2016/05/30 のログ
■シェリル > 自分たちで、自分たちの防衛能力を削ぎ落しているというのが理解できているのかどうか。
優秀な人間ほど、嫉妬などにかられた周囲に絡めとられて足を引っ張られる。
そういった出る杭を打つ試練を乗り越えられるのは、並外れた優秀か。出る杭を打つ側に回るだけの権勢があるか。
今回の宴の目玉となった女騎士は、可哀想ながらそのどちらも無かったという事だろう。
「さて、彼女の末路はどうなるのかしらね」
とうとう、自分から快楽をねだり始めた姿を眺めて、最後の一線を越えたかなと転落を確信して、この後どう動くかと思考を巡らす。
奴隷として売られて消えるのか、騎士の立場を維持したまま慰み者として扱われるようになるのか。
売られるのなら買って、自分の手駒にするのもひとつの手かなと、実力はあるのだしと考え、費用対効果はどの程度かと見積もって、採算ラインを出しておくとし。
休憩はこの程度にしてと、自分もまたこの騒ぎをもう少し楽しもうと嬌声をあげる男女の輪の中へと、また戻っていく。
朝方まで続いた宴が終わるころには、主賓であった女騎士はすっかり陥落していたとか。
ご案内:「王都マグメール 王城2」からシェリルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」にアマンダさんが現れました。
■アマンダ > 王城内の屋外練兵場。
民や王国関係者に王国軍の精強さをアピールする為か、テラスや解放された門から覗けるほど開放的な場所。
そこで新兵達を相手に剣の指導をしている少女。
手にしているのは刃挽きの剣。
王国兵5人に囲まれた状態での実戦訓練。
5対1の状況なので少女は捕まらない様に全ての攻撃を剣先で払いつつ、狙える隙があれば蹴りや足元を峰の部分で叩いて見せる。
「動きがまだまだ単調だよ。 こんなんじゃ直ぐに見切られちゃうよ。」
少女たちの他にも新兵が数十人ほど居て、それぞれが剣を用いた訓練をしている。
元々少女は一介の冒険者である。
本来王国軍の訓練に混ぜてよいような身分ではないのだが、今稽古をつけている兵士たちは少女が先日身を挺して守った新兵たち。
無事に戻ったことを報告しに顔を出すと、訓練をつけて欲しいと頼まれ今に至る。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > 先日、タナールの戦いで身を呈して殿になったという「英雄」。
近頃忙しくて戦場に出れないのでその姿を見た事はなかったが、なかなか面白そうな人材だ。
丁度よく来ているらしいので、面を見てやろうとテラスにもたれかかり。
「へぇ」
とぼけた声を出しながら眼下を見やる。
新兵相手とはいえ、5人を捌くとはなかなかの腕だ。
オーギュストは面白そうに訓練を眺めている。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」にオーギュストさんが現れました。
■アマンダ > 「折角5人も居るんだよ? 数で押して押さえつけたらいいじゃない。
僕より腕力ないってことないでしょ?」
ばらばらでまとまりのない動き。
だから5対1なのに少女でも捌ききれる。
その点を指摘する少女。
いつになくムキになっている。
「次も僕が居て守れるとは限らないんだからね。 もっと頑張らないとダメだよ。」
やがて新兵達が呼吸を合わせた攻撃を行い始める。
素早い3人が浅い突きを繰り出し、少女の動きを鈍らせる。
3人の攻撃を同時に捌いている隙に、もう一人が少女を羽交い絞めにし、最後の一人が首筋に剣を突き出す。
「そう、それでいいんだよ。 僕なんかもっと簡単に倒せるようにならないとこれから大変だよ?」
羽交い絞めにされたまま、嬉しそうに笑っている少女。
「流石に疲れたから、僕はもう休むね。 …ダメだって、後は君たちで訓練してなよ。 これ以上はお金取るよ?」
本当は顔出しに来ただけだったのだが、予想外に捕まってしまった。
新兵の一人に剣を返すと、練習の邪魔にならないような場所に座って見守っている。
テラスから見られていることなど気付いていない。
元より誰でも見れるように作られた練兵場。 視線を気にするような場所でもないのだ。
■オーギュスト > 「おう、待ちな」
ひらりとテラスから練兵場に飛び降り。
大地を踏みしめると、あたりをギロリと一睨み。
鬼の如き形相の将軍に見つめられ、新兵たちが震えあがり。
「大の男が寄ってたかって、女一人羽交い絞めか?」
戦場では手段など選ばぬし文句を言わぬ男だが、ここは王宮の練兵場。
貴族どもに見られたら、軍そのものが舐められる。
「てめぇら、それでも兵隊か!」
一喝。
あたりの空気が震える。
■アマンダ > 突然飛び降りてきた男の登場に少女も、周囲の新兵も皆驚く。
それはそうだ。 通常人が飛び降りて良い高さになどなっていないのだから。
その男が鬼のような形相で一喝を入れるのだ。 新兵たちの心中いかばかりか。
「止めなよ、これは僕がやらせたことだよ。」
が、それとは別に少女は男に食って掛かる。
新兵にそのように指示をしたのは少女だ。
「兵隊なら兵隊らしく数でおさえるのは常識じゃないか。
現に僕は今負けた。 彼らの勝ちだよ。 彼らは悪くない。」
■オーギュスト > 「あん?」
ギロリとそちらを向く。
正しい、少女の言う事は至極正しい。
だが。
「兵隊云々じゃねぇよ。男としてだ」
ただでさえ「兵隊」という力を持つ連中だ。
今ここで誇りを叩きこまねば、いずれ戦場で致命的な間違いを犯す。
■アマンダ > 「僕なんかを相手にいちいち睨み付けるのが君の言う男なのかい。」
立ち上がり、こちらを向く大きな男の方に向かって行く少女。
「彼らはこれからこの国を守る立派な戦力になっていくよ。
君みたいなのが邪魔をしなければね。」
汗まみれの髪を掻き分けながら少女は毒づく。
折角自信をつけ始めた新兵達。
その自信を挫く様なことは少女には許せなかった。
例えそれが新兵達の事を思ってのことだとしても。
■オーギュスト > 「はん」
人間を思えば、彼女の方が正しい。
だが、兵士は駒だ。いかに間違いを犯さず、目的を遂行させるか。
男の目的はそれだ。人間ではなく、兵士を育てる為の。
「どうだかな。女一人自分の良いようにできない男が、国なんざ守れるかな」
はんっとあざ笑う。
兵士達の中にはオーギュストをにらむ者もいる。
いい目だ。それくらいでなくては、使い物にならない。
■アマンダ > 目の前の男と少女とでは、スタンスが根本的に違うのだろう。
少女は所詮自由を重んじる冒険者。
軍隊とは自然考え方も異なる。
「そういう考え方は、賛同できないね。 他人を大切にできない人が何かを護れるとでもいうのかい?」
少女は怒るでもなく、淡々とした口調で問いかける。
兵士の中で睨むものが居ても少女は気にしない。
強いものに挑む気持ちが生じることは兵士として大切であることは少女でも理解できるから。
■オーギュスト > 「随分な口を利くじゃないか『英雄』サマよぉ」
くくっと笑うと、大剣を後ろの武官に預ける。
ゴキゴキと拳を鳴らしながら、ゆっくり少女の方を向き。
「なら、お前には大切な何かを護る力がある、ってんだな?」
ちょいちょいと手招きする。
いわゆる、挑発だ。
■アマンダ > 「英雄ってのが誰のこと言ってるのかは知らないけど、僕のことを言っているのならお門違いだよ。
僕は死ぬのが嫌で命乞いをしてきただけの只の冒険者さ。」
大剣を預ける背中をじっと見上げている。
「僕と素手でやりあおうってのかい? 人の土俵で戦えるほど僕は強くはない。」
首を左右に振ると、何か言いたげに腰に差している剣の柄の上に手を載せる。
やりたければ抜けとでもいいたげに。
■オーギュスト > 「はん――お前は剣使っていいってんだよ。俺は素手で十分だ」
ゴキゴキと拳を鳴らし宣言する。
オーギュストは無手の殴り合いでもそれなりに使えるが、さて、剣相手にはどうか。
だが、この兵士達に見せてやらねばならない。
時に軍隊とは、どんな圧倒的な相手にも立ち向かい――死ぬ事も厭わない、という誇りを。
「お前みたいなお嬢ちゃんに得物を使ったら、後で何言われるか分からんからな」
■アマンダ > 「悪いけど、アレ持ってきてくれるかな。」
少女の表情が険しくなり、近くにいる新兵に刃挽きの剣を持ってきてもらう。
代わりに、腰の剣を預けて。
「僕が女だからって甘くみたことを後悔させてあげるよ。」
剣を両手で構え、少女は駆け出す。
まずは先制の一撃。 狙うは鎧の隙間。
つまり喉仏。
■オーギュスト > 「おぉ、いいじゃねぇか!」
一撃で命を奪いに来る。
そうだ、それでいい。
鋭い一撃を身を沈めなんとかかわすと、今度はお返しとばかりに腹に正拳突きを繰り出す。
重い一撃は、風を切り裂き唸りさえあげさせ。
「おらよっ!」
■アマンダ > 「君もね。」
突きを交わされた段階で、少女は男の攻撃が来ることを予想していた。
体格の差、着けている装備の違いから一度喰らえば致命傷になるであろうことも。
少女は正拳付きを足の底で前蹴りする形で受け止める。
黒のゲートルの中で足が軋む感覚がする。
だが、捨て身で攻撃をなんとか受け止めたこの状況を好奇と捉え、足で受けて止めている男の丸太のような腕に対し剣の切っ先を向ける。
両手でもった剣の先で腕を貫こうと。
当たった所で刃を潰してあるので腕に大したダメージはいかないだろうが。
■オーギュスト > 「んぐっ!」
拳を足で踏まれた。素直に痛い。人間の手の外側の皮は、そんなに厚くできていないのだ。
しかも攻撃をいなされた挙句腕に剣が迫る。なんとか捻ってかわすものの、腕の皮が剣で擦られた。
「ってぇ!」
思わず言いながら間合いを取る。
いかん、いつも以上に間合いを取るのが面倒だ。
破壊力を信条とするこの男、ぴょんぴょん跳ねる相手は苦手中の苦手である。
しかたねぇなぁ、と呟きつつ。
再び拳を構え。
■アマンダ > まだやるのか…。
少女は心の中で驚いている。
「逃がさん!」
腕の皮を抉られても平然と戦おうとする男のタフさにどうしたものかと考えるも、
少女は剣を咄嗟に構え直し、間合いを取る動きにぴったりと付いて再度鎧の隙間、今度は足を突こうと剣を突き出す。
少女は左足を痛めたが、この状況では痛がっている暇はない。
だが、僅かに左足の動きが重くなっていることが感づかれるかもしれない。
■オーギュスト > 「――翻りて幾重にも時を刻め、ヘイスト!」
小さく加速の呪文を呟く。
反則? いやいや、魔法を使わないとは言っていない。
オーギュストは一気に加速すると、足を突こうとする少女を見やる。
僅かに動きが鈍い。なら――
「――らぁっ!」
そのまま、剣に擦り付けるように足を繰り出す。
擦れ、痛みが走りダメージを受けるが、知った事ではない。
そのまま剣を持つ手を蹴り飛ばそうと。
■アマンダ > 「へえ、それありなんだ。」
小さく呟かれた声の方へ、にやりと笑む少女。
そっちがその気ならこっちもその気だ。
男の思惑通り少女は派手に蹴り飛ばされる。
いや、それにしても飛び方が異常だ。
それもそのはず。
少女の背中には純白の羽が2枚生えていた。
「悪いけど、先に使ったのは君だからね。」
魔法も使えるとなると少女の領分である。
男の蹴りで刃こぼれの目立ち始めた剣を捨て、少女は空中で両手を広げる。
少女の周囲に光で構成された槍が10本露われる。
「…行け。」
少女の号令により槍が男の元へ襲い掛かる。
砦で魔族と対峙した時に使っていた大技。
だが、今回は本当の命の取り合いとは違う。
槍は男に突き刺さる手前で全て停止することだろう。
■オーギュスト > 「おいおい」
オーギュストは呆れた。
観戦武官のやつ、こういう技を使ってたっていう報告くらいしろってんだ。
が……
「生憎な」
オーギュストは第七師団長。対魔族・魔物専門の師団の長である。
魔法なんて浴びるほどくらってきたし、その対処も心得ている。
すなわち
「俺はそういう戦いが本分なんだよ!」
お上品に戦うのはここまでだ。
オーギュストは槍の雨の中に突っ込む。
直前で止まろうがなんだろうが、構わない。急所にだけ当たらないように。
肌に何本か刺さり血が溢れる。が、致命傷には至らない。
「おらぁっ!」
そのまま空中に飛び上がり、少女を引っつかもうと。
■アマンダ > 「君は正気かい? 僕相手にそこまでする必要ないだろう。」
寸止めで終わるはずの槍は男の身体に次々刺さっていく。
男の体捌きにより急所だけは避けているが、そもそも刺さることが想定外。
眼を瞬かせ、少女は戦っている筈の相手の方に気が行ってしまう。
「うわ!」
その一瞬が命取りであった。
少女は足を掴まれる。
わずか2枚の羽根では男の体重までも支えることは出来ず、少女と男は重力に従い落下する。
■オーギュスト > 「阿呆。一度対峙したらな、命をかけて相手を倒す」
血だらけの男と少女は地に落ちる。
そして男は転がりながらなんとかマウントを取り、少女を組み伏せようとする。
それが、男のただひとつの目的であり。
「それが兵士だ!」
周りの新兵達に聞こえるように宣言し。
■アマンダ > 「分かったよ。 僕の負けだ。」
既に勝負は決していた。
手心を加えようとした時点で少女の負けは決まっていたのである。
組み伏せようとする動きに対して、少女はなんら抵抗らしきことはしない。
新兵に対し宣言をする男。
それを少女は黙って聞いている。
少女は負けたのだ。 この場で何かを言える立場にはない。
■オーギュスト > 「――おう、っつぅ」
いててと呟きながら男は立ち上がる。
慌てて神官がやってきて回復魔法を唱える。
男の無茶はいつもの事なのか、呆れたような顔で。
「っかし、珍しいモン見たな。お前はあれか、天使ってやつか?」
あの羽、文献で見た天使に酷似している。
先ほどまでの殺気は何処へやら、あっけらかんと尋ね。
■アマンダ > 「大丈夫かい?」
回復魔法を受けている男に声をかけながら、少女はその場で座り込んでいる。
左足に手を翳し、魔法で傷を癒している。
今にして痛む足。
「そうだよ。 ちゃんとした天使じゃないから羽も2枚だけどね。」
治癒を続けながら男の方を見上げて。
「しかし君、すごく強いね。 人間でこんなに強い人居るんだね。」
少女も戦意は消え去り、涼しげな表情を浮かべている。
■オーギュスト > 「やっぱりか。本物を見るのは初めてだな」
感心したように少女を見る。
魔族と対抗する勢力とも言われているが、果たして。
「あ? まぁ、俺より強い奴も居るがな、少なくとも強くなくちゃ軍人はつとまらん」
強いといわれれば嬉しそうに笑いながら言う。
新兵の中には青ざめている者も居るだろう。
仮にも将軍であり、少女がそれを分かっているのかハラハラして見ており。
■アマンダ > 「そんなに良いものでもないよ。 お話に出てくるようなご利益は何もないし。」
治療を終え、足を動かしながらクスっと笑う。
もう片方は魔族の血が流れているが、それは口には出さなかった。
「ならこの軍は安泰だね。 君よりも強い人がいるのなら魔族が相手でもどうにかなるんじゃない?」
笑いながら話している男を楽しそうに見上げている。
だが、周囲の兵士がざわついているのに気づき、少女は不思議そうに首を傾げる。
「今更だけどお名前を聴いていいかな。 僕はアマンダ。」
■オーギュスト > 「そうか? まぁだが、それならその力は、お前自身で手に入れた物なんだろうな」
本当の力は、生まれでは手に入らない。
それが男の矜持であり、他者にもそれを認める。
素直に尊敬するとしよう。
「あぁ、俺は第七師団長オーギュスト・ゴダンだ」
よろしくな、と悪戯っぽく笑い
■アマンダ > 「かもしれないけど、僕らはもともと魔法に長けた種族だからね。 努力の量で言ったら君には及ばないと思うよ。」
足も落ち着き、立ち上がる。
目の前の男は自分よりもはるかに多くの視線を潜り抜けたのだろう。
それが分かるだけに褒められると少女は照れている。
「団長さんなんだ。 気楽に話しかけたら不味かったのかな?」
少女も笑みを返しつつ、今更ながらなことを口にする。
■オーギュスト > 「努力に質も量も関係ねぇよ。生き残るだけの意思と運を持った奴だけが生き残る」
再び軍服の上着を羽織り、大剣を手に取る。
そろそろ時間だ、執務に戻らなければ。
「構いやしねぇよ。戦場で生き残るのに、階級なんざ役にたたん」
少女に背を向け、男は言う。
「もし仕官する気になったら、第七師団の兵舎まで来いよ。
お前なら大歓迎だ」
半ば本気で言いながら、オーギュストは練兵場を後にした。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」からオーギュストさんが去りました。
■アマンダ > 「そうかな、君に言われるとそう思えてくるね。」
新兵に預けていた剣を返してもらい、己も腰に差す。
「今度は一緒に戦場で立てるといいね。」
大きな背中に対し少女も声をかける。
「ありがとう。 冒険者を廃業になったらお願いするね。」
オーギュストが去った後、少女も練兵場を後にする。
ご案内:「王都マグメール/練兵場」からアマンダさんが去りました。