2015/10/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城庭園」にアマレットさんが現れました。
アマレット > (王城警備の任務までは、大いに時間的余裕があった。
 城内にまで届いた花の香りに惹かれて、アマレットは広い歩幅でゆるりと庭園へと降り立った。
 庭師の仕事振りは見事なもので、普段植物を愛でるような繊細な感性を持ち合わせていないはずの自身の心を随分と弾ませた。)

……おや、もうこの花が満開になるような時期だったか。

(僅かに驚いたような口調で零した言葉の向かう先には、白やピンクの美しい花が咲き誇っている。
 アマレットを誘った香りの元は、どうやらその花のようだった。
 薄く瞼を伏せて、すん、と小さく鼻を鳴らしてその香りを胸いっぱいに吸い込む。
 甘い、甘い香りに包まれて、唇は緩く解けて微笑みを形作る。)

アマレット > (いい香りだ、と小さく呟いて瞼をゆるりと上げる。
 丁度、背後から女性たちのさざめくような笑い声が聞こえてきた。
 貴婦人方も自身と同様に、この香りに誘われたのだろう。
 騎士は無言でその花から離れると、片手を胸に当て頭を垂れて道を譲る。
 目前にやってくる華やかなドレスを纏った女性たち。
 「貴方も花を愛でていたの?」と気まぐれに問われ、顔を上げる。)

ええ。おかげで美しい花々を目にする幸運を得られました。

(そう言うと貴婦人方へ視線を向けて、表情を緩める。
 満更でもないように女性たちは笑い返し、ドレスの裾を翻して立ち去って行く。
 その背に頭を垂れて見送り、また場が静かになれば、小さく力を抜くように吐息を零した。)

アマレット > (肩の力を抜いて顔を上げると、遠ざかっていく女性たちの背中を視界に入れる。
 花のように色鮮やかでふっくらと広がったドレス姿は、間違いなく美しい。
 それは本心だ。けれど同時に思ってしまう。)

……綺麗な花には刺がある、のかな。

(何しろこの政情不安定な魔窟の如き城内に図太く居座る百戦錬磨の貴婦人方だ。
 没落寸前の貧乏貴族の、一応名目上令嬢である自身を一瞬省みて、すぐに首を横に振る。
 到底同じ生き物であるとは思えない。)

まあ、ああなりたいとも思わないしな。

(苦笑を浮かべ、なぁ、と同意を求めるように花へ声を掛けて。)

ご案内:「王都マグメール 王城庭園」にワルセイ・イダーヤさんが現れました。
ワルセイ・イダーヤ > (ザク……ザク……男の固い靴が、王城庭園の草を踏み、歩く。男は、秘密の通路を通って、この王城内の庭園に来ていた。久しく見ていない、王城内の花を見るために)

…………ふぅむ。

(男は、庭園の通路を歩く。かつて、妹が元気だったころ、王城内に遊びに来てともに駆け回ったかすんだ思い出を思いだし…ふっと笑って)

……再び、あの子と花を見られる日が来るのであろうか…

(恐らく、無理であろうなぁと半分あきらめつつも、決して可能性を捨てきれないのがこの男で。ふっと、木を見上げれば美しい花々。確か、妹が好きだったなぁ…などと感傷に浸る。すると、男性…?の騎士が居るのを見付けて、彼?もその花を見ていて)

……美しく、可憐よなぁ。そなたも、そう思うであろう?

(そう声をかけて。男の姿はとてつもなく怪しいが、古い貴族の姿だから、切られはすまいと高をくくって…まあ、襲われたら襲われたらでやり様もあるという打算もあり…)

アマレット > (草を踏む微かな音にまでは気付かずにいたアマレットは、男に声をかけられて肩をびくりと震わせ。
 振り向いて初めて、その姿を視界に入れた。)

えっ? あ、ええ……そうですね。

(戸惑いながら返答を返し、それから改めて男の様子を伺う。
 古臭くはあるが貴族の装いと堂々とした振る舞いに、胡散臭さは感じながらも、未熟な騎士は腰の剣へ手を伸ばしたものの抜剣せずに。)

しかし、この花は棘を持っています。可憐と言うには攻撃的では?

(などと肩を竦めて見せる。)

ワルセイ・イダーヤ > (男は、騎士のこの花に棘があるという発言を聞いて、ふぅむというふうに息を吐いて、次に少し笑んで)

……っふ、花の棘は、その植物の防衛本能が作りだしている…強い生き物に対しては無駄なあがきだというのにな。そう考えるとかわいいものでは無いかね?花の棘など、人間の女…特に、貴族連中の女たちの持つ、毒々しい毒の棘に比べれば…な。

(そう言って、そっと花を触ってやる。……そして、男は騎士の声色や、漂う香りから、もしや…と思い。)

そなたも持っているであろう?棘くらい。例えば…男という棘を偽装し、女であるという騎士にとっての弱点のようなものを隠す…とかな。

(そう言いながら、少し挑戦する様にニヤリと笑って)

アマレット > (男の言葉は、強者の傲慢にも似た響きで。
 その通りだと思う反面、その言葉自体が毒のようで素直に頷きたくなくなる。)

……それではまるで、女性全てが刺を持っているかのようですね。

(花に触れる手を、見るともなしに見遣って。
 不意に向けられた挑戦的な言葉と笑みに、一足分、後ずさり剣の柄に手をかけ。
 そして、強ばったその手をそっと下ろす。
 こんな所で、こんな事で、争うつもりはないのだ。)

……棘、のつもりはありませんが……。
よく、お分かりになりましたね。
初めてお会いした方に看破されることは滅多にないのですが。

(挑発されるつもりはない、と言いたげに手袋に包まれた両手のひらを男の方へ向けて。)

ワルセイ・イダーヤ > ……っふ。女に限らず、人間誰しも、棘をもっているのだ。棘を持っていなければ、生きられない。特に、今という時代に生きる女は…な。

(そう言いながら男は騎士のほうを向いて)

そなたも女ならわかるはずだ。女と言うのは大きな弱点。野盗にに襲われ、賊に襲われ、浮浪者に襲われ、貴族に襲われ……今の世は女には敵が多すぎるのだよ。だから、女は棘を持つのだ…まあ、その棘が機能するかしないかは知らんがね。

(そう言いながら。騎士が剣から手を放し、挑発に乗る気はないと示せば)

……ふむ、そなたは理性的だな。この園を血で汚さなくてよかったよ……なぁに、こう見えて、そなたより長く生きている故、女の香りくらい嗅ぎ分けられるさ。

(そう笑んで言って)

……だが、そなたは立派よなぁ。女の身でありながら、男として、騎士という誰かの棘とあらんとする。感心、感心。

(その言葉は嫌味っぽく聞こえるかもしれないが、男は本心から感心していて)

……俺の妹も、そなたのように騎士を目指していたなぁ…男装騎士ではないがね。

(そう花を見上げ、懐かしげにつぶやいて)

アマレット > (自身よりは年嵩であろう男の、説得力のある言葉を聞けば、こくりと小さく首肯して。)

確かに。今という時代は、か弱い女性にとかく厳しいですからね。

(それが我が身にも当て嵌るとは思わぬまま、認め、頷いた。
 向けた手のひらをゆるりと下ろしながら聞いた男の口ぶりは、妙に年寄りめいていて。
 くす、と笑み零すと、自身の腕辺りの匂いを嗅いでみせ。)

そんなに匂いますか?

(と冗談ぽく返して。
 男の口から自身へ賞賛めいた言葉が向けられれば、僅かばかり嬉しそうに微笑みながらも眉尻下げて。)

ありがとう、ございます。誰かの棘足りうるほどの腕ではありませんが。
……目指していた、ですか。諦めてしまわれたのですか?

(過去形で語られた妹御の夢の話に触れて花を見上げた男の横顔を、目で追う。)
 

ワルセイ・イダーヤ > ……なぁに、あの子は諦めたのではない、あきらめざるを得なかったのだ…

(そう呟き、男は目を閉じ、ふぅと息を吐く。そして、棘のある花を再び触れて)

かなり前のことだ。俺の妹はとある大病を患ってな、足の先端から、段々と感覚がなくなっていき、最終的には呼吸できなくなるという…なぶり殺しのような病に…な。

(その病気を語る男の声色は冷たく、手は、花の棘部分を握りしめ、血がたらりと流れて。)

……だから、な。そなたのような女騎士を見ると、どうしても応援したくなるのよ。俺の妹が果たせなくなった、夢ゆえに。

(そう言って男は花から手を放して)

……そう言えば、名を聞いていなかったな。俺はワルセイという。そなたは?

(そう名を聞いて)

アマレット > (男が呟き、重く吐かれた息に、触れてはいけない傷口に触れてしまったような居心地の悪さを感じる。
 そうして、冷えた声音で病気について語られれば痛ましそうに眉根を顰めて、目を伏せ。)

……それは……。

(それ以上の言葉が出なかった。安易に辛かったろう、などと言えなかった。
 そうしてふ、と視線を上げると男の手が花の棘に傷ついたのが見え。
 慌てて胸元のポケットからハンカチーフを取り、差し出して。)

そうでしたか。……ありがとうございます。
……どうか血を拭ってください。

(受け取ってもらえればよし。そうでなければ自ら近付いて、その手を拭おうとしつつ。
 問いに、薄く笑みながら応える。)

私は、アマレットと申します。

ワルセイ・イダーヤ > 男は、傷ついた手に対する心遣いにふっと笑みをこぼし)

あぁ、感謝する。

(男は近寄ってくる騎士にこちらからも近づいて、軽く掌の血を拭って。そして、騎士にそのハンカチーフを返却……する動作のまま、ふわり…と騎士を抱き締めて)

……いきなりの抱擁を許せよ。ただ……そなたのことが何故か…愛おしくなったが故。

(男自身も、なぜこの騎士を抱擁したくなる衝動にかられたかはわからなかった。だが、その抱擁は柔らかく。騎士がもがけばすぐに外れるであろう)

……すまんな。もしかしたら、そなたの騎士姿に、妹の未来の姿を重ねてしまったのやも知れぬ。もしかしたらの、未来の姿を。

(もしかしたら、その言葉は、騎士にとって侮辱にあたるかもしれない。そう思いつつも、呟かずにはいられなかった)

アマレット > (男の浮かべた笑みに、困ったように眉尻を下げて。
 いえ、と小さく返しながら血を拭ったハンカチーフを受け取ろうとし。
 女にしては長身の自分を包む腕に、しばし思考が止まった。)

え、え……え? あの、ワルセイ様……

(何を、とも何故とも問えず。ただ柔らかな抱擁に戸惑って。
 抗うことを忘れていた。)

妹御の……。私などで慰めになるでしょうか。

(妹を重ねたと言われれば、どこか自信なさげに言いながら。
 恐る恐る、長身の男の背に両手を伸ばし。
 宥めるようにそっと撫でる。
 寂しげな彼の心の慰めに少しでもなればと、そう思って。)

ワルセイ・イダーヤ > ……あぁ。そなたの心音、心、温かさ……全てが俺の慰めとなる。

(そう男は優し気に呟き、抱擁を少し強めただろうか。甘い香り漂う花の下、お互いの心音や息の音だけが聞こえる空間がしばらく続いて……)

……ありがとう。だが、ずっとこうしていたいと思うのは罪だろうからな。

(そう呟き、男は騎士を抱擁から解いてやって)

…このまま抱き締めていると、そなたを穢したいという男としての肉欲がわいてくる故…ッツ!

(すると男は、再び騎士を、今度は強く抱き、木の影に隠れる……近くの道を、貴族の女たちが歩いてきたがゆえに)

…すまぬな。そなたも、こんな怪しい男とあっていたなどという醜聞は嫌であろう?

(そう言いながら、お互いの体はより強く密着して…緊張からお互いの体温、香りがより強まり…もしかしたら、騎士の体に、男の劣情の証が当たるかもしれない…)

アマレット > (優しげな言葉と、少し強まる抱擁に、アマレットは安堵する。
 この寂しげな男の表情を、束の間であっても緩めることができたかと。
 しかし、男は腕を解いた。
 解放されれば、近すぎた距離に戸惑いを持ってしまい、一歩後ずさり。)

罪、ですか? ……え。欲とは……。わっ

(言葉の意味を訪ねようとした。途端、強く抱かれて木の影に入った。
 さざめくような女性たちの声が聞こえてくる。)

あ……いえ、私は別段構わないのです、が。……その。

(醜聞などと言われてもまだ、自身の性別を自覚しない鈍さであった、が。
 家族や友人、仲間以外の人物とは初めての近距離に、僅かに身動ぐ。
 ごく一部高い温度と硬さを感じ、花の香りに紛れて鼻腔に届く体臭に。
 今頃になって異性を感じてしまい、小声で、困ったように囁いた。)

ワルセイ様、あの……その、困り、ます。

(何がどう困るのか、説明を求められてもきっと答えられないだろう。
 まだ男を知らない身体をもぞりと心許なく微かに揺らし、離れられないかと距離を探る。)

ワルセイ・イダーヤ > (男は、ギュっと騎士の体を抱きしめ、女貴族の声が遠のくのを待つ……花の香りに紛れて、騎士の女としての香りを感じてしまい、また、自信の劣情の証が騎士に当たっているのにも、少しまずいなと思っていて。だが、この騎士の経歴に傷を付けるのは本意ではない…そして、貴族たちが離れれば)

……っふぅ…すまんな。アマレット。すぐに……

(そう息を吐いて、騎士を解放しようとして…男の中の、悪魔が囁いて…)

……

(男の抱き締めている騎士を見る目が、女を見る目に変わって。だんだんと、顔と顔の距離が近くなっていって…そして、女騎士に再び、妹が重なって)

……っく、何をしているのだ。俺は…

(あと一歩で、妹の目指す騎士を汚すところであった。男は、騎士から離れて)

……すまなかった。アマレット。もう少しでそなたを穢すところであった。深く、謝罪しよう。

(そう言って、頭を下げた。)

アマレット > (貴婦人方が近づき、遠ざかっていくまではさして長い時間ではなかっただろう。
 けれどアマレットにとっては、短くない時間に思えて。
 普段は意識もしないけれど、そうと気にすれば男らしい腕に身を固くしていた。)

あ……いえ。

(すぐに、そう言った男との距離が、じわ、と近づき。
 僅かばかりの不安を視線に滲ませて、男の動向を伺っていた。
 あと少し。そんな距離から男が離れていく。)

けが……っ い、いえ。私などにそのような。
頭を上げてください。何事もなかったのですから、どうかお気になさらずに。

(これまでついぞ向けられたことのなかったモノの片鱗に触れて、緊張と興味に心音が跳ねたのは事実。
 けれど、その続きにまで思い至るものではなく。
 男の謝罪を受け入れられず、むしろ必死でとりなして。)

ワルセイ・イダーヤ > ……そうか、許して、くれるか。

(男は、少しほっとした様子で、頭を上げる。)

……礼を言おう。そなたは。俺の心を癒してくれた。

(そう言って男は。少しづつ、騎士との距離を開けていく…先ほど女性貴族がきたように、そろそろ、貴族たちがこの場所に集まってくることだろう。ここらへんが潮時か)

ではな、アマレット。また会うかどうかはわからぬが…まあ、世間は狭いのでな。もし会ったら、その時も元気な顔を見せてくれよ。

(そう男は言って、庭園の奥へと消えていく。そして隠し通路を通って、王城を後にした。城で出会った、女騎士の未来に幸あることを願って…)

アマレット > (男が頭を上げてくれれば、アマレットもまた安堵したように表情を緩ませて。)

私などで慰めになったのなら何よりです。

(少しずつ、距離は開いていく。二人の間に花の香りの風が流れる。
 まるで別れを惜しむような空気が、幾許か漂うも、男の言葉に騎士は頷いて。)

はい、また……お会いできたら、お話を致しましょう。
もちろんワルセイ様さえよければ、ですが。ごきげんよう。

(別れの言葉はすらすらと紡がれて。
 去って行く背中をしばし見送れば、自身も直に警備の任務に向かわなければならず。
 踵を返し、そして一度だけ花を見上げた。あの寂しそうな男が、どうか悲しい顔をせずにいられるように、祈って。
 騎士が立ち去った後には、甘い花の香りだけがその場の出来事を偲ばせるのであった。)

ご案内:「王都マグメール 王城庭園」からワルセイ・イダーヤさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城庭園」からアマレットさんが去りました。