2021/05/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 ホール」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 穏やかな王都の夜。
月を過ぎる鳥の影が見える夜空の下、王城の一角は今宵音曲で溢れた。
シェンヤンの楽師たちの演奏、王城付きの楽師たちのもてなし、そして特別に招かれたオペラ歌手の特別コンサート。

「…ふわぁー……」

高くにある煌びやかなシャンデリアの灯りも今は消えて、手燭ひとつで広いホールに居るのは一人のエルフ。
自分も頬を火照らせ、あれだけ熱気にあふれていた筈のこの広間。
城の侍従たちの躾がいいのだろう、すっかり片付けられて静まり返った室内はまるでよそよそしい空気になっていて、それが女には却って過ぎ去った宴を忍ばせる。

コーラスとしての臨時雇い、裏方と一緒に機材と荷物も纏め終わった今もう仕事は終わりだ。
用意されている部屋に泊っても良いし、帰っても良かった。
帰るつもりでちょっとだけ、とここへ足を向けた所。
見事に余韻が残らない部屋に

「……はぁ」

何度目かの溜息。
足取りは何とは無しにテラスのほうへ。

(確か、薔薇園が見えたはず)

そこで少し夜風に吹かれたら、今度こそお暇しなければ。

ジギィ > 大きなガラスドアを開け放って外へ出る。
その扉の重さに多少驚きながら、吹き付けて来る夜風に目を細める。
同時に手燭の灯りも吹き消えて、しまった、と思ったけれども
月明かりに慣れれば問題なくまた外へ出られるだろう。

(……廊下で誰何される可能性はあるなー)

やっぱりしまっただ、と思いながら消えた手燭を足元に置いて、苦笑を浮かべてテラスの手摺りに凭れかかる。

触れられそうな距離まで咲き誇った薔薇たち。
赤と、白と、薄紅と
月明かりに染められた花たちは、昼はきっと更に香りまで此処まで届かせたろう。

ジギィ > 風が薔薇の繁みを揺らして通って来て、火照った頬には冷たいそれが心地いい。
だがむき出しの肩は流石に冷えてきた。
思わず触れたそこが冷えているのに気付くと、今度は諦めの溜息。

「あーあ、ざんねーん」

誰にでもなく、薔薇たちにそう告げて手を振って
手燭を拾いくるりと踵を返して室内へと戻る。

硝子扉が閉められ、部屋の闇の中を足音が危なげもなく外へと向かっていったあと
部屋にはふたたびの静寂が―――

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】 ホール」からジギィさんが去りました。