2018/05/15 のログ
ご案内:「王城地下」にアダンさんが現れました。
アダン > 王都の地下領域には様々な部屋が存在している。
王侯貴族が昏い趣味を満たすための部屋、魔術的な禁書や魔導機械などを実験するための隔絶された部屋など様々だ。
そんな、ある意味では危険な領域を歩く男がいた。フェリサ家当主のアダンである。
名門貴族の家に生まれたものの、今ではこの国の腐敗貴族の一例といえる存在となってしまった。
魔術によって灯された炎に照らされる石造りの廊下を歩みつつ、アダンは思索を巡らせる。

「私も巻き込まれぬようにせんとな」

巻き込まれないように、とは近年国を騒がせている「星の聖猫派」なるミレー族の反乱集団のことである。
国の根本を揺るがすような自体には至っていないようだが、アダンとて王侯貴族の一人であるため、油断をすれば命を狙われかねない。
ただでさえ、多くの人間の怨みを買っているのである。
今日、この地下領域を訪れたのは、自らの護身を更に万全のものとするためである。
もちろん、自らの欲望をぶつける相手と遭遇すればそれを優先する可能性もある。
この男はそういう人間であった。

アダン > ただ、こういった事態のときこそ、アダンのような人種が裏で活躍できるとも言える。
アダンのような男がのさばることができるのも、今の王国の状態が正常とは言えないためである。
先代の王の時代、そして現代、政争は繰り広げられ陰謀の糸が王国内に張り巡らされている。
アダン自身は今の状況が改善されて欲しいなどとは思っていない。ただ、自分に余計な火の粉がかからぬようにするだけである。
そして、自らの身を守りつつ、陰謀を企てるのである。

「ここか」

靴音が止まる。アダンの目の前には重厚な鉄の扉があった。
その扉を開ければ、広めの房室につながっており、アダンはそこに足を踏み入れた。
部屋にいくつも置かれた燭台に魔術の炎が次々と灯り、部屋を照らす。
そこにはいくつもの古書と思われる書籍や巻子本、そして怪しげな魔導機械がいくつも置かれていた。
ここは魔導機械をほ保管するための部屋であった。アダンはその部屋の物色を始める。

アダン > アダン当人には魔術の才はない。剣術なども若い頃に習ったことはあるものの、実践で使えるようなレベルではない。
そもそもアダン本人が戦うことなどまずありえない。外出する際などは常に護衛の者がついている。
それでも、アダンに危険が及ぶこともある。例えば今だ。今この瞬間は、アダンの側に誰もいない。
襲われれば命はないだろう――そして、そうならないように手も打っている。
アダンが指に嵌めている指輪は魔導機械である。そのため、魔術の才をもたないアダンでも問題なく魔術が発動できるのだ。
主に護身用の魔術、更には性的な魔術など、効果は様々だ。

「この辺にあったはずだが……これだな」

いくつもの魔導機械や、それが封じられた箱の側を歩きつつ、ある棚に置かれた箱の前に止まると、アダンはその箱の蓋に手をかざす。
指輪が輝き、蓋に仕掛けられた魔術的な封印が解かれる。その中には指輪が収められていた。
これはアダンが先日配下に命じて作らせた新しい魔導機械の指輪である。
本来ならば自分の邸宅に置いておくべきなのだが、ある事情によりこの部屋で保管していたのである。
その指輪を取り出して指にはめ込む。動作試験自体は既に済ませており、後は現実の人間に用いるだけである。
護身用でもあるが、アダンの趣味のための機能も多く備えているものだ。
どのような相手に用いるかと部屋の中でアダンは一人思案する。

アダン > 「ここならばと思ったが、そう上手く誰か来るわけでもあるまいな」

しばらく指輪のテストなどを軽く行っていたものの、誰か訪れる様子はない。
実のところ、自身と同じような考えの者がおり、それがここを訪れるのを待っていたのである。
なにせ、この部屋に来るような人間は後ろ暗いことがある人間であるはずなのだ。
そういう人間ならば、アダンもいつも以上に気を使う事なくモテ遊べると思ったのだが。
どうやら今日は収穫はなさそうである。
部屋を後にし、扉に魔術的な封印を指輪を使ってかけると、アダンはそのまま王城の地下の闇に消えていった。

ご案内:「王城地下」からアダンさんが去りました。