2016/01/26 のログ
ご案内:「王城内の一室」にツァリエルさんが現れました。
ツァリエル > 今日も今日とて行儀作法やら王族に必要な勉学やら諸侯に対するご挨拶に引き回されたりなどで
随分とくたくたにされたツァリエルはようやくあてがわれた部屋のベッドでぱったりとうつ伏せに突っ伏していた。

ヴァイルと共にこの国を手中に収めるという共犯関係を築いてから数日前にこのような内容の書簡が届いた。

『さて、手を組む運びとなったわけだが、特にきさまに指図することは今はない。
 強いて言うなら、今は大人しく作法を学んでおくがいい。
 周囲の連中には使えそうな駒だと思わせておけ。ただしナメられるな。

 また、可能なら、信頼できそうなものを見つけ宮廷内に仲間を作れ。
 といってもきさまに腹芸は期待しない。
 素直であればよい。

 何か変更があれば追って連絡する。
 忘れるな、きさまの願いはおれの野心と常にともにある。


 なお、この書翰は自動的に消え去る。』

ナメられてはならない、さりとて素直であれ。味方を作れ。
なかなか難しい課題を押し付けられたが今はそれをこなすどころか毎日が目まぐるしく終わるので余裕がない。

ツァリエル > そういえば王城内でのツァリエルの噂は王子にしてはひ弱でどちらかといえば姫だろうとか
とりたてた貴族の稚児なのではないかといった悪評がところ構わず流れている。

恥ずかしいやら悔しいやらの思いはあれどそれを今の自分が反論できるはずもなく
そういった醜聞にいちいち取り合えう必要もないと周囲の大人たちは言って聞かせるのだ。

ツァリエルが王城に上がりたての頃はまさか滅びたカルネテルの血筋が出てくるわけがないと誰もが信じるわけもなかった。
それこそどこぞの誰とも知れぬ馬の骨を適当に飾り立てて連れてきただけではと。

だが王家に伝わる魔法の試金石と呼ばれる宝石がツァリエルの血を確かなものと知らしめることになった。

ツァリエル > 魔法具の一つであるその宝石は金のふちどりに手のひらほどの大きさの業かな青色の宝石をあしらった装身具である。
そこに王家の血を引くものの血を一滴垂らすことで宝石は赤く光り輝きそのものが正当なカルネテルの血筋であることを証明するのだそうだ。

多くの諸侯や王族、選帝侯が集まる議会の場で当然ツァリエルも試金石に自らの血をたらし、多くの人の目の前で自らの血筋の正しさを証明させられた。
これには周囲の大人たちが驚きどよめいた。中には王位を争奪する相手がまた増えたことによる憤りの溜息だったかもしれないが。

こうして晴れて王族の一人として城に置かれることになったのは良いのだがおかげで何かと不自由ではあるし
権謀術数渦巻くこの貴族の城は華やかなイメージとは裏腹にひどく薄暗い場所だった。

先日も一人ツァリエルの料理の毒見役が毒にやられて半身が麻痺した。
またある日には、ツァリエルを狙った刺客らしき相手と護衛の兵士が争ったとの報告もあった。

ツァリエル > 自分がここにいることで無用な諍いが増えることは軟弱なツァリエルの心をひどく痛めつけたが
それでもだからといってこの場から退くことは出来なかった。

自分を疎んじている人がいるのは仕方ない。
だが、顔も覚えていない両親を亡き者にした相手のことをわずかでもいいから知りたいという気持ちがないわけではなかった。
果たしてその報復すべき相手に巡り合えたとして、自分が一体どうするのかはまだわからないままだが……。

ツァリエル > いつまでも部屋でぐだぐだとしていても仕方ない。ベッドから身を起こすと部屋を後にする。
いまだに複雑で大きな王城では迷うこともあるがとりあえずわかりやすい場所にある庭園へと向かう。

良く手入れされたそこには小さいながらも華やかな花々が季節ごとにきちんと植えられていてツァリエルの目と心を和ませるのだった。

煉瓦で花壇を作り、大理石の彫刻が持つ瓶から噴水の水がこんこんと流れてゆく。
大きな木々には冬だというのに葉っぱが生い茂る樹木が並び、小鳥がかすかにさえずっている。
一人になりたいとき、ツァリエルはよくここに赴いた。幸い今もあまり人気はないようだった。

ツァリエル > かさかさと植え込みの陰や木々の枝を揺らすものがあった。
丸々と太ったリスたちだ。樹から落ちたどんぐりの拾い損ねたものを餌としてあさりに来ることがあるのだ。

ツァリエルは上等な衣服のポケットからナプキンに包んだ丸パンを取り出す。
修道院暮らしではめったに食べることが出来ない白パンだ。
それを小さくちぎると動物たちの傍に撒いてやる。

パンくずを目当てに小鳥たちが芝生へと降り、リスが大きめのものを狙って近寄ってくる。
その様子を微笑ましく眺めながらしばらくの間小動物たちに自分のパンを分け与えていた。

ツァリエル > やがて手持ちのパンがすっかり動物たちの胃袋に収まってしまうと
ツァリエルは両手を払い動物たちが最後の一匹になるまで見送った。

宮中でまだ人間の味方は出来てはいないが、まずはじめの一歩として小動物たちがツァリエルの心の味方になってくれてはいる。
ヴァイルに言えば馬鹿な奴めと半眼でみられるだろうが、素直であればよいと言ったのは彼であるしその結果がこれなのだから仕方ないだろう。

だが人間よりかはずっと心強い味方であることは確かだ。
そうしてしばらく庭園で過ごした後、踵を返して部屋へと戻った。

ご案内:「王城内の一室」からツァリエルさんが去りました。