2019/03/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 第一師団長執務室」にレオーネさんが現れました。
■レオーネ >
「………」
真剣な表情で机に向かう第一師団の長、レオーネ
彼女は忙しいのは苦にならない、彼女はよく働く
仕事も、鍛錬も、勉学も、何をするにも人一倍の意欲と努力をする
まぁ…生まれてこの方まともにそれが実を結んだことないのだけれど
努力が実を結ばない、というと人は成功しないことを想像するだろう
しかし彼女の場合はその逆だった───
というのはさておき、てきぱきとデスクワークをこなしてゆくレオーネ
山積みだった資料や報告書は文字通り山を崩すようになかなかのスピードで捌けてゆく
■レオーネ >
第一師団はとても人が多い
個性的な粒揃いである王国軍の中でも、この王城の守りと、
対国家戦線に投入されるため人員は不足することなく増え続けている
本来ならこのデスクワークも彼女一人でやる必要はない
いくらでもやらせることができる有能な人材はいる、いるのだが…
なぜか彼女が一人で仕事をしている時は…何も起こらない
何も起こらない?事情を知らない人には意味のわからないことだろう
しかし何も起こらないということは彼女にとっては重要なことなのだ
自分自身の能力で、自分自身の仕事を片付けることが出来るのだから
「……よし、補給人員の再配置はこれでいいかな」
ぴ、と羽ペンを満足気に踊らせる様は戦場で見せる強張った表情とはまるで違っていた
■レオーネ >
「と、そろそろ叙任式のほうも進めておいてもらわないと…」
貴族階級の出が多い第一師団は式典の規模もまた大きい
また大勢の騎士達が、栄えある第一師団の一員として刀礼を行う時期だ
…実際は、さして仕事をしたくない貴族のちょど良い見の落とし所として使われているのが現状だが
何せ先だっての動乱以降、小さな小競り合い程度は起こっているものの、大規模な戦場への出兵などはほとんどない
先に出撃するのは当然平民あがりの騎士や兵士達であり、貴族階級の騎士達は王城の警護を固めるのみである
厳しい資質試験をクリアし、第一師団に入団した平民あがりの者達こそ本来の戦力
資金の援助という形で席だけを置いている貴族達は…おそらくずっと戦場には出ない
一部平民からお飾りだと揶揄される歪みだ
■レオーネ >
「先日のような残党軍が現れることもそうそうあることじゃないし… ん…?」
ふと目に止まったもの、第三師団、ひいてはその師団長からの祝いの手紙だった
ちょうど今口に出した、残党軍の征伐に対するものらしい
「カテリーナさん。グラッドストン大公の血縁だっけ。師団長に復帰したって聞いてはいたけど」
あまり良い噂を聞くことがない彼女
けれどレオーネは彼女に対してそういった印象をもっていない
■レオーネ >
「彼女がいない間はこんなこともなかったんだけど、なんていうか、マメな人よね…」
なぜか彼女…カテリーナ第三師団長からは好かれているのか、よくこういったものを頂いている
戦勝をあげるたびに、祝いを、記念品を…
遡れば自分が第一師団の師団長になった時も、
よくわからないが就任祝いをたくさんくれた覚えがある
「そんなにお金が余ってるのかしら、第三師団って」
貴族からの後ろ盾で物資や資金には困らない師団だと知ってはいるけれど
よそにぽいぽい投げつけるぐらいに有り余っているとは…
もちろん実際はそうではないのだが、
そのお金の裏でカテリーナ嬢が恐ろしい思いをしているなど、このラッキーガールは知るわけがなかった
■レオーネ >
もちろん黒い噂のある人物、何か裏があるに違いないと周りも騒ぐのだが、
ただの祝い金でその対価を要求するでもないので本当によくわからないのであった
まあ噂なんていうのは尾ひれがつくものであることは自分でよくわかっているし
「と、脱線しちゃった。いけないいけない……。
──新人の騎士達は、やっぱり王城勤務でしばらくは慣らさせるべきよね…
…王城も、安全とは言い難いのだけど」
続いての指示書へと手をつける
王城で警護の任につくことで礼節を含むあらゆる経験を積むことができる
特に女性の騎士などは…自分を食い物にしようとする存在が如何に身近にいるかということを知る必要もある
敵は諸外国や魔族だけではない、という現実に直面するためにも丁度良い
■レオーネ >
指示書などは基本的に大雑把に書くもの
それを整えたりといった、あとの細かい部分は下の者の仕事である
当然有能な者が多い第一師団においては師団長がよっぽど間違ったことをしなければ上手く回るようになっている
そして、こういった一人でするデスクワークに関しては"何も起こらない"ため、
自分の能力がそこそことはいえ発揮できる部分なので俄然やる気が出る
現場にガンガン出ていくタイプの師団長としては珍しい座り仕事好きはそこから来ていた
すいすいさらさら、ご機嫌に滑ってゆく羽ペン
けれど彼女は知らない
その驚異的なクセ字と誤字率が、指示が末端に伝わるまでの間にまるで違う内容の指示となり、
結果として最高効率の指令書となって第一師団末端へと届いていることを
■レオーネ >
そんなこんなで結局の所ちっとも努力して得た知識や采配なども発揮されているわけではないのだが
それを彼女が知ることはあまりないので、こうやって自分はできる女!的な顔をして羽ペンを走らせているのである
沢山あった紙の束を気がつけば最後の一枚になり──
「ハテグを警戒している部隊をどうしようかしら…うーん…」
ここ最近は大きな戦乱の気配は感じられない
とはいえ先の動乱の傷跡が完全に癒えたというわけでもなく、小規模の小競り合いは時たま起こっている
部隊を戦場近くに展開させておく、というのは意外と金がかかるものである
故に、もう王城付近まで後退させても良いのではないか…という、王国貴族からの意見書だった
「…でも実際に戦闘自体は小規模ながら起こっているのよね。…頻繁に、ではないけれど…」
はっきり言ってしまえば、後退させたほうが良い
なにせ、他の師団に任せてしまっても問題ない場所である
■レオーネ >
しかし現状唯一と言って良いほどに、第一師団が出兵する場所でもある
本格的に王城付近から出なくなってしまえば、平民からのお飾りという揶揄は激しさを増すだろう
第一師団は歴史の重みもある、誇り高く在るためには、その力を示すための場所が必要だ
見せるための戦い、なんてどうしようもないものだけれど、そこは大人として割り切り、必要なことをするしかない
「わざわざ直筆の書面で送って来るほどだし、仕方ないわね」
最後の書類をその手に、椅子から立ち上がる
顔を突き合わせての直談版が一番話が早い
■レオーネ >
……後日
第一師団長レオーネヴァルトと会談を行ったヘルデモス卿は、
突然の目眩と腹痛と頭痛と吐き気と悪心と寒気に襲われ、話の内容もそうそうに合意をして逃げるようにその場を去った
顔を合わせただけでその圧とプレッシャーであんなことになったのははじめてでとてもこわかった、と後に卿は語った
ご案内:「王都マグメール 王城 第一師団長執務室」からレオーネさんが去りました。