2021/02/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 図書室」にエリアさんが現れました。
エリア > 午後の日差しが麗らかに差し込む王城の一角。そこはガーデンパーティの行われる庭や兵士訓練所など、騒音が響く様な区画からは遠く。ひっそりと穏やかで、どこか森閑とした空気に落ち着いていた。

城外には民間人の出入り可能な大型図書館もあるのだが、この令嬢はわざわざここを選んで訪れるのだ。
それは目当ての蔵書がここにしかないから、というのが表向き。
そして、密かな、誰も知らない楽しみが一つ。

迷いなく、書架で埋め尽くされた室内を縫う様に進んでゆき、奥まった箇所にある、持ち出し不可となっているコーナーに辿り着くと、背表紙を確認してすぐに分厚い一冊を抜き出した。

ぱらぱらと捲っては、やがて行きついた小さな紙片――何事かが記されている栞と思わしきそれを確認して、小さく微笑が零れる。

「…………今日も、ありましたわ……」

細長い紙片には3行程の短いメッセージ。
顔も知らない相手との、同じ書とそこに挟まれた栞を使った文通は既に数回に及んでいた。

エリア > 一度では読み切れない難解な書を紐解き始めて幾瀬になろうか。
厚さも然ることながら、内容も非常に難読で最初の数頁で挫折してしまう者も多い。読破にはそれなりの歳月を覚悟していたが、途中暗礁に乗り上げて心が折れそうになったその頃に、己とどうも同時期に同じ書に挑んでいる存在に気付いた。

毎回、挟んである自分の物ではない栞の位置が少しずつ進んでいたからだ。同じ箇所で行き詰まっている様などを察すると、仲間を得た様で勇気づけられ、その内栞に収まるほどの短い文を認め、それに返事が来ると、すっかり嬉しくなってしまい、どこの誰とも存じ上げない相手との数日に一度、数行の文通が始まった。

「今日は、なんとお返事しましょうか……。
それとも今日こそは、お会いする事ができますかしら……」

柔らかく楽し気な声で独り言ちれば、一抱え程もあるずっしりと重いその書を胸に、閲覧机へと向かい。

ご案内:「王都マグメール 王城 図書室」からエリアさんが去りました。