2018/07/10 のログ
■リュシー > (―――近づいてくる誰かの足音、それとも、空気の流れ。
どちらも以前はまるで気にも止めなかったものだけれど、この身体になってからは、
なかば必要に迫られるかたちで敏感になってしまったものだ。
そのひとの存在に気づいたきっかけはともかくとして、
家名で己を呼ぶ相手であれば、振り返って向ける表情はいちおう、
令嬢らしく取りつくろった、曖昧なほほえみ、ということになる。
ただ、ほんのすこしだけ―――隠しきれない苛立ちめいたものが、瞳によぎったかもしれず。)
―――……あなた、は、…え、と……確か、
(瞬きを二度、三度、それからゆるく首を傾げる。
この数か月でたくさんの人物に引き合わされた、その中にこのひともいただろうか。
夜目にも鮮やかな、あかい―――――ああ、と思わず小さな声を洩らして。)
……まずいところを、見つかってしまったみたいですね。
でも、…もしかしてあなたも、どこかから逃げて来られたんじゃありません?
(にっこり。
一見すれば屈託のない、けれど含むところがあることを隠しもしない笑顔でもって、
己よりだいぶ高い位置にある、そのひとの顔を覗き込もうと。)
■フォーコ > 私が気付くよりも先に私の接近を感じ取っていたようだ。
小柄なご令嬢はただのお嬢様と言うわけではないと見える。
こちらに向けられる笑みは貴族らしい洗練されたもの。
私もかつてあのように育てられようとしたのだが、すぐに匙を投げられた経験がある。
しかし、どうやらこのお嬢様の笑顔には多少機嫌を損ねているのが見て取れた。
ひょっとして、嫌われているのだろうか。
「フォーコ・アッサルトだ。
以前パーティーでお会いしましたよ。」
私は緩い笑みを浮かべる。
彼女の取る仕草に比べるとがさつでおおよそ気品にかけるだろう。
「その通り。 楽しい楽しい会議を抜け出してきました。
君こそ親御さんの元から逃げ出してきたと言った所かな。
君くらいの年齢だとパーティに連れられても面白くないだろう。」
多少棘のある所を見せる彼女の顔を眺めていた。
遠目で見ていても可愛らしかったが、間近で見るとより魅力的だ。
胸元も年の割には立派な物が付いている。
■リュシー > (かちり、かちり、頭のなかでさほど多くない、パズルのピースが嵌まってゆく。
鍵になったのはそのひとの、見事なあかい髪の色だ。
たしか、―――――そう、もちろん、許婚者候補としてではない。
そうして相手が名乗ってくれたなら、それが最後のピースになる。)
…ごめんなさい、レディ・アッサルト。
最近、そんな席にばかり連れ出されているものだから、
すぐには思い出せなくて…、
(ひょこん、と頭を下げる仕草は、見た目以上に子どもっぽく映るかもしれない。
しかし、頭をあげて相手を見つめ返す眼差しはやはり、子どもらしさ、とはほど遠く揶揄めいており)
だぁいじなお仕事を放っていらしたんだ、なんて、ここで白状なさってよろしいのかしら?
こんな取るに足らない子どもでも、あなたがどんな大事なお役目についている方なのか、
いちおう、存じあげておりますのに。
(両手を背後で組み合わせ、手摺から離れて一歩、二歩。
近づいたぶんだけ夜のいろを孕んだ青い瞳で、じっと、そのひとの反応を窺いながら)
……それとも。
逃げ出してきた者どうし、手を組んでいただける、と思ってよろしいのかしら?
■フォーコ > 少女は顔に出さないが頭の中で歯車を目まぐるしく回しているようだ。
私はこの手の頭の良いタイプに憧れている所があるので
人一倍そういう気配に敏感であった。
「レディはよしてくれ。
フォーコでもアッサルトでもどちらでも良い。
基本的には影が薄いからな。気にするな。」
頭を下げる少女に首を左右に振っていた。
そこまで畏まれてしまうと悪いことをしたみたいだ。
しかし、次にこちらを見上げてきた少女の瞳は何と言うか蠱惑的と言うべきか。
「何、現状では私を罰することが出来る者など早々おるまい。
とはいえ君に叱られると言うのなら少し恐ろしい気がするな。」
じりじりと近づく少女。
私は何故かヘビに睨まれたカエルの如くその場で釘付けになる。
「君がお望みならな。
尤も、何かを求めるならそれなりの見返りをもらうが。」
■リュシー > (もとの姿であったころから、それなりにそのひとの噂は耳にしていた気がする。
実際に顔を見たのは先日のパーティが初めてであったし、言葉を交わすのはこれが初めてだけれど。
いずれにせよ、己と同じ、令嬢、であるという認識があったものだから、
レディ、を封じられると少しばかり、困惑気味に眉を下げてしまい)
えぇ……、それじゃ、フォーコ、さま…?
アッサルト卿、じゃあ、兄君といっしょになってややこしいし。
―――――って、影が薄い、とか。本気で、おっしゃってます?
(このひとは、自分がなかなかに有名人である、という自覚がないのだろうか。
姿が変わる前の己などからすれば、ある種の羨望の的ですらあった、というのに。
じっとり、見つめる眼差しに湿度が増してしまったのも、致し方のないところかと。
―――――そんなこんなで、いつの間にやら至近距離である。
じいい、と相手のあかい瞳を見つめて、ちょっとだけ踵を浮かせる。
同時、すい、と伸ばした右手の人差し指を、かのひとの胸元中央へあてがおう、としつつ)
叱る、なんてつまらないことしませんとも。
でもやっぱり、お仕事をサボる悪いオトナには、罰が必要だと思います。
―――今夜ひと晩、この、バーゼル公爵令嬢の護衛を務めていただきたい、
……って、申しあげたら、対価は必要?
(こてりと首を傾げる仕草だけは、相変わらず子どもっぽい。
護衛、というくだりで笑みが深くなるあたり、無邪気とはほど遠い有り様だったが。)
■フォーコ > 「様が面倒ならフォーコで構わないが。
兄の事も知っているのか、流石だな。
…半分は本気であったが、不味かったかな?」
眉尻を下げる少女。
私からの注文が少々突飛だったようだ。
しかし毎回毎回レディと呼ばれると私の方が痒くなりそうなのだから仕方が無い。
それにしても彼女がこちらはこちらを見ると言うより、視線で触ってきているようだ。
年の割に色気が漂い過ぎている。
テラスの中央で固まっている私の胸元に少女の細くて小さな指が伸びる。
何故か払いのける気にもならなかった私は彼女が指がたやすく触れているだろう。
「散々悪いことをしてきた私にもついに罰が降りるのか。」
罰と聴かされ、何をされるのかとドキドキしてしまった。
「いいや、その程度ならお安い御用だ。
で、君はどこに行きたい?」
仕草こそ年相応だが、振る舞いや醸し出す雰囲気は一人前のレディと言えるだろう。
私は一つ返事で承諾した。
■リュシー > そう?………じゃあ、ぼ―――わたし、のことも、リュシー、って呼んで?
(危うく一人称でボロを出しかけたが、なんとか誤魔化せた、と思う。
ついでに言えば、敬称を略しても構わない、という申し出は己にとってもありがたかったので、
ドサクサ紛れにこちらの呼称からも、公爵令嬢、を取っ払わせてしまおうと。)
これでも、貴族の端くれですからね。
アッサルト家ほどのご名門なら、ご当主のお名前ぐらいは存じてますとも。
それはそれは武勇に優れた、妹君が居られる、ってことだって…、
―――――でも、ねぇ、まさか。
そのお方が、実はこんなに、押しに弱い方、だなんて。
(面白い、だなんて、言ってしまったらさすがに性悪が過ぎようか。
けれどなんだか、――――もとの己の守備範囲ではないけれど、なぜだかとても。
触れた指先をかのひとの胸の谷間へ、つ、と滑らせるへ戯れとともに、
くふ、と小さく喉を鳴らして笑い)
安請け合いなさって、あとで泣き言言う羽目になっても、
わたし、責任取りませんからね?
でも―――――そうね、まずはやっぱり、街へ出てみたいわ。
こんな退屈なパーティじゃなくて、もっとスリリングな、ほんものの夜を味わいたい。
フォーコが一緒なら、本当に危ないことからは、守ってくれる、でしょう?
(にんまりと、年不相応な笑顔をみせて、かのひとを夜遊びへと誘う。
胸元で遊んでいた手をそっと引き、開いた掌のかたちで差し伸べて―――
その手を、とってくれたなら。
久方ぶりの自由の予感に弾んだ足取りで、城外を目指そうというつもり。
見目うるわしくも心強い護衛を得た小娘がどこまで羽目を外してしまうか、
ソレに付き合わされる相手の運命も、神のみぞ知る、というところか―――――。)
■フォーコ > 「分かった、リュシーだな。」
一瞬ボクと言いかけたような気がして、首を傾げた。
気にならないでもないが、今は穿るのは止めておこう。
「年若いのに本当に教養があるのだな。
武勇に優れたと言うより、それしか才能がない女だがな。
…君が可愛らしいからな。おまけに随分とチャーミングだ。
君くらい大人びていると同世代が子供に見えて仕方ないだろう。」
年下の少女に遊ばれているにもかかわらず嫌な気がまるでしなかった。
この時の私は彼女のことをミステリアスな少女としか認識出来ていない。
胸の上を指が走ると、心拍数が上がっていく。
「私がか? そんな場面がくるのなら是非お願いしたい位だ。
ほんものの夜か。 君こそそんなことを言っていて大丈夫か?
スリルも危険もどこに転がっているか分からないぞ。」
小悪魔のような笑みに私の興味は強くなる一方だ。
出された小さな手を掴んでは二人で夜の街へと繰り出していく。
城の外でどのような出来事が待ち受けていたのか、
それは二人のみが知ることであった。
ご案内:「王都マグメール王城/テラス」からフォーコさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール王城/テラス」からリュシーさんが去りました。