2023/05/06 のログ
■ホアジャオ > 満月に少し足りない月が夜空に輝くころ
常ならば灯りの無い筈の修練場の中は今宵煌々と明るく、かつ人で賑わって居た。
集まっているのは兵士だけではなく、王城を出入する貴族などもちらほらいるようだった。
その群衆といってもいい人々の中央、修練場の中ほどには仁王立ちする女と、その前には今しも担架で運ばれていく男。
残った女は勝ち誇ったような物足りないような表情でフンと息を吐いていると、その肩を後ろから引くものがいて引っ張られていく。
ひとびとのざわめきの中、再び中央に戻ってくる女の表情は明らかにむっつりと不機嫌そうだった。
将軍同士の手駒の力試しで、団体戦で勝ち負けを競おうという余興。
先鋒、次鋒、中堅、副将、主将を揃えて、主将まで打ち取った方が勝ち。
武器は扱ってもいいが、魔法は禁止。気絶または降参したら負け。絶命させても負け。
各々主将を将軍として、腕のいい近習で駒をそろえていたのだが…
(――――主将の前に負ければいいって、言ってたクセに…)
女はまだ先鋒。
対して先ほど運ばれて行ったのは中堅。
将軍同士の対決があれば盛り上がるからと言われていたので、主将のまえ、何だったら主将で負ければ良いかと思っていたのに
どうやら主将たる将軍の見せどころのために、もうちょっと早く退場しろということらしい。
こう言った時に賭けをしようと考える輩がいるのは下々とおなじ。
騒めく群衆が大小さまざまな声で囁き合うなか、女は不機嫌そうなままで柔軟運動を始めた。息もちっとも上がってないし、露出した肌に打撲の跡もない。
(――――次ので負ける、か なァ…)
次の相手が進み出るのを、じろりと睨むようにして待つ。
多少怒られるかもしれないが、副将で負けたっていい筈である。と言うか多分、次のやつが面白そうな奴であれば、女は言われた事を忘れ(たふりをし)て喧嘩に勤しむだろう。
■ホアジャオ > 相手方も暫く紛糾していたようで、女の次の相手が出てきたのは、準備運動がすっかり終わってからだった。
(――――啧啧(うーん))
みかけは、パワータイプ。
体格は女の1.5倍くらいだろう。
細い目で相手の身ごなしを眺めていると、やがて長い長い鼻息が漏れる。
果たして上手な負け振りを披露できたか
それとも『ついうっかり』叩きのめしてしまうか、ほどほどにやり合うか
夜はまだ始まったばかり。貴族たちの余興もまだ始まったばかり―――
ご案内:「王都マグメール 王城 修練場」からホアジャオさんが去りました。