2021/02/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にルルゥさんが現れました。
ルルゥ > 常識を大きく外れた、デビュタントの夜から数日。
身体の回復とともに、頭の中身もほどよく抜け落ちた幼い姫の姿は、
おやすみ前の散策と称し、夜更けの庭園をふらふらと揺蕩っていた。

ドレスではなく、踝まで隠れる薄手の夜着に厚手のストールをしっかと掻き合わせ、
一応の防寒対策はとっているものの、足許は室内履きの布靴であり、
髪も梳き流されて、寝床をひとり抜け出してきたのは明らか。
侍女の一人が口ずさんでいたのを覚えた、あまり品が良いとは言えない歌を稚い声で辿りつつ、
日々、美しく整えられている庭園の外れ、うっそうと生い茂る木々の間、
星明かりの届かぬ方へと果敢に進む。

少女にとって、ここは自室の延長線上にあるようなもの。
したがって、警戒心というものはみられず―――今ごろは侍女が、
慌てて探し歩いているかも知れないのだが、少女には知る由もなかった。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 享楽と退廃、腐敗が支配するマグメールの王城では、
今宵も何処かで貴族達が持て余した時間を潰すための催物が行なわれる。
そんな席にて、見栄と矜持と体面を何よりも尊重する彼等、彼女等は、
豪華なドレスや宝石、その他、多種多様なもので我が身を着飾り、自身のステータスを周囲に誇示する。
それは何も物品のみに留まらず、毛色の異なる物珍しい奴隷や美男美女の愛人、
そして、自身の命を守る為に侍らせる護衛なども、時にその一つに成り得るのだった。

そのような場に於いて、彼の過去の武功は相応に役立つ装飾と見なされるのだろう。
元貴族という出自もあり、一介の冒険者に過ぎぬ筈の彼が貴族の護衛として雇われ、
王城の厠の位置を覚える程には度々足を運ぶ結果とまでなっていた。
とは言うものの、王城の於いて貴族を害する不届き者が現われるのは稀であり、
雇い主が目ぼしいご婦人やら愛人やらと客間にしけ込めば護衛は手持無沙汰になる。
尤も、彼も彼とて大概な性格故に、これ幸いと馴染みの侍女と密会でもしようと待ち合わせた所、
繁みの奥から現われたのは、聞き馴染んだ歌を口ずさむ予想外の少女の姿で。

「これはこれは、……こんな所で遭うとは奇遇だな。レディルルゥ」

まるで貴婦人にでもするように、鉢合わせした幼き姫君に頭を垂れて見せた
彼女の常識外れなデビュタントの相手を努めた男は悪びれた様子も見せずに薄く嗤う。

ルルゥ > それも少女は知らないことだったけれど、実はこのあたり、
侍女たちの間では、ひと目を忍ぶ逢瀬には絶好の場所として、
ひそかに有名、であるらしい。
何気なく茂みに分け入って、いきなり男女の濡れ場に乱入、
という危険を多分に孕んでいた、ということだけれども――――今日は。

「―――――― ひぁ、」

一歩、足を踏み出した格好のまま、びくりと少女は身を強張らせる。
より明確な、もちろん頭のゆるい少女にだって、はっきりわかる危険が、
見覚えのある男性の姿をして、そこに立っていたのだ。
大きく見開いた瞳を、瞬きもせずその顔へじっと向けたまま、
半開きのくちびるをぎこちなく動かして、

「トー、ラス、さ……ま、―――…」

どうして、なぜ、こんなところに。
ありとあらゆる疑問は喉奥に詰まり、少女は遅ればせながら、この場からの退避を試みる。
踏み出した足を引き、一歩、もう一歩。
背中を見せて走り去るには、もう少し距離をあけてから、と。

トーラス > 「おいおい、まるで化け物でも見たかのような驚き方だな」

自分の貌を見た瞬間、彼女の口から零れ落ちる驚きの言葉に、
双眸を瞬かせると緩く口端を弛めて、肩を小刻みに揺らすとくつくつと嗤う。
いつぞや、馴染みの侍女との密会の最中、仕える姫君の無邪気な奔放さに手を焼いていると
愚痴めいた話を睦言の中で交わした事を思い返せば、点と点が線で繋がり。
となれば、明確な時間を約束した訳でもない待ち合わせに、
彼の目当ての相手は恐らく現われる事はないのだろう、と察して。

「今宵はまたお寛ぎな恰好だな、レディ。そのネグリジェはこんな場所より寝室の方が映える。
 ――――俺を、君のベッドに案内してくれるかい、ルルゥ?」

彼女が後退り始めるよりも先に、彼は大きな一歩を踏み出して、彼女の二歩をたった一歩で詰めてしまう。
互いの距離は離れる事はなく、次第に近付き、重なって、
その武骨な手にて彼女の肩を掴めば、此処ではない何処かへと連れ去ろうとする。
それが彼女の部屋になるのか、或いは、其処等の繁みになるのかは彼女次第で。

ルルゥ > お化けだとか、モンスターだとかのほうが、少女にとっては怖くない。
目の前の男性は、少女にとって、現実的な脅威であるからだ。

けれども、少女の身体は今宵も、甘く蠱惑的な香りを漂わせている。
相手が侍女との密会を期待していれば、きっとなおのこと。
ぎゅう、とストールの前を掻き寄せた手が、胸元でこぶしに握られて、

「だっ、て……母さまが、ルルゥには、まだ、パーティは早いって、
 ―――――だめ、だめですの、そんな、こと……ルルゥ、また、
 母さまに、叱られてしまいます、の……っ、」

ベッドに、つまりは寝所に。
子守唄を歌ってくれる、あるいはおとぎ話でも聞かせてくれる、
この人がそんなタイプではないことは、さすがの少女も理解している。
だから、だめです、とはっきり首を振ってみせたのに。

一気に距離を詰められて、細い肩をがっちり掴まれた。
こうなってしまっては、少女が悲鳴を上げたって、部屋への案内を断ったって、
少女の運命はもう、この男の掌の上で転がされるばかり、だと――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からルルゥさんが去りました。