2023/03/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にジョゼフさんが現れました。
■ジョゼフ > 「姫様、お待たせいたしました。 御茶を、―――――…」
仕える主であり、異父妹でもある姫の居室へ、半時ぶりに入室し、
戸口から奥へ、彼女が怠惰な午睡を楽しんでいたソファの傍へ向かいかけて、
其処に誰の姿も無いことに気づき、黒靴の足を止める。
「姫様、……アレクサンドラ様?」
訝しげに眉を寄せ、彼女の名を呼ばわりながら、
取り敢えずは手にしてきた銀のトレイを、ソファ前のローテーブルへ置き。
豪奢な調度に飾られてはいるけれど、決して見通しの悪くない室内を、
彼女の姿を探してひとわたり眺め回した。
そよ、と戦ぐ若草色のカーテン。
テラスへ続く窓が開いているのだと、遅ればせながら気づいた。
曇りかけた表情を取り繕い、微笑を白い顔に張りつかせて、
やや大股に、其方へ歩み寄り―――――、
「姫様、此方に居られ、 た、―――――――… ?」
カーテンを掻き分け、開いた窓から一歩踏み出したけれど。
石造りのテラスにも、彼女の姿は見当たらない。
今度こそ、拭い切れない困惑が白皙を深く曇らせた。
ご案内:「王都マグメール 王城」にヒューゴさんが現れました。
■ヒューゴ > コン、コン─
居室の扉をノックする音が主が不在の不安に満ちる居室に響く。
祖の硬い音は窓からテラスに出た相手の耳にも聞こえるだろう。
そのノックの音は相手に来客の存在を伝えるために時を少し置いて再び固い扉を叩く音が響く。
それは朗報か凶報か─。
■ジョゼフ > 硬く鋭い音がひとつ、ふたつ、テラスに佇む女の耳許に届く。
反射的に双眸を瞬かせながら振り返り、翻るカーテンを再び脇へ寄せ、
室内へ視線を向けて―――――
「姫さ、――――――――…」
はじめは、彼女が其の辺りへ隠れていたのだと、
まんまと騙された女を、呼び戻す為に何処かを叩いたのだと思った。
けれど、変わらず室内は無人の儘。
首を傾げて、眉宇に深く影を落として、
そうして、再度其の音を聞く。
扉が外から叩かれているのだと、遅ればせながら気づいた。
戸惑いはほんの一瞬、女は大股に部屋を横切り、
飛びつくようにして扉の前へ。
いきなり開ける不躾は犯さぬまでも、其処へ耳を押し当てんばかりにして、
「どな、――――― 何方、ですか?」
部屋の主たる、彼女であって欲しい。
そう願いながら、半ば以上、そうではないと予感しながら。
微かに震えを孕む声を、扉の向こうへ投げかけた。
■ヒューゴ > 待つこと少しの間。
男が手にした情報の一つ。
それをどのように扱うかは男次第。
分厚い扉故離れていれば中の事を知ることはできないが、それでも急ぐ様に鳴る足音が僅かに聞こえる。
主の不在に悩んでいるのであろう。
漸く聞こえる誰何の声には僅かな期待と不安が含まれている事が分かる。
「私は騎士の任を任されている、ヒューゴ・スタン・バルカスと申します。 お耳に入れたき事があります。」
扉越しのやり取り、伝わるのは男の声、そこには何の感情も無く冷たく、無機質なものであったため、その声色だけで朗報か、凶報かをそれで判断する事は出来ず不安に揺れる心にまた波を立てるのであろう。
そして、姫の情報等廊下で話すものでもなく…。
男から少し離れた場所に配下は佇み人払いと警戒に当たっている。
■ジョゼフ > 扉に触れた掌が、指先から冷えてゆくような心地がした。
向こうから声が聞こえてくる迄の間さえ、ひどく長く思えて。
果たして―――――聞こえてきたのは、女の不安を拭うものとは、とても言えず。
「――――――――……」
覚えの無い其の名に、僅かばかり、躊躇い。
けれど他に手立ても無く、そっと、扉を開く事になる。
片手でノブを握り、もう一方の手を扉に宛がう儘、微かな軋み音を連れて。
然程広くもなく空けた隙間から、外に立つ男を窺うように見遣り、
「――――― 御話というのは、此の部屋の主にでしょうか?
生憎、姫様は留守にしておられますので、……御言伝でしたら、私が承りますが」
名乗る事を忘れた、聊か不躾な問いではあるが。
女の目は素早く廊下の左右に走り、男の部下と思しき人影も認めている。
振り仰ぐ白皙がますます、色を失って蒼白くなり。
■ヒューゴ > 誰何に応えてからの少しの間。
扉を開けた相手が目にするのは鍛えられた体に騎士服を纏う男。
静かな牢かと室内に響く蝶番が軋む音、僅かに開く隙間からこちらを不安げにうかがう娘を静かに見下ろす。
僅かに見合えば男もちらりと周囲を眺めて自身の配下以外の存在が無ければ小さく頷く
「その言伝を伝える姫様についてでが…。
人が来ることは無い様に目はありますが、廊下でお伝えするような軽いものではありませんが、お家か、他の方にお話しをした方が良いでしょうか? 時は限られております故。」
男にとっては話を持っていくにしても今、目の前にいる相手である必要はない。
黙していれば無価値。
離す相手によっては貸や対価と変わる。
時間は有限であり、男が持つ情報が生む利息は非常に高い。
時が経てば経つほど姫の身に危険が及んでいく事が男の最後の一言で伝わるだろう。
■ジョゼフ > ―――――特に、不審を憶えるような風体の男ではない。
騎士と名乗った其の通り、身形はきちんとしているのだし、
離れたところに待機する部下たちも、崩れた風情ではない。
其れでも、普段の女であれば。
姫の居室に、彼女の許しも得ず、男を入れるなどという事は、
在り得なかったであろう、と思うのだが。
「姫様の、……… 其れは、一体、どういう、―――――……」
蒼い瞳が、不安に揺らぐ。
男が「姫」の顔形を知っていれば、其の瞳の色が、顔立ちが、
何処となく似ていることにも気付いたかも知れない。
けれど表情は、心の動きようは、まるで異なる。
躊躇い、俯き、細く呼気を逃がしてから。
開きかけた儘押さえていた扉から、そっと、白い手を離した。
「いえ、いいえ、………御話は、私が伺いましょう。
公爵様や母君を、煩わせるようなことかどうか、
まずは私に、判断させて下さいませ」
どうぞ―――――と、一言添えて。
女は騎士を部屋の中へ招じ入れ、自ら扉を閉ざそうとするだろう。
其の後の事は、――――――――――今は未だ、明かされぬ事と。
ご案内:「王都マグメール 王城」からジョゼフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からヒューゴさんが去りました。