2023/02/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にエヴィータさんが現れました。
エヴィータ >  
ばた―――…ん!

王城に相応しい上品さとは対極の、派手な音を響かせて。
テラスに続く観音開きの窓を大きく開け放ち、薄っすらと雪の積もる中へ、
ざくりと踵の高い軍靴の痕を刻みつけ。
肩を怒らせ憤然と、ざくざくそのまま進み出て、白く冷たい化粧を施された手摺を両手で引っ掴み、
ぐいと上体を乗り出すと、深く息を吸い込んで。

「いったいどこに行きやがった、あの、色ボケジジィ―――…!!」

銀白色に閉ざされた庭園に、小気味よく響き渡る己の罵声。
木霊する最後の一音までも聞いてから、ようやく、満足げに口許を弛ませて。

「―――― あぁ、すっきりした。
 ていうかアイツ、本当にどこ行きやがった?」

アイツ、とは己の、形式上は上官に当たる人物の事である。
彼に言い渡された仕事の、取り敢えずは報告を、と戻ってみたら、
夜会に出ていると言われ―――しかし広間には見当たらず、目撃証言によると、
たいそうご機嫌で酒を食らい、何処ぞの女と縺れ合うように、何処かへ消えた、というのだが。

「ずえったい今日中に、報告しに来い、とか言わなかったか、アイツ。
 ひとをこんな時間まで働かせて、この仕打ちってどうなの?」

意地でも見つけてやるべきか、そして邪魔してやるべきか。
それとも今夜はもう、己もとっとと帰ってしまうか。
思案のしどころだ、と空を振り仰ぎ、白い息を細く吐き出しながら、

「帰っちゃっても、構わない、とは思うんだけどな……
 ああでも、明日、昨日報告に来なかったな、とか、
 ごちゃごちゃ言われるのも嫌だな……」

黙って考える、という事が出来ないのか。
ぶつぶつぼそぼそ、独りごとが際限なく零れ落ちていた。

エヴィータ >  
――――― くしゅ、っ。

口許を押さえ、顔を顰めて、小さなくしゃみをひとつ。
心なしか、鼻の頭辺りを紅くしながら、もうひとつ息を吐いて。

「やぁめ、た。
 帰ろ帰ろ、馬鹿馬鹿しい……」

早く帰って何か温かいものを食べたい、お風呂にゆっくり浸かりたい。
何よりふかふかのベッドに飛び込んで、朝までぐっすり眠りたい。

冷え切った躰を己が腕で抱き締めるような格好で、
先刻開け放った窓から、屋内へと戻ってゆく。
数分の後には城門を潜り、我が家を目指して夜更けの街を抜ける、
軍装の女の姿がある筈―――――。

ご案内:「王都マグメール 王城」からエヴィータさんが去りました。