2017/09/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にルシルさんが現れました。
ルシル > (―――――ゆうべはとうとう、一睡もできなかった。

いろんなひとがやってきて、お前は罪を犯したのだと言う。
巫女が純潔を失うことは罪なのだ、お前は罰を受けねばならない、と。

わからない、己はただただ言われたとおりに振る舞っただけで、
地下聖堂での一夜はいつもと変わらず、何もかもがぼんやりしていて、
いったい己がいつ、どんなふうに罪を犯したのか、ほとんど記憶になかった。

それでもたったひとつだけ、己にもわかっていることがある。
あの夜から、己のからだは変わってしまった。
いつ、どこで何をしていても、ふとした弾みでからだの奥が熱くなる。
夜、ベッドに身を横たえればもっとも強く―――疼いて、肌がざわついて。
しまいにはあらぬところから、とろとろと蜜があふれてきたりする、から。

朝まだき、庭園の片隅に設えられた白い瀟洒な東屋の中。
石造りの床にくったりと身を横たえて、両手で己のお腹を抱き締める。
呼吸も、鼓動も荒く乱れて――――しどけなく投げ出した足の間からは、
今もこぷこぷと、雌の香りを放つ蜜があふれつづけており)

ルシル > (苦しいけれど、辛いけれど、部屋に居れば絶対に―――。

そう思って逃げてきたのに、どこか、さして遠くもないところから声がして、
ぼんやりとした頭のなかに、しずかに落胆が広がる。

もうすぐ、己のもとを頻繁に訪れる男のひとが、己を見つけて抱えあげるだろう。
部屋へ連れ戻されるのか、それともどこか、よそへ連れて行かれるのか。
どちらにしても、結末は決まっている。
そうしてまた今夜も、疼くからだを抱えてベッドに沈む羽目になるのだろう―――――。)

ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」からルシルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城2」にヘリオトロープさんが現れました。
ヘリオトロープ > 今日も今日とて開かれる夜毎王城で開かれる夜会。
豪奢に互いに反射し合う灯りに照らし出された煌びやかな広間は、同じく参加者の王侯貴族に
子女が形作る喧騒が鬩ぎ合い反響して、まるで煙に巻かれて仕舞うよう。

差し伸べられた身内の手を取り、後ろへと従って暫く目上の会話に付き従っては居る物の、
少し遠巻きの人影から、此方へ手を振られて居るのに気付いてそっと寄り添う叔父へと知らせた。
如何やら、紹介したい人物が居る――と前以って算段付けられていた様子。
此方を振り返り、気にした様子をする彼へ、此れを丁度良い機会と扇を持つ手を添えて首を振った。

「――わたくしは一人でも大丈夫ですわ、叔父様。如何ぞ御友人の所にお行きになって。」

結い上げた髪の上から被る草花の柄を編みこんだレースのヴェール越しに言葉を返すと、
頷き返して一人歩き出す叔父の姿を見送り。そうしてそっと一人の隙間に吐息を付いた。
人の熱から逃れ出る様に、開かれた窓を通り抜けてバルコニーへと出。

ご案内:「王都マグメール 王城2」にグラハムさんが現れました。
グラハム > 毎夜のように開かれる夜会。
普段は屋敷に閉じこもり、あまり顔を出さないこの場ではあるが、今日はひとつ目的があった。
手回しは十分、邪魔な後見人は引き離した。
目標がひとりバルコニーへと出るのを確認した後、わざと音を立てて扉を開き、バルコニーへとその身を晒す。

「これはこれは、アルナルディの。奇遇ですな。」

如何にも偶然を装って現れたのは、いかにも好色そうな大柄な男。
親族に心ある者がいれば、近寄るなと少女に中興していたであろう。
悪名高きバランゾの愚鈍。
しかし、問題は彼の者が王位継承権すら持つ名家の主であるということ。
ニヤついた笑みを浮かべたまま、ゆっくりと少女の傍へと歩み寄っていく。
その笑みは、肉食獣を思わせた。

ヘリオトロープ > 空が荒れでもしたのだろう。夜風が幾分か強い夜。
広間との境界を跨ぐと膝下が震えて数歩、速度を速め手摺へと助けを請う。
涼しい秋風を胸に入れてみて、思った以上に眩さと人の熱量に負けていた事を知った。
見せ掛けだけでもそうとは受け取られないだろう所作振る舞いを身に付けては居るが、程度の問題。
手袋に包まれる手の甲を頬に当てて深くもう一つ呼吸。
少しずつ圧迫されていた臓腑が開いていくよう。

「皆様にご指摘を受ける前で、良かった…」

安堵の滲む色で呟く小声。
取り入れる空気が増える程に、脳裏もはっきりと醒めて行くのを感じていたが、
ふと背から掛かる声に言葉を噤んで振り返った。随分と大仰な音が立つのに何事かと、双眸を瞬かせ。
その上で相手を見て取ると、ヴェールから手を離すと目上の相手へと向ける礼を取った。

「此れはバランゾ侯爵様。ご機嫌麗しゅう。」

薄布越しである故に、気付かれない程度であったかもしれないが、密やかに表情が翳るのは
彼に纏わる噂の一端でも、或いは詳細な内容を省いてでも同じ年頃の貴族子女の間で、
会話の中に名を聞いた事があるからかもしれぬ。

グラハム > バルコニーを駆け抜ける風に燕の尻尾がはためく。
髪が乱れるのを嫌うよう片手で頭を抑えながらゆっくりとした足取りで少女の傍へと近付く。
両腕を拡げているのは自らを大きく見せるためか、それとも逃げ道を塞ぐためか……。

「ヘリオトロープ嬢……だったかな。その年で次期当主と聞いている。立派な物だ。」

にこりと、しかし、その淫蕩な性根を隠そうとしない笑みを浮かべ、無遠慮に少女の肩へと触れる。

「身体が弱いと聞いておるがこのような場所にいて良いのかな?何なら風の当たらぬ場所へエスコートして差し上げよう。」

まだ成年前……とは言え、その肢体はなかなかの物。
目を付けたのは間違いではなかったと笑みを深めつつ、少女の肢体をじろじろと無遠慮な視線で観察する。
逃げるなら今しかないだろう。

ヘリオトロープ > 煌びやかな光の世界を覆い隠す様に両手を広げた巨躯が影を作る前では、
月明かりのささやかな抵抗なぞ然程意味のある物とも思われない。
寧ろバルコニーの壁に掛けられた蝋燭は、時折大きく吹き込む風に揺れて、
彼が作り出す影の揺らめきを増長させ、歪ませていき。
その閉じ込められた様な空間の中で背を伸ばして佇み続けるのは、気力の要る事。

「王族に連なる方がわたくし如き若輩の名をご存知で居てくださるとは――光栄で御座いますわ。」

大きな掌が肩に触れると細い身体は困惑と怯えの狭間で硬直を返す。
穏やかな物言いで居て全てを喰らい尽くすかの性を視線に篭める姿には、
微かな程度の噂や以前伝え聞いた程度の名よりも強く、現実的な恐れとして警鐘が鳴り。

「――良く、…ご存知でいらっしゃるのですね。」

更に一つ、怪訝に感じたのは幾等貴族同士とはいえ、この身体の事情を知っていること。
それでいて、思考が纏まらないのは、年端も行かない少女としては仕方の無い事か。
強張る儘の声が、かすれ勝ちに漏れるのは、頼り無く荒い風に洗われ。

「御気に掛けて頂き有難う存じます。
 折角の夜会…侯爵様の御手を煩わせては叔父に怒られて仕舞います。
 そろそろ侍女が参りますから、温かい御心遣いだけ有難く頂きますわ。
 でも、…ご忠告に従い中へと戻らせて頂きますわね。」

稚拙に、そして震える声で、一歩己の肩に置かれた手から、
身体を射竦める視界から足を引くと其の手にはヴェールだけが絡まり残るかもしれない。
深く頭を垂れると、其の横を通り広間へと逃れて行こうと――
さて、夜会の最後迄逃れ得る事が出来たのかは。

ご案内:「王都マグメール 王城2」からヘリオトロープさんが去りました。
グラハム > 下調べは十二分に行っている。
アルナルディの家に連なる者に金も握らせ手に入るだけの情報は握っている。
零落れている……とは言え、仮にも旧き名家の一員、うかつなことは出来ない。
故に、その弱みを握った上での接触。
触れた肩は細く、どのような抱き心地かを想像し、笑みが深まる。
あとは一言発すれば……目の前の少女は逆らえなくなるだろう。
だが、その一言を発するより前、何かを察知したのだろうか、少女はその手の中からすり抜けていく。

「クク、ただの小娘かと思いきや儂を前にして平然を装い逃げるだけの芯があるとはな。」

その手に残るヴェールを顔へと寄せると少女の残り香を嗅ぎながら愉しそうな笑みを浮かべた。
そう、狩りはまだ始まったばかりなのだから。
何も焦ることはない。

ご案内:「王都マグメール 王城2」からグラハムさんが去りました。