2015/11/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」にカレンさんが現れました。
カレン > (ティルヒアによる内乱。
 その話題で大会議室はもちきりであった。
 もっとも、全ての師団長や王族や貴族が参加しているというわけではない。
 己の利益のために、あるいは損を被らないために、利権に飢えた者たちが紛糾しているのだ。
 カレンはクラフト家の代表として、そして100人の部下を束ねる魔法騎士として呼ばれた。
 カレンの部隊をどこに組み込むか。
 それはカレンの意志とは全く関係ない所で動いていた。
 数ある話題の一つにもならなくなったのでこうして外に出て新鮮な空気を吸っている)

「敵」はもう仕掛けてきているというのに、悠長なことだな。

(噴水の近くのベンチに座り、吹き上がる水を眺めている。
 秋の花々ももう枯れ始めている。
 冬が近い)

カレン > (カレンもすべての情報を掴んでいるとはいえない。
 デマや誤報ならいくつも入ってくるが、信頼できる情報の入手は難しい。
 王城で会議をしていたカレンでさえそうなのだから、知らない国民がいても全く不思議ではない。
 できれは知らずに済んでいればよかったのだが…
 あいにく、内乱は長引きそうとの意見はどこからも聞かれた)

カレン > マイペースを気取っていたのが裏目に出たか。

(苦笑する。
 特に親しい軍団長はおらず、貴族にしても同じ。
 深い交流を怠ってきたツケで、なかなか信頼できる情報を得られない。
 このままでは何もわからず戦場に放り込まれる可能性だってある)

いつものことかな…

(噴水から渡り廊下に視線を移す。
 使用人たちや商人たち、あるいは様々な人間たちが忙しそうに動いている。
 彼ら彼女らはこのことを知っているのだろうか。
 知らないのだろうか。
 それさえもわからない)

カレン > (気になるのは、魔族の動向である。
 どうやらティルヒア側に魔物がついたとの噂があった。
 逆の話は聞かないので、いかにも真実らしいが)

どうかな…

(この王城にも魔物が出た。
 襲われたのは自分である。
 ここで魔族が王国側につくとは思えない。
 直感でその一部は真実だと感じた)

ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 「……ふぁぁ」

大会議室の最上席近くを提供されながら。
この男、面倒になって逃げ出してきた口である。
情報将校が何人か残っているが「適当にはぐらかせ」と言ってあるから大丈夫だろう。

「――ったく」

無駄の極地である会議だが、参加しない事には軍を動かせないのだから仕方ない。
ナール大橋会戦の結果を報告し師団は補給中。こちらも補給といこう。

中庭の木陰にどっかり座り込むと、懐からスキットルを取り出す。
遠慮なく口にして、美味そうに溜息を一つ。まったく、酒でも飲まなければやってられない。

カレン > (ぼうっと情報を整理していると、近づく人の気配に気がつく。
 それが最前線で戦ったという人物だとわかればベンチから立ち上がって、騎士団式の敬礼をする)

オーギュスト閣下、お疲れ様です。
この度は多大な戦果を上げられたとのこと。
おめでとうございます。
そして…お疲れ様でした。

(目の前に座り込んでいるこの男の情報こそ、確実に信用できる。
 この先どうなるかはわからなくても、挨拶をして損になることはない)

オーギュスト > 「あ?」

サボってたのを見られた、と思ったら挨拶されていた。
さて、どうしたものか。
――まぁ、うちの副官のようにお堅いわけではなさそうだ。ついでに美人だ。

「おう、ありがとよ。お前さんもやるか?」

悪びれなくスキットルを掲げながら、もう一口ぐびり。
王城で酒を飲むなど不敬罪も良いところなのだが。

カレン > (噂に聞く通りの豪快な武人であるようだ。
 笑みを浮かべそうになるのを噛み殺しながら)

いえ、私は結構です。
呑めるほど戦果を上げていませんので。

(この城に飛び交う皮肉ではなく、心底そう思っている。
 目を見れば簡単にわかることだろう)

…つまり、いずれ閣下のように祝杯を上げたいとも思っております。

(そこで微笑む)

名乗り遅れましたが私はカレン・クラフト。
百人の騎士を束ねる男爵家の娘であります。

(貴族としても騎士としても下っ端もいいところなので、自己紹介しておく)

オーギュスト > 「――へぇ」

目を細め女騎士を見る。
なるほど、戦場にまだ夢を見ているタイプか……

しかし、百人の騎士を束ねるとは大層である。
士官教育を受けているのかどうか……

「まぁ、適当にやるこった。
無理して戦場に出ても死ぬのがオチだからな」

これでもこの男、やんわりと止めているのではある。
美女には甘いオーギュストである。

カレン > (相手にとって自分はどう見えているのだろうか。
 貴族の小娘がお遊びで戦争していると見えているのであろう。
 正解である。
 男が見てきた地獄に比べれば、カレンが知っている戦争など貧民地区の諍いごとと大差ない)

閣下をしてそう仰られるということは、相当の激しさだったのでしょうね。
ですが、希望しなくても駆り出されれば行かねばならぬ立場です。
せめて死なないよう努力します。

(体験から物を語る人間は信用する。
 助言をしてくれるとなれば尚更である。
 カレンは表情を隠すのが得意ではない。
 ある程度顔を見れば何を考えているのか読み取れるだろう)

オーギュスト > 「――女子供まで借り出されるねぇ」

不機嫌そうにオーギュストは立ち上がる。
この男、無理に戦争に狩り出す徴兵制が大嫌いである。
何故なら、剣を持った事もない新兵を押し付けられるのはいつも前線だからだ。
なので、彼は戦場に来た貴族のボンボンやら食い詰め農民やらを、理由を作っては後方に追い返していた。
そういう事をするから貴族に嫌われるというのを分かっていながら。

「――やめとけやめとけ。
お前は戦場にむかねぇよ。素直な奴から死んでいく場所だからな」

そういえば、この言葉、いつぞやサロメに言ったのだったか

カレン > 魔法や剣の腕があれば、性別年齢は関係ないかと。

(立ち上がる男に合わせて視線を上げる。
 その眼差しは素直である)

閣下の下についたのならば通る道理も、
捻じ曲げられれば通らないのがこの国です。
…今のは失言でしたか。

(至極真面目な顔でそういうのだった。
 思えば兵士らしい兵士と面と向かって話をするのは人生で初めてかも知れない。
 それゆえに、男の「やめておけ」という言葉に重みを感じていた)

オーギュスト > 「魔法や剣の腕じゃねぇよ。
戦場じゃぁな、自分を騙せない奴から死んでいくんだ」

戦場の合理性とこの世の不合理。
あまりにも合理的に人の死ぬ場所に、不合理に放り込まれる人間を見続けるのが戦場だ。
それを直視できない、理解しようとする人間から死んでいく。
オーギュストのようにそれをすら愉しめなくとも、折り合いをつけられない人間は、皆戦場という闇に呑まれ死んでいく。

「お前は自分を割り切ってる。
人間はいつ死んでもおかしくない、自分にはやるべき事がある。
そんな風に自分を割り切った奴はな、例外なく死ぬ」

荒れ狂う血の雨の中で。
泥沼のような殺し合いの中で。
死を意識すれば、すぐに死に飲み込まれる。

「だからな、無理に戦場に来るな。
とっとと家を捨てるなりなんなりして、平和な場所で生きろ」

カレン > 自分を騙せない奴…?

(小首を傾げる。
 聞いたことのない概念であった。
 続く言葉に、痛いところを突かれる。
 例外なく死ぬとまで言われては返す言葉もなかった)

…わかりました。
家を捨ててはそれこそ生きてはいけないので、それはできませんが…
前線に出されないよう、尽力します。

(力を尽くすと言っても、命令に背くだとか、嘘の報告をするということだけ。
 しかしそれはカレンにとってはなかなか難しいことなのだが。
 オーギュストにそこまで言われては、決心せざるを得なかった)

オーギュスト > 「――お前、名前は?」

そういえば聞いていなかった。
百人長までなるという事は、それなりの家柄なのだろうが。

「どうしても前線に来なきゃならんのなら、俺のところに来い。
便宜を図ってやるなり、鍛えてやるなりしてやる」

こういう所でオーギュストはお節介である。
美女限定だが。

カレン > カレン・クラフト。男爵家の娘であります。

(男爵で百人というのが多いのか少ないのかは、王族や騎士団の力関係によるだろう。
 ともかく、その魔法の素質と剣の腕前と権力で持って任された百人であった。
 決して統率力や人望や経験を買われたわけではない)

有り難きお言葉に感謝いたします。
そうならないよう、極力影を潜めております。

(深々と頭を下げる。
 戦場に対する恐怖と、頼れる存在という安心感を手に入れ、
 複雑な気持ちであった)

オーギュスト > 遠くで情報将校が呼ぶのが聞こえる。
どうやら会議を抜け出してたのがバレたらしい。
スキットルを懐に仕舞い、会議室へと歩き出す。

「カレン。戦場に出る事になったら、一つだけ覚えておけ」

ぽんとその細すぎる肩に手を置く。
細い。百人の命を背負うには、まだ細すぎる。

「生きろ。理由を考えるな。どんな屈辱や罪悪感に苛まれても死ぬな。
己の生まれた意味も、何を為すかも、何の為に死ぬかも考えるな。
何も考えず、生きる為にあがけ」

それだけ言って、彼は中庭を後にして会議室へと戻った。

ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」からオーギュストさんが去りました。
カレン > (肩に置かれた手は、服を通してもわかる。
 力強い。ただひたすらに強い。
 それは、イコールにして自分の弱さでもあった)

……。
心に刻みます。

(まさか、王のために、王国のために死ぬことが誉れの騎士団で。
 猛将と名を馳せる騎士から。
 「足掻いても生きろ」などという言葉を貰うとは思ってもいなかった。
 姿が見えなくなるまで敬礼をする。
 そして、戦場に出る前に話せてよかったと心から思う。
 きっと、おそらく、いや、間違いなく例外なく、自分は死んでいただろうから)

…私も戻るか。

(頬に伝う液体で、自分が額に汗をかいていたのに気がついた。
 この季節に気温のせいではあるまい。
 知らない価値観に触れて、緊張していたのだ。
 軽く伸びをして身体をほぐすと、自分も会議室に戻っていく)

ご案内:「王都マグメール 王城 中庭」からカレンさんが去りました。