまでも多くの怒りと不興を買い、騒動を起こしている。
其の度に彼女の護衛が怒り狂う者たちを押さえ付けてきた。

今宵も同じく。
礼装の下で武装した男たちが各所から集まってくる。
先ずは三人程建物内から集まり、鍵がかけられていると分かるとガラス割る算段をしている。
そしてある者は獣のように階下から飛び上がり、柵をも越えて王女の隣に参じる。

「――――地下牢で鞭打ち百回くらい……覚悟はしてるんでしょ。」

結局誰だか分からなかったが、城に仕えて長い者ならここまで早く尻尾は出すまい。
もしかしたらどこかの間者の可能性もあり、そうであれば身体は鍛えられて丈夫なはずだ。
どの程度まで痛め付けても問題ないのか考えると愉快で、王女の面差しは本日はじめて笑った。
其れを合図に獣のような動きをする護衛が、執事に飛び掛かる。
姿は相手と同様に執事にも似た礼装だが、袖から凶器となる鉄爪が飛び出た。
其の戦闘術は、まさに獣に似せたものらしい。

セイン=ディバン > これが思惑通りであったかどうか、は少し難しい問題であるが。
男は、相手の身分についての情報を得ることに成功した。
少なくとも、タダの貴族ではない。王族であるということ。
それに加え、相手の姿などから男は記憶を漁り、相手の正体をつかもうともするが。

「教養とは無遠慮に振るうものにあらず。
 己が振る舞いにて無意識に発露されるものであるべし。
 少なくとも、その高慢ちきな振る舞いからは教養よりも箱入りのおガキ様っぽさしか感じんね」

肩をすくめ、やれやれ、といった様子を見せる男。
瞬間、相手から魔力が高まるのを感じ取る。
案外に武闘派か? などと考える男であったが。
そうではないようであり。周囲の空間に、凄まじい敵意を知覚。
なるほど、護衛を呼んだか、と男は内心感心する。
少なくとも、武力暴力に関しての対策は打っているのだな、と。

「おや、百回程度で許してくれるのか?
 案外寛大なんだな。もっとも……。

 この程度のザコで俺をどうにかできると思ってるなら、お笑いだが」

けたけたけた、と笑いながら言う男であったが。
最後の一言の瞬間、それまでのちゃらけた雰囲気が霧散する。
飛び掛ってきた護衛の攻撃をバックステップで回避すると。
男は空間から爆弾を取り出し、その護衛の懐にスリ入れ。
更に、ガラス付近に、手製のトラップを数種設置する。
護衛の胸元で爆弾が炸裂するも……それは、殺傷力よりも衝撃を重視したものであり。
幸いにも、護衛は階下へと吹き飛んでいくだけで済むことになる。……まぁ、複雑骨折くらいは免れないだろうが。命には別状はないだろう。

「おっと従者さんたち。その戸、割らないほうがいいぞ。
 トラップがしかけてあるから、ドッカーン、といくぜ。
 ……さてさて。世間知らずのお嬢様。ほかに打つ手が無ければ、お仕置きタイムだぜ?」

にぃ、と笑いつつ、相手に近づく男。正直、相手が悪かった。
中年とはいえ、現役の冒険者。しかも、超越者級と渡り合ってきたレベルの男である。
そんじょそこらの護衛では相手にならない。せめて、英雄クラスが一人か二人いれば、時間も稼げたろうが。
男は、下卑た笑みを浮かべ、両手をわきわきと蠢かせながら、相手に一歩、また一歩と近づいていく。

アルフレーダ > 「良いわ。鞭打ちより、其の歯を抜いて二度と無礼な言葉が吐けないようにしてあげるから!」

多少の騒ぎがあっても未だ気付かれる段階になく、階下では問題なく公主を迎える宴が続いているはずだ。
バルコニーに響く王女の高く神経質な声は、其の中で異質だった。
いつだって地位を得るだけ得て、自分の手は下さない王女が護衛と男の戦闘を眺めていると、其の終結は思ったより早い。
城でふんぞり返るのが仕事であり、戦には関わらない身であっても、相手が本物の執事ではないことが分かった。
周囲を巻き込まない程度の爆風を伴って落ちていく護衛には目もくれなかったが
肉体が落ちる重い音とともに、其れに驚いた女性の悲鳴が聞こえたので騒ぎは当初より少し大きくなったようだ。

「使えないわね!」

苛立ちを侵入者だけでなく護衛にもぶつけながら、握った拳を柵に叩き付ける。
建物内の護衛の数は増えていたが、ガラスを割る手段を奪われるとそのうち数人は階段方向へ駆けて行った。
先程吹っ飛んだ護衛と同じく、階下からの移動へと切り替えるのだろう。
其の間に近付いてくる男から距離をとり、王女は一歩二歩、柵へと退いていく。

「……私を傷付ければ手配書が回るわよ!もう騒ぎになって、人もさらに集まって来るわ。」

とりあえずは護衛がここに辿り着くまでの時間稼ぎが肝要か。
王女はキャンキャン騒ぐが、実際騒ぎは広がってきたようで流れ続けていた演奏も止んでいた。

セイン=ディバン > 「そうするなら、歯ではなく舌を抜くべきだな」

ククッ、と笑い、余裕を見せる男。
相手の気勢を体現するかのように飛び掛ってきた護衛は、残念ながら男にあっさりと吹き飛ばされることになるが。
ちら、と周囲を見れば。男は軽く舌打ちをする。
室内にいた護衛が移動し、さらに、階下にもこの騒ぎが察知されている。
このままなら憲兵や騎士団まで登場しかねない。
そうなると流石にまずい。戦闘能力に関しては問題なくとも……。
今後の仕事がやりづらくなる。

「おっと。それ以上下がると地面にキスするハメになるぜ?
 とっくに騒ぎにゃあなってるし、人が集まるのも承知。
 ならまぁ、こっから逃げる為にお前さんを利用させてもらうのが上策だよなぁ」

相手の言動が時間稼ぎであることにすぐさま気付くと、男は疾風の如き速度で相手に肉薄し、腕をひねり上げる。
そのまま、相手の体を抱きしめ、拘束し、耳元で囁く。

「痛い目見たり、死にたくなかったら大人しくしな。
 さもなきゃ……まず腕を折る。次は足だ。いいな?」

脅しではない。本気でやるぞ、と気配で伝える男であったが。
そこで気付く。ドレスに身を包む相手の肉体。その豊満さ。
見るだけでも分かったが、触れれば更に肉感的であり、実に魅力的だということに。
男は、相手に凶悪な笑みを見せつけると、そのドレスの胸元に手をかけ……美しい黒衣を、一気に引き裂く。

アルフレーダ > 「愚かね。無事に出られるわけがないわ。素直に投降すれば命だけは残してやるのに。」

言葉遊びではなく本気でそう思っているのだが、其の一方で余裕があるわけではない。
誰かが自分の元に辿り着くまでは自分を守れるのは自分だけなのだから。
護衛を躾けてはいても本人に戦闘能力はほとんどなかった。
男の足が動いたと思ったと同時に、自分の身体を包める程近付いており、腕には痛みが走る。

「いった……!!無礼者っ!!お前のような卑しい男が私に触れるなんて!!」

元々からして冷静さを欠く性格。
脅されているにもかかわらず、家名も名乗れないような男が密着してきたことに寒気を覚えている。
そして気性の激しい彼女がおとなしくしている場面というのは、そうそうないのである。

「不埒なっ!!離しなさ―――――!!!」

胸元に手が掛かった瞬間、一際業腹とした調子で声が響くも、ビッ―――という音を伴って胸元が晒された。
ドレスとカップが一体化した仕様だったせいで、下着という一枚の隔たりがないのは不幸だった。
毎日毎夜従者の手間と時間を掛けられて成し得るきめ細かな肌が露わとなり、豊かな乳房のほとんどが夜気を受ける。
完全にというわけではないが、脱がされたのではなく引き裂かれた布の不規則な切れ目から、乳輪の端が覗く。
男の身体で隠され、護衛の目に触れることは一先ずないが、其の異変は当然伝わっているだろう。
あの王女に危害が加えられているとあれば、彼らの顔が真っ蒼になるのも予想が出来る。
対して怒りや羞恥やらで真っ赤になる王女、脅されたのを忘れたのか、元々守る気がないのか
男の手を振り払い身体を押し退けようと、力いっぱい抵抗し始めた。

「無礼なっ、無礼な無礼なっ!!!絶対殺してやるわ!!」

王女だけでなく、階下がますます騒がしくなってきた。
護衛が辿り着いたのか、それとも王女の声を拾った招待客が怯えながらも集まってきたのか、いずれにしても異常が周辺に伝わりつつある。

セイン=ディバン > 「さぁてそれはどうだろうね。俺みたいな侵入者が、今正に捕まらずにいる、ってことの意味をよく考えた方が良いぜ」

あくまでも余裕のまま、男がそう相手に告げる。
事実、男はこの城への侵入の常習者なのだから。逆説的に、逃げることに障害もないのだ。
空間跳躍でこの場を立ち去っても良いし、肉体変化で変装しても良い。
男にとってもはや王城は侵入が容易な情報収集の場、でしかないのだが。
ならなぜ逃げていないのか、といえば。目の前の相手をぎゃふんと言わせる為に残っているわけで。

「かははははっ、卑しい男、ねぇ。そいつぁ随分なお言葉だ。
 まぁ? 実際その通りだったりするわけだが」

そもそもが寒村の出の平民。しかも過去を自ら捨てたが故、後ろ盾もない孤高の冒険者である。
相手が言う通り、卑しい、というのが実に似合う男なのだが。

「そっちこそ、ちったぁ大人しくするんだな……!」

相手への嫌がらせも兼ねて、恐らく相当に高いであろうドレスを破り、肌を晒す。
予想外にも、下着を着けていなかった相手。おかげで、豊満なバストが男の目に飛び込んできた。
それを目にすれば、男は鼻の穴を広げ、更におぞましい笑みを浮かべる。
しかし、そこで予想外が更に重なる。相手が暴れ始めたのだ。
まさか抵抗してくるとは思っていなかった男は、舌打ちを重ね、瞬時に思考する。
随分と頭に血が上った相手に、脅しは効かない。ならば、すべきは周囲への牽制だな、と考えると。
男は、空間からロープを一本取り出し、相手の両の手首を縛り上げ、拘束する。
そして、室内の従者や、接近しようとしていた従者へと声を張る。

「それ以上近づくなよ! このお嬢さんがズタボロにされて、セレネルの海に死体が浮かぶ、なんてのはお前らも望んじゃいないだろ!」

王族の女性が殺され、海に死体が投げ捨てられた、などとなれば。
それこそ、騎士団から従者から、皆どんな目に遭うかわからない。
男の言葉に、従者達は顔を見合わせると、無事に王女を救う為に一時、作戦会議を始める。
正に。逆時間稼ぎ成功、という状態だが。この状態も長くは続くまい。
男は相手に向き直ると、そのまま、その露になったバストを、いきなり両手で揉み始める。

「おぉっほぉっ。さすが王族様のパイオツだ。
 ずいぶんと柔らかいじゃねぇか」

殊更に下品に言い、相手の顔を見る男。
……もちろん、普段はこんなことを言ったりはしないのだが。
相手に屈辱を与えるため、それっぽい言葉攻めを珍しく行っている。

アルフレーダ > 単純な腕力の差であれば歴然だが、王女の抵抗は言わば子どもの地団駄のようなもの。
計算されての行動ではない分、制御するには面倒な動きかも知れない。
だが意外にも手も足も折られることなく、されたことは手首への拘束。
もちろん王女にとっては其れも怒りのボルテージを上げる行為なのだが。

「いっ、痛いっ!!肌に傷が付いたらどうしてくれるの!?」

当然骨折させられるより痛いはずはないが、蝶よ花よと育てられた傲慢な王女はロープと手首が擦れる痛みにすら耐えられないのだ。
自分が暴れるからさらに擦れて痛む、というのももちろんあるが。

男が牽制する声に、王女以外の周囲が表情を変えた。
すでにバルコニーに上ろうとしていた護衛たちも、足を止められる。
事態を飲み込めない招待客が彼らに事情を聞こうとして、宥められて安全な場所への避難を促される声も聞こえていた。
王女としては自分以外どうでもいい。早くこの男を片付けろというのが本音だが、片付けた時に自分が死んでいたら意味がない。
―――と言っても、王女に死への恐怖はあまり感じられなかった。
肌を晒された辱めと侵入者に対する怒りで、そこまで感覚が及んでいない。

「ほんっっとに無能ばかりねっ!!脳天撃って殺しちゃいなさいよこんな男っ―――――――っ!?!?!?」

王女の身を安全に保護しなければと囁き合う従者を罵倒する彼女の声が、不自然に途絶える。
胸を晒されただけでも屈辱だというのに、この男は胸を無遠慮に揉み始めた。
ずっしりとした量感が手の平に伝わるだろう大きさ。
指先が深く沈み込む程に柔らかくも、未だ十七という年齢もあり瑞々しい弾力を兼ね備えた乳肉は、女の象徴としては充分だろう。

「……なんっ、て……気色悪い男……。」

ぞわぞわと全身に怖気が走る。
普段の男の振る舞いを知らない王女にとっては、今の態度が彼のすべてである。
最低最悪な印象の男に胸を揉まれているなど、人生最大の恥辱に違いない。

セイン=ディバン > 男としては、大人しくしていてくれれば罵詈雑言も許す、というか……。
まぁ、口で位は抵抗してくるだろう、なんて予想していたのに。
まさか暴れだすとは思っていなかった。それこそ、男が手を離していなければ本当に相手の腕は折れていたかもしれないのだが。
そんなことを恩に着せるつもりもない。

「一々うるさいな、お前さんは。
 それとも、王族のメスガキはぴーぴーわめくように躾けられてるのか?」

さっきまでの腕をひねり上げられるよりは痛くないだろうが、と言いたいが。
多分そんなことを口にしたらまた文句が凄まじい勢いで飛び出すのだろうなぁ、と思う。
なんというか、相手の反応が大きいので、だんだん男の方は楽しくなってきている。
さて。相手の口にした、男の殺害方法。これこそ男が今一番懸念していることである。
接近されずとも、弓や銃で狙われれば面倒くさい。
男の生存本能スキルなら、その遠距離攻撃による致命傷は避けられるが。
それでも、手間を減らすべく、男は行動を開始する。
相手の胸を揉めば、その心地よさたるや。
柔らかく、ハリがあり、重量感の奥に暖かさがある。
正しく。巨乳、豊乳の見本の如きその感触に、男はニヤニヤと笑っていたが。

「おやおや、この情況でまだそんなことを口にするか。
 あんまり俺の機嫌をそこねると……もっと酷い目に遭うんだぜ?」

実に気丈な言葉であった。いっそ男のほうも清々しく思うほどだ。
だが当然、男としてはここから無事に脱出するという目的もあるし、相手を懲らしめるという目的もある。
なので……男は、自身の下半身を包むズボンを、一気に下ろした。
そうして現れるは、全長25サンチ、直径15サンチを越えるバケモノサイズのペニス。当然、胸を揉んだおかげで完全勃起状態だ。
それを相手に見せ付けるようにしながら。男は、相手のドレスを更に破り……相手の下腹部を、露にしようとする。
その行為が、何を意味するか。相手とて分からないはずは無いであろう。

アルフレーダ > 「身分の卑しいお前に言われたくないわね!!私は本来お前なんかと口を利く立場じゃないのよっ!」

こうして言葉が返ってくることすら感謝なさいと言わんばかり。
王女の身を心配すれば良いのか、男を何かしらの方法で仕留めることを優先すれば良いのか、侍従も戸惑っている。
――其の裏で、当然動いている者もいるだろう。
建物から突出した位置にあるバルコニーは、上方から狙いやすいと言えば狙いやすい。
男が王女の命を奪うことではなく、肌に触れることに気を向ければなおのこと。

「何を……。酷い目に遭うのはお前よ!私に許可なく触ったんだから、其の命、無事なままでは帰れないんだから!!」

拷問だけで済ませてやろうと思っていたのは少し前までだ。
いまや怒りは殺意に変わり、宵闇に響く言葉も物騒なものになっている。当然と言えば当然だが。
男を拒絶し、怒りに打ち震える王女の目の前で、あろうことか侵入者は下半身を露わにした。

「―――――はっ?」

いまは牽制が効いているとはいえ、タイミングと方法が合致すればどこから誰が飛び出して来るのか分からない状況。
そこでズボンを下ろすというのは無防備過ぎるというのか、予想外だ。
そして其れ以上に王女の目に男の性器が映るという、ありえないシチュエーション。
男の身体には疎いので知りようがないが、この状況で勃起しているというのも女にはよく理解出来ない。
何を突然、と言うことすら出来ずに時間の止まってしまった王女のドレスが、さらに破られた。
下半身はさすがに下着がないということはなく、ドレスと合わせたように黒い下着に包まれた下腹部が見える。
普段なら胸が見えた時と同様、罵倒して怒鳴るのだろうが
この場合何をどこに入れようとしているのか分かるために、其れどころではない。

「……何考えてるの?発情期の猿でもあるまいし、この状況で。」

命の危機があるのはお互い様のはず。
ここで命を奪ったり逃げることではなく、身体を穢すことを優先させるのだとしたら狂っている。
王女がさらに言葉を続けようと口を開いた時、閃光が走った。
侵入者を捕え、王女を保護する。行動に移した者がいたようだ。
王女側と男側、どちらに軍配が上がったのかは、この場では語られることはない―――。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からセイン=ディバンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からアルフレーダさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にゼロさんが現れました。
ゼロ > 深夜の王城の廊下は混沌としている。
 そこかしこで甘い声がするし、最近に至っては公主が来ているので、そのお祝いだのなんだので、連日お祭り騒ぎである。
 そんな中を少年は、一人槍を持って歩いているのだ。
 いま、第七師団の仲間にセレネルの海での情報を収集をしているものがいるらしく、その報告待ちである。
 その間は、動くに動けないので少年は、一人警備を行うことにした。
 王城にも警備兵はいるが、魔族特化の警備兵などはいない、そういったものに対処するための第七師団、なのである。
 とはいえ、勝手に歩きまわるわけにもいかないのでちゃんと警備兵の方に申請を出しての行動である。
 そのうえで、宛てがわれた場所、少年はかつん、かつんとグリーブの音を響かせ、進んでいるのだった。

ゼロ > とはいえ、王城の警備の基本は、警備兵が担うものである、少年の役割としては、王城に入り込んでいる魔族の退治と、居るのであれば、迷子の客人の誘導。
 困っている貴族への手助け、ぐらいであろう。
 現行犯とか緊急でなければ、人に対しての攻撃権を持たない。
 というのも、魔族相手にする武器や防具は基本的に魔法の装備であるし、魔族は人間よりも強い種族だ。
 それと戦うために訓練している精鋭の攻撃とか一般人に繰り出すものではない。
 お貴族様は基本的には、か弱い守るべき存在なのである。
 ついでに言えば、人間の犯人程度では、それこそ威力が大きすぎる。
 手加減して気絶させようとしたら死んでしまった……そんなことがあってもおかしくないレベルなのである。

 なので、少年はちょっとやそっとの諍いに関しては。

 ―――勇気を持って、見て見ぬふりをしなければならない。