2019/05/12 のログ
ルドミラ > 言葉の割に何の負い目も引け目も感じていない黒目がちの瞳が、窓ガラスに映る己の姿をとらえて。その反射を鏡がわりに、白い手指で髪や、ドレスの乱れを整え始めた。

賓客の端くれとして王城に招かれた以上、いつものように護衛を引き連れて歩き回るわけにも行かない。となると、こういう「事故」にも遭いやすくはなる。とりあえず眠ってもらうのが一番事を荒立てぬ解決策であろう。

病的なほどに白いデコルテに、鬱血痕などついておらぬか。長い首を反らして矯めつ眇めつ、確かめる。

「イヤね。痕でもあったら、会場へ戻れなくなってしまうわ……」

もっとも、被害者面の女とて自ら「事故」を起こしにいく可能性が皆無とは言えぬのだが……。

ルドミラ > 身だしなみチェックを終えて、安堵のため息をひとつ。
もはや一顧だにせず床上に伸びた男の横を通り過ぎ、会場内に控える衛兵へは、

「少し、よろしい? 廊下に殿方がおひとり、横になっておいでよ。余程お過ごしになられたのかしら──」

何食わぬ顔で善意の第三者を装うことも、忘れなかった。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からルドミラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にアルフレーダさんが現れました。
アルフレーダ > 公主を招いた瓊筵は今宵も開かれている。
シェンヤンとの国交について、有能な者はいろいろ思うところがあると聞くが
真っ黒なドレスに身を包んだ王女は先々のことよりいま自分が何をしたいかを優先するため、そういったことには興味ない。
国外との交渉を仕事にしているのに、である。

「たァいくつねぇ。席を外すわ。私が戻らなかったら後で報告書出しなさい。」

告げられた侍従は頭を垂れた。
彼女の仕事のほとんどは、臣下が行っている。
だがそれに成果が得られれば、それはすべて王女のものになる。
不公平だが、腐敗した王国内では珍しくもない構図であった。

王女の足はバルコニーに向かう。
どこかふらふらとしているのはアルコールのせいだ。
あまり強くないが、酒癖は悪くない。
悪くないというより普段から態度が悪いので、差がないだけとも言えるが。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 国交問題というのはまぁ、複雑怪奇、激流の如く流動的で面倒な物である。
……と、男は思っている。くっついたり離れたりなんぞ、男と女の関係だけで十分だろう、とも。
まぁそんな下種の野暮な思考とはまた別に。断固として国交についてしっかりとした外交のアレやコレは必要なのではあるが。

「……」

そんな国と国との交流の主たる場、マグメールの王城に、今宵も絶賛進入中の男。
もはや不法侵入も慣れたもの。なんなら、執事服でお仕事とかしてるせいで、城のメイドや従者には、男を本当の執事と思っている人間までいるのである。
本日の潜入先は……とある宴。最近のシェンヤンとの交流に関しての宴だ、という噂を聞き。
金目の話や、自身に都合の良い展開を求めて潜入したのだが。

「……普通に仕事をしてしまったな。
 ……ん?」

ついつい、素性がバレないようにと仕事に精を出してしまった男だが。
そんな中、一人の女性がバルコニーに向かうのが見えた。
足元は、どこかおぼつかない様子。何かあっては大変だし……。
もしかしたら、面白い情報が手に入るかも、と思い。
男はグラスを片手に、その女性を追う。

「失礼。麗しき人。
 お水を一杯いかがですか? 夜風にただ当たるよりも……。
 水分も摂取した方がよろしいですよ」

まずは、相手の正体をつかむ為に、後ろからそう声をかけてみる。
御せる相手なら良し。そうでないのなら……多少は、手荒な手段も使おうか、という感じ。

アルフレーダ > 着飾り、時間と資金をかけて美貌に磨きを掛けた王女は、王族として相応しい容姿をしているだろう。
だがあくまで外側だけであり、内面は幼少より培われた嗜虐性と差別に満ちている。
声を掛けられて振り返った王女は、露骨な見分する視線を執事に送った。

「誰?」

第一声、其れである。
自分に声を掛けて良い者は限られている。
そう思っている彼女に出自の知れない者に対する礼儀は、一欠けらだって存在しない。

「下賤の者と話すつもりはないわ。先ずは家の名を名乗りなさい。」

立ち止まるのも惜しいとばかりにバルコニーに出ると、退屈な宴は階下にも見えて欠伸をした。
実にマイペースである。良心的な言い方をすれば、だが。

セイン=ディバン > 正直、男もそういう反応を予想しなかったでもない。
なにせ、王族貴族たるものは、傲慢であるべきだし、多くの人間はそうであった。
だが、ここ最近友好的な位の高い人間と多く接していたため。
いきなりの一言に、男のこめかみに血管が浮かびそうになるが。
それを、なんとか意志の力で防ぎ。

「誰、と問われましても。
 王城に勤める従者の一人でございまして。
 名乗る名も、特には……」

と、返答している中、相手が立ち止まらずバルコニーに出るので。
男は、盛大にため息を吐きながら、その後を追う。
まだ。まだ本性を出すのは早い。焦ってはならぬ。
そう内心で呟きつつ、バルコニーに出た相手の背中に声をかける。

「……どうにも。退屈しておいでに見えますね。
 貴女様から見れば、この宴も茶番、飯事、といった所ですか」

近づかぬまま、そう声をかけ、微笑を浮かべる男。
まずは最初の一言で、相手がかなりの『貴族らしい貴族』なのだとは分かった。
後はどうするか。相手から情報を引き出すか……。あるいは。
その高慢な態度や表情を、歪めさせてやるか。
正しく文字通り、下賎な出自の男は、心中さまざまなことを考える。

アルフレーダ > 名乗る家名がない。
其の時点でこの王女にとって彼は無価値になった。
足を揉ませたり、城を護衛する分には良いだろう。
だが、自分が相手と話すために息を吸って吐き、唇を動かす労力さえ惜しいという思考だ。
階下の様子を眺めながら、放っておけばどこか他所に行くだろうと思っていた男の声が
背後から聞こえ、未だすぐそこにいるのが分かる。

「退屈どころか。下賤の男の声が聞こえるだけで気が削がれるわ。
 ……ねぇ。私に声を掛けるだけの身分が、お前にはあるの?」

振り返り、執事に送った眼差しはあまりに冷たい。
身分がなければ人を人とも思わない、路傍の石を見る視線。
月明りを背後から受けた王女の表情は影になるが、其の冷たさだけは伝わるだろう。
顔の輪郭からはみ出た長い睫毛がまばたきに動き、いっそう美しいだけの心のない王女らしさを際立たせた。

セイン=ディバン > 男としては……一応。穏便に国交についての情報を入手する、という方向性も頭の中にはあったのである。
今後の仕事のため、現場の、生の情報を入手するのはとても大事であるからして。
しかし、相手のそれはもう見事な貴族ムーブ、王族ムーブに男の怒りが急速に湧き上がる。

(決めた。コイツ泣かす)

物には言い方というものだってあるだろう。そんな思いが男の頭の中によぎる。
いや、高慢なのはいい。横暴なのもいいだろう。傲慢でワガママなのも、程度によってはかわいらしいものだ。
だがしかし、正しく人を人とも思わず。位の差こそあれど、年長者を敬うことなど欠片も考えていないその態度に。
男の怒りが見事、爆発した。
男は微笑んだまま、バルコニーへ続くの鍵を後ろ手で閉める。

「それはそれは、大変失礼いたしました。
 身分、と言いますと。残念ながら私には、アナタ様に声をかける栄誉に与るほどの身分はないとは思いますが……。
 申し訳ないのですが、そもそもアナタ様の顔もお名前も知らないもので。えぇ。
 あんまり世間を舐めた口で物申してると痛い目みせやがりますよクソガキ」

にっこり。笑ったままそう言い、ゆっくりと相手に近づいていく男。
凄まじく鈍感な者で無い限り。体から溢れる怒気に気付くだろう。
懐にある銃や短刀はまだ握らぬまま。しかして、相手へと怒りの感情を発し、たたきつけていく。