2017/12/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城・地下牢獄」にグリューネさんが現れました。
■グリューネ >
「85674~ 85675~」
薄暗い地下牢獄
そこには似合わない、妙に間延びした女の声が響く
見張りの交代の時間、新人なのだろう兵士は冴えない表情を浮かべ、牢屋に近寄ろうとしない──
「8567……あれぇ、いくつだっけぇ…まあいっかぁ…」
ごろん、と牢屋の中で寝転がる女
戦場では漆黒の甲冑を身に着け、斧槍を軽々と振るうその身体は
抗束帯がいくつもつけられた服で動きを完全に封じられていた
「看守ーかーんしゅー。
落ちてくる雫の音、数えるのも飽きちゃったよ~?
なんか、暇つぶししない~? しりとりとか、ど~お?」
なぜか明るい声を向けられ、見張りの兵士は思わず耳を塞ぐ
気味が悪いったらありゃしないのだ
■グリューネ >
『なんでこんなやつを生かしておくんだ?』
『ティルヒアの動乱で味方の小隊ごと壊滅させた気狂いだろ?処刑にしないのか?』
『何度処刑しても死なないらしい』
『魔族なんじゃないのか…?』
細々とした声で、兵士達がため息混じりに話す
それらは非常に耳ざとい女の耳にははっきりと入ってくる
「何さぁ~自分達はおしゃべりするくせに、
私ちゃんとはしりとりもできないってぇの~?」
口を尖らせて抗議の言葉を続けるも、それに対する返事はない
■グリューネ >
「あと魔族じゃないもぉん、正真正銘の人間ですぅ~。
返事くらいしてくれたっていーじゃーん、ここから出せってんじゃないんだからさぁ~」
文句と、不平不満
つらつらと牢屋から聞こえてくる緊張感のない声に、兵士達は顔を見合わせ、大きく溜め息をついた
『毎日朝から明朝まであの調子だ、いい加減胃が痛いぜ』
『だから此処の見張りだけはやりたくないんだよな…何で一睡もしないんだよアイツ』
普通の囚人が入っている牢屋なら居眠りくらいできるものだが、
女は一睡もせず、かつ退屈なのか話しかけてきたり、奇声をあげたりととにかく兵士に構え構えとアピールしてくる
兵士達の気疲れもいい加減溜まってきたところであった
■グリューネ >
「まったく最近の若い男の子ってやつはさぁ~
私ちゃんの退屈を紛らわせてあげようッ、というジェントゥルはいないもんかね~?
よし、蜘蛛の巣であみだくじでもやろうッ」
内心で思っていれば良いことをわざわざ大声で喋りつつ、鼻歌を歌いながら蜘蛛の巣を視線で辿り始める
どこまで進んだかわからなくなり、何度めかのリスタートをした頃、
「ん!」
兵士達であろう、踏み鳴らすような足音が一斉に聞こえると女は口元にニタリとした笑みを浮かべる
連中がそんなお行儀の良い音を立てる時なんて、一つしかないからである
■グリューネ >
「よっこい…しょっとぉ」
拘束服のままうねうねと芋虫のように動いたかと思えば跳ね起きるようにして立ち上がる
そして鉄格子に噛み付くかのように勢い良くぶち当たった
肉と鉄のぶつかり合う鈍い音がするが、本人は全く気にしない
彼女がそんな行動を起こす理由は、話相手が来たからに他ならない
『王国軍第一師団、グリューネワルト』
兵士を従えた、身なりの良い男は鉄格子の前に立ち
慣れた様子で女へと言葉を投げかける
『命が下った。明朝釈放だ』
■グリューネ >
身なりの良い男は一言それだけを告げ、くるりと踵を返すと牢獄を後にする
鉄格子に頬を押し付けるようにして、その背中を見送っていた女の眼に、ゆらりと光が灯る
「ふんふん、なるほどぉ……。
今度はどんな状況なんですかねえ…ティルヒアは楽しかったなあ…♥」
待ち遠しさを全身で表現するようにくねくねと身体をくねらせて座り込む
■グリューネ >
「牢屋に入ってから30万と2404分と51秒~。
う~んッ☆ようやく身体が動かせるぅ~…」
待ちきれないことを全身で表現するようにごろごろと牢獄の中を転がる
「たのしみたのしみ~キヒッ♥」
見張りの兵士達は気の毒なことに明朝まで女の高いままのテンションに付き合わされ続けるのだった
■グリューネ >
そして明朝───
重苦しい音を立てて牢屋の扉が開放される
「お勤めご苦労様~♪あ、これ言われるほうだっけ」
へらへらととぼけたことを言いながら、女が牢屋から出ると、
兵士達はおっかなびっくり拘束服の留め具を外してゆく
「さて…とりあえず師団長サマに謁見?
でもその前にご飯食べたいねえ、お肉とか、あ、あと水も~。
牢屋に入ってから飲まず食わずだったもんねえ」
特に周りからの視線を気にする様子もなく、
兵士が用意しておいた衣服へと着替え、牢獄の階段を昇ってゆく
■グリューネ >
階段を昇りきれば、城内とはいえ朝日に照らされている
久しぶりの光に僅かばかりその眼を細めて───
「きひっ、しゃばの空気はぁ、相変わらず濁ってるねえ~」
にやけた笑みを浮かべたまま、軽快な足取りで城門へ向けて歩きはじめる
まず第一師団の師団長に顔を通すのが筋であるが、
そもそもそういった礼節であるとか礼儀であるとかが通用する女ではないらしかった
■グリューネ >
「~♪」
まあ何か用があって牢屋から出したなら、
自分から用事を伝えに来るでしょ、と
すでに女の頭の中ではそんな感じに物事が整理されていた
そして特に直接命令が降りないうちは、きっと好きなことをしていていいのだろうと───
軽い足取りは、浮き足立った足取りに変わり、そのまま街へと姿を消してゆくのだった
ご案内:「王都マグメール 王城・地下牢獄」からグリューネさんが去りました。