2023/01/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城/礼拝堂」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 王城内。夜毎何某かの催し物がなされている内廷とは違い、歩哨や、城で立ち働くものが時折通りかかる以外は静かな外廷の一角。
主教の祭祀場としていくつか設けられている礼拝堂のそのうちの一つ。
ゆらゆらと揺れる灯影の中に佇むのは今宵火の守を任されている修道女の一人の影。
祈りの為に点された蝋燭の一つ一つ。
芯の尽きたものは挿げ替えて、あるいは消えようとしているものには次の蝋燭へと火を移す。
しんと静まり返った堂内にてただ、静かに勤めを果たしていた。
「────」
誰かの訪れが確約されているわけでもない。
夜は殊に、祈りを捧げに来るものも少ない。仄かな蜜蝋の香りと、芯の焦げる音だけが静謐を揺らす。
ご案内:「王都マグメール 王城/礼拝堂」にトワさんが現れました。
■トワ > 外廷にある礼拝堂、巡回の為に近くを通り、灯りが灯っている事に気づき。
その扉を開くと足元をランタンで照らしながら中へ入り込む。
視線の先には、長い銀の髪を持つ女性、その姿を認めると、ゆっくりと近づいて。
「こんばんは、こんな時間でもお勤めの最中でしたか、シスターマーシュ?」
大きな声ではないが、静かな礼拝堂では十分に聞こえる声で尋ねる。
青年の腕には第六師団所属を表す腕章、何でも屋と言われるような雑多な任務を引き受ける師団。
おそらくは、場内の警邏に駆り出されたのか、人が寝静まる時間に、礼拝堂へ現れて、
「此方には、変わった事なんかはありませんでしたか?
変わった事が無ければ、少し祈りと…それと、赦して貰えるのでしたら休憩を此処でしても?」
まずは警邏の人間としての質問を更につなげ、問いかける。
騒ぎになってないなら、何事もないなら、問題はないし、時間的に少し休憩しても良い時間で。
正規ではなく、応援なのでそこら辺は多少は融通が利く立場。
■マーシュ > 彼が眼にとめるとしたら、それはウィンプルの白だ。髪色は勤めの最中は常に隠されている。
祭壇に供されている祈りの灯火の手入れを終えて。
祈りに手を合わせていた。
灯された明かりによって、明るくはあるが───暖炉の様なものはない。
荘厳ではあるが寂寞とした雰囲気もまた有していた。
そこにかけられた声音に、僅かにうつむいた姿勢を保っていた視線を上げると、背後を振り返る。
静かな眼差しが、相手をとらえると静かに首を垂れた。
「こんばんは───いつもの火の守をしておりました。こちらは平素と変わりはございません」
挨拶の言葉と、続いた言葉に対して否を唱えることはない。
ただ、最後付け加えられた言葉には困ったように首を傾げた。信仰の場であり、居心地の良さは余り追及されていない。
余人がないため、留まるのは自由だが───屋内だから多少ましなだけでほとんど外と変わりはない。そのうえで、と選ぶのならば何も言うことはなかった。
「……此処でよろしいのであれば。祈りの場ですのでもてなしはできませんが」
■トワ > 女性の言葉をききながら、念の為、辺りを見渡して、自分の目と、感覚でも確認をして。
「何もないならよかったです」
変わりが無いという言葉に、頷く。
少なくとも、静かな礼拝堂は静かなままの様子であると。
此方の最後の言葉に少し困った表情を見せる女性に、困らせてせてしまったかなと、苦笑し。
ともあれ、祭壇の前に跪いて、目を瞑り、しばしの祈りをささげて。
それから少しして、祈りを終わらせて立ち上がる。
「少し座れるだけでも違いますし、熱さ寒さにかんしては、それに対する訓練も受けてますので」
本来の仕事でいうならば、斥候や、隠密というタイプ。
そのなかでも、潜入工作などで、長時間過酷な状況にいる事も珍しくない身で。
「まぁ、それと…顔と名前は一致していますが、挨拶以外で話した事のなかったシスターと少し話しをしてみたくもありましたので。
お邪魔でなければ、少し、という感じです」
そう言ったことを抜きし、目の前の女性と話したかったのだと、本音を漏らして。
■マーシュ > 多少の魔術機構はあるが、それらは遺物や、防御のためのそれ。おおよそは王城のそれと変わりはすまい。
隠し立てる様なことも───彼の立場であれば凡そは耳にしているだろう程度のこと。
秘事については己の様な末端の修道女が知っているはずもないのだ。
彼が祈るというのなら己が場を占有するわけにもいかぬと一歩退き、その所作を見守っている。
そうして一時此処で過ごす人は少なくない。もっと日の高い時間であれば、だが。
目を伏せ、邪魔にならないように控えていたのだが───。
敢えてこちらに言葉を手向けられる事態は余り想定していない。
城の歩哨に立つものとはそれほど親しくした覚えもない、のだが。
「────然様で。………語るほどの言葉を持ち合わせてはおりませんが…。なにをお聞きになりたいのでしょうか?」
説法であればほかにふさわしい人物がいる。けれどもそうではなくて己個人に、と言葉を向けられると少々困惑気味に問いを返すことになった。
■トワ > 王国の王城内や神殿、特に普通の人が入れない場所で、様々な事が起こって、行われているのは。
城内の人間や、神殿の人間のうわさなどでは、そこそこに有名で種類も多い。
とはいえ、それらを調べるのは今の自分の仕事ではないので、頭から外して。
「突然こんな事言われても困りますかね…基本的には好奇心的な事なんですが。
シスターの菓子の好みとかをきいてみたいな、と」
頬を掻きながら、何処か困惑する相手に問いかけるのは、余計困惑を与えそうな言葉。
その事実に気づいたのか、少し慌てたように。
「あぁ、いや、家関係の方で甘味処などしてまして、お客様に女性が多いので。
色々な女性に、訪ねてみてるんです、こういう品とか、贅沢品で食べれないと言われると、流石に、ですけど」
懐から取り出した紙袋を開けると、ふわっと柔らかく甘い匂いが漂う。
甘味に慣れていれば、バニラであると判る香り、その香りの元は、紙袋の中にある大き目のクッキーで。
砕かれたアーモンドと思わしきナッツが乗っている、質素な品。
「夜食は代わりに持っていたんですが、もしよければ、いかがですか?」
一枚のクッキーを半分に割ると、掌の上に乗せで差し出す。
この国では、こういった物に何かが仕込まれている事もあるので、それに対して、自由に選んでもらい、残りを自分が食べるという意思表示。
何も入れて無いというアピールでもある。
■マーシュ > 今現在、権謀術数が謀られているとしたら、内廷であろう。
少なくとも、表向きには外廷は夜の中に沈んでいる。
「そうですね、あまり個人としての言葉を求められることは少ないですので」
王城という格式のある場所で、本来は詰めている修道女や司教たちはそれなりに地位のある人間も多い。
そういった立場の彼や彼女たちであれば、そういった個人的な会話にも洒脱に返すことはできるのかもしれないが───、その補佐的な立場として出向している修道女にはどれも縁のないことだった。
「…………口にするものに対して、感謝を覚えこそすれ、好悪は持ちません。甘味は、労働される方にとっては必要な栄養でしょう」
基本的に製品を旨とする以上、女が口にするもので、嗜好品と呼べるものは少ない。
甘味も、手ずからつくるものがほとんどではあったが。
けれど、と困惑しつつもその手を抑えた。
「─────申し訳ございません。祈りの場所ですので……」
甘い香りは確かに心を和ませてくれる。
相手に悪気がないのも重々承知の上。一時の休息の場所にすることは問題はないのだが、飲食は、と首を横に振った。
彼の気遣いや、安心させるための挙措だというのにも理解は示しつつ、同じ理由でもう一度首を横に振る。
「今は勤めの時間ですので、何かを戴くのは少々憚られます。ですのでお気持ちだけいただきます」
控えめな礼の言葉とともにその手を押しとどめる結果となるだろう。
■トワ > 静かな礼拝堂のなか、太陽の明かりではなく。
蝋燭や、ランタンの明かりに照らされた場所で。
女性の答えを聞いて。
「あぁ、すみません…シスターの立場と、礼拝所という場所を無視するような事を」
手を止められて、此方の落ち度に対し、丁寧な言葉を受けて。
そう言えばと、思いたり、クッキーを紙袋へ戻す。
ある意味で、普段来ない場所へきている事が判る行動で。
「…それでは、シスターマーシュ、後日改めて…こういった甘味を御馳走したいのですがいかがでしょう?
勿論、シスターがお時間を取れる時に、こちらが合わせますので」
紙袋を懐へ戻して、改めての誘いを告げる。
お詫びという気持ちと、こういった縁を繋げたいと、そんな思いで。
「もしくは、差し入れという形でも、良いのですが」
修道女としての勤めの時間外で、会えれば嬉しいですと、小さく添えて。
■マーシュ > 「ご理解いただければ幸いにございます」
己の返答に対して、謝罪の返答が返ると目を伏せて首を垂れる。
元のようにしまい込まれる焼き菓子を見るともなしに目で追い、それ以上を言及しないのは、それで過不足なく十分であると認識しているからだった。
「───?」
だからこそ改めての問いかけには首を傾ける。
そこまでの謝意を求めたつもりはないし、また理にかなわない行為だと認識するがゆえに。
「……えぇ、と。そのようなことをしていただく必要はございません。そのようなお言葉は過分にすぎます」
困惑の滲んだ声音は、相手の真意を測りかねるように、重ねてこちらの選択を問う言葉に一度黙り込んだ。
「───私への詫びは必要ございません。そうしていただく必要もございませんし、私などよりもそういった言葉にふさわしい方はいらっしゃるかと」
時折挨拶を交わす程度。
それゆえに相手の申し出は唐突に感じる。同時に詫びについても己の感じたままを伝え、申し出に対しての謝意を返すのみにとどめ。
■トワ > 女性の言葉に、苦笑を浮かべながら。
唐突に過ぎたかな、と内心で思いながら。
「あー、すみません、困らせてしまったようで。
警邏で此方に来て、シスターを見つけて、これまでも気になっていたの物で」
顔に浮かべるのは、苦笑と、すまなそうな色。
それでも、言葉にださなければ、伝わる事も伝わらないので。
「お詫びというより、自分がシスターと話をしたかったのです。
其処に、男としての感情も混ざってたのも確かで、少し性急に過ぎた上に、困らせてしまったようで」
そう言ってから、じっと藍色の瞳を見つめて。
「ただ、少なくとも自分は、シスターマーシュを誘いたいと思ったから、先ほどの言葉を掛けさせて貰いました。
私などよりと、寂し事は仰らないでください」
今思っている気持ちを、素直に告げて。
込ませたいわけでは、ありませんのでと、軽く頭を下げる。
■マーシュ > 「ええ、戴いた言葉は…私にとっては……意外なものでしたので、驚きがないかといえば嘘になります」
浮かべられる苦笑と、あわてたような物言いに首を横に振った。
コツ、と小さな靴音とともに、祭壇に供されている蝋燭の一つに歩み寄るとそれを取り換える。
「そのようにおっしゃっていただけることは、ありがたいとは思いますが──、やはり過分です。どうか、この場のみで収めていただければと」
思いつめたような言葉にも聞こえるし、真摯な態度は好ましい。
さりとてそれを素直に受け止められるかといえばそうではない。
「───……そろそろ交代の時間です。ご用命があれば次はそちらのものに申していただければと」
やんわりと、退出と辞退の言葉を返すことで、己の意思を示す。
■トワ > 「そうですか、いえ…本当に此方が性急に過ぎました」
女性の言葉を聞いて、小さくなずく。
もう一度頭を下げてから。
「この場のみで、ですか…今は、そうします」
小さく、そう呟く。
交代の時間と聞けば此方もそろそろ警邏に戻らなければという時間で。
融通が利くとはいえ、無制限では無くて。
「此方も、警邏に戻ります…今夜はシスターマーシュとお会いできて、此方は嬉しかったです。
と、それと…これは個人ではなく、城の警邏として、何かありましたら直ぐに警邏の者にお知らせください」
小さく笑顔を浮かべる、少し頬が引き攣っても見えるかもしれないが。
その後でその感情をおしつぶす様に、表情を隠して、その言葉を告げる。
一応、周りを確認し、ランタンを翳して…それではと、退室の礼をして、礼拝堂を後にしていく…――。
■マーシュ > 「────」
伝えるべきを伝えた女は無言のままに首を横に振る。
否定の意というよりは、必要以上に気にしないことを願っている仕草として、だが。
此方の意を汲み、退出の言葉を紡ぐ相手には一つ頷いた。
「はい、お気遣い感謝いたします───」
彼の笑みの引きつりに気づいたとしても、そこは彼の矜持を守るために何か言うことはないだろう。
退室していく相手を見送り。
己もまた、先程の言葉通りに交代のものが現れるのを待つように佇んだまま。
再び静謐に沈んだ聖堂内でゆらゆらと揺れる灯に視線を向けていた──。
ご案内:「王都マグメール 王城/礼拝堂」からトワさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/礼拝堂」からマーシュさんが去りました。