2017/04/23 のログ
ご案内:「王城 中庭」にツァリエルさんが現れました。
■ツァリエル > 春の暖かな陽気に包まれた庭園。
ツァリエルが手ずから育てた花がついに色々と花を咲かせた。
毎日丁寧に水やりをし、手塩にかけて育てた草花が
王城ぐらしの寒しさを慰めてくれる。
土いじりを終え、一息休憩を入れようと備え付けのベンチに座り
厨房から持ち出させてもらったバスケットから紅茶のポットとビスケットを取り出す。
ティーカップに紅茶を注ぎ、息を吹いて一口啜りほっと息を吐く。おいしい。
■ツァリエル > そうやっている内に、すっかり仲良くなった小鳥や子リスが近くによってくる。
おやつのビスケットを狙ってきたのだろう。
微笑ましさに口元を緩ませ、割ったビスケットの欠片を動物たちの前にばらまく。
すると動物たちは我先にと地面に散らばったビスケットをついばみはじめた。
そのさまがまた愛らしくてツァリエルは微笑んだ。
本来なら姫君たちがこういったことをするのが似合うのだろうが
気性が穏やかで王城であまり味方のいないツァリエルには
動物たちがかけがえのない友達であった。
■ツァリエル > 「花、あとで自分の部屋へ持っていって飾ろうかなぁ」
そんなことを一人つぶやく。
ツァリエルが望めば花などいくらでも城下の花屋から取り寄せることができるだろうが
そうすることを彼は望まなかった。
飾るなら野原の自然な草花のほうがよほど心が慰められる。
時折、修道士で合った頃の事が懐かしく思え、
あの時のように自由に城下や街を散策できたらと思うことがある。
だが今となっては自由に外へ出ることもできなくなってしまった。
せめて、外に通じる人が現れて友達になれればとも思うのだが……
引っ込み思案の自分に友などできるのだろうか。
ご案内:「王城 中庭」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 「あ、ツァリ! おいー、何やってんだぁ」
そんな風に、思案に耽っていたツァリエルの名を呼ぶ声。 聞き覚えのある声。
顔を向ければ、王城から中庭に入る扉から顔を出している、少年の姿であった。
平民冒険者である少年はしかし、一人で王城から出てきて、ツァリエルの方に真っ直ぐ近づく。
いつも通りの汚れた服装ではなく、艶やかな布地の帝国盛装。 髪も結い上げていて、きちんとしている。
しかし、いつも通りの笑顔を向ければ、ベンチに座るツァリエルの前。
「よう、一人でお茶会か? 随分可愛い事やってんな!」
■ツァリエル > 自分を呼ぶ聞き覚えのある声、振り向けばそこには見知った顔があった。
「ティエンファさん!」
嬉しそうに顔をほころばせ、歩いてくるティエンファを迎え入れる。
動物たちが彼に場所を開けるようにざっと散っていった。
一人でお茶会か、と尋ねられれば照れくさそうに笑って頷いた。
「ええ、お茶会にお誘いするような友達はこの子達しかいませんから」
傍で飛び回る小鳥たちを指し示してもう一つバスケットからティーカップを取り出した。
お茶を入れどうぞ、とティエンファにカップを勧める。
ベンチの横のスペースを開けて、ティエンファも座れるように気を配る。
「ティエンファさん、今日はおしゃれしていらっしゃいますね。
王城にご用事があったのですか?」
■ティエンファ > 名を呼び返されれば、明るい笑顔で片手を振って見せる。
小鳥達が羽ばたき、子リスがツァリエルの後ろに逃げるのを見れば、
邪魔したかな、とちょっと申し訳なさそうに。
「そうなのか? ツァリエルなら同じ神官の友達とかも多そうだけども」
意外そうに目を瞬かせてから、ツァリエルの肩や木の上から見る動物たちに視線をやる。
邪魔するよ、とちょっと笑って小動物達に声をかければ、ツァリエルの隣に腰を下ろす。
勧められたカップを受け取れば、茶の香りに目を細める。
「こういう茶は初めて飲むけど、良い香りだな
…うん? ああ、いや、俺は用事は無かったんだけど、貴族さんから呼ばれてさ」
一口すすり、息を吐く。 そしてざっくりとかいつまんで話すのは、今日の昼に起こった事件。
ある有力貴族の先代の誕生パーティーで暗殺未遂が発生して、それを止めたのが、この少年ともう一人の冒険者。
当代の主が王城に勤めており、褒賞の話の為に王城に呼ばれたのだ、と。
「大慌てで呼ばれたから、パーティー警備の盛装のまんまでさ
紅とかも引いてるから、あんまり知り合いに見られると恥ずかしいんだけどな」
そう言って照れ臭そうに笑った唇、薄く彩られている。
「で、帰りがけにちょっと道を外れたら、ツァリエルが居たってわけさ」
■ツァリエル > 小皿にビスケットを取り、ベンチの脇のテーブルに乗せる。
ティエンファから聞かされる事件の顛末を聞かされると
どきどきと胸を押さえ、ティエンファに何もなかったことに胸をなでおろした。
「まぁ、そんなことが……。ティエンファさん、お手柄でしたね。
でも暗殺未遂なんて恐ろしい事件、誰も怪我がなくて良かったです」
ほっと安心したように息を吐きだしてから、上から下までティエンファの格好をじっくりと眺める。
帝国風の正装に、きちんと髪を梳かして化粧をした姿。
王城に招かれても失礼のない、とても立派な客人に見える。
「ティエンファさん、とてもかっこよく見えます。
普段も素敵ですけれど、今はちょっと大人っぽく見えます」
そう感想を漏らして笑う。
途中で自分を見かけて声をかけてくれたことに感謝しながら、
会う度何か手柄を立てるティエンファに正直なところとても感心していた。
きちんと人の役に立つことをできる彼と、何も出来ないツァリエルでは大違いだと。
■ティエンファ > 一声かけてからその小皿のビスケットを小さく割って、その皿を二人の足元に。
自分の分も一枚とって口に運びつつ、熱心に話を聞いてくれるツァリエルに、面白可笑しく出来事を伝える。
「まあ、偉いと狙われる事もあるって事だな 難儀な事だよ
だからこそ俺達用心棒稼業が食いっぱぐれないで済むんだけども」
あ、これ美味しい、とかビスケットに舌鼓を打ちつつ、
人見知りするようにそろそろと足元の小皿に近づいてビスケットを食べる子リスを見て微笑む。
そして、ツァリエルに眺められれば、なんだよ、とはにかむ。
「そんな褒めてもなんも出ないぜ? でも、あんがと って、普段は子供っぽいかねえ
こんなに髪を結うのは時間かかるし、化粧は上手くないし、普段からやれって言われたら御免こうむるけど、
でも、そんな風に褒めて貰えるのは、悪い気はしないな
仕事で褒められるよりうれしいかもだ」
嬉しそうに笑って返す。 感情の現れが、王侯貴族と比べると何とも素直で。
「しかし、ツァリも今日はあれだな、神官っぽい格好じゃないな
さっき見かけて名前呼んだ後、ちょっと人違いかと思ったぜ ツァリも似合ってるぜ」
簡素ながら上等なつくりの服をしげしげと眺め返し、ひょい、と服の端を摘まんで悪戯したりする。
■ツァリエル > 動物たちにもビスケットを分け与えてくれるティエンファの優しさに
にこにこと笑みを深める。
そして普段が子供っぽいかと勘違いされると慌てて手を振って否定した。
「あ、ごめんなさい。そんな、普段が子供っぽいとかじゃなくて……
ええっと、お化粧したり、髪型を変えられていらっしゃるからいつもと雰囲気が異なる感じがして……。
本当に、それだけで別に変な意味はないんです!」
変な意味ってどういう意味だと自分でも思うが
相手があまり気を悪くしていないことを笑顔から悟ればほっと胸をなでおろした。
自分の衣服をつまむ相手にくすくすと笑いながら、ベンチから立ち上がって
くるりと一回転その場で回ってみたりする。
ひらひらと上等な生地が風に舞った。
「王城にいるときは多少良い服を着ないと怒られちゃうんです。
本当は動きにくいから、もっと軽くて簡素なものでいいんですけれど
侍女の方が身だしなみにうるさくて……」
再びベンチに座りなおすと、困ったようにため息をつく。
■ティエンファ > 自分の行動を嬉しそうに眺めるツァリエルに気付けば、俺の方が後客だからな、と。
そして、大慌てで弁解する様子を見れば思わず声をあげて笑った。
「冗談だよ、冗談 でもまあ、普段しか知らないと変わって見えるかもしれんなあ
格好だけだけどな、上流階級の作法なんて知らんし そんなの求められても困る
変な意味ねえ…ひひ、綺麗で見とれたとかそんなんまで言われたら、流石に俺でも照れるけどな」
そんな風に混ぜっ返しながらも、立ち上がったツァリエルがくるりと回るのを見、
明るい太陽の光に薄く透ける様な服と褐色の肌のコントラストに、へえ、と思わず声を漏らす。
「でも、良く似合ってるぜ? 俺と違って、服に着られてるって感じもしないし
…って、侍女? 身嗜みにうるさい? …んん?」
その言葉に違和感を覚え、片眉を上げてツァリエルの横顔を眺める。
そう、少年はまだツァリエルをただの王宮付きの神官見習いだと思っていたのだ…。
そして、あ、と納得したような顔をすれば、
「その年で王宮勤めできるって事は相当エリートだもんなあ
あれか、侍女までついて、果ては王宮聖堂のトップか、枢機卿候補とかか?
…そんな偉そうには見えないんだがなあ」
最後にちょっと失礼な事言いつつも、まじまじと眺める。
■ツァリエル > 混ぜっ返された言葉にきょとんと目を丸くする。
だが、意味をよくよく頭のなかで繰り返し、咀嚼すると急に頬を赤らめた。
「……っはい、帝国風のお衣装なのもあって、とても綺麗で見とれちゃいました」
そう素直に困ったように笑っていう。
嘘ではない、確かに今のティエンファはそれぐらい格好良く見えた。
彼の働きもまたそれに値するだけのことはあるし、目の前の青年は凛として見えた。
衣服が似合っていると褒められて、ありがとうございますとはにかむ。
そして言葉の違和感に相手が首を傾げればそろそろ言い訳できぬと自分で思い始め、緊張した面持ちを見せた。
そろそろと、重い告白をするかのように口を開いてティエンファを見る。
「あの、ティエンファさん……僕、今まで黙ってたことがあって……
ずっと言いそびれていたというか……、
実は、修道士とかではなくて、いえ、元は修道士だったんですけど
あのう、僕、本当は、この国の 王子 なんです……」
そう言ってもじもじと自分の手指をせわしなく組む。
ずっと騙していたような形になって怒られてしまうだろうか。嫌われるだろうか。
ただそれだけが怖くて、視線を足元に落とした。
■ティエンファ > 「え? …あ、お、おう、有難う … …そ、そんな赤くなるなよ!? 俺まで恥ずかしくなるじゃんよ!?」
頬を染めながらも、ちょっと困ったように笑うツァリエル。
それを見て思わずこっちまでどぎまぎしてしまう。
照れ臭さを誤魔化すように、わしわしとツァリエルの柔らかい髪を撫でた。
「でもまあ、ツァリエルがそう言うなら、ちょっと自信持とうかね
意外と似合ってるのかもしれんな、こういう格好も
…って、うん? どうしたよ、そんな真面目な顔して」
紅茶を一口飲んだ後、カップを机に置く。
ツァリエルの強張った表情、重たい口を開ける様子に、こちらも自然と背筋を伸ばして体を向けて。
「へ? 王子様?」
その告白に目を丸くした。
普通の庶民であれば、その言葉を理解した瞬間、どうするだろうか。
頭を下げて今までの非礼を詫びるだろうか。 同じベンチに座るのも恐れ多いと立つだろうか。
それとも、王侯貴族であるという偏見から、恐ろしい物を見る目をするだろうか。
「成程、道理でツァリエルと歩いてる時、すれ違う偉そうな人達が頭を下げる訳だ
神官見習いにまで頭を下げるって、どんだけ信心深いのかと思ってたけど、違ったんだな、納得したぜ」
少年は、どれとも違う反応を返した。 王子であるなら王子であると、そのまま飲み込んだ。
くしゃくしゃと撫でていた手もそのままに、俯いた頭を、わし、と優しく撫でて。
「俺、完璧に神官だと思って話してたから、訂正しにくくて居心地悪かったろ
ごめんな、ツァリ 教えてくれてあんがとな」
騙されたと怒るどころか、逆に自分の勘違いを謝り、
そして、事実を告白してくれたツァリエルに礼を言いもした。
ツァリエルが顔を上げれば、変わらず、優しい笑顔で。
「また一個、ツァリの事が分かったな 嬉しいぜ」
■ツァリエル > わしわしと撫でられる頭が心地よい。
誰かに頭を撫でられるのなんて本当に久しぶりであった。
不敬だと、怒ることもなく、ただ困ったように笑いティエンファの手のひらを堪能する。
自分にとっては結構大きな告白であったようであったが
それを気にした様子でもなく、素直に受け取るティエンファの姿にああ、と
今日一番のホッとしたため息を漏らした。
自分の思っていたどれとも違う反応を彼は返し、今まで通りの自分として接してくれようとしている。
そのことに本当に心から感謝した。
「いえ、僕こそ紛らわしい格好ですみませんでした。
騙そうとしていたわけじゃなくて、中々言い出せなかったんです。
王子って言うと畏まられたり、悪い人に利用されちゃったりするから……
でもティエンファさんが素直で優しい人でよかった。
こちらこそ、ありがとうございます……」
あまりのことに少しだけ目元を潤ませてしまう。
自分はこういう人と友だちになりたかったのだと、ずっと思っていた。
もしなれるならなりたいとも。
「僕も、ティエンファさんのこと、もっと知りたいです。
それで、お友達になりたいです。
外の様子や、ティエンファさんの冒険のお話をもっと知りたい」
そう言って嬉し涙をぽろりと零して今日一番の笑顔を見せたのだった。
■ティエンファ > 少年の手は大きく、ごつごつしていた。
相手を殺せる術を練り上げてきた硬い手だけれど、撫でる力は柔らかく。
その手を自分の膝に置けば、安心したような溜息を吐くツァリエルに目を細める少年。
「俺も時々あるぜそう言うの タイミング外すと、その後ずっと話せないんだよなあ…
判ってるよ、ツァリは人を騙そうとして嘘を吐く奴じゃあない
それに、下手にツァリが自分の身分を吹聴したら、それを聞いた奴も巻き込まれたりするかもしれんしな」
慎重なのは良い事だよ、とむしろその弱気を褒めさえした。
そして、涙目で礼を言う相手に、大袈裟だよ、と笑って返し。
「え? 俺はもう、ツァリの事友達だと思ってたんだけど!?
なんだよ、水臭いぜ 今やっと友達だって思ってくれたのか?」
わざとらしく大袈裟に嘆いて見せてから、ツァリエルの頬に零れた涙を、親指で拭ってやる。
その手つきはちょっと乱暴で、でも、友達としての気安さがあって。
「お互いの事を知っていこうぜ 俺も、王子様の友達なんて初めてだから、色んな話を聞いてみたい
だからさ、ツァリ これからもよろしくな」
に、と白い歯を見せて明るく笑った。
薄化粧して、美麗な服を身に着けても、根っこは変わらないのだ。
■ツァリエル > 拭われた涙とそれを拭ってくれた指の優しさに思わず頬を赤らめた。
どきんと、なぜか胸が高鳴る。友達と、自分を呼んでくれたことに嬉しさが溢れた。
「ご、ごめんなさい……。
勝手に友達っていったら気に障るかと思って……。
はい、もっとお互いのこと教え合いましょう。どうぞよろしくお願いします!」
そういって自分の涙を拭ってくれた手をとって握手する。
硬く逞しい相手の手、自分の手とは大違いだがとても温かい。
そして、少しだけ迷ったあと、そっとティエンファの手の甲に自分の顔を寄せ唇を押し付けた。
まるで聖者が相手に祝福を施すかのようなそんな仕草だった。
それが成功しようとしまいと、恥ずかしそうにすぐ手を離すだろう。
後ろ手に手を組み、照れたように微笑めばもう泣き顔は止んでいて。
言葉が途切れてしまったことを照れ隠しするようにベンチから立ち上がった。
「そ、そうだ。またお城をご案内しましょうか?
前は行けなかったところも、今日は行けるようになっているかもしれませんし」
まるで女の子が好きな男の子をデートに誘うような口実になってしまったが
そう言ってティエンファをじっと見つめて。
■ティエンファ > 「何言ってんだ、自分が相手を大事だと思えば、その時点で友達さ
好かれて嫌だと思う奴なんていないし、居たとしても、それは俺じゃない
ああ、よろしくな!」
握手で握り返すツァリエルの手は小さい。
自分とは違う人生を送ってきた手。 柔らかくて細くて、女の子みたいだと思った。
でも、続けて思った事は、奇しくもツァリエルが自分に思ったものと同じ。 『温かい』、だった。
その手が離れて、下ろしかけた手をツァリエルがとった。
手の甲に押し当てられる、薄くて柔らかい唇の感触。 くすぐったそうに目を細める。
その仕草がどんな意味を持つのか、異国の少年には判らなかったけれど、
でも、照れたように微笑む。 きっと、ツァリエルがこうしてくれるのは、お互いにとって良い事なのだ。
立ち上がるツァリエルにつられるように立ち上がる。 小鳥や子リスが木に戻る。
こちらを見つめるツァリエルの目を見返せば、嬉しそうに頷いて。
「おう、喜んで案内されるよ! ツァリエルの案内なら、それだけで楽しいだろうしな
一緒に歩こう よろしく頼むぜ」
そう言って少年はツァリエルの手を握る。
まるで男の子が引っ込み思案な女の子を誘うように、その手を優しくひいて、歩き出すのだった。