2021/11/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城・裏門付近」にイヴリールさんが現れました。
イヴリール >  
「───はぁっ、はっ… はぁ…っ」

荒く、短い、乱れた呼吸
白いドレスの裾を両手で掴み、城内を走った

「(やった…やっちゃった……)」

常日頃、城内の散歩だけは許されている中で
夕暮れに差し掛かるこの時間だけは、お城の兵士の見回りの数が少ないことに、なんとなく気づいていた

イヴリール >  
特に、この裏門付近は、少しの時間だけ、見張りの兵士がいなくなる

ちょっとした冒険心と、勇気と、出来心は少女の足を前へと駆けさせて

「……──ん、っ…!」

大きな、といっても正門よりは小さな、裏門へと辿り着き、その扉を一生懸命に、押す
か細い少女の腕には重い扉も、懸命に体重をかけて押せば…少しずつ、重苦しい音と共に開き…

オレンジ色の西日が差し込むその先は…"お城の外側"の世界だった

イヴリール >  
「……わ、ぁ───」

お部屋の窓から、ベランダから
『見るだけ』だった世界が拡がっていた

勿論、方角的に部屋から眺めていた街とは違う風景
見下ろすでなく、見上げるように広がる光景に、思わず立ち尽くしてしまった

走って乱れた呼吸が少しずつ整ってゆく中で、跳ねるような胸の鼓動だけは収まらなかった
バレたら怒られることへの恐怖心なんかが吹き飛んでしまうくらいに、未知の世界にドキドキしてしまっていたのだ

ご案内:「王都マグメール 王城・裏門付近」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 其れは誰が予想出来るものでもない偶然の産物だった。
王城をも囲う結界の調整は、自分の気が向いた時に行うものだったから。
そんなルートの中に、此の裏門付近も入っていたのだ。

「おや、珍しい…誰かと思えば」

時間から見て見張りは居らず、扉が開いている事はない。
其れが開いていれば、念の為に確かめるのは当然の事だろう。
そんな少女が声に気付き背後を見れば、其処に居るのは黒いローブに身を包む一人の少女か。

イヴリール >  
現実に目の前に広がる景色に思わず見とれてしまっていたけれど
『お城の外に出てみたい』という少女の夢の一つは、こんなにもあっさりと叶ってしまった

いつか、お城の中で誰かに言われた通り
勇気を持って踏み出せばただそれだけで───

「わうっ!!?」

そんな思いに浸りかけていると、突然かけられた背後からの声
見るからに驚いたと理解るほどにビクッッとその身体を跳ねさせ、慌てて背後を振り返る

蒼く大きな瞳に映ったのは、黒いローブ姿の少女──

王城に携わる者なら彼女のことはとりあえず知っているだろう
が…部屋から出してもらえることも、散歩の時間しか許されていないイヴリールはたいした世間知らず
初めて見る、でも自分を知っていそうな、そんな言葉をかけられて
表情は少しずつ、驚きから、恐れへと変わってゆく

「あ、あの、ええと…わ、私、その…っ」

しどろもどろ、まったく言葉が出てこないようだった
別にお城を抜け出すつもりは…とか、色々な言い訳が浮かんではごちゃごちゃして、纏まらない

ミリーディア > 王族や貴族、そして関係者で在れば彼女が此処に居る理由なんてものは安易に想像出来るものだ。
勿論其の一人に自分も含まれている。
此処に来たのが自分でなければ、十中八九に彼女はお叱りを受けて引っ張り戻されるのだろう。
其れは此方に気付いた彼女の様子からも窺い知れる事か。

其の表情が畏怖へと変わり、何か云い訳をし様としどろもどろに言葉を零す少女。
そんな彼女の元に迄、無言の侭で歩み寄る。
開いた扉の側に居るだろう彼女の直ぐ目の前で足を止めれば、扉に手を添えて顔を寄せ、彼女の顔を覗き込み。

「何をしていたか、其れは儂が見て判断しても良いんだが…
君の云い分も聞かせて貰うべきだと思うのだよ。
正直に答えてくれるね?」

と、そう彼女へと質問を投げ掛ける。

イヴリール >  
ゆっくりと歩み寄るミリーディアの様子に視線は泳ぎ、小刻みに足も震える

名ばかりの姫が、手を煩わせるな
穢れた血のくせに、大人しく部屋に閉じ籠もっていろ

これまで言われてきた言葉が浅い記憶の底から浮き上がる
思い出すだけで心がささくれだってしまいそうな、心無い言葉の数々
やっぱり自分は何もしてはいけないんじゃ…と、思考がネガティブに傾こうとした、時

とん、と手が扉に触れ、顔を覗き込まれていることにようやく気づく
わ、と小さな声をあげ、一歩後に下がろとするも、当たり前のように扉に阻まれる
どんな怒られ方をするのだろう、と思った矢先に投げかけられた言葉は、少女にとって意外なものだった

「…え? あっ……」

少女にとって、こちらの言い分を聞いてもらえるのは、珍しかった
なのですぐに答えを、とはいかなかったが、一呼吸おいて、自分を落ち着けるようにしてから…

「…外、を…」

「お、お城の外を……見て、みたくて…」

悪いことをした後の子供のように視線を伏せ、そう小さく言葉を零す

「…この、時間に…ここだけ、見張りの兵士さんが、いなかったので…その、ごめんなさい」

ミリーディア > 目の前の相手が誰で在ろうとも其の扱いは同等である、地位も立場も関係無い。
彼女が前にした少女は良くも悪くもそんな存在だ。
身に纏う雰囲気を見る以前に彼女と云う存在を考える為らば、此の国に対する悪意は持ち合わせていないのは当然至極。
そうで在れば、先ずは其の理由を聞くのは自分にとっては当然の事なのだ。
暫し回答に時間が掛かるのは仕方無い、彼女を知っていれば解る事。
尤も、彼女からの答えも又、予想の範囲内では在ったが。

「鳥篭の中しか知らない小鳥が外の世界に憧れを抱くのは当然の事だろうさ。
然し、見張りの時間迄把握して此の様な行動を起こすとは…思っていたよりも面白いじゃないか、イヴリール君。
其れとも、見付かった後の事迄も織り込み済みの行動かね?
そうやって謝るって事は?」

落ち着き答える、其の回答を聞く間も彼女から眼を離さぬ侭。
聞き終えれば、そんな彼女へとそう反すのだ。
只、此方の顔を確りと見ている為らば、其の表情は別に怒っている訳では無いのが解るだろう。

イヴリール >  
名を呼ばれ、ぴくりと反応してしまう
好き好きに利用される自分の名前がそこまで好きではないこと
そして、名指しで呼ばれる時は、得てしてよくないお話ばかりだったから

しかしそんな言葉は投げかけられず、少女は少しずつ、落ち着きを取り戻してゆく

「……考えて、いませんでした。
 私、このお城の中で沢山、外の人に会ったんです」

冒険者の男の子、異国の剣士、商人の男性
どうやったかはわからないけれど、夜中に忍び込んでいたミレーの女の人なんかも、いた
そんな人達と言葉を交わす程に、お城の外への憧れは強く、大きくなっていって

「…彼らのいる世界に触れられると思ったら、…我慢ができませんでした」

突発的な、理性的でない行動であったことを認め、俯く
言うなれば、子供の動機…鳥籠の中で育った少女はその見た目以上に幼く、危なげだった

言葉を終え、視線を上げる
瞳に映り込むミリーディアの表情からは、怒り…少女の苦手な感情は、感じられなくて
胸元に手をあて、少しだけ安心したように深く吐息を零す

ミリーディア > 彼女の言葉に納得はいった。
王城内の、然も城内しか殆ど知らない彼女にとってみれば彼等の話は夢物語の様なものだろう。
そうしているのは、彼女を囲う連中の所為だろうとも。
改めて目の前の少女を見詰め乍、少しばかり思案する様な仕草をすれば。

「それで、イヴリール君。
此の状況でさえ見付かって怒られる為らば、いっそ其の世界に触れてみるのは面白いと思わないかね?
外の世界は君が思っている様な事も在れば、思いもしない事も在る。
此の機会を見逃したら、次は難しいかもしれないだろう?」

そんな言葉が、彼女へと伝えられた。
理由は彼等の思い通りに為っているのが面白くないから。
後は、鳥篭に只収まっているだけでないと解った彼女に興味を持ったからだ。
だが、只答えを待つだけでは、屹度彼女の答えは自分を抑えたものとなるだろう。
そう考えれば…

「だから、ちょっとだけ外を見に行こうか。
どうせ時間は在るんだろう?」

そう、少し押す様な言葉を続けて与えるのだ。

イヴリール >  
正直に、話した
自分を斜に見る者でなくとも、姫であるなら思慮深く行動すべきであるとか
身分を弁えるべきである、という言葉が待っているだろうと思っていた
思っていただけに、続く言葉にはまた驚かされて、大きな青い瞳を更に丸くしてしまう

「…へ。 えっ?
 で、でもそんなことをしたら…」

でも、言われた通り
どのみち叱られるのなら、同じなのかな、なんて

ただただ、その言葉に胸を躍らせてしまっていた

「じ、時間は……」

「…つ、次の見張りさんの交代の時間までに戻れれば…大丈夫…でしょうか?」

疑問形。外に出た事がバレたら、彼らもお叱りを受けるかもしれないと思うと
ちゃんとバレずに部屋には帰られないといけない
いいのかな、と。そわそわとした思考がまわる

ミリーディア > 普段であれば研究施設から離れられない、結界の調整で時間が好きに使える今だからこその意見だ。
此の侭外に出て暫く戻らずとも、誰からも文句の一つも出ないだろう。
其れを知っている誰かに外で見付からなければ、だが。
尤も、そんな失敗をする様な自分では無い。
其の辺りは既に考えている。

そんな自分の反応も彼女にとっては意外だろうし、伝えた言葉に期待を抱いてもいる。
其れは彼女を見れば良く解るものだ。

「何だったら、此の儂の…ミリーディアの居る魔導研究施設に呼ばれていた、とでも云えば良いさ。
今日の相手が儂だった、と連中も考えるだろうさ」

彼女の立場を利用した理由付け。
必要以外に誰か訪れる事の無い場所だ、確認のし様も連中には無い筈だ。
其の言葉には一部の真実も混ざっている訳なのだから。
其れは、此れから一緒に行動して行けば解る事だろう。

特に強い抵抗や拒否も無い為らば、裏門付近の人の気配を探り。
見付からぬ様な移動の出来るタイミングを見計らい、彼女の手を引いて門を抜けるつもりだ。

イヴリール >  
「相手が…? ……あ、わ、…わかりました」

相手が女性であることもあって、すぐには理解できないようだったが、
すぐにその意図を理解したのか顔を赤くする

言い分は整っている、彼女の言う方便も十分に立つとなれば…
何より、憧れ続けたお城の外の世界への切望が、背中を押す

手を取られ、城下の街へと駆け出してゆく
西日は赤く街を照らし、見上げるその町並みはまるで燃えているようで
その、感じたこともない開放感と高揚感に、少女の足取りは生まれてからのいつよりも、軽やかだった──

ご案内:「王都マグメール 王城・裏門付近」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城・裏門付近」からイヴリールさんが去りました。